【ネタバレあり】『BNA ビーエヌエー』感想・解説:TRIGGERが描く新たなる「共生」の模索

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですねアニメ『BNA ビーエヌエー』についてお話していこうと思います。

ナガ
TRIGGERの新作ということでこれを見ないわけにはいかないよね!

スタッフも『リトルウィッチアカデミア』吉成曜さんが監督を務め、『天元突破グレンラガン』『キルラキル』中島かずきさんがタッグを組んだということで、もう間違いない面々です。

物語の世界観としては、『ズートピア』に近いのかなとは思いますが、人間が存在しないというわけではなく、あくまでも人間の世界に「獣人」の特区が作られているという状態です。

『ズートピア』は正直、非の打ち所がないほどの傑作なので、準えるだけでは劣化版にしかなり得ません。

ですので、人間と獣人が存在する世界であるという部分で、どれくらい違いを出せるのかが重要になって来るかと思います。

TRIGGER×中島かずき脚本は、基本的に前半に敵と味方だった存在が、中盤に共闘関係になって、さらに強大な敵に立ち向かっていくという構成がテンプレです。

ナガ
『天元突破グレンラガン』『キルラキル』『プロメア』とこの流れは一貫してるよね!

ですので、その流れが今回も継承されるのかどうかには、注目が集まりますよね。

ちなみに本作は、テレビでの放送スタートを前に、Netflixで第6話までの先行配信がスタートしております。

本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想・解説記事となっております。

作品を未鑑賞の方はお気をつけください。

良かったら最後までお付き合いください。




『BNA ビーエヌエー』

あらすじ

獣化遺伝子・獣因子を持つ獣人たちは、近現代の自然の消失により住処を失い、徐々に人類の前に姿を現すようになった。

それと同時に、人間と獣人の共生が大きな社会問題となり、その摩擦を解消すべく政府は「アニマシティ」と呼ばれる特区を作った。

17歳の獣人・影森みちるは、ある日突然、人間から獣人に変質してしまい、住む場所を失ったことで、「アニマシティ」を目指す。

その日、街は設立10周年を祝う祭典でにぎわっており、みちるは、新しい暮らしに心を躍らせるが、祭典を妨害しようとした動物たちが爆弾テロを引き起こす。

オオカミ獣人の大神士郎は、その嗅覚を活かし、犯人を追うのだが、その犯人たちは人間に雇われた傭兵の獣人たちだった…。

「アニマシティ」は動物たちのユートピアだと信じられていたが、そこは人間や獣人たちの陰謀が渦巻く世界だった。

 

スタッフ・キャスト

スタッフ
  • 監督:吉成 曜
  • シリーズ構成:中島かずき
  • コンセプトアート:Genice Chan
  • キャラクターデザイン:芳垣祐介
  • 総作画監督:竹田直樹
  • 撮影監督:設楽 希
  • 編集:坪根健太郎
  • 音楽:mabanua
ナガ
このスタッフでテンションが上がらないアニメファンはいないでしょう!

監督を務めるのは、吉成曜さんで、これまでもガイナックスやTRIGGERの作品に携わり、『リトルウィッチアカデミア』で監督を務めた方です。

そして、シリーズ構成・脚本には、『天元突破グレンラガン』『キルラキル』中島かずきさんが起用されています。

もうガイナックスやTRIGGERの作品を追いかけてきた人間としては、この2人のタッグというだけでテンションが上がりますね。

キャラクターデザインには、『宇宙パトロールルル子』芳垣祐介さんが起用され、総作画監督には『ダーリン・イン・ザ・フランキス』『リトルウィッチアカデミア』竹田直樹さんが起用されています。

劇伴音楽は、mabanuaが担当しています。

キャスト
  • 影森みちる:諸星すみれ
  • 大神士郎:細谷佳正
  • 日渡なずな:長縄まりあ
  • アラン・シルヴァスタ:石川界人
  • バルバレイ・ロゼ:高島雅羅
  • マリー伊丹:村瀬迪与
ナガ
諸星すみれさんの主人公ボイス良いですね!

諸星すみれ『約束のネバーランド』の主人公エマを演じたり、最近では『PSYCHO-PASS』シリーズの劇場版でヒロイン役を演じるなどしていました。

天真爛漫な声が魅力で、今回の主人公の影森みちるには適役だと思います。すごくがむしゃら感が出るのが、これまた魅力的なんです魚。

そしてもう1人の主人公である大神士郎役には細谷佳正さんが起用されました。

『アルスラーン戦記』のダリューンもそうですが、こういったクールで孤高の存在感を放つキャラクターにはすごく似合う声優だと思います。

その他にも『はたらく細胞』の血小板ちゃんの役で話題になった長縄まりあさんも起用されています。

ナガ
ぜひぜひNetflixでご覧ください!!



『BNA ビーエヌエー』感想・解説(ネタバレあり)

TRIGGERのこれまでの作品からの正統進化

©2020 TRIGGER・中島かずき / 『BNA ビーエヌエー』制作委員会

今回の『BNA ビーエヌエー』は、『プロメア』『リトルウィッチアカデミア』を経たTRIGGERだからこそ作ろうと思い至ったのだと思います。

まず、『プロメア』は人間に似ている様で非なる異なる種族バーニッシュと人間の共生の可能性を模索した物語です。

そして、『リトルウィッチアカデミア』は魔法を信じる少女の成長と奇跡の物語を描きました。

そんな2つの物語を作り出したTRIGGERがこの『BNA ビーエヌエー』を作るというのは、すごく自然な流れに思えますね。

世界観としては、ディズニーの『ズートピア』そのものと言っても過言ではないですが、そこに純粋な少女の物語、人間&獣人の共生を模索する物語がかけ合わさったことで、らしさが演出されています。

物語のキーになるのは、影森みちるとおそらく大神士郎もですが、彼らのような人間から獣人へと変貌した存在でしょう。

本作の世界においては、人間と獣人が対立関係にありますよね。そして獣人は特区に集約され、外の世界では人間に差別されながら生きています。

最近のアニメでは『PSYCHO-PASS3』がこのテーマに突っ込んでいたように思いますが、私たちの社会が抱える人種問題や移民問題を反映していることは明白です。

もっと言うなれば、その根柢にあるのは、人間が歴史の中で常に抱えていた選民思想にも似た感情に思えますし、見知らぬ他者を虐げようとする不安や恐怖心でもあるでしょう。

今作、『BNA ビーエヌエー』が面白いなと思うのは、主人公を獣人でありながら、人間側に立たせていることなんですよ。

影森みちるは、元々は人間でしたが、何かの拍子に獣人になってしまい、それまで当たり前のように暮らせていた環境を失いました。更には、彼女の友人であるなずなが、自分の目の前で獣人化してしまい、捉えられる様子も目撃しています。

そんな彼女は、心のどこかで獣人という存在そのものを憎んでいるように感じられます。

それは意識的にというよりは、無意識のレイヤーに存在している感情でして、時折それが言葉の中に表出していますよね。

例えば、みちるは、自分が獣人になってしまったことを「病気」というネガティブな言葉で表現しています。

こういった言葉が出てくるということは、彼女はあくまでも自分のことを人間だと強く自覚しており、他の獣人たちとは違う存在なのだと自負しているわけです。

第4話で、イルカの獣人の少女と人間が主催するパーティーに参加する模様が描かれていましたよね。

この時、イルカの獣人は塩水の中に閉じ込められるという仕打ちを受けて、危うく命を落としそうになるわけですが、みちるはそれを救出します。

そもそも彼女が人間の世界に行くことに反対していましたし、トラブルが起きた際もみちるは静かに背中を丸めて去っていっきました。

この時のみちるの根底にあるのは、人間に対する嫌悪感というよりもむしろ、獣人であることに対する劣等感ではないかと個人的には思っています。

彼女は、常に人間の視点に立っていて、その視点から獣人という存在を捉えています。

だからこそ、イルカの獣人の少女が人間の世界へと足を踏み入れることに強く反対したのだと思いますし、人間の前で獣人の姿を見せてしまったことに罰の悪さを感じていたのではないでしょうか。

みちるは、誰よりも「獣人」である自分自身を嫌悪しているように感じられます。

ナガ
人間の姿に戻りたいと強く願っていたのも、そういった意識の表れではありますよね!

細かいシーンで言えば、母親がSNSに挙げていた誕生日ケーキの画像に「いいね」を押せなかったのも、自分自身への無意識の劣等感の表出に思えます。

しかし、少しずつ意識の変化が見られるのも事実で、その事件を経た第5話の冒頭では、人間の姿に変態することができるようになったにも関わらず、獣人の姿でバスケットボールをしていました。

また、野球という形で、獣人である自分の姿を堂々とたくさんの他人の前に晒すようにもなりました。

ナガ
確かに人間の立場に立った獣人であるみちるの意識が少しずつ変化しつつあるのは、印象的だね!

まだ、設定として明かされていませんが、劇中のセリフの表現からして、大神士郎も元々は人間だったのではないかと考えられます。

そして、彼はあくまでも獣人の立場から人間を見ていて、人間に対して強い嫌悪感を抱いていますよね。

彼は獣人たちの平穏な暮らしを守るためであれば、暴力も厭わないですし、もちろん人間に雇われた獣人たちにも好戦的な姿勢をとります。

しかし、「正義のための暴力」というものは、非常に危険で、結局のところ人間の争いの歴史というのは正義と正義のぶつかり合いでしかありません。

その点で、大神士郎の考え方や行動にも危険な側面があるわけですが、個人的に、2人の共通点はお互いに自分自身に対して嫌悪や劣等感を持っている点ではないかと考えています。

無意識的か、意識的かに差はありますが、みちるは自分自身が内包する「獣人」性に劣等感や嫌悪感を感じているのだと思いますし、逆に大神士郎はそれを自分自身の「人間」性に抱いているように思えます。

しかし、そういった自分自身に対するネガティブな感情は、ふとした拍子に、他人へと向けられることとなりますよね。自分に対しての不寛容性は、他人に対する不寛容性にもリンクしますよね。

だからこそ、今作『BNA ビーエヌエー』が描こうとしているのは、自分自身を愛し、好きになり、認めることが、他者に対する寛容性にもつながるというメッセージなのではないかと考えています。

まずは自分を認めること、自分を受け入れることが、相手を受け入れることにもつながるのではないか。

他人を否定し、遠ざけることで、自分自身を保とうとするのは、人間の弱さでもあります。人間が獣人を虐げるのは、そうすることでしか自分たちのアイデンティティや生活を守れないと思っている自身の欠如なのかもしれません。

そういう意味でも、みちるという主人公が、どんな形で自分自身が抱える無意識の差別意識に気づかされ、そして人間と獣人を繋ぐ存在へと成長していくのかが、『BNA ビーエヌエー』の大枠になっていくのではないでしょうか。

ナガ
5月6日に第7話~最終回が公開されましたね!

ということで、最終回までの内容も踏まえて続きを書いていきますね。

まず、大神士郎は人間に対して強い嫌悪感を持っていることは事実でしたが、そのルーツが人間であるということはありませんでした。

一方で、後半になるにつれてみちるの人間になりたいという欲求が、大神と衝突することは増えていったように思います。

彼女は、獣人のコミュニティに馴染みながらも、どこかで自分は人間であり、獣人ではないのだという意識を持っていたわけですね。

だからこそ、彼女は獣人が人間になれるというワクチンに最初は何の疑いもなく賛同していたように感じられますし、それに頑なに反発する大神の心情が理解できませんでした。

彼女の無意識化にある人間の方が獣人より優れているという考えが表出していたと言えるのかもしれません。

ただ、物語が終盤になるにつれて、彼女は自分が人間から獣人になったときに感じた恐怖や不安を思い出し、獣人が自分たちの意志とは裏腹に人間に変えられるということが、非常に恐ろしいことなのだと悟ります。

どちらが優れているなんて構図は存在しておらず、人間も獣人もお互いに尊重されるべきなのだという考えに辿り着くことができたのです。

本作のラストで、みちるは人間の姿に戻ることを選択せず、獣人のままでアニマシティに残るという決断を下しました。

それは、きっと人間から獣人に変えられてしまった自分自身を受け入れ、そんな自分にしかできないことがあると思えたからなのでしょう。

今作『BNA ビーエヌエー』みちるの成長譚としても見事な仕上がりだったと思います。



第5話に見る構成の巧さ

©2020 TRIGGER・中島かずき / 『BNA ビーエヌエー』制作委員会

『天元突破グレンラガン』『キルラキル』もそうなんですが、中島かずきさんが構成に携わった作品って、ギャグ回と言いますか、スピンオフ的な回のインサートの仕方が絶妙なんですよね。

今回の『BNA ビーエヌエー』では、第5話に野球回を持ってくるという形で、少し本筋からそれた内容を描きました。

こういった構成って、2クールアニメのような長編では、作品のリズムを作っていく上で、非常に重要な役割を果たしているように感じます。

まず、本筋に沿ってのみ物語を展開していると、どうしても作品の世界観を物語に関わる部分しか掘り下げられないという弊害が生じ、こじんまりとしてしまうんです。

『BNA ビーエヌエー』では、「アニマシティ」と呼ばれる特区を描いているわけですが、これは言わば「異世界」ですよね。

そういった私たちに馴染みのない世界を描く上では、その世界の文化や暮らし、娯楽といった部分にもフォーカスしていく必要があると思っています。

物語の本筋には直接関係ないかもしれませんが、視聴者がその世界を「リアルに」感じられるかどうかって、そういった余白のディテールの掘り下げで決まってくるのではないでしょうか。

『BNA ビーエヌエー』は第5話に野球回をもってきましたよね。

これは、単純にシリーズ構成において、トーンに緩急をつけるという意味合いもありますが、それ以上に「アニマシティ」の実在感を高める上で重要な役割を果たしていたと思います。

まず、第5話で描かれたのは、野球とそれに関わる賭博があの世界の娯楽として存在しているという事実ですね。

そして同時に、ベアーズの面々の存在を通じて、「アニマシティ」に存在する人々の暮らしや経済格差にも言及しています。

みちるの物語の本筋に大きな影響はない要素かもしれませんが、これらの情報が「アニマシティ」という舞台をより奥行きのあるものにしてくれたのは事実です。

また、ここで少しコミカルな話をインサートしておいて、第6話から一気に本筋のシリアス展開を持ってくるという流れも、中島かずきさんが構成に携わった作品では定番と言えるでしょうか。

当ブログ管理人が大好きな『交響詩篇エウレカセブン』も全50話の中で、こういった「溜め回」を何話かに1回配置していましたが、2クール以上の長編シリーズとなる場合は、やはり効いてきます。

そういう意味でも、第5話は『BNA ビーエヌエー』において非常に重要な回になったのではないでしょうか。

 

ポスト『プロメア』の作品として描いた真の「共生」

©2020 TRIGGER・中島かずき / 『BNA ビーエヌエー』制作委員会

さて、今回の『BNA ビーエヌエー』は、TRIGGERとしても中島かずきさんとしても、間違いなく「ポスト『プロメア』」の作品という位置づけになると思います。

『プロメア』も人間とバーニッシュという異なる種族の共生を主題にした作品でしたよね。

ただ、この作品の共生の在り方には、公開当時から疑問の声が挙がっていたのもありますが、少し問題点があるんですよ。

というのも、『プロメア』では、そのラストでバーニッシュが人間に戻ることで、世界に平穏がもたらされるという展開を描いているのです。

バーニッシュは元々は人間ではあるのですが、「発火の能力を持つ」という特性を持っているが故に、人間の社会では虐げられるマイノリティとなっています。

そんな種族と人間との共生を模索していくのが、この作品の大筋なのですが、そのラストに「発火の能力」を失うという展開を持ってくるのは、かなり悪手だと感じるんですね。

なぜなら、それではマイノリティたちが彼らのアイデンティティを喪失して、マジョリティに同化してしまえば、共生は実現するじゃないかという話になるからです。

ナガ
ただ、バーニッシュは世界に危機をもたらす存在ではあったからね…。

製作陣としては、『プロメア』はマイノリティを主題にした作品ではないと言ってはいるのですが、作品に登場するピンクトライアングルを初めとするモチーフや、インタビュー等で『X-MEN』の話が良く挙がることからも、無関係だと切り離すことは難しいでしょう。

だからこそ、主題ではなかったとしても、バーニッシュ側にマイノリティを連想させる設定が多く組み込まれており、その状況で彼らとの共生を実現するトリガーが、バーニッシュのアイデンティティ喪失だったのは、まずいと言わざるを得ません。

そんな『プロメア』を経て、今回の『BNA ビーエヌエー』が作られたわけですが、そこには前作の反省を踏まえた展開が見られます。

今作のメインヴィランであるアラン・シルヴァスタは、まさしく獣人のアイデンティティを奪うことで、人間に同化させ、共生を実現させようという野望を抱いています。

それは、かつて獣人がニルヴァジールシンドロームにより狂暴化し、お互いに攻撃し合ったという過去に裏打ちされた野望であり、そういった攻撃的な特性を有する種族は、その特性を奪われても仕方がないという思想に基づいていますね。

ただ、これってまさしく獣人たちの誇りやアイデンティティを奪い、人間という社会のマジョリティに同化させることで、共生を実現しようという、すごく危険な発想なんですよね。

例えば、同性愛者が「同性を好きになる」のは病気だから、薬を投与して異性を好きになるように矯正しなければという動きが私たちの社会に現れたら、それはとても恐ろしいことです。

仮に、それが実行されて、同性愛者のいない世界になったとして、果たしてそれが性的マイノリティとの共存を果たした社会と言えるのでしょうか。

ナガ
間違いなく言えないんだよ!

だからこそ、みちるは獣人が獣人のままで、人間と共生しうる社会を実現すべく行動を起こし、アラン・シルヴァスタの計画に立ち向かいました。

私たちは移民の問題も含めて、今後ますます「他人」との共生が求められる時代に生きることとなると思います。

そんな時に、マイノリティをマジョリティに同化させたり、マイノリティを隔離してしまうことで、共生を実現しようと考えるかもしれません。

しかし、そこには真の「共生」は存在し得ません。

誰もが自分のままで、自分の特性やアイデンティティを抱えたままで、共に暮らすことができる。それこそが「共生」です。

そんなメッセージを打ち出したという点でも、『BNA ビーエヌエー』『プロメア』が抱えていた問題を克服し、一歩先へと進んだTRIGGERの意欲作だったように感じました。

 

敵を倒すのではなく、噛み締めて受け入れる

もう1つこの『BNA ビーエヌエー』という作品が優れていると感じたのは、メインヴィランであるアラン・シルヴァスタの処遇です。

©2020 TRIGGER・中島かずき / 『BNA ビーエヌエー』制作委員会

最終回では、強大な力を持つ彼と大神士郎が対峙し、決着をつけることになります。

結果的に、大神士郎アランを追い詰め、彼はニルヴァジールシンドロームを引き起こす寸前に至りました。

彼は、自分は純血であり、他の獣人たちとは違う存在なのだというある種の優性思想を抱いていたわけですよ。

しかし、彼もまた他の獣人たちと同じようにニルヴァジールシンドロームに巻き込まれそうになり、特別な存在などではないことを思い知らされます。

だからこそ、大神はがアランにとどめを刺す寸前で思いとどまり、彼に自分の腕を噛ませて、助けたのです。

ナガ
ここも、『BNA ビーエヌエー』が1歩先んじた作品たらしめた大きな要因だったんじゃないかな?

まず、アランは確かに恐ろしい計画を実行しましたが、彼は自分のような純潔の存在を除く、数多の獣人が恐ろしい存在だからこそ、人間に変えるべきだという、彼なりの正義を貫いていたわけです。

人間の立場からだけで考えるなれば、獣人は恐ろしい存在だから、人間に同化させるべきだという主張は、自分たちの社会の安定を保つうえで、必ずしも間違ったものとは言えないでしょう。

それ故にアラン・シルヴァスタという存在を、単純な勧善懲悪の構図で打倒してしまうという展開は少し恐ろしいものがあります。

つまり、自分と異なる考えを持つ者は、力で圧倒し、その存在を消し去ってしまえば良いというメッセージを孕む行動になる可能性があり、それではアランと同じ穴の狢になってしまうのです。

だからこそ、危険な存在ではあるのですが、アランという存在を打倒するのではなく、噛み締めて受け入れるという展開がまさしく必要でした。

ナガ
彼もまた他の獣人たちと等しい存在だったわけですからね…。

共生をテーマにした作品だからこそ、最大の敵である彼にも手を差しのべるというラストに非常に大きな意義があったのではないでしょうか。

 

おわりに

いかがだったでしょうか。

今回はアニメ『BNA ビーエヌエー』についてお話してきました。

ナガ
まだ第6話までという序盤パートしか見れてないので、多くは語れませんけどね…。

正直に申し上げると、第4話まではイマイチという印象でしたが、第5話のコミカルさと世界の広がりによって一気に物語に引き込まれました。

先ほどは物語における分析をしましたが、もっと感覚的な部分で言うと、やはり第5話は視聴者がみちるというキャラクターに対して魅力を感じられるというストロングポイントがあったと思っています。

第4話までは、どこか飛び抜けた魅力に欠けていた彼女ですが、第5話を通じて、すごく愚直で熱い心を持ったキャラクターだと分かり、好きになりました。

現代社会が抱える人種や移民の問題を投影したフィクションとなっていますが、どんな形で人間と獣人の共生を描いていくのか、今後も目が離せません。

今回も読んでくださった方、ありがとうございました。

 

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