みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね3月26日より公開となりました映画『モンスターハンター』についてお話していきます。
『モンスターハンター4』で多くのハンターたちにトラウマを植えつけたネルスキュラが映画でも多くの観客を恐怖のどん底に陥れてくれました。
ただ、映画としてはこれが意外と面白かったんですよ。
鑑賞前は、紛いなりにもモンハンのゲームをやって来た人間として映画を見に行かなきゃという使命感と責任感しかなかったのですが、見終わってから考えると、なかなかよくできているのです。
北米の大手批評家レビューサイトRotten Tomatoesでの評価を見ても、批評家からの支持率が47%、オーディエンスからの支持が70%と芳しくない数字。
コロナ禍も相まって、興行的にも振るわず、映画の内容も話題になっておらず、ほとんど期待できる要素が鑑賞前は見当たらない状態でした。
そんな状態で見に行ったのですが、この映画『モンスターハンター』、正直ちゃんと面白いです。いや、良い意味で期待を裏切ってくれましたよ。
ちなみに今作でメガホンをとったのは、自身もゲーム好きで『モンスターハンター』シリーズの大ファンだと言うポール・W・S・アンダーソン監督。
そして、主人公のアルテミスを演じたのが、ミラ・ジョヴォヴィッチ。
この2人と言えば、もちろん映画『バイオハザード』シリーズが頭に浮かびます。
同シリーズがきっかけで2人は結婚するに至ったわけですが、そうした背景もあってか映画『バイオハザード』シリーズは、作品を追うごとに「いかに監督が自分の妻を魅力的に撮るか」を追求した映画となっていきました。
シリーズ最終作の『バイオハザード ザ・ファイナル』に至っては、妻だけでは飽き足らず、娘のエヴァー・アンダーソンまで出演し、もはやゾンビ映画ではなく、「家族映画」になっちゃってました。
そういう意味でも、ポール・W・S・アンダーソン監督の映画はいかに自分の家族の良さを観客に伝えるか?を追求したプロモーションビデオみたいなとこがあります。
今回の『モンスターハンター』もとにかくミラ・ジョヴォヴィッチのアクションを見せたいという強い思いがひしひしと伝わって来る物語と演出になっていましたし、他の奴には興味ねえ!と言わんばかりの勢いで、それ以外のキャラクターは雑に処理されてました(笑)
しかも、ゲーム愛の詰まった作劇・演出や、アクションシーンには定評のある監督なので、その点でも今回の映画『モンスターハンター』はなかなか上手いことやってくれました。
ということで、ここからは僕が個人的に感じた本作の魅力を10の観点から、サクサクっとみなさんにお伝えできたらと思います。
本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想・解説記事です。
作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
目次
映画『モンスターハンター』感想・解説(ネタバレあり)
①始まって、5分で即異世界
(C)Constantin Film Verleih GmbH
この手の現実世界のキャラクターが異世界に飛ばされちゃう系の物語は、もったいぶって、なかなか異世界のパートが始まらないことが結構多いんですよね。
ですので、映画『モンスターハンター』も、まあ開始から短くても15分くらいは現実パートを描くんだろうな…なんて思いながら見に行ったわけです。
ポール・W・S・アンダーソン監督のサービス精神は僕の想像を超えてました。
というのも、今作、開始1秒目からいきなり異世界の描写がスタートし、1分が経過する頃にはスクリーンにディアブロスの姿が映し出されるのです。
観客の「さっさとモンスター見せろよ!」という声に先回りして、「とりあえずみんなが見たいのこれでしょ!わかってるよ!」と巨大モンスターを見せてくれるこのサービス精神。
ただ、冒頭の砂漠を走る船がディアブロスに襲われるシーンがあって、そこから主人公のアルテミスたちの現実パートに1度戻ってくるんです。
ここで、当然私たち観客はまた気になり始めますよね。
でも、ポール・W・S・アンダーソン監督の映画にそんな心配は無用です。
この現実パートはめちゃくちゃ適当で、監督はサクッと打ち切って、映画開始から5分もしないうちに奥さんを異世界にぶち込んでくれます。
とにかく奥さんを1秒でも早く異世界にぶち込んで、そのアクションを観客に見て欲しいという執念が伝わる「始まって、5分で即異世界」な構成には笑わせていただきました。
こういうサービス精神も含めて、個人的には憎めない監督です。
②IMAX3Dで夢が叶う!
さて、本編開始早々に異世界へとぶち込まれたアルテミスたちクルーは砂漠地帯を走行中にディアブロスに襲われます。
僕はちょっと奮発して、IMAX3Dで本作を鑑賞してきたのですが、これ本当に最高でした。
モンハンをプレイしながら、いつかモンスターたちの目の前に立ってみたいと思っていたあの頃の夢が叶っちゃいました。
もう、モンスターが画面から飛び出してきて、その顔が自分の顔の目の前まで迫って来るんですよね。しかもモンスターの巨大なスケール感もIMAX3Dの効果で強調されてすごく迫力がありました。
(C)Constantin Film Verleih GmbH
ディアブロスも砂漠から登場したシーンでのあまり迫力で、映画館が震えたかと思いましたし、あっけに取られていると、巨大な角がもう目と鼻の先まで迫っていたので、あの時ばかりはちゃんと「耐震」スキルをつけてこなかった自分を悔やみました(笑)
そして、後半に登場するリオレウスももちろん大迫力でした。
口を開けたシーンとか胃の仲間で見えるんじゃねえか?ってくらいの距離まで迫ってきます。
『モンスターハンター』のゲームをプレイしていて、一度は自分があのモンスターたちに対峙してみたいという夢を持っている方は、ぜひ本作を「IMAX3D」で鑑賞することをおすすめします。
まじで、夢叶います。
③ネルスキュラによる『バイオハザード』開幕
ディアブロスから逃げ切ったクルーたちを待ち受けていたのがゲームだと『モンスターハンター4』より登場したネルスキュラ。
ゲームをプレイした人間でもそのあまりの「性癖」の気持ち悪さにドン引きしていたモンスターですが、今回監督の強い要望で登場に至ったようです。
ゲームの方だと、捕食したモンスターの表皮を背中に纏うという性質を持っていて、この対象にされていたのが、ゲリョスという鳥みたいなモンスターでした。
ゲリョスの耐久性の高い表皮を身に纏い身を守るために使う一方で、食い散らかした本体の残骸を巣にぶら下げているというゲーム内での描写は多くのハンターたちに生理的な嫌悪感を植えつけてきました。
そんな「奴」が、今回の映画版では登場します。
しかも1匹ではなく大量に。
(C)Constantin Film Verleih GmbH
ネルスキュラが大量に現れるという画だけでトラウマものですし、嫌悪感MAXで呼吸が荒くなりました。
というか、ネルスキュラのパートに関して言えば、完全にゾンビホラー映画でしたね。
演出もそうですし、ネルスキュラが人間を食って巣にぶら下げて、繁殖のための依り代にしているというゲキキモ設定もそうです。
とにかく原作で見え隠れしていたネルスキュラの気持ち悪さをもっと煮詰めて、ドロッドロにしたさらに気持ち悪い何かを見せつけられているような感覚がありました。
『モンスターハンター』のゲームが好きな人は見に行って良いと思いますが、このネルスキュラのパートだけは本当にトラウマものなので、こういうの苦手な方は気をつけてください。
ゲームで見るよりも、数段気持ち悪いです。
④手持ちのアイテムでやりくり、これぞサバイバル
そして、ネルスキュラの巣からミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアルテミスが脱出を図るのですが、この時の作劇がすごく好きでした。
まず、巣の奥で仲間が落とした救急キットを発見します。
そこに入っていたもので、脱出に役立ちそうなのは
- 発煙筒2本
- 酸素スプレー
- 銃弾数発
でした。
ただ、銃弾はあると言っても肝心の銃本体はないので、現状使い道はありません。
こんなんでどうやって脱出するんだよ…と観客を絶望のどん底に陥れてくれます。
しかし、この一見すると、役に立たなそうな3つのアイテムで、華麗に脱出してしまうのが、何とも「サバイバル」という感じで胸が熱くなりました。
「発煙筒×酸素スプレー」で火炎放射器みたいな使い方をしたり、そこに銃弾を組み合わせて銃無しで疑似的に発砲させたりと、とにかく手持ちのアイテムをやりくりして、ネルスキュラの巣からの脱出を目指す描写が最高でしたね。
映画全編通じてですが、チート要素のようなものが少なく、基本的に限られた手持ちの武器と装備、アイテムで何とか状況を打開していくという展開が多かったのが、個人的には好きでした。
手持ちの罠や回復薬の数、持ってきた素材の数、支給されたアイテム…と持ち物を計算しながら、モンスターと戦っていた記憶が蘇ります。
⑤モンハンらしさを無理なく取り入れた設定
今回の映画『モンスターハンター』は、原作の設定をリアルベースで違和感のない程度に適度に盛り込んである印象です。
ゲームだとモンスターを倒して、剥ぎ取りを行って、素材を集めて、装備や武器を作るというルーティンがあります。
装備や武器を作るところまでは今回描きませんでしたが、例えばネルスキュラから剥ぎ取った毒針をディアブロス討伐に使ったり、ディアブロスの表皮をそりのように活用したりと、ゲームの「剥ぎ取り」要素をリアルベースで無理のない範囲で見せてくれたのも好感が持てます。
ただ、少し残念だったのは、モンスターの「生態」や「縄張り」的な要素をあまり活かせていなかった点でしょうか。
僕なんかは、ディアブロスとネルスキュラを縄張り争いさせて疲弊させて、その隙に突破するなんて展開を期待してしまっていたので、少し物足りなさはありました。
せっかく『モンスターハンター ワールド』をベースに作ったのであれば、モンスターの生態がもっと分かるような世界観にしたり、その縄張り争いが展開に影響を及ぼしたりといった工夫がほしかった気もします。
ただ、監督の主眼はあくまでも、ミラ・ジョヴォヴィッチを美しく、クールに見せることにあるので、モンスターも言わばその舞台装置ですね。
(C)Constantin Film Verleih GmbH
あとは…何だかんだモンスターに一番効くのは「爆発」ってのもモンハンっぽかったです。大タル爆弾とか結構使ってました。
あとは、砂漠のオアシス的なところでガレオスが登場するみたいな小ネタもあったり、モンハンお馴染みの肉焼きシーンがあったりと、ファンは思わずニヤリとしてしまう描写が多く盛り込まれています。
もちろんゲームが好きな人からすると、賛否あると思いますが、個人的にはかなりバランスよく盛り込んでくれたかなと思っています。
⑥モンハンをプレイしていた人には共感できる構成
そして、映画『モンスターハンター』ですが、個人的には構成の部分をなかなかうまく作ってあるなという印象を受けました。
主人公が最初に苦戦するのが、ネルスキュラだったわけですが、『モンスターハンター4』の発売前に製作者がこれについて「序盤から中盤への登竜門的なモンスター」と説明していました。
モンハンがあんまり上手くない自分としては、序盤~中盤のちょっと強めのモンスターって、装備も整ってないし、操作もまだまだ慣れていないということで、後半のモンスターよりもむしろ苦戦して、突破に時間がかかる傾向があります。
そういうモンハンが苦手な人の心理を、序盤のネルスキュラの地獄が延々と続くパートで表現してくれてたんじゃないかなとも思うのです。
その後、登場するリオレウスも、「こいつ倒したら上位クエストいけるよ!」なハンターたちの登竜門的な位置づけでしたし、初期作ではガチで強いので、今回の「門番」という設定はなかなかゲームにもマッチしていたような気もします。
こうした物語におけるモンスターの配置もなかなか良かったですね。
また、物語の構成で言うと、最初はアルテミスの「ソロ」が目立ちましたが、そこに仲間が増えてきて、2人でモンスターに立ち向かったり、大勢の仲間たちと立ち向かったりと、徐々にメンバーが増えていく感じも、モンハンの醍醐味って感じで良かったと思います。
これも「村クエ」をとりあえず「ソロ」でこなして、ストーリーを進めつつ、集会場の難しいクエストを友人と進めていたあの頃の記憶が蘇って来る構成で個人的には最高でした。
⑦リオレウス戦の立ち回りもゲームさながら!
(C)Constantin Film Verleih GmbH
そして、クライマックスで対峙するのが、モンハンのアイコン的存在とも言えるリオレウスですね。
アルテミスが異世界で出会った仲間たちとリオレウスに立ち向かうのですが、その立ち回りが結構ゲームに忠実だったりして面白いんですよ。
- 頭部へのダメージが通りやすい
- 炎ブレスの前後に隙ができる
- 翼の部位破壊が有効
基本攻撃は頭部への集中砲火でしたし、炎ブレスの前後の隙を突くというアプローチも盛り込まれ、ちゃっかりアルテミスが翼の部位破壊までやってました。
こうしたゲームにおけるプレイヤー側の「立ち回り」を、劇中のアルテミスたちの反映させてくれていたのは、ゲームをプレイしていた人間からすると推しポイントではありますね。
⑧キャラクターの掘り下げが甘い?でもそれでいい。
今回の映画『モンスターハンター』をご覧になった方の多くがこう思うかもしれません。
まあ確かにそうなんですよ。主人公の指輪の設定やら、トニー・ジャー演じるハンターの持っている御守りみたいなやつの設定もろくに明かされず、それ以外のキャラクターに至ってはバックグラウンドが全く描かれません。
まあ、でもこの映画は「ミラ・ジョヴォヴィッチを見るための映画」なので、彼女が演じたアルテミス以外のキャラクターの掘り下げが甘くても、個人的には気になりませんでした。
映画『モンスターハンター』は、ロケーション、モンスター、主人公以外のキャラクターの全てがミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアルテミスを美しく、そしてクールに見せるための舞台装置です。
あとは、我らが山崎紘菜さんが演じたハンドラーが割と最後の方まで生き残っていて、もしかしてこれは生存ルートか?と思わせておきながら、リオレウスが暴れた時に、石碑と一緒に吹っ飛ばされてあっさり退場したのは、日本人としては何ともまあ複雑な気持ちでした(笑)
(C)Constantin Film Verleih GmbH
⑨ラストはもしかして…
そして、映画のラストに登場したのが、古龍…じゃないや古龍っぽいけど似て非なる種別に分類されているゴア・マガラ。
肝心の戦闘は描かれず、アルテミスたちがゴア・マガラに斬りかかるところで「俺たちの戦いはこれからだ!END」を迎えてしまいます。
でも、なんでゴア・マガラを最後に登場させたんだろう。なんか意味あったのかな?と思って、このモンスターの設定を改めて調べてみました。
(C)Constantin Film Verleih GmbH
すると、面白い情報が書いてありました。
ゴア・マガラの鱗粉を吸ったモンスターが凶暴化したり、抵抗力が低下したりすることが判明したため、ギルドはゴア・マガラの鱗粉を「狂竜ウイルス」、鱗粉を吸ったモンスターやハンターに現れる症状を「狂竜症」と定義した。
つまり、アンブレラ社がゴア・マガラの鱗粉を研究して細菌兵器を作り、それによってゾンビパニックが起きるのが『バイオハザード』の世界線ってこと…?
要は映画『モンスターハンター』は『バイオハザード』のエピソード0的な位置づけなのか?とか勝手に妄想してしまいました。
エンドロールの途中にインサートされた映像に、塔の上からアルテミスたちを見ている怪しげな人影がありましたが、多分あれが「アンブレラ社の人」ですね。
僕が言うのだから間違いないです(嘘です)。
⑩ポストクレジットのアイルーは…。
本作はエンドクレジットの後に少しだけ映像があります。
映画の中盤では料理を作っていたアイルーが最後のシーンでは、武器を持って戦場に立っていました。
モンハン2ndG世代の僕には、あの演出の意図が一目で分かりました。
「あいつ悪魔アイルーやな。」
この映画をちゃんと終わってないやん!なんて批判する人は分かってないんです。
悪魔アイルーが行けば、多分、4,5発でサクッとゴア・マガラ倒してきてくれるんで、実質「ゴア・マガラ、お前はもう死んでいる。」状態なんですよ。
つまり、戦いはもう「彼」が来た時点で終わってるんです。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は映画『モンスターハンター』についてお話してきました。
最近は引退してしまって、少しモンハンと距離を置いている自分ですが、プレイしていた頃のトラウマや高揚感が蘇って来るような映画になっていたと思います。
ただし、あくまでも今作は、ポール・W・S・アンダーソン監督の映画であり、ミラ・ジョヴォヴィッチをいかに美しく撮るかが、どんなことよりも先んじた作品であるという点は頭に入れておくべきです。
また、40代半ばにしてあの身のこなしには驚かされますし、やっぱり彼女は最高のアクション女優の1人ですね。
この映画を見た人がモンハンやりたくなるか?と聞かれたら、ネルスキュラが気持ち悪いので、疑問符がつきますが、ゲームのファンはある程度楽しめる内容だったと思います。
ぜひ、劇場で、そしてチャンスがあれば、IMAX3Dでの鑑賞をおすすめします。
今回も読んでくださった方、ありがとうございました。