【ネタバレ】『ロキ』解説・考察:「観測者」の視点から読み直す全く新しいMCUの姿

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですねディズニー+で配信がスタートした『ロキ』についてお話していこうと思います。

ナガ
当ブログ管理人くらいのMCUファンには、そろそろこのテレビシリーズしんどいよ…(笑)

元々隔週で公開されるようなドラマシリーズを追いかけるのが苦手な人間だったので、MCUが『ワンダヴィジョン』『ファルコン&ウィンターソルジャー』、そして今回の『ロキ』とドラマシリーズ推しになっていくのが、なかなかキツイのです…。

とは言っても、『ブラックウィドウ』の公開も控えており、MCUの映画ラインナップも『エターナルズ』といった期待の作品も控えており、ついていくしかないという思いで、『ロキ』も見始めました。

ナガ
ただ、これが思いのほか面白いんだよ…。

正直、ロキの単独作が面白くなるというイメージが湧かなかったんですが、第1話の時点で既にかなり面白い作りになっており、引き込まれました。

今回の『ロキ』の監督を務めたのがケイト・ヘロン。そして脚本を担当したのが、マイケル・ウォルドロンです。

特に注目したいのは校者でして、彼は2022年公開の『ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス』にも脚本でクレジットされています。

つまり、今作がMCU世界におけるマルチバースの「始まり」的な位置づけの作品になり、『ドクターストレンジ』の新作へと還元されていくことは、明らかなんですね。

その点でも、今後のシリーズに多大な影響を与える作品になるということで、必見だと思います。

今回はそんなドラマシリーズ『ロキ』について自分なりに感じたことや考えたことを毎週更新していきます。

本記事は作品のネタバレになるような内容を含む解説・考察記事です。

作品を未鑑賞の方はお気をつけください。

良かったら最後までお付き合いください。




『ロキ』解説・考察(ネタバレあり)

テッセラクトの行方と今作の予習

まず、今作『ロキ』を楽しむために予習として最低限鑑賞しておきたい作品は以下の通りでしょう。

  • 『マイティ・ソー』
  • 『アベンジャーズ』
  • 『マイティ・ソー ダークワールド』
  • 『マイティ・ソー バトルロイヤル』
  • 『アベンジャーズ インフィニティウォー』
  • 『アベンジャーズ エンドゲーム』

緑色で着色した作品は、「そもそもロキってどんなキャラクターなの?」を知りたい方に見ておいて欲しい作品になっています。

一方で青色で着色した作品は、「今作のような状況にロキが陥った直接の経緯を知りたい!」という方に見ておいて欲しい作品です。

MCUをこれまでも追いかけて来た人には、必要のない情報かもしれませんが、もし映画を網羅的に追いかけていないという場合は、今回上記の6作品を中心に予習をすると良いと思います。

その上で、もう1つ知っておきたいのが、ロキの持っているテッセラクト、つまり4次元キューブの時系列ですね。

そもそもこのアイテムが初登場したのは、『キャプテンアメリカ:ファーストアベンジャー』になります。

今作の冒頭のシーン、時系列的には1942年(第2次世界大戦中)に、ナチスの将校であるヨハン・シュミットの部隊がノルウェーのトンスベルグを侵攻した際に、四次元キューブ (テッセラクト)を獲得します。

そして、本作のラストでトニーの父であるハワード・スタークによってテッセラクトは回収されました。

そうして回収された四次元キューブ (テッセラクト)は『アベンジャーズ エンドゲーム』でスタークたちがタイムトラベルをした際に、1970年のシールド研究施設に保管されている描写がありましたよね。

ポストクレジットシーンでグースという猫型の生物が体内に収納していた四次元キューブ (テッセラクト)を吐き出す描写がありました。

ここで登場したキューブは、その後、S.H.I.E.L.D.の研究施設に保管されることとなり、これがペガサス計画へと繋がっていきます。

続いて『マイティ・ソー』です。

S.H.I.E.L.D.の研究施設に天文物理学者のセルヴィグ博士が招かれ、そこでニック・フューリーは彼に四次元キューブ (テッセラクト)の研究調査を依頼します。

ただこの博士は既にロキによって操られており、これが『アベンジャーズ』への伏線となっていました。

そこから続く『アベンジャーズ』では、ロキが四次元キューブ (テッセラクト)の力を使って暗躍します。

『マイティソー』のポストクレジットシーン以降エリック・セルヴィグ博士がペガサス計画としてテッセラクトの研究を進めていました。

しかし、その実験の際に四次元キューブ (テッセラクト)が暴走を始めてしまいます。

すると、ロキが現れ、テッセラクトの力でワームホールを開くようになり、彼はその力を使ってミッドガルド(地球)の支配を目論んでいました。

本作のラストでは結果的に、ソーがロキとキューブと共にアスガルドに帰るということになりました。

ナガ
ただ、今回の『ロキ』における分岐は、ここで起きているんだよね!

正しい方の時系列では、ここから『マイティソー:バトルロイヤル』へと物語は続いていきます。

今作では、『アベンジャーズ』で持ち帰られた四次元キューブ (テッセラクト)がアスガルドに保管されていたことが明らかになります。

ただ、アスガルドを最終的にソーたちが離れることとなり、その際に彼らは保管されていたテッセラクトを持ち出しています。

そして、物語は『アベンジャーズ:インフィニティウォー』へと続きます。

今作の冒頭で、ソーたちが乗っていた宇宙船がサノスの襲撃を受け、壊滅してしまいます。

その際にロキは持っていた四次元キューブ (テッセラクト)をサノスに奪われてしまいました。

さらに、『ロキ』の第1話でも描かれていたように、ロキはここでサノスに殺されています。

ナガ
そうした事情が大きく変化したのが、『アベンジャーズ エンドゲーム』です。

このシリーズの集大成とも言える作品の中で、スタークたちがニューヨーク決戦にタイムスリップした際に、ロキが四次元キューブ (テッセラクト)を手にして、本来の時系列とは異なる行動を取ってしまいます。

本来であれば、ここでソーに連れられてアスガルドへと戻るはずだったのに、彼はキューブの力で、そこから逸脱したのです。

この出来事が、本作『ロキ』のそもそものほったんになっており、ここまでを知っておくとスムーズに物語に入っていけるのではないでしょうか。



第1話「大いなる目的」

「観測者」の視点で読み直すMCU

(『ロキ』第1話より引用)

今回のドラマシリーズ『ロキ』は非常にユニークな作品だと思います。

MCUは、『スパイダーマン ファーフロムホーム』のヴィランであるミステリオが顕著な例ですが、これ以降『ワンダヴィジョン』も含めて、自分たちのコンテンツをメタ的な視点で見るような作品を作るようになりました。

ナガ
MCUがジャンルとして確立されたからこそできる芸当だよね!

そんな中で、今回の『ロキ』には、TVAというMCUの世界線を観測していた者たちの存在を明らかにします。

彼らはアベンジャーズに加担するわけでもなく、ヴィランに肩入れすることもなく、定められた運命に基づいてあらゆる出来事が生じているかどうかをただただ見ている「観測者」の立場なんですね。

このTVAと呼ばれる者たちは、これまでMCUのシリーズを追いかけてきた私たち「観客」を表していると言えます。

私たちは、これまで多くの映画やドラマシリーズを追いかけてきたことにより、あの世界でロキの身にこれまでに起きてきた出来事もこれから起きる出来事も知っていますよね。

その上で、本作で言うところの「世界線の分岐」というのは、私たちが観測し得ない物語が発生するということなのだと思います。

世界線が1つに定まっていれば、そこで起きる出来事に焦点を当てていけば良いので、これまでのMCUのような単一の世界観の中で全ての出来事を1つの時系列の下に整理することができますよね。

この場合、私たち「観客」は、紛いなりにも「観測者」としての役割を果たすことはできます。

しかし、マルチバースに突入するということは、私たちが観測し得ない物語の可能性を認めるということに他なりません。

つまり、これまでに私たちが見てきたMCUの物語が根本的にひっくり返ってしまうということになるわけで、当然これまでの物語に愛着のある私たちからすると、それは防ぎたいわけですよ。

だからこそ、TVAの置かれている立場や行動が、私たち「観客」の立ち位置や思惑に重なるように作られており、そこが『ロキ』という作品のメタMCU性になっているんですね。

ナガ
1つ面白かったのは、インフィニティストーンの扱いだね!

『アベンジャーズ インフィニティウォー』で全生命体の半分を消失させるほどの力を発揮したインフィニティストーンですが、TVAの領域では、ちょっとした重し程度の扱いを受けているのです。

なぜ、こんな扱いを受けているのか。

それは、TVAが私たち「観客」と同じ立場にあると考えると、分かりやすいのではないでしょうか。

つまり、MCUの世界の中では、インフィニティストーンは物語の鍵を握る重要なアイテムなのですが、そのフレームの外にいる私たちからすると、あくまでも映画の「小道具」の1つに過ぎないわけですよ。

そういったフィクションの内側と外側における、インフィニティストーンの「重さ」の違いを演出するという何とも面白い試みが見られました。

このように、『ロキ』はまさしくマルチバースの幕開けを描く作品になりそうですが、その視座として私たち「観客」を作品の中に投影するというアプローチは非常にユニークなものだったと思います。

 

「自分」と戦うヴィランの物語

(『ロキ』第1話より引用)

『ロキ』の物語的な見どころは、やはりロキが別の時間軸で分岐し、時間法則を侵している自分自身と戦うという物語の構図でしょう。

16世紀の教会のステンドグラスに描かれた悪魔メフィストに重なる別バージョンのロキは、彼の心の内にある「悪」の表出とも言えます。

TVAのメビウスから、これまでにたくさんの人を苦しめてきたこと、そして自分の行動がいずれ母親の命を奪うことに繋がるのだと指摘され、それを聞いたロキは動揺しました。

思えば『アベンジャーズ』の時点でのロキは、『マイティ・ソー ダークワールド』の展開も控えているわけですから、まだ改心したとは言い難い状況であり、彼が真に改心したのは『マイティ・ソー バトルロイヤル』の終盤から『アベンジャーズ インフィニティウォー』の冒頭にかけてでしょうか。

TVAの監視がある以上、彼は元の時間軸に戻されるのが既定路線かと思われましたが、メビウスの提案もあり、彼は言わばこれからの自分の行動を改める機会を与えられたとも言えます。

そうしたロキ自身の心理的な葛藤を可視化するかのように、各時代に現れ悪事を働く別バージョンの自分自身と戦うという物語の構図は、非常に面白いですよね。

しかも、それがヒーローではなく、いわゆるヴィランであるロキを主人公とした物語でやるというのが、この上なくユニークだと思います。

ヒーローがヴィランを打倒するのではなく、ヴィランが自分自身の中にある「悪」と戦い、ヒーローになる。実に斬新です。

 

ちょっとした小ネタ

『ロキ』の第1話には、いろいろと小ネタが紛れ込んでいました。

MCUの内の小ネタで言うと、ロキがテッセラクトの力を使って逃げた先がゴビ砂漠の真ん中だったという光景は、『アイアンマン』を想起させますよね。

MCUの始まりの作品とも言える『アイアンマン』に、マルチバースの始まりの作品になるであろう『ロキ』を重ねる演出は、物語の位置づけから考えてもかなり示唆的なものだと感じました。

もう1つ気になったのが、教会のステンドグラスに描かれている角の生えた悪魔メフィストのヴィジュアルですね。

第1話の最後で、別の世界線のロキが様々な時空間に移動して問題を引き起こしていることが明らかになりますが、16世紀の教会で少女が見つめていたあのメフィストはおそらくロキに重ねられていたのでしょう。

悪魔メフィストにも角があり、ロキが被っているヘルメットにも角があるという共通点があり、これは1つ伏線として機能していたことになります。

細かいところで言うと、TVAのポスターに「ALWAYS WATCHING」というキャッチコピーが書かれていたのですが、これは完全にジョージ・オーウェル『1984年』で描かれたビッグブラザーを意識したものですね。

また、第1話で一番笑ったのは、やはりD.B.クーパー事件ネタですね(笑)

(『ロキ』第1話より引用)

D.B.クーパー事件は、商業航空産業史上で唯一未解決のハイジャック事件として知られています。

事件の経緯を簡単に説明しておきましょう。

1971年11月24日に、オレゴン州ポートランドからワシントン州シアトルへ向かっていたボーイング727が太平洋岸北西部で身元不明の男性にハイジャックされてしまいます。

その男は、「ダン・クーパー」という偽名で航空券を購入していたんですが、ニュースメディアが「D.B.クーパー」と誤って報道してしまい、その名前で有名になってしまいました。

この身元不明の男は、身代金を強奪すると、大胆にもパラシュートで降下して飛行機を脱出したと言われており、その後どのような末路を辿ったのかは知られていません。

そして『ロキ』では、この「D.B.クーパー」が他でもないロキであり、彼はパラシュートで下降すると、そのまま虹の橋ビフロスト経由でアスガルドへと戻っていった。これが事件の真相だと言っているのです(笑)

こうした現実世界とのリンクを小ネタとして入れてくる試みは何とも面白いものですね。



第2話「変異体」

タイムキーパー=MCUの製作者?

第2話では、幾度なく時間の秩序ないしTVAを作り出した創始者的な存在として「タイムキーパー」に言及されていました。

「タイムキーパー」は、劇中で3体の銅像によって主に示されているわけですが、キリスト教圏だと、やはり「3」という数字は重要ですね。

キリスト教の世界観においては、神は三位一体であり、「父・子・聖霊」の3つの位格を持っているとされており、これが「タイムキーパー」の設定にも還元されていることは言うまでもないでしょう。

ただ、もう1つ面白かったのは、ロキとメビウスの会話の中で、メビウスが「タイムキーパーはこの時間軸のエピローグを今まさに書いているところだ」という旨の発言をしていた点です。

ナガ
これって、MCUの創作者と「タイムキーパー」が同義ってコトじゃないの?(笑)

MCUの創作者と言いますか、ここまで大きくした人物は、もちろんケヴィン・ファイギであるわけですが、そうしたMCUの舵取りをしている人たちを「タイムキーパー」に準えて、メタ的に登場させているのが何とも面白いポイントですね。

MCUの結末はまだ決まってなくて、今も尚考えられているということになりますが、今回の『ロキ』の展開によっては、これまでのMCUの在り様は崩壊することになるでしょう。

というのも、これまでのMCUはあくまでも作り手がコントロールしている物語だったわけです。

作り手が必要だと思う物語を必要なだけピックアップし、それが一義の世界線として、絶対的に君臨していたんですよね。

しかし、仮に本作『ロキ』でマルチバースの幕開けが描かれるのであれば、それは作り手がコントロールできない領域の存在を認めるということになります。

また、本作でロキが企んでいるのは、『マイティ・ソー ダークワールド』『マイティ・ソー バトルロイヤル』などで描かれた一連の出来事を回避することなのかもしれません。

ナガ
特に、前者での「母親の死」については強い回避願望を感じますよね!

そういう意味でも、今作は、これからのMCUだけでなく、これまでのMCUも含めて、創作者と創作物の関係性を一変させる可能性があるわけです。

 

「レディロキ」がついに登場!ただメインヴィランではなさそう?

(『ロキ』第2話より引用)

コミックスの方では、登場しており、ファンの間でも「本作のヴィランではないか?」と予見されていたレディロキが第2話のラストで初登場となりました。

原作の方では、ロキが自分の姿を変えて、「レディロキ」に扮していたという設定でしたが、今回のドラマシリーズでは、完全にロキとは区別された「変異体」という独立した存在として扱われるようですね。

ちなみに、劇中ではロキの性別もTVAファイルで「流動的」とマークされていたので、性別については自由に変更できることは示唆されていました。

ナガ
ただ、今作のヴィランが「レディロキ」単体ということは考えにくいとは思います!

コミックスで登場したこのヴィランが登場しそうと言った視点では解説できないですが、何となく「タイムキーパー」そのものがヴィランになるんじゃないかな?とは考えてしまいますね。

「タイムキーパー」が君臨し、聖なる時間軸を守ってくれれば、確かに私たちがこれまで追いかけてきたMCUの唯一性は担保されます。

しかし、それらが守られて欲しいと願ってしまうファン心すら、MCUが更なる飛躍を遂げ、新しい境地を目指していく上では「障害」になってしまう可能性がありますよね。

だからこそ、「タイムキーパー」という保守的な概念を打倒するという構図が、フェーズ4で描かれるマルチバースの幕開けに向けても、すごく収まりが良いと思うんです。

レディロキは、ロキ同様に嘘が上手で、「タイムキーパーには興味がない」と発言しながら、ちゃっかりとTVAの隊員の1人から「タイムキーパーに会う方法」を聞き出し、それを実行に移していました。

さらに、ロキに対して「あなたには興味がない」と言い放ちながらも、彼がついてくることを予見しているかのように、ポータルをあの場所に残して去っていきましたよね。

そう考えると、ここからの物語は「レディロキ(ないし変異体のロキ)VSロキ」という構図というよりは、「ロキたちVSタイムキーパー」というような、ある種の『スパイダーマン スパイダーバース』のような構図になっていくのではないかなと個人的には考えています。

ナガ
第2話で、一気に物語が次の段階に行きましたので、第3話が余計に楽しみになりました。



おわりに

いかがだったでしょうか。

今回は『ロキ』についてお話してきました。

ナガ
MCUなりの新しいメタフィクションであり、マルチバースの幕開けとなる重要な作品ですね!

最初にこのスピンオフが発表された時、ロキの魅力に迫るあくまでもスピンオフ的な内容になるのかなと思っていました。

確かに、第1話でのチケットのくだりなんかは、彼のキャラクター性が出ていて、とても好きなシーンです。

しかし、『ロキ』は思っていた以上に、今後のMCUを見る上で、避けては通れない作品になりそうなので、そこがまず驚きでしたね。

ロキ自身がロキと戦う。

第1話でメビウスから、ロキはその残虐性をたびたび指摘されていましたが、この物語は彼自身がそうした自分の中に秘められた残虐性に立ち向かうヒーロービギンズ様な作品になるのではないかと思われます。

ナガ
その上で、最後はロキらしく俺はヒーローじゃないけどね!と透かしてひっくり返してくれたら面白いかなと…。

今後の展開から目が離せませんね!

今回も読んでくださった方、ありがとうございました。