みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね映画『ソーセージパーティー』についてお話していこうと思います。
現在、日本でわずか6館ほどの映画館でしか公開されていない新作映画『ソーセージパーティー』。
アメリカでは公開されるやいなや話題沸騰。異例の大ヒットとなりました。
監督をシュレックシリーズでもおなじみコンラッド・ヴァーノンとトーマスシリーズの映画を手がけてきたグレッグ・ティアナンが務めています。
また、脚本をコメディ映画ファンにはおなじみエヴァン・ゴールドバーグとセス・ローゲンが担当したことも注目を集めました。
日本でも公開規模が小さいこともあってか、上映している映画館では、満席あるいはそれに近い状態が続いており、私が見た日も平日ながら8~9割ほどの着席率を誇っていた。
客層としては、映画ファンと思われる男性お一人様、高校生、大学生、またカップルで見に来ている方も多かったですね。
閑話休題。この記事では、そんな映画『ソーセージパーティー』に込められた実は深いメッセージ性について紐解いていこうと思います。
本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想・考察記事です。
作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
目次
動画レビュー
本作『ソーセージパーティー』の考察を当ブログのYouTubeチャンネルでもご覧いただけます。
『ソーセージパーティー』感想・考察(ネタバレあり)
最高のエロとグロ
映画観に足を運んだ時、確信しました。
そうして、上映が始まり、前情報である程度、エロとグロの要素が強いと知っていた自分も驚かされました。
これから作品を見る人に言っておきます。
断言しよう。下ネタ要素もグロ要素も自分の期待値を大きく上回ってくる。間違いなくね。
とりあえず、この映画に登場する食べ物たちは容赦ないのです。それはなぜか?
そりゃ、自分たちが殺されるなんてわかったら、死にものぐるいで戦うでしょ??
自分が死ぬくらいなら他人を殺してでも、生き残ろうとするでしょ??
動物的本能に忠実な食べ物たちは、本能のままに人間と対峙するのです。つまり、情けや容赦という概念は皆無で、人間の倫理観に縛られない残虐な戦闘スタイルを志向するのです。
こんな映画を見た日には、子供は怖くて食べ物を食べられなくなってしまいますよ(笑)
悲鳴を上げながら皮をむかれ、茹でられるジャガイモ、体を真っ二つに裂かれるソーセージ、かみ砕かれてばらばらにされるベビーキャロット。
人が普段当たり前のように営む、調理や食事という風景が、狂気と鮮血の大量虐殺の現場へと変貌を遂げるのです。
何気ない日常のワンシーンが孕む狂気というものは、突きつけられると、この上なく恐ろしいものに感じるのだということを痛感させられました。
そしてエロ要素。こちらも非常にハイレベルで、子供には刺激が強すぎる描写の連続でした。
ちなみに、本作はアメリカでは「17歳未満の観賞は保護者の同伴が必要」というR指定の扱いになりました。
が、日本ではR15+指定になりました。
これを見た当ブログ管理人は思いました。
何とか本場のエロを味わうべく北米版のBlu-rayを購入して、鑑賞したのですが、結論を言うと、内容は全く同じでした。
アメリカと日本ではレーティングのルールが微妙に違うんだな…とその経験から実感しました。
それはさておき、本作のエロはぶっ飛んでいて、私自身も映画を見ているうちにパンに性的魅力を感じてしまうという恐ろしいことになってしまったほどです。
そして、何と言ってもラストシーンはもうあまりにお下劣すぎてゲラゲラ笑ってしまいました。
まず予告で登場していたのは、かの有名な「プライベート・ライアン」の上陸シーンでしょうか。
戦争の悲惨さを物語るあの名シーンが、まさか大爆笑必至のコミカルなシーンに変貌を遂げてしまうとは(笑)
これまた面白いのが、『ターミネーター2』のオマージュネタですね。
これは劇中のとある食品キャラクターのくだりで登場します。ぜひどんな食材か、想像してみてください!!
この映画は確かに最高にお下劣で、不謹慎で、下品なコメディ映画なんですが、実はクィア文学的な要素も孕んでいるんですね。
あえて、デリケートなLGBT、人種や歴史といったトピックを積極的に描いていく。どんな形であり、そういったトピックを映画という芸術作品の枠の中で登場させるということには間違いなく意義だと思います。
「ソーセージパーティー」(SONY)予告映像より引用
人類の暗い歴史や、人種問題、LGBTが抱える社会的課題など、そういうものをすべてひっくるめて笑いに変えられたらいいなと願う製作陣の思いが伝わってくる世界観構築でした。
脱支配者的志向の王道中の王道を行くプロットは、万人受けするものだと思います。
一見すると、下ネタ目白押しに思える作品ですが、それだけにとどまらず、たくさんの魅力が詰まった大人向けのアニメーション作品であることは理解していただけましたか??
公開劇場は非常に少ないですが、見れるチャンスがある方はぜひ劇場でご覧になってほしい一本です。
本作のキャラクターたちのバックグラウンドを読み解く
さて、何かと下ネタ要素にばかりフィーチャーされがちな本作『ソーセージパーティー』ですが、この動画では、物語の「もっと奥を突いて」いきたいと思います。
今回皆さんにお伝えしたいのは、本作のキャラクターたちのバックグラウンドです。
もちろんソーセージはチン棒のメタファーで、バンズはマンピーのメタファーでという話…ではありません。
そうではなくて、各食材たちに与えられた人種的・文化的・言語的・政治的なバックグラウンドをぜひ知っていただきたいのです。
これを知ると、クライマックスの乱〇シーンの見え方がきっと変わります。
ソーセージとバンズ
映画『ソーセージパーティー』より引用
まず、主人公とヒロインのホットドッグコンビです。
これはもう典型的なアメリカのソウルフードですよね。
ホットドッグはアメリカに渡ったドイツ系の移民によって生み出された食文化であると言われています。
火酒
映画『ソーセージパーティー』より引用
では、次に「火酒」に注目してみましょう。
本作に登場する「火酒」のキャラクターは、ネイティブアメリカンつまりインディアン的な風貌をしています。
彼はかつて棚に君臨していた先住民的存在でしたが、本作で白人のメタファーとして登場しているクラッカーたちに追い出されたと語っていました。
実は、連邦インディアン衛生管理局の統計では、インディアンがアルコール性肝硬変で死ぬ割合は全米平均の18倍というデータがあるのです。
彼らの四大死因は酒による交通事故死、肝炎、自殺、他殺だとも言われます。
その背景には、インディアンはかつて白人に狩猟を禁じられ、その代わりに食料を与えられたという歴史がありました。
仕事もなく、ただ食料や酒だけは白人に与えられるという生活になってしまったことで、インディアンの食生活は悪化し、酒浸りになっていったのです。
そうした歴史的なバックグラウンドが、この「火酒」のキャラクターには反映されています。
グリッツ
そしてこの「火酒」と一緒にいるのが、ミスター・グリッツです。
グリッツは黒人の家庭でしばしば主食として食べられている食材なのですが、彼も「火酒」と同様にクラッカーたちに酷い扱いを受けて、路地裏に逃げ込んできました。
つまり、ミスター・グリッツは逃亡した「黒人奴隷」のメタファーになっているのです。
ベーグルとラヴァシュ
映画『ソーセージパーティー』より引用
次にサミー・ベーグル・ジュニアとカリーム・アブドゥル・ラヴァシュをご紹介します。
この2体はいつも喧嘩をしているのですが、その理由が実に深いのです。
サミーは、見た目もそうですが、ユダヤ系の映画監督ウディ・アレン風な話し方をすることからも「ユダヤ人」のメタファーです。
一方のカリームは、元々ラヴァシュという贖罪がアラブ系の人がよく食べるパンであることから「アラブ人」のメタファーになっています。
「ユダヤ人」と「アラブ人」。そしてこの2体がいつも喧嘩をしている。
実は、2人の関係の背後にはパレスチナ問題が関係しています。
この問題を掘り下げ始めると、長くなってしまうので、簡単に言うと、パレスチナの地を巡るユダヤ人らとパレスチナ在住のアラブ人との間に生じた紛争ないし政治的問題のことです。
こうした人種的・宗教的なバックグラウンドが2体のキャラクターに投影されているのは興味深いですね。
タコス
映画『ソーセージパーティー』より引用
そして、もう1人印象的なキャラクターがテレサ・デル・タコですね。
彼女はバイセクシャルで、フランクが好意を寄せているバンズのブレンダのことを気に入っています。
メキシコ風の酒場で登場したことからも分かるように、彼女はラテンアメリカ系の人種のバックグラウンドを背負ったキャラクターです。
ただ、タコスにはまた違った側面もあります。
昔、アメリカのアリゾナ州で「ピンク・タコ」という名前のメキシコ料理店が開店して、物議をかもしたというニュースがありました。
その理由は、タコスが女性器のスラングだからです。
劇中に「私はソフトなタコじゃないわ。ハードなタコなの」というセリフがありました。
まあ健全な方は、「ああ、ソフトシェルとハードシェルのことね!」となるわけですが、まあ要は「ガバガb…」という類のゲスい話をしているわけです。
デューシュバッグ
映画『ソーセージパーティー』より引用
そして、主人公のフランクたちに立ちはだかるヴィランも個性的です。
デューシュバッグというのは、いわゆる「膣洗浄機」のことなのですが、実はダブルミーニングになっています。
Doucheという言葉を英語のスラングの辞典で調べるとこんな説明が出てきました。
Someone who has surpassed the levels of jerk and asshole.
Jerkは「愚か者」という意味で、「asshole」は言わなくても良いですかね。「〇の穴」です。まあ「くそったれ」くらいの意味で使われているでしょうか。
つまり、Doucheという言葉には、「愚か者」「くそったれ」を超越したもっとやべえ奴という意味で使われているスラングなのです。
日本語の日常会話でよく「あいつクソだよな。」みたいな表現が出てきます。
「クソ」って要は「う○ち」ですよね。でもここでは排泄物という意味では使われているのではなく、それくらいに嫌な奴という比喩表現として用いられているわけです。
ただ『ソーセージパーティー』という映画は、デューシュというスラングの元ネタである膣洗浄機をそのままのアイテムとして作品に登場させて、ヴィランにするという荒業をやってのけたわけです。
こういう洒落が聞いているのも面白いです。
テキーラ
映画『ソーセージパーティー』より引用
さて、今作でヴィランのデューシュバッグの手先として、ブレンダを誘い出し、陥れようとするのがテキーラです。
それは、テキーラという酒がいわゆる「レディーキラー」として有名だからです。
実は深いラストの乱交シーンの意味
映画『ソーセージパーティー』より引用
さてここまでこの映画がいかにおバカでぶっ飛んだ映画なのかということを中心にネタバレ無しで書いてきたわけですが、ここからは少しネタバレも交えつつ、作品の内容に深く踏み込んでいきたいと思います。
先ほども少し言及してはいるんですが、この映画って人種差別や過去の戦争問題、近年のトランスジェンダーの問題にも鋭い切り口で斬りこんでいるんです。
例えば、ナチスドイツを彷彿とさせるキャラクターが登場しましたし、男性同士の同性愛も描かれました。それだけでなく、イスラム教圏の地域の食べ物が登場し、差別的な扱いを受けたりなんかもしています。
つまり映画『ソーセージパーティー』の世界というのは、我々が生きている現代社会の縮図になっているんですよ。それでいて、その負の要素も多分に受け継いでいます。
そんな中で迎えるのは、トランスジェンダーや宗教、戦争、人種・・・そういったあらゆる今日の諸問題を飛び越えて、性的に繋がろうとする食べ物たちの姿なんですよ。
「アラブ人」を模したラヴァシュと「ユダヤ人」を模したベーグルの男同士の熱い○○○。
メキシコ系のタコスとアメリカの象徴たるバンズの女同士の官能的な○○○。
同じく「ユダヤ人」のメタファーであるジュースが自分を虐げてきたザワークラフトのヒトラーを○○○しているシーン。
黒人を模したグリッツはかつて自分に酷い扱いをした白人のメタファーたるクラッカーを○○○しています。
もう収拾がつかないくらいに無茶苦茶なラストなのですが、こうした人種的・政治的なバックグラウンドを知った上で見ると、実はそのカップリングにもすごく意味があるのだと分かりますよね。
現実世界では、対立しているまたは分断されている者同士が○○○をするということ。
そして、歴史的に被支配側にいた人間が支配側を○○○するということ。
また映画『デッドプール』でも印象的に使われていたような「第4の壁」の演出がラストに登場しているのも興味深いポイントです。
どこからどう見てもおバカなアニメーション映画なんですが、細かい要素を見ていくと、実に真面目に作られた映画であることが見えてきます。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は映画『ソーセージパーティー』についてお話してきました。
かなりエロくて、それでいてグロい映画ではあるんですが、実はその裏には「世界平和」に対する深いテーマが隠されているのではないかということにも触れてみました。
ただ何度も申し上げますが、間違ってもおうちデートとかでこれ見ちゃだめですよ(笑)
今回も読んでくださった方ありがとうございました。