みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね映画『ライアーライアー』についてお話していこうと思います。
とりわけ今回は写真集を購入してしまうほどに大好きな女優、森七菜さんがヒロインを演じているということで、公開前から楽しみにしておりました。
それはさておき、最近は、ギャルメイクが若手女優の通過儀礼みたいな趣があったりするのでしょうか?
『ビリギャル』の有村架純さんもそうでしたが、最近はコントの中で浜辺美波さんもギャルメイクを披露し、続いて今作で森七菜さんがギャル役に挑戦。
個人的に、ギャルがそこまで好きじゃないので、あんまりグッと来ないのですが、まあ若手の内しかできないですし、役の幅を広げるという意味では良いのかもしれません。
ちょっと待て…。
映画には必勝法がある。映画において勝ちって何だと思う?
いや、そうじゃない。映画における必勝法はもっと簡単なものだ。
それは、森七菜を出演させておくことだ。彼女が出演しているだけで、その映画は勝ちも同然。
そして、この『ライアーライアー』には森七菜がヒロインとして出演している。
だからもう勝っちゃってるんだよ。フクナガ、残念だったなぁ。お前の負けだ。
閑話休題。すみません、「ライアー」という響きを聞いたら、どうしてもやっておかないといけないかなと思いまして(笑)
ただ、この『ライアーライアー』という映画は、冗談抜きで森七菜さんの演技力と愛嬌で押し切ったなという印象は強い作品です。
劇場は、女性のお客さんが大半で、おそらくは主演の松村北斗さんのファンの方だと思うのですが、森七菜さんが本当に全編に渡って出色の演技を見せてくださっているので、彼女のファンももっと見てあげてください!
ということで、今回は解説・考察というよりは、感想・レビュー記事の色が強い記事になるとは思いますが、自分なりに感じたことを語らせてください。
本記事は作品のネタバレになるような内容を含みます。
作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
目次
『ライアーライアー』
あらすじ
地味で彼氏がいたことのない女子大生の湊は、両親の再婚によって同い年の義理の弟、透と小学生来同居している。
無愛想でイケメンで女癖の悪い透が学内で何又もかけてきたこともあり、姉の湊は中学、高校時代には他の女子からサンドバッグのような扱いを受けていた。
その結果、2人の仲はどんどんと険悪になっていき、お互いに冷たい態度を取り合っている。
ある日、大学の同期で親友の真樹の仕事の手伝いということで、高校の制服にギャルメイクで渋谷にて撮影をすることとなる。
真樹が少しその場を離れた時、彼女は偶然にも透に遭遇してしまう。
「何してんの?」
弟にギャルメイク姿を見られたのが恥ずかしく、とっさに別人であると嘘をついた湊。
しかし、それを信じた透は、ギャルメイク姿の湊に一目惚れし、猛烈なアプローチをかけてくるようになる。
当初は、適当に振って彼の女癖の悪さを直してやろうと意気込む彼女だったが、健気で一途な透を前にすると、真相を明かすことができない。
やがて、湊は、女子高生の「みな」として透と付き合うことになるのだが…。
スタッフ・キャスト
- 監督:耶雲哉治
- 原作:金田一蓮十郎
- 脚本:徳永友一
- 撮影:豊納正俊
- 照明:小林暁
- 録音:竹内久史
- 編集:武田晃
- 音楽:遠藤浩二
本作の監督を務めたのは、実写版『刀剣乱舞』や『MARS』、『百瀬、こっちを向いて』などで知られる耶雲哉治さん。
彼の初期作に当たる『百瀬、こっちを向いて』は正直映画としての出来はあんまり良いと思いませんでしたが、それは脚本に起因するもので、演出面は結構好きです。
後程お話しますが、役者の撮り方やカメラワーク、フレームに何を収めるかの取捨選択にはかなりこだわっている印象があって、それはこれまでの作品から変わらないものでした。
そして脚本には実写版『かぐや様は告らせたい』や『カイジ ファイナルゲーム』といった近年のダメ邦画大作の象徴とも言える作品を手掛けた徳永友一さんが起用されています。
『ライアーライアー』もその例に漏れず、かなり脚本は酷いです。
『うる星やつら』の劇場版を製作する際に、同作の監督の押井守さんは以下のようなコメントを残したそうです。
「『うる星やつら』は好きではない。これって、誰が見ても相思相愛な2人が互いを好きだと認めないゲームをして遊んでるだけの漫画じゃないか。」
『ライアーライアー』を見ている時に抱いたのは、まさしくこういった感情でして、結末が最初からほとんど想定できてしまうのに、そこに辿り着くまでの過程をダラダラ展開されると流石に退屈なんですよね。
そういう脚本の弱さを、本作は森七菜さんの演技で押し切ったなという印象が強いです。
その他、編集には実写版『刀剣乱舞』でも知られる武田晃さんが起用され、劇伴音楽を三池崇史監督作品でおなじみの遠藤浩二さんが担当しました。
- 高槻透:松村北斗
- 高槻湊:森七菜
- 烏丸真士:小関裕太
- 野口真樹:堀田真由
本作の主人公を務めたのはSixTONESのメンバーとしても知られる松村北斗さんです。
基本的に演技の経験が浅く、バリエーションがないことは明白なので、寡黙でクールなイケメンキャラという1点突破で最初から最後まで、役者のパーソナリティに近い演技を欲求した監督らの采配が見事ですね。
一方で、そんな主人公の演技とは対照的に次々新しい表情や感情、ファッション、仕草を披露して観客を惹きつけてくれるのが森七菜さんです。
この2人の演技のトーンを徹底的に分けることで、すごく映画としてバランスが良くなっていた気がします。
また脇を固める小関裕太さんと堀田真由さんも良い味出してましたね。
とりわけ小関裕太さんのあの「さわやか優男イケメン」ですが、闇抱えてそうで怖かったです。
終盤に、彼が一芝居を打って、ヒロインの湊に関係を迫るシーンがあるのですが、正直「これが本性だよね。」と妙に納得してしまいました。絶対DV男や…。
『ライアーライアー』感想(ネタバレあり)
まあツッコミどころは満載な映画だけど…
さて、この『ライアーライアー』にはとにかくたくさんのツッコミどころがありますが、まあこの手の映画においては、そういった要素も愛嬌みたいなところはありますので、ポップに昇華させていければと思います。
まず、「小学生の頃からずっと好きで、今も思い続けている相手がメイクしたくらいで別人と信じ込むって、お前その人のことほんまに好きなんか?」という点。
まあ、そうですね。『ライアーライアー』という作品のタブーに触れてしまいました。すみません。
私は予告編を見ていて、個人的には透側の「嘘」と言うのは、実は湊がギャル姿をしていることを把握したうえで、あえてその状態で交際していたとかそういうことだと思っていたんですよね。
ただ、本編を見てみると、透はガチで湊が「みな」だということに気づいていなかったと言うのが本音で、「嘘」というのはまた別の話ということになっていました。
個人的にずっと思い続けて来た人がメイクしたくらいで別人と間違えるような相手に告白されても、「ごめんなさい」してしまいそうです(笑)
次に気になったのが、湊と透が暮らしていた家の防音設備ですね。
というのも、映画の中で、湊と透が自宅の隣の部屋同士で電話で会話をする描写があるんですが、この時は着信音とかが湊の部屋から透の部屋には漏れ聞こえないような設定になっていたんですよ。
ただ、終盤のある場面で、湊の「嘘」に気づいた透が確認のために「みな」に渡した電話に着信を入れる一幕があるのですが、この時の音の演出が衝撃的でした。
なぜなら、ここまでは一切音漏れしなかったのに、この場面では湊の部屋から「みな」のスマホの着信音が大音量で漏れ聞こえてくるのです。
「いや、いつの間にか壁が〇オパレス並みの薄さになってるやん!」と思わずツッコミを入れてしまいました。
まあ、このあたりも演出でしょうから許します。
あとはキャスト紹介のところでも書きましたが、小関裕太さんが演じる烏丸真士というキャラクターがいくら何でも怖すぎましたね。
(C)2021「ライアー×ライアー」製作委員会 (C)金田一蓮十郎/講談社
DV男の特徴として代表的なものを6つ挙げてみました。
①嫉妬深く過剰な束縛をする
②被害妄想が激しい
③感情の起伏が激しい
④すぐ物に当たる
⑤付き合う前はすごく優しい
⑥プライドが高い
この中で、烏丸真士は①と③と⑤にめちゃくちゃ該当しているような気がしました。
まず、「嫉妬深い」ということについては彼も明言していますし、劇中での行動を見ていれば自明です。
あと③ですが、劇中で彼が義理の弟に好意を寄せている湊に対して「気持ち悪い」と告げるシーンがあるんですが、彼、この翌日には「ごめん、酷いこと言ったよね。」と謝罪するんですよ。
加えて、⑤ですが、終盤に彼がものすごく高圧的な態度で湊に身体の関係を迫ろうとする場面があります。
まあ、これは湊の本当の思いを聞き出すためだったという口実は付け加えられているのですが、果たして本当にそうだったのか…。
当ブログ管理人は、あれこそがむしろ彼の本性なんじゃないか?と勘繰ってしまいました。
湊が彼と結ばれるラストじゃなくて、本当に良かった。それは本当にそう思いました。
で、最後にエンドロールで流れる湊と透の結婚式の映像を見ていて思ったのですが、新郎と割と険悪な仲の新婦元カレが参列してるってなかなかにサイコですよね。
まあ「カーテンコール」の役割も兼ねていたでしょうから、演者全員登場と言うのが筋だったのだとは思いますが、僕が透の立場だったらちょっと複雑です。
あとは、ラストのキスシーン大丈夫か、あれ…。
妙に違和感のあるキスシーンでしたし、キスし終わったときの松村北斗さんの顔がファンの方には申し訳ないんですけど、能面みたいでした。
他にもいろいろと「おいおい!」と思わずツッコミたくなる描写はたくさんありましたが、そういうところも含めて楽しめる映画だと思います。
森七菜の八面六臂の活躍に支えられた映画
(C)2021「ライアー×ライアー」製作委員会 (C)金田一蓮十郎/講談社
さて、こちらもキャストの紹介欄のところで書きましたが、本作は森七菜さんの獅子奮迅の貢献あって成立している映画とも言えます。
何と言っても、その演技から漂う愛嬌。ト書きだけ見たら「ヤバいやつ」でしかない湊というキャラクターをあれだけ応援したくなるヒロインに演出できてしまう彼女の役者としての力に驚かされました。
そして、今回の映画では、森七菜さんが1人でなんと中学生役、高校生役、大学生役、そして社会人役までを演じ分けていて、これがもうとんでもないのです。
『ライアー×ライアー』ですが、とりあえず森七菜さんは今のところ中学生役、高校生役、大学生役、社会人役を1人で兼任できるポリバレントな役者であると確認できました。現場からは以上です。 pic.twitter.com/0iFWi4IDTC
— ナガ@映画垢🐇 (@club_typhoon) February 20, 2021
しかも、ただ着替えているだけではなくて、ちゃんとその年齢に応じた演技を使い分けていて、本当に素晴らしいです。
また、本作はもう森七菜さんのファッションショーと言っても過言ではない映画だと思います。
中盤のデートシーンに代表されますが、劇中で次々に彼女が衣装を着替えていき、違った表情を見せてくるのです。
映画を見に来たのに、途中から森七菜さんのイメージビデオでも見ているんじゃないか?と錯覚してきて、最終的には彼女に釘付けになってストーリーがどうでもよくなるレベルでした。
森七菜さんは、最近は事務所の移籍騒動でもいろいろと言われていましたが、本当に代わりのいない女優だなと思います。
岩井俊二監督や新海誠監督がほれ込んだのも頷ける才能で、今作では何と言うか「純粋で等身大のがむしゃらさ」みたいなものを上手く出せていました。
広瀬すずさんは若手女優の中ではその演技力が頭3つくらい抜けている印象を受けますが、彼女は役になりきるタイプの女優という印象です。
一方で、森七菜さんは役を自分の方に引き寄せて、彼女にしか出せない独特の色で彩っていくタイプの女優という印象が強いですね。
だからこそ、何と言うか変な背伸びや作為性を感じない、良い意味で「素」の演技を見せてくれるような気がして、すごくキャラクターを身近に感じさせてくれるんですよね。
だからこそ、キャラクターとしてはめちゃくちゃサイコパス気味なのに、「なんかめっちゃ頑張ってるから、応援してあげたい!」という気持ちにさせられるのではないでしょうか。
ぜひ、そうした森七菜さんの魅力を再確認できる映画として、『ライアーライアー』をおすすめさせていただきます。
独特のカメラワークが意味したものとは?
さて、今回の『ライアーライアー』ですが、『百瀬、こっちを向いて』でもかなり攻めた演出やショットが目立った耶雲哉治さんの作品と言うことで、同じくかなり他の少女漫画実写ではあまり見られないようなカメラワークが印象的でした。
まず、結構ヒロイン側の際どいショットを入れてくるんですよね。
(C)2021「ライアー×ライアー」製作委員会 (C)金田一蓮十郎/講談社
とりわけ今回の『ライアーライアー』は太腿フェチを殺しにかかっているような映像の連続で、スカートやショートパンツを穿いた森七菜さん演じる湊を低めのアングルから捉えたフェチ描写が目立ちました。
映画のファーストカットでもある、渋谷で湊と透がぶつかるシーンでも、いきなり森七菜さんの足から太腿にかけての部分を大胆にカメラに捉えるという映像を採用していました。
これ、男性の観客は、僕も含めて、思わずドキッとしてしまったと思いますが、これは劇中の透と観客をシンクロさせるための1つの演出アプローチですよね。
つまり、透がスクリーンの向こうで湊ないし「みな」に対していだいているドキドキ感のようなものを、こうした少し際どいアングルを使うことで、観客にも共感できるように設定しています。
当ブログ管理人は、もともと森七菜さんの写真集を買うくらいのファンなので少し例外ですが、彼女のことをそれほど知らない男性の観客も、こういうショットをじわじわとサブリミナル的に刷り込まれることで、だんだん彼女にドキドキしてくる感覚を味わえるのではないかと思いました。
そして、今回の『ライアーライアー』で最も特徴的だったのは、透が「みな」と会ったり、デートをしたり、部屋で話したりしている時に、やたらとピンのクローズアップショットで観客に語りかけるような映像が多用されていた点です。
(C)2021「ライアー×ライアー」製作委員会 (C)金田一蓮十郎/講談社
こうしたショットの多用の大きな目的の1つとして挙げられるのは、やはりキャストのファンへのファンサービスでしょうね。
松村北斗さんが、スクリーンの向こうから自分に向かって甘い言葉をかけてくれているという疑似体験ができる不思議な映画になっています。
しかし、こうしたカメラワークは、物語が進むにつれて少し違った意味合いを持ってきます。
というのも、一連の王子様アングルとでも呼びたい独特な透のショットは、その視線の先に「みな」ではなく誰か他の人がいることを何となく仄めかす役割を果たしていたからです。
普通こういった恋愛映画で、2人の関係性を表現しようと思ったら、もっと肩越しのショットとか、見つめ合うようなショットを使って2人を同じフレームに収めるのがセオリーです。
映像のフレームの中に「視線」と「視線が向けられている対象」が同時に存在していることが、登場人物同士の信頼関係や愛情の深さを表現するうえでは欠かせません。
しかし、『ライアーライアー』という作品は、意図的にそれをやっていないんです。
その理由は、彼の視線の先にあるのは、他の女性だからというわけですね。
このファンサービス的な機能と、物語上での機能を兼ね備えた演出として使われた独特のカメラワークは、個人的にかなりグッときましたし、エッジの効いたアプローチだと思いました。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は映画『ライアーライアー』についてお話してきました。
特に森七菜さんのファンの方、もっと見に行ってあげてください…本当に素晴らしいので。
2021年最初の少女漫画実写になりましたが、なかなか良い出だしになりました。
今回も読んでくださった方、ありがとうございました。