©春場なぎ/講談社/『五等分の花嫁』製作委員会
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですねマンガ『五等分の花嫁』についてお話していこうと思います。
本記事は一部作品のネタバレになるような要素を含む記事になります。
作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
『五等分の花嫁』
あらすじ(ネタバレ注意)
第1巻
上杉風太郎は、常にテストで満点を取る優等生だが、家が貧乏で学食で毎日ご飯と味噌汁だけを食べていた。
そんなある日、彼は学食で五月という少女に出会います。
勉強を教えて欲しいと告げた彼女に対し、風太郎は時間の無駄だからとそそくさと退散。
その夜、家に帰ると風太郎は妹のらいはから、新しく家庭教師の仕事が舞い込んでいて、時給が相場の5倍だから引き受けて欲しいという提案を受けていることを明かされる。
妹のためにも家庭教師をする決断をした風太郎は、「転校生でお金持ちの少女」の家庭教師を務めるという情報をもらい、登校する。
すると昨日学食で軽くあしらった五月という少女が、風太郎のクラスに転校することとなります。
とっさに彼女が自分の教える生徒であることを察知した風太郎は、なんとか昨日の謝罪をして彼女に受け入れてもらおうと奔走します。
しかし、五月の周りにいる4人の少女が邪魔をして、なかなか彼女と話すことができません。
最終的に彼女を家の前まで追いかけた風太郎でしたが、そこには五月と合わせて、5人の少女がいました。
そして五月は衝撃の真実を告げます。
『私たち5つ子の姉妹です。』
案の定、姉妹からは家庭教師なんていらない、家に上がり込まないでと拒否反応を示される風太郎でしたが、自分が近づかないための条件として、自作のテストで「50点」を取ることを提示します。
するとその結果はなんと「100」点・・・ただし、5人合計で・・・。
かくして風太郎は家庭教師を務めることとなりますが、依然として風当たりが強く、まずは信頼関係を築くところから始めることになるのでした。
第2巻
なんとか、日本史をきっかけにして三玖との距離を詰めた風太郎。
しかし、いわゆるラッキースケベ的に起きた「二乃押し倒し事件」によってセクハラ疑惑をかけられてしまう・
何とか疑いは晴れますが、その後もたびたび悪意を持って勉強を妨害してくる二乃。
風太郎は二乃が、姉妹水入らずに「異分子」として介入する自分が許せないことを察知します。
そんなある日曜日、街ではお祭りが開催されることになっていましたが、らいはと共に訪れた風太郎は五姉妹に遭遇してしまいます。
中野家は毎年姉妹全員で花火を見ることを習慣にしているようで、姉妹の結束に並々ならぬ意志を見せる二乃は特に張り切っていました。
しかし、祭りの人ごみの中で姉妹ははぐれてしまいます。風太郎はなんとかして4人を見つけようと、尽力しますが、そこで長女の一花の秘密を知ってしまいます。
彼女は、女優になることを志していて、そのための大事なオーディションが祭りの日の夜にブッキングしていたのでした。
長女として「一人前」にならなければという自負を強く持つ彼女を、風太郎も快く送り出します。
オーディションを終えた一花は姉妹の下に戻って来ますが、既に花火大会は終わってしまっていました。
しかし、五姉妹は揃って公園で、手持ち花火を楽しんだのでした。
そんな中で、一花と三玖の中に少しずつ風太郎に対する恋心が膨らんでいきます・・・。
さらに、風太郎がかつて小学生の頃の修学旅行でこの5姉妹のうちの誰かに会っていた可能性が、風太郎の持っていた写真から浮上します。
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第3巻
少しずつ距離を詰めていく五姉妹と風太郎。
それを他所に、いよいよ最初の中間試験が迫ってきていました。
しかし、そんな時期に突然、五姉妹の父(家庭教師の依頼人)から電話がかかってきます。
その内容は、五姉妹が全員中間テストで赤点を回避できなかった場合には、風太郎を家庭教師から解任するというものでした。
一花、三玖、四葉は何とかやる気を出し、勉強にも参加してくれるようになりましたが、五月とは大喧嘩をしてしまい、二乃とは依然として関係が改善されないままでした。
そんな時、二乃に自分が全員の赤点回避を達成させることができなければ解任されてしまうという条件を知られてしまいます。
風太郎を追い出したい二乃は当然、勉強をボイコット、さらに五月は自室にこもり、1人で勉強を続けていました。
そうしてドタバタの中で試験が迫ってきます。試験前日に風太郎は何とか五月に謝罪をし、「よくがんばった」と健闘を称えます。五月もそれに応え、仲直りを果たします。
こうして、試験が終わりますが、結果は以下のようになっていました。
- 一花:数学のみ赤点回避
- 二乃:英語のみ赤点回避
- 三玖:社会のみ赤点回避
- 四葉:国語のみ赤点回避
- 五月:理科のみ赤点回避
その結果を受けて、風太郎の解任は決まりますが、二乃がこの結果を「五人全員で赤点を回避した」(五人で赤点を回避した教科が違うことに基づく詭弁)と父に説明し、風太郎の続投が決まりました。
そんな中で迫ってくるのは林間学校なんですが、それに伴い、風太郎に思いを寄せる一花と三玖は悩んでいました。
なんと、彼らが通う学校には林間学校のキャンプファイアの前で踊ったカップルは永遠に結ばれるという言い伝えが存在していたのです。
第4巻
風太郎はひょんなきっかけから一花とキャンプファイアの際に踊ることになってしまいました。
そして林間学校の2日目の夜に名物企画である肝試しが開催されることとなりました。
そこで三玖は、一花に「風太郎のことが好きなのか?」と問いかけます。
一方で、風太郎は肝試しのピエロ役として身につけていた金髪のウィッグのために二乃に、「写真の少年」であると勘違いされしまいます。(二乃は風太郎の生徒手帳に挟まれていた金髪の少年(かつての風太郎)に好意を抱いていた。)
波乱もありながらの、キャンプファイアの準備が始まり、風太郎も材木運びを手伝うことになります。
そこで偶然にも一緒になった一花と共に、風太郎は材木倉庫に閉じ込められてしまいます。
風太郎は彼女に「やめるか(キャンプファイアで踊ること)」と告げ、それを聞いた一花は泣きだします。
迎えた林間学校最終日も波乱の連続です。
一花は風邪をひいてしまい、三玖は改めて風太郎への恋心を自覚し、自分の思いに正直になります。
そんな中で、五月が突然姿を消してしまいます。雪山での遭難の可能性を示唆し、一花を連れ出し、捜索に向かう風太郎。
しかし、彼は気がついていました。彼が連れ出した「一花」は五月が変装していた姿だったのです。
五月は、彼が自分のことをどんな風に思ってくれているのかを確かめたかったのでした。
その夜、風太郎は風邪でキャンプファイアに参加することは叶いませんでしたが、五姉妹は彼の部屋を訪れ、全員で眠っている彼の手を握りました・・・。
第5巻
林間学校を終え、入院することとなった風太郎。
五姉妹は彼の下に看病のために訪れます。その際に2人きりになった彼と五月。
彼女は風太郎に「あなたが勉強する理由を教えてください。」と問いかけます。
すると彼は、生徒手帳に挟んだ写真に写った少女のことについて話し始めます。
その少女は、彼が小学生の修学旅行で行った京都で出会った少女でした。
その話を聞いた五月は昔持っていたお守りを引っ張り出したと言い、ポケットから大量にお守りを取り出しますが、それらは何と「5年前に京都で」購入したものだったのです。
風太郎は、そのことをきっかけに自分がずっと思いを寄せていた少女が五姉妹の中にいるのではないかと考えるようになります。
その後、しばらくは穏やかな日々が続き、一花、三玖、四葉はそれぞれに風太郎への思いを強めていきます。
そしていよいよ期末試験に向けて勉強を進めようとしたある日、二乃と五月が大喧嘩をしてしまい、2人ともが家出をする結果となります。
2人の対応を巡って、悩む風太郎。
そんな彼の前に、突然「写真の中のあの子」が成長した姿で現れるのでした・・・。
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キャラクター
では、ここからは本作のキャラクターについてお話していこうと思います。
©春場なぎ/講談社/『五等分の花嫁』製作委員会
一応原作でのカラー絵でも、5人の髪色が微妙に異なる色で描かれてはいたんですが、そのコントラストがアニメのキャラクターデザインですと、一層強調されているように感じられます。
そうなんですよ。本作の物語の中には、風太郎が5人があまりにも似ていて見分けがつかないという設定がかなり重要だったりするんですが、ここまで差が明確だとその設定が弱くなるような気がします。
上手く乗り切ってくれるといいんですが・・・。
上杉風太郎(CV:松岡禎丞)
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本作の主人公。
貧乏な家の育ちで、家計を助けるために中野家で家庭教師を務めることとなります。
当初は、お金のためだと割り切って家庭教師を務める考えでしたが、五姉妹と関わるうちに考え方が変化していき、必死に彼らに勉強を教えるようになる。
小学生時代は金髪のガキ大将キャラでしたが、修学旅行で「少女」と出会ったことで改心し、誰かに必要にされる人間になりたいと一念発起し、勉強に取り組むようになりました。
その少女に今も好意を寄せている一面があり、五姉妹の中の誰があの「少女」なのかと勘ぐり始めますが、彼らと関わるうちに、その少女の面影を払拭し、今の彼女たちときちんと向き合い始めます。
恋愛に関しては、興味を示さず、好きなタイプは妹のらいはのような女性だと告げている。
しかし、二乃に告白されると、恋愛について考えるようになり、誠実に向き合おうとする姿も描かれる。
CVを担当するのは、松岡禎丞さんですね。
近年の男性主人公ボイスと言えばこの人ぐらいの勢いで出演している彼ですが、原作を読んでいて、やっぱり彼の声で脳内再生してしまっている自分がいました。
まあ風太郎を彼が演じるのであれば、間違いはないでしょう。
中野一花(CV:花澤香菜)
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中野家の五姉妹の長女です。
ボーイッシュな風貌をしていて、学校でも人気が高い。
女優を志していて、長女としての自覚からそれを内緒にして、「一人前」として認められるようになったら他の姉妹に告白しようと考えていた。
自分と姉妹のために必死に尽くしてくれる風太郎の姿が徐々に気になり初め、次第に好意を寄せるようになる。
しかし、三女の三玖が風太郎に好意を寄せていることも悟っており、彼女の思いを尊重しようとする意志と、自分の本心の間に揺れることになる。
しかし、三玖から正々堂々勝負しようと宣戦布告され、風太郎への好意に正直になります。
五姉妹で家出をした後は、家賃等の支払いをするために女優業に一層精を出すようになる。
CVを担当するのは、花澤香菜さんですね。
一花はすごくボーイッシュなイメージだったので、花澤さんの声のイメージはいまいちピンときません。
ただ花澤さんは『監獄学園』の花のようなぶっ飛んだキャラクターを演じてきた経歴もありますので、声そのもののイメージとの違いを持ち前の対応力で埋めてくれると信じています。
中野二乃(CV:竹達彩奈)
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中野家の次女。
姉妹の中でも特に、「五姉妹はいつも一緒で」という価値観へのこだわりが強く、1人だけ髪の長さが母と暮らしていたあの頃のままである理由も、「変わること」への恐怖からであると明かしている。
そんな考えがあるために、異分子である風太郎への風当たりは他の誰よりも強く、何とかして彼を排除しようとしていた。
懸命に五姉妹のために尽くしてくれる彼に徐々になびく様になるが、自分が思いを寄せていた「金髪の少年」の正体が風太郎であると分かると、再び仲たがいをしてしまう。
それでも何とか仲直りし、その後は「金髪の少年」ではなく、風太郎本人に好意を寄せるようになる。
当初は嫌悪感丸出しだったにもかかわらず、姉妹の中で真っ先に風太郎に告白している。
CVを担当するのは竹達彩奈さんですね。
『えむえむっ』や『けいおん』といったテレビアニメを好んで見ていた自分からすると、「ツンデレ=竹達彩奈ボイス」みたいなところはあるんですよ。
ですので、二乃のCVを竹達さんがつとめるのは、非常に嬉しいですね。
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中野三玖(CV:伊藤美来)
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中野家の三女です。
無口で常にヘッドホンを首にかけている。日本史や戦国武将に興味があるということがきっかけで、五姉妹の中では最初に風太郎との距離を縮めました。
その後も風太郎には信頼を寄せている様子で、次第にそれが好意へと変化していきます。
しかし、他の姉妹にも気を使ってしまい、奥手なままでしたが、風太郎の言葉や一花の気遣いもあり、ようやく好意を風太郎に伝える決心を固めます。
抹茶ソーダというよく分からない飲み物を常飲しており、料理に関しては悲惨なほどに才能が有りません。
CVを担当するのは伊藤美来さんですね。
ろこどるとバンドリのイメージが強かったので、無口で奥手な三玖のキャラクターに合うのかな?というところは気になってはいましたが、実際の映像を見てみると、何の問題も無さそうでした。
中野四葉(CV:佐倉綾音)
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中野家の四女です。
運動が得意で、驚異的な身体能力を持っています。
困っている人を放っておけない性分で、勉強に差し支えると分かっていても誰かのために行動しようとしてしまいます。
また、他の姉妹のことを思うがゆえに、確固たる「自分」を持っていないことを風太郎に指摘されますが、少しずつ自分らしさを見つけていきます。
頭に大きなリボンをつけているのが特徴です。
だからこそ何かあるんじゃないかと勘ぐってしまいますね。
CVを担当するのは佐倉綾音さんですね。
当初は五姉妹全員のCVを担当していたので、どの子が割り当てになるのか楽しみにしていたんですが、やはり予想通り四葉でした。
本作の中で一番イメージ通りのキャラクターボイスだと思います。
中野五月(CV:水瀬いのり)
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中野家の五女。
一番最初に風太郎に出会うこととなる。食いしん坊で、そのことを指摘されるのを良しとしない。
五姉妹の中で一番、母親思いで、母親が亡くなって以来、自分が母親の代わりになるんだという思いを強く持っている。
そのため、進路希望調査の際には母親と同じ道を行きたいという安易な思いから、「先生」への道を希望するが、後に教えることの喜びに気がつき、自らの意志で「先生」を志すようになります。
風太郎とは、険悪な関係からスタートしましたが、徐々に信頼を寄せるようになり、好意めいた感情をいだいていることも伺えます。
CVを担当するのは水瀬いのりさんですね。
五月に関しては、原作を読んでいていまいち声のイメージが湧かなったんですが、水瀬さんが担当されたことで少し原作よりも「クールっけ」が追加されたような気はします。
ですので、五月×水瀬いのりさんについては放送されて、実際にどう馴染んでいくのかが非常に楽しみでもありますね。
OP&ED主題歌
まずOP主題歌はキャスト陣が歌う『五等分の気持ち』ですね。
王道のアップチューン声優アニメソングという印象ですが、やっぱりキャスト陣が豪華ということもあって聞いていて飽きない一曲ですね。
ちなみにAメロのソロパートの歌詞はかなり物語に密接に関係しています。
注目して聞いてみると、本編のその後の展開をぼんやりと暗示しています。
それぞれのキャラクターがどんな内容の歌詞を歌っているのか聴いてみてください。
そしてEDを担当しているのが内田彩さんで、楽曲が『Sign』ですね。
『ラブライブ』に出演して以降注目を集めている人気女性声優ですね。
「ベル」という『五等分の花嫁』のキーフレーズを織り込みつつ、作品のイメージに近い内容に仕上げた楽曲だと思います。
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『五等分の花嫁』感想
王道ラブコメながらも面白い!
『五等分の花嫁』という作品は、言ってしまえば超王道のラブコメです。
五姉妹が結果的には、全員風太郎に好意を寄せることになっていく光景は、やはりコテコテのハーレムものという印象を否定できません。
また、昔出会ったいた少女と主人公の間に、関わりがあって今も風太郎はその子のことを考えていて・・・なんて設定もどこかで見たことがありますよね。
ただそういうベタベタな設定や演出に裏打ちされた「ラブコメ吉本新喜劇」みたいなところもありつつ、この『五等分の花嫁』は非常に面白いですし、7巻の原作をあっという間に読み終えてしまうだけの引力がありました。
それはベタベタな設定を用意しながらも、その舞台装置の活かし方がすごく上手くて、丁寧だからなんじゃないかと個人的には思っています。
というのもこの作品ではきちんと5人それぞれがパーソナルな問題と、姉妹を巡る問題を抱えていて、その解決に携わるのが風太郎であるという構造が明確してあるので、いわゆる「ハーレムの形成」が自然に思えてくるんです。
一番顕著なのは、次女の二乃かとは思います。
当初は五姉妹の中に入って来る異物である風太郎に強い嫌悪感を示していました。
そんな変化を怖がる、彼女に変化をもたらし、そしてそれを支えてくれた風太郎の存在は気になり始めるわけですが、彼女は風太郎の面影を残す「金髪の少年」に好意を寄せます。
「金髪の少年」が風太郎だったことが分かり、徐々に自分の好意が風太郎に重なり始める二乃。
そして様々な変化を受け入れた二乃は、風太郎に告白しました。
こういう1人1人が抱える悩みとその解決をきちんとラブストーリー要素を密接にリンクさせられていることで、ありがちな設定ながらも、飽きることなく読むことができます。
好意の対象としてだけではない風太郎の役割
©春場なぎ/講談社/『五等分の花嫁』製作委員会
『五等分の花嫁』の最大の肝は、「五姉妹」という設定にあります。
もっと詳しく言うならば、五姉妹が学力的な能力が均等になっていて、5人でようやく一人前の能力であるという設定がキーになっています。
だからこそ本作のゴールは5人全員が自分の力で赤点を回避し、無事に高校を卒業するというところにあるわけです。
それは五姉妹全員がそれぞれに「一人前」の人間になるという意味合いでもあります。
では、そんな物語の中で風太郎という存在はどんな意味合いを持っているのでしょうか?
まず、テストの得点というディテールが非常に重要な登場人物の特性を表しています。
風太郎は全教科100点を毎回取っているエリートなわけですが、自分でアルバイトをするなどして収入を得ていて、家計を支えています。
つまり風太郎というキャラクターは『五等分の花嫁』において「一人前」の象徴なんです。
一方で五姉妹の方はというと、ぜいたくな暮らしはしていますが、全て父親のおかげで、勉強に関しては五人合わせて「100点」という状態でした。
つまり風太郎と五姉妹はこのテストの得点という指標で明確に対比されているわけです。
そんな中で、五姉妹はそれぞれに一人前の人間になろうとします。その中で努力し、学力も少しずつではありますが、向上していきます。
さらには、完全に自立とは言わないまでも姉妹だけで家を借りて、親の管理から離れて生活する選択をします。
こういった形で、「五等分」だった五姉妹がそれぞれに「一人前」になろうとして、努力し、変化していきます。
その先で、五姉妹全員が辿りつくのが、風太郎への好意なんですね。
まず、彼との恋愛関係を発展させるということは姉妹のこれまでの人間関係を大きく変化させることにも繋がります。
風太郎がそういう五姉妹の関係性の変化へのトリガーとして機能している側面は多分にあります。
それに加えて重要なのが、「一人前」というキーワードだと思います。
なぜなら、風太郎のパートナーになれるのは、五姉妹全員だったとしても、恋人になれるのは、花嫁になれるのは1人だけなんです。
風太郎の「生徒」という立場を抜け出し、「一人前」の女性として認められる、その1つのゴールが風太郎と対等に向き合えるようになることなんだと私は考えています。
つまり、風太郎への好意というのは単なるハーレムラブコメのお約束として機能しているわけではなくて、五姉妹の「一人前」への願望の表出としても機能しているわけです。
この点で、個人的には風太郎がただのハーレムラブコメのラッキースケベ主人公とは一線を画していると感じました。
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『五等分の花嫁』考察
風太郎が過去に出会っていたのは誰なのか?
本作の今後のキーパーソンになると考えられるのは、やはり風太郎が過去に出会っていた少女の存在でしょう。
そしてそれが五姉妹の中の誰かであるのも確定的と言えるでしょうか。
第6巻で驚きの展開が用意されていて、その少女が風太郎の前に現れて別れを告げるんですね。
その時に挙動からして、その少女が別人であるという可能性は薄いと思います。
- 五姉妹の家庭教師をしているという事情を把握していた。
- 五姉妹というとんでも話に驚きを示さない。
- とっさに名乗った名前が五姉妹の母親の名前「零奈」だった。
こういう情報を鑑みると、五姉妹の中の誰かが「少女」を演じ、風太郎の前に現れたことは明白です。
そしてその中でも特に近いと考えられるのが、やはり五月でしょう。
まず、五姉妹の中で風太郎の持っている写真とその過去をきちんと把握していたのは、あの時点で五月だけだったと思います。
二乃は断片的な情報を知ってはいましたが、彼女が「少女」を演じていたとすると不可解な点があります。
6巻の最後に「少女」のコスプレをするために使用されたであろう小道具が箱に入れられている様子が映し出されるんですが、これを見ると二乃の線は薄れると思います。
そうなんです。設定でも明記されているように二乃はあの頃から髪の長さを変えていません。
つまり彼女が「少女」を演じるのだとすると、ウィッグは必要ないはずなんです。
そう考えると、演出的にも、母親の名前をとっさに出したところからも「少女」を演じていたのは五月なんだと思います。
ただあの時に、風太郎と出会っていたのが本当に五月なのかと聞かれると、それはまだ分かりません。五月が何らかの意図をもってとった行動なのかもしれませんし。
ただ、第6巻で「少女」を演じていたのは、五月であるという可能性が高いでしょう。
その場に居合わせていたことが明確なのは四葉なんですが、あの陸上部の部長とランニング中だったので、その間に変装して、風太郎と会話して、また着替えて・・・ってほとんど物理的に不可能な気がしますし。
何と変装していたのは、予想通り五月でした。
しかし、事情が少し違っていて、その場に偶然居合わせていた四葉にも実は深い意味がありました。
何と風太郎に過去、京都で最初に出会っていたのは四葉でして、彼と約束を立てたのも彼女だったんです。
そして彼女は過去のその記憶を払しょくして前に進むために、五月に「少女」のコスプレを依頼し、そして「別れ」を切り出させたんですね。
まさかまさかの展開でしたね。
誰が風太郎の未来の花嫁なのか?
本作の中で時折、未来の風太郎と五姉妹の中の誰かの結婚式風景が描かれています。
そのためやはり『五等分の花嫁』という作品の最大の謎は風太郎と結婚するのは誰のなのか?というところにあるんだと思います。
セオリー的に考えると、個人的には二乃か五月になるのではないかと踏んでいます。
まあ現状の物語の描かれ方において、一番正ヒロインの座に近いのは圧倒的に五月でしょうね。
写真の中の「少女」を装って風太郎に会いに来たのは、おそらく五月だと思われますし、面影が重なるように演出されているのも彼女です。
さらに個人的には大好きなシーンが1つあります。
©春場なぎ/講談社
これってある種の告白の様なセリフなんです。
とある生徒が『I love you』という英語を『我、君を愛す』という日本語に訳したところ『日本人はそんなことは言わない。月が綺麗ですね、とでも訳しておきなさい』と夏目漱石が告げたという逸話が元になっています。
風太郎は博学ですから、それくらいのことは知っていたと思いますし、だからこそそんなセリフを言う五月に戸惑ったのではないでしょうか。
こういう何気ないシーンも五月の正ヒロイン感を際立たせています。
一方で、個人的に捨てきれないのが二乃が正ヒロインであるという可能性です。
私が特に注目したのは、このシーンです。
©春場なぎ/講談社
これは第6巻の終盤のシーンです。
川に風太郎と姉妹が飛び込んだときに、風太郎は「少女」から貰ったお守りを落としています。そしてそれが流れていく方向とは逆の方向でバタバタしているのが二乃でした。
あのお守りはとりわけ風太郎が過去に出会った「少女」を指し示すモチーフであり、同時に五月を印象付けるモチーフです。
そんなお守りが二乃が溺れている方向とは逆の方向にあり、その二択の中で風太郎が彼女の下へと助けに向かうという選択は彼が後に二乃を選ぶという暗示なのではないかと勘ぐってしまいます。
また、二乃に関しては、ミサンガというモチーフも非常に意味深に機能しています。
第4巻で描かれた結婚式のシーンで風太郎は、妹が作ってくれ、そして林間学校の際に彼と二乃を結び付けたあのミサンガを今も大切に持っているんです。
©春場なぎ/講談社
これも二乃が正ヒロインであるという説を想起させる1つの要素ですね。
ただ、やはり可能性として捨てきれないのが人気投票でも圧倒的な人気があり、当初から風太郎への好意を明確にしていた三玖ですよね。
個人的にこの時点で候補として考えているのは、この3人です。
キャラクター的にも、展開的にも一花と四葉が正ヒロインになるビジョンはイマイチ見えないですね。
林間学校の結びの伝説
風太郎の花嫁が誰になるかを予想していく上で1つ重要なのが、やはりキャンプファイアの日の夜ですよね。
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このシーンは5人が全員で、風太郎の「左手」を握っています。
ここで誰がどの指を握っているのかに注目してみましょう。
- 一花:親指
- 二乃:人差し指
- 三玖:中指
- 四葉:薬指
- 五月:小指
まあ、五姉妹が順番に並んでいるだけなので、深い意味があるかどうかは定かではありません。
ただ「恋愛」「結婚」ということを考えた時に重要なのは、「薬指」と「小指」でしょう。
- 「薬指」:婚約指輪(結婚指輪)をはめる指
- 「小指」:運命の赤い糸を結ぶ指
それを踏まえて、その指を握っているのが誰なのかを見ていきますと、「小指」が五月、「薬指」が四葉となっています。
この描写が後に意味を持ってくるのであれば、四葉か五月が風太郎と結ばれることになるのが、綺麗な展開ではあると思います。
第68話でキスをしたのは誰なのか?
かなり急転直下の展開ですよね。
まず、大前提として5年後に教会でキスをした人物(花嫁)と第68話で「五月」の姿で風太郎にキスをした人物は同一人物であると考えられます。
その前提が成立するとなれば、ここでキスした人物が未来の花嫁で確定するということとなります。
では、ここから第68話でキスをしたのが誰だったのかについて考えてみましょうか。
個人的に一番可能性が低いのは、三玖だと思うんですよ。
そもそも「スクランブルエッグ」編の1つの山場は彼女が「五月」の姿の五姉妹の中から自分の見抜いて欲しいというものでした。
さらに言えば第67話で風太郎は「五月」の姿から三玖に関しては見分けられるようになっているんです。
そう考えると、三玖は「五月」の姿でキスを迫る理由がないですし、わざわざ風太郎に自分を見分けられるようになってもらった状況で「五月」の姿でそうするメリットもよく分かりません。
そして性格的に考えて、可能性が低いのがやはり二乃ということにはなるでしょうね。
彼女は五姉妹の中で唯一風太郎に明確に好意を示した人物でもあります。
確かに第68話の温泉のシーンで「なりふりかまっていられない。」とは発言しているんですが、彼女の性格や好意を既に示しているというシチュエーション的に「五月」の姿でキスを迫るのは理屈が通らないような気がするんです。
そして一花も個人的には可能性が低いんじゃないかなと思うんです。
第68話で三玖との温泉トークで自分も負けたくなくなったと堂々と宣戦布告をしているので、その直後にああいう言い方が悪いですが「抜け駆け」のような行動を取るとは考えにくいですし、考えたくはないです。
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加えて結婚式の控室で花嫁以外の姉妹が会話をしている一幕で「あはは 二人共緊張してそー」というセリフが描かれているんですが、これすごく一花っぽいです。(四葉の可能性は捨てきれませんが、これまでのセリフから鑑みても)
さて、そう考えると残されたのが四葉と五月ということになります。
ただこの2人って現状では一番風太郎への好意を明確にしていない人物でもあるんですよね。
特に四葉に関しては五姉妹の中で現状一番フラグが立っていない人物でもあります。
しかし、この全員が「五月」の恰好をしていて、風太郎には三玖以外区別がついていないという状況だからこそその隠れた本心を表出させたという状況は推測可能な範囲です。
ただ四葉は、第51話で1人だけ「風太郎とのキス」を妄想していなかった人物で、しかもその後に恋愛感情抜きで無意識的に彼の頬のクリームを舐めるという行動を取っています。
そう考えると、やっぱりこのタイミングで四葉が「本気のキス」を迫るのも個人的には何だか考えにくいんですよね・・・。
そして最後に当ブログ管理人が一番可能性が高いと考えているのが五月ということになります。
まず、第68話の温泉トークでの二乃との会話ですよね。
「あったとしても言えないから隠し事なんですよ。」
(『五等分の花嫁』第68話より引用)
また物語構造的に考えても個人的には、一番五月が可能性が高いと思ってしまいます。
というのもこの状況って、誰かはわからないけれどもシュレディンガーの猫状態の「五月」が風太郎にキスをしているというシーンです。
つまり誰が風太郎とキスをしているのかは不明ですが、見た目的には「五月」と風太郎のキスシーンなんですね。
この見た目的にはというのが1つのキーだと思っていて、ここでは五月とは風太郎が分かっていない状態で「五月」としてキスをしたけれども、5年後の結婚式では、嘘偽りのない五月として正面から風太郎とキスをするという展開はすごくきれいだと思うんです。
四葉に関しては明らかにキャラクターの掘り下げが甘いので、何か隠し玉があるような気がしますし、読めない部分も多いですが、現状での私の意見はこんな感じです。
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四葉の真実と改めて花嫁予測
春場なぎ先生、本当にストーリーの構成力が尋常じゃないですよね・・・。
まさか100話が近づこうというタイミングで、第1話を別視点から見せるなんて芸当をやって来るとは思いませんでした。
©春場なぎ/講談社
なぜ彼女が上杉さんという名前を知っていたのかがここで明確になりました。
そして極めつけはこの表情ですよね!
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この四葉の表情って、今思えばすごく意味深でしたよね。
単に初対面の人の顔が近づいて、ドキッとしたというテイストの表情ではありません。
この一連のシーンを彼女の視点で再構築することで、彼女がかつて風太郎に出会ってから起きた出来事を経て、彼との再会に何を感じていたのかが浮き彫りになりますね。
誰かの役に立ちたい、必要とされたいという思いを胸に抱き、風太郎と四葉は生きてきました。
しかし、久しぶりに再会を果たした2人には絶望的なほどの差がついていました。
きっとこの時に感じた四葉の劣等感や焦燥感は計り知れないものだと思いますし、だからこそ自分が約束の少女であることを名乗れずにいたのでしょう。
『五等分の花嫁』は現在、勉強というよりは5人の将来にフォーカスして物語が進行しています。
5人はそれぞれに目標を抱えて、努力しています。
- 一花:女優
- 二乃:料理関係で自分の店を持つこと
- 三玖:料理の専門学校・風太郎に望まれる自分になりたい
- 四葉:未定
- 五月:教員
しかし、この段階で、四葉の進路が決まっていないというのはすごく重要だと思います。
ここまで露骨に1人だけ差異をつけてあるのは、彼女が正ヒロインという証拠なのか、はたまたミスリードなのかまだ読めない部分ではあります。
花嫁予測についていろいろな憶測がありますが、その中の1つに「5人全員と結婚」というものがあるんですが、これについては第10巻で明確に否定されました。
©春場なぎ/講談社
個人的には先ほどのキスのくだりも鑑みて、やはり四葉VS五月の一騎打ちだとは思っています。
印象として正ヒロイン適性が高いのは圧倒的に五月だと思います。
しかし、ここにきて四葉の存在感が異常です。
彼女は第90話でブランコに揺られながら、一人風太郎への思いを独白しました。
先ほど彼女の進路が決まっていないという話をしましたが、彼女が「なりたい自分」を見つけて、それに向かって頑張れるあるいは理想を実現するというのは、まさしくかつての風太郎との約束の実現なんですよね。
だからこそ四葉にとっては風太郎への思いを明かすことと自分の目標を見つけることは同値になると思うんですよ。
なりたい自分になれた時、彼女は自身を持って彼に思いを告げられるわけですから。
先ほど、温泉旅館のあのタイミングで四葉がキスをするとは考えづらいとも書きましたが、過去が明かされたことによってその障害も全て無くなりました。
1人を選ぶ物語として完結させた勇気に賛辞を
『五等分の花嫁』はいわゆるハーレムもののフォーマットを内包した作品ではあります。
しかし、このタイトルを冠した作品として、きちんと1人のヒロインとの結婚まで描き切ったというのは、勇気ある姿勢だったように感じます。
この作品って言わば、5人の似ている姉妹が「自分」を見つける物語であり、そんな5人から風太郎が1人を選ぶ物語だったんですよね。
四葉は、確かに彼のことをずっと思い続けていたわけですが、他の姉妹に前の学校の退学の件も含めて大きな借りがあり、それが原因で彼と恋人同士になるという道をどこか諦めていたように思えます。
しかし、5つ子が風太郎に大きな影響を与え、また風太郎が5つ子のそれぞれに大きな影響を与えた結果、彼らは自分の道を選択することができました。
第14館の終盤のパートを見てみると、全員が自分の夢を叶え、自分なりに努力している様が伺えます。
喜びも悲しみも、幸せも何もかもが五等分だと考えていた姉妹は、進路の選択や風太郎との恋愛という五等分し得ないような事象に直面し、苦悩することとなります。
だからこそ、5人とそして風太郎は、それぞれの道へと進み、そしてヒロインには四葉が選ばれるわけですが、学生時代の最後のシーンでは、それぞれが離れた場所にいても繋がっているということを強く示唆しています。
©春場なぎ/講談社
きっとこれから先も、彼らにも大きな壁が立ちはだかるでしょうし、それを今度は1人で乗り越えていかなくてはありません。
しかし、彼らが5つ子であるという事実が変わることはありませんし、これからもずっと共に人生を歩んでいくということには変わりはないのです。
終盤に四葉がトレードマークであったリボンを手放すシーンがありました。
これまでは、あれがなければ、風太郎から認識すらしてもらえなかった彼女ですが、もう必要ありませんね。
彼女はアイデンティティを確立し、1人の人間として、たった1人の四葉として生きていく自信が持てたのです。
ただ単に、ヒロインを選ぶだけの従来的なハーレムもの、恋愛譚と言うより、自立した1人の人間になることがヒロインになるための条件として描かれた本作は、1歩先を行く新しいラブコメだったのではないでしょうか。
おわりに
いかがだったでしょうか?
今回はいよいよテレビアニメの放送がスタートする『五等分の花嫁』についてお話してきました。
ヒロインも全員可愛いですし、王道ラブコメ感はありつつも物語の筋もしっかりとしていて、非常に楽しめる内容になっています。
ぜひぜひアニメや原作の方を鑑賞してみてください。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。
関連サイト
・テレビアニメ『五等分の花嫁』公式サイト
・原作『五等分の花嫁』
・同じく冬アニメ『約束のネバーランド』の記事
参考:【ネタバレあり】『約束のネバーランド』考察、あらすじやキャラクターも解説!