みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね『BURN THE WITCH』についてお話していきます。
いやはや久保帯人先生と言えば、もちろん『BLEACH』なのですが何とも懐かしいですね。
当ブログ管理人は、週刊少年ジャンプをかつて購読していた人間ですが、『BLEACH』に関してはマンガからではなく、アニメから入ったんですよ。
マンガは存在こそ知っていたんですが、当初はイマイチハマらず、アニメでとりわけ『尸魂界編(ルキア奪還編)』あたりを見て、こんなに面白いマンガがあったのかとハッとさせられ、一気にのめり込んでいきました。
しかし、破面編あたりから既に自分の中での熱が下がり始め、織姫を藍染が連れ去ったあたりまでは記憶があるのですが、「過去編」あたりからはほとんど記憶がございません。

そういった事情もあり、当ブログ管理人の中で『BLEACH』という作品は、面白さの瞬間最大風速を叩き出してくれた作品として今も印象に残っています。
正直、今までのジャンプ作品を振り返ってみても、『BLEACH』の『尸魂界編(ルキア奪還編)』を上回る勢いと面白さと、熱さと読めない展開を兼ね備えたパートって数えるほどしかないのではないでしょうか。
そして、だからこそ私は『BLEACH』をろくに読み切ってすらいないのに、久保帯人先生の新作ということで『BURN THE WITCH』に期待してしまう部分はあります。
ちなみに今作のタイトルには『BURN THE WITCH』と、『BLEACH』に含まれるスペルが盛り込まれており、既に作品としても何らかのリンクがあることが示唆されていますね。
(C)久保帯人/集英社
一度はリタイアしてしまった自分ですが、今度こそは久保帯人先生の作品を追いかけてやろうという意気込みで、今作の鑑賞に臨みたいと思います。
なお、この記事はコミックスの内容への感想・解説も含めつつ、後に映画版に関する記述を追記していくという形をとらせていただく予定です。
本記事は作品のネタバレになるような内容を含みます。
作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
目次
『BURN THE WITCH』
あらすじ
普通に暮らしている人間には見ることのできない異形の存在を総称し「ドラゴン」と呼んでいる世界。
ロンドンでは遥か昔から、全死因の72%にドラゴンが関わっていた。そして、その姿を見ることができるのは、ロンドンの裏側に広がる「リバース・ロンドン」の住人だけ。
「リバース・ロンドン」では、自然ドラゴン保護機関「ウイング・バインド」が君臨しており、彼らがドラゴンを管理していた。
ニニー・スパンコールと新橋のえるはそんな世界で、保護官としてドラゴンの管理に当たっているのだが、ある日、のえるが表の世界で関わっていたバルゴ・パークスに異変が起きる。
彼の幼馴染とそして飼っていた犬のオスシちゃんがドラゴンに身体を乗っ取られていたのだ。
2人の尽力で、その場は収拾がついたものの、バルゴ・パークスは一定時間以上ドラゴンに触れていたために「ドラゴンを引き寄せやすい体質=ドラゴン憑き」になっていることが発覚し、ニニーとのえるの保護下に入ることとなる。
リバース・ロンドンで暮らし始めたバルゴは次々にドラゴンを引き寄せてしまい、WBの最高機関「トップオブホーンズ」から目を付けられ、賞金首扱いにされてしまう。
時を同じくして、ニニーが表の世界で所属しているアイドルグループのメンバーであったメイシーがリバース・ロンドンにやって来て、ドラゴンを飼っているという情報が入るのだが…。
キャラクター&キャスト
- ニニー・スパンコール:田野アサミ
- 新橋のえる:山田唯菜
- バルゴ・パークス:土屋神葉
- チーフ:平田広明
- オスシちゃん:引坂理絵
- メイシー・バルジャー:早見沙織

以下キャラクターの紹介も兼ねつつキャストのご紹介をしていきます。
ニニー・スパンコール:田野アサミ
(C)久保帯人/集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会
本作の主人公。
表の世界では「セシルは2度死ぬ」というアイドルグループに所属しており、リバース・ロンドンではWB2等保護官として活躍している。
とにかく実績を上げて、戦闘部隊に抜擢されたいと願っている。魔法やおとぎ話に嫌悪感を示し、そんなものは自分に力がないから頼ったり、縋ったりするものなのだと語っている。
彼女を演じたのは『スマイルプリキュア!』の日野あかね役や、『ペルソナ3』の桐条美鶴役で知られる田野アサミさんです。
個人的には桐条美鶴役を演じていた時のクールで艶のある声が印象に残っているのですが、今作のニニーのような少し幼めの声はギャップがあって素敵です。
ただ予告編を見ていても時折、その艶のある大人っぽいボイスアクトが披露されていて、グッと引き込まれますよね。
新橋のえる:山田唯菜
(C)久保帯人/集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会
本作のもう1人の主人公。
日本にルーツを持っているキャラクターだが、ロンドン育ちのため、日本らしさはほとんど理解していない。
表の世界では学生であり、リバース・ロンドンではWB1等保護官として活躍している。
ニニーとは違って実績というよりは、お金を優先して仕事をしている節がある。
のえる役を演じたのは、こちらも幼児向けのアニメ『アイドルタイムプリパラ』にて幸多みちる役を演じていた山田唯菜さんです。
主人公を演じた田野アサミさんと言い、深夜アニメというよりは日曜日の朝や夕方の子供向けアニメの印象が強い声優がメインに据えられているのは意図的なのでしょうか。
クールなキャラクターで、ニニーとは対比的であり、だからこそ山田唯菜さんの演技も生きています。
バルゴ・パークス:土屋神葉
(C)久保帯人/集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会
のえるに好意を寄せる学生。
幼い頃に幼馴染と一緒に事故に遭い、その幼馴染がドラゴンにとって代わられていたことに気がつかずに10年近く過ごしたことにより「ドラゴン憑き」になってしまった。
WBの保護下に入るが、次々にドラゴンを引き寄せ、危険であると判断されたことにより、賞金首扱いにされてしまう。
バルゴを演じたのは、『ボールルームへようこそ』の主人公、富士田多々良を演じたことでも知られる土屋神葉さんです。
代永翼さんとはまた毛色の違う中性的な声が魅力的で、今作のバルゴ役は、彼にしかできない役どころだと思いますね。
作品においては『BLEACH』のコンを彷彿とさせる「道化」的な立ち回りだったりはしますが、それがまた大好きです。
チーフ:平田広明
(C)久保帯人/集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会
ニニーやのえるの上司に当たる。
仕事を斡旋する立場であり、自身も出世欲が高く、一時は昇進を果たすが、すぐにニニーたちの部署へと降格させられてしまう。
平田広明さんについては代表作と呼べるものが多すぎるので、紹介に困りますね。やはり脇役ながら作品を引き締めてくれる存在だと思います。
オスシちゃん:引坂理絵
覆面竜であり、犬の死体を被ってそのものに成りすましている。バルゴに可愛がられて、行動を共にしている。
今度は『HUGっと!プリキュア』シリーズで野乃はなを演じた引坂理絵さんが犬のオスシちゃん役で出演しています。
メイシー・バルジャー:早見沙織
(C)久保帯人/集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会
ニニーの所属しているアイドルグループ「セシルは2度死ぬ」のメンバー。
ニニーに好意を寄せている一方で、自分が特別な存在になることに強いあこがれを抱いており、思わずドラゴンを育て始め、更にはリバース・ロンドンへと足を踏み入れてしまう。
やはり早見沙織さんの存在感は抜群ですね。予告編を見ていても、一声聞いただけで引き込まれましたね。
スタッフ
- 監督:川野達朗
- 副監督:清水勇司
- 原作:久保帯人
- 脚本:涼村千夏
- キャラクターデザイン:山田奈月
- ドラゴンデザイン:大倉啓右
- 美術監督:稲葉邦彦
- 色彩設計:田中美穂
- CGI監督:さいとうつかさ
- 撮影監督:東郷香澄
- 音楽:井内啓二
- 主題歌:NiL
- アニメーション制作:teamヤマヒツヂ/スタジオコロリド

何と言っても本作の監督を務めるのが、超絶アクション作画で知られるあの『甲鉄城のカバネリ』シリーズで、アクションアニメーターを担当していた川野達朗さんなんですよ。
『甲鉄城のカバネリ』シリーズのただ作画が滑らかなだけでなく、筋肉の動きや重力の計算、アクションを捉える美しい構図など、徹底的にキャラクターの動きを魅せることにこだわったアニメーションは圧巻でした。
そんな川野達朗さんが監督を務める作品で、久保帯人先生が原作。もはや面白いわけがないという鉄壁の布陣でしょう。
今回はスタジオコロリドがアニメーション制作に携わっているということもあり、副監督には『泣きたい私は猫をかぶる』で演出を担当した清水勇司さんがクレジットされています。
脚本には、『波打際のむろみさん』などの作品でいくつかの話数の脚本を手掛けてきた涼村千夏さんが抜擢されましたね。
キャラクターデザインには『まけるな!! あくのぐんだん!』や『BORUTO -ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』などで知られる山田奈月さんが参加しています。
ちなみに今作にはドラゴンデザインというセクションもあるようで、そこには『パンドラとアクビ』シリーズの作画監督として知られる大倉啓右さんが名前を連ねていますね。
劇伴音楽を提供したのは『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』シリーズの井内啓二さんです。
そしてアニメーション制作は先ほども少しご紹介したスタジオコロリドと監督の川野達朗さんが率いるteamヤマヒツヂが携わっているようですね。
とこんな陣容で製作されたアニメ映画ということで、当然アクション作画には期待が高まるばかりです。

『BURN THE WITCH』感想・解説(ネタバレあり)
女性の物語としてアップデートされた『BLEACH』の正統進化形
(C)久保帯人/集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会
今作『BURN THE WITCH』を見ていただけると分かりますが、話しの運び方は実に『BLEACH』の『尸魂界編(ルキア奪還編)』あたりにそっくりなんですよね。
とりわけ朽木ルキアに当たるのが、今作では男性であるバルゴ・パークスであり、彼を守る黒崎一護のポジションに主人公のニニーとのえるが据えられていると考えると、分かりやすいかと思います。
まず、この基本的な構図にも本作が女性が主体の物語としてアップデートされている点が伺えますよね。
『尸魂界編』における朽木ルキアは元々は死神の力を持っていましたが、それを一護に渡したことで重罪人として指名手配され、追われる身となりました。その結果、彼女は一護たちに常に「守られる」存在として描かれていたわけです。
それが翻って『BURN THE WITCH』では、少なくとも今回描かれているパートでは、バルゴ・パークスが戦うことはなく、彼は常に「守られる」側として配置されています。
一方で戦うのは、メインの女性キャラクターであるニニーとのえるです。
このようにただ単に主人公を女性にしただけではなくて、「守る」「守られる」の構図を男女で反転させたことによって、本作は『BLEACH』との対比を際だたせています。
加えて、キャラクターの描写の仕方についても、バルゴは中性的で、可愛らしい側面が強調されている一方で、メインの2人はクールさや大胆さが強調され、従来の男女の少年漫画におけるジェンダーロールを綺麗に入れ替えたようでもありました。
また、これは後程詳しく言及していきますが、今回のコミックスそして映画では共にリバース・ロンドンに7体いると言われている童話竜の1体「シンデレラ」を討伐したところで物語が終わりましたよね。
これも本作を女性の物語として紐解いていく上では重要です。
近年の少女漫画なんかを見ていますと、こうした「おとぎ話への憧れからの脱却」のプロセスをラブストーリーに組み込むことが増えてきました。
とりわけ「シンデレラ」のような男性に求められることを待つかのような価値観は、旧来的であるとされ、日本の少女漫画では王子様に憧れる主人公が、自ら行動を起こして恋を成就させようとするというある種の脱構築を志向してきたわけですよ。
そのコンテクストを『BURN THE WITCH』は、上手く物語に取り込むことに成功しています。
ニニーの所属するアイドルグループのメンバーでもあるメイシー・バルジャーは、ドラゴンを育てることで、自分には価値がある、特別な存在であると思えるようになったと語っていました。
「あの子が自分に力をくれる」
「あの子が特別なところへ連れて行ってくれる」
しかし、ニニーは彼女のそんな言葉を明確に否定します。
なぜなら、「魔法が解けるのは、それが自分の力ではないから」です。

ニニーは、おとぎ話は「くそだ」と形容した上で、自分は魔法にかけられる側ではなく、かける側が良いんだと語っていました。
これって、今までの男性優位社会における女性の在り方や位置づけを鑑みても、面白い視点だと思うんです。
なぜなら、女性たちは、これまで自分たちが本来持っている力を発揮することを認められず、男性優位社会の中で、男性に寄与、従属するような役割を果たすことを求められていたからです。
女性かくあるべきと小さな枠に当てはめられ、男性ありきの存在になってしまい、自分の本来の力や才能を発揮できないままになってしまっていました。
王子様に迎えられるプリンセスというのは、そういった社会構造が生んだ産物と言えるのかもしれません。
『BURN THE WITCH』におけるニニーは、そうした閉塞感を明確に打破するアイコンでもあります。
彼女は、誰かの力で立っていると錯覚することよりも、何かに寄与し、その支えになることが美徳とされた価値観をぶち壊し、自分の力で不器用ながらも立ちあがり、魔法をかける側の人間に自分たちがなるのだと高らかに宣言して見せました。
ロンドンという街は50年代~60年代にかけて「スウィンギン・ロンドン」というムーブメントが起こり、これまでのオートクチュールに変わってミニスカートのような肌を露出するファッションが流行するなどカルチャーにおける女性解放の震源地にもなりました。
そんなロンドンを舞台として、『BLEACH』の正統進化形としての女性のバトル漫画を描こうという久保帯人先生の新たな挑戦を追いかけていきたいところですね。
表と裏の世界のリンクの妙と今後の展開について
(C)久保帯人/集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会
さて、『BURN THE WITCH』についてはコミックスにて既に続編が描かれることが確定しているわけですが、個人的に興味深いと思ったのは、やはり表と裏の世界がリンクしているという点ですね。
メイシー・バルジャーがリバース・ロンドンにやって来た際に、ドラゴンの力を活用して、表の世界で厭なゴシップを取り上げたマスコミのビルを攻撃しました。
その際にニニーが、裏の世界で破壊された建物は、表の世界でも破壊されるという点に言及していましたよね。

今作におけるドラゴンという存在は、表の世界では「存在しているけれども基本的には見えない」、裏の世界では「存在していて見える」という設定になっていました。
今回描かれたパートで7体いる「童話竜」のうちの1体が打倒されてしまいましたよね。
では、こうした世界を司る、リバース・ロンドンが存在するよりもずっと前から存在していた「童話竜」を殺してしまうことは、表の世界にどんな影響を与えるのでしょうか…。
WBの上層部は、当初バルゴに処刑命令を出していましたが、彼が「童話竜」を引き寄せる可能性があると知るや否や、それを撤回しました。
確かに冒頭の設定で、過去のロンドンにおける多くの人の死にドラゴンが関わっているという話が明かされていましたよね。
しかし、こうしたある種の前提条件こそ久保帯人先生の作品においては疑ってかかるべきだと思うんですよ。
『BLEACH』でも体制側に藍染隊長がいて、ルキアの死刑に異を唱えていたわけですからね…。
今回もWBの上層部に暗躍する人間がいて、その陰謀が表の世界と裏の世界のバランスを崩壊させていくという話の筋が何となく透けて見えます。
そして、そのキーになるのは間違いなく「童話竜」ということになるでしょう。
WBの方針としては、当然「童話竜」を討伐していこうとなるはずですが、実はこれこそが世界の均衡や秩序を乱す行為なんじゃないかと私は邪推しています。
リバース・ロンドンで「童話竜」を殺害してしまうと、表の世界にその歪が出てしまうことを知っている人間が、世界の覇権を握ろうとたくらんでいる。そんな妄想が膨らむのです。
シンデレラの死体をWBの上層部が秘密裏に回収して、保存しているというのも何だか意味深な記述でした。
確かに「おとぎ話」は克服されるべきものなのかもしれませんが、「童話竜」って言わば「物語」のシンボルとも言える立ち位置なわけで、それを物語の中で単純に否定してしまうというのはどうも腹落ちしない部分があるんですよね…。
あとは、『BLEACH』でいう虚化にあたる「ライツアウト=黒化」がどんな意味を持っているのかについても気になるところです。
「ライツアウト」という現象名は「光が失われる」という含意なのかなとは思いますが、ドラゴンたちがそうした状況に陥る背景や原因、そしてその影響にも要注目でしょう。
何はともあれ、『BLEACH』に似た展開や設定が作品のいたるところに散りばめられた作品ではありますが、非常に勢いがあり、そして続きが気になる内容です。
まだまだ序盤なので、正直謎だらけですが、ここで張られていた伏線が後々回収なんてことももちろんあるでしょうから、しっかりと読み込んでおきたいところですね。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は『BURN THE WITCH』についてお話してきました。

斬魄刀がドラゴンへと形を変えているわけですから、次のパートでは、ドラゴン能力者同士の闘いなんて展開も見られるのだと思うと非常にワクワクします。
また、『BURN THE WITCH』は女性を主人公に据えた作品としても、非常に見応えがあり、アップデートされている感がありました。
ジェンダーロールに縛られないキャラクター造詣や、従来的な男性キャラと女性キャラの構図の逆転など、随所に工夫が見られます。
個人的には、出番こそ少ないながら体制側のサイバン・スクワイアというキャラクターが、『BLEACH』の砕蜂を想起させる風貌で気に入っています。
今後このキャラクターがどんな活躍を見せてくれるのかにも期待している次第です。

今回も読んでくださった方、ありがとうございました。