参考: ©ぺトス・講談社/「亜人ちゃんは語りたい」製作委員会 「亜人ちゃんは語りたい」第4話より引用
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですねアニメ『亜人ちゃんは語りたい』についてお話していこうと思います
録画で録り溜めしておいたテレビアニメ「亜人(デミ)ちゃんは語りたい」を第4話まで鑑賞しました。非常にギャグ要素が強く4話分のストックをあっという間に消化できてしまいました。今クールの中のアニメで私はあまり注目していなかった作品ですが、ちゃんと見ておいて良かったと思いました。
良かったら最後までお付き合いください。
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『亜人ちゃんは語りたい』の紹介
まず、簡単にではありますが、作品の概要と簡単なあらすじを書いておきたいと思います。
「亜人(デミ)ちゃんは語りたい」はぺトスによるマンガ作品で、講談社の「ヤングマガジンサード」に連載しております。原作の既巻は4巻です。今回、「ソードアートオンライン」シリーズ、「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」、「四月は君の嘘」や「アイドルマスター」シリーズのアニメ化を手掛けたA-1 Picturesによってアニメ化されることになりました。
今回キャラクターデザインには「ソードアートオンライン」や「学戦都市アスタリスク」などにキャラクターデザインとして参加した川上哲也が、劇伴音楽には「四月は君の嘘」や「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」を担当された横山克が参加しています。
迫害され続けてきた普通の人間とは異なった性質を持つ「亜人」がその特性を個性として認められ、社会の溶け込んでいる世界が舞台になります。「亜人」は若い人たちの間で「デミ」と呼ばれるまでに当たり前の存在となっておりました。
春、新学期になり、亜人(デミ)たちとの対話をしたいと臨み続けていた生物教師である高橋鉄男の勤務する高校に4人の亜人(デミ)が入学、赴任してきました。「ヴァンパイア」の特性を持つ小鳥遊ひかり、「デュラハン」の町京子、「雪女」の日下部雪の3人の高校生と新任教員で「サキュパス」の佐藤早紀絵であります。高橋鉄男はそんな「亜人(デミ)」たちの相談に乗りながら、徐々に心を通わせていきます。
©ぺトス・講談社/「亜人ちゃんは語りたい」製作委員会 「亜人ちゃんは語りたい」ED映像より引用
左から町京子、小鳥遊ひかり、佐藤早紀絵、日下部雪
今作では、そんな鉄男と「亜人(デミ)」たちの日常をギャグテイストで描く一方で、現代の「マイノリティ」について考えさせられるような一面も描かれています。
なぜ高橋鉄男は「守らない」のか?
今回の記事ではそんな「亜人(デミ)」たちの相談役でありよき理解者となっている高橋鉄男が作中でどのような立場を取っているのかを中心に作中で「守る」という行為がどのように捉えらているのかを考えていきたいと思います。
まず、結論から述べましょう。今回の記事のタイトル通り、高橋鉄男は「守らない」のです。
第2話で「デュラハン」の亜人(デミ)である町京子が鉄男のいる生物準備室で相談に乗ってもらうシーンがあります。京子は「デュラハン」の特性があるために身体から頭部だけが独立しています。そのために周囲の人と上手く馴染めず、気を使わせてしまっていることを悩んでいます。そして、自分は自分の体のことに納得しており、友人にはむしろそれに関して冗談を言ってもらえるくらいの方が気楽で望ましいと言う事を鉄男に伝えます。
鉄男はそんな京子の悩みや問題に自分から積極的に介入しようとはしません。あくまで、客観的立場から、京子に助言を与えます。「まずは、自分から冗談を言うことを初めて見るべきだ。」ということを伝えます。自分から冗談を言うことでそれが相手にここまで言ってもいいんだという線引きに繋がると言う事です。
彼が伝えたいのは、「最初の一歩」を踏み出せと言う事です。
まず、第2話の彼の対応は非常に素晴らしいと思いました。自分が彼女の問題に介入していって、解決に導く、つまり彼女を「守る」という手段を取らずに、彼は彼女自身が自分の力でその問題を解決できるように促したのです。
また、第4話の「雪女」の亜人(デミ)である雪が、自分に対する陰口に悩んでいた時、鉄男は早紀絵とその対策について話し合います。早紀絵は同じ女性の亜人(デミ)として雪をフォローすると申し出ます。しかし、鉄男の目線はそこではなく、陰口をたたく生徒の方にありました。
「劣等感をごまかしたい、でも面と向かって言うのは怖い。陰口はそんな心の弱さからくるのだと思います。できれば、彼女たちに陰口に逃げない心を持ってほしいんです。」
鉄男はこう語りました。ここでも鉄男は雪の問題解決に際して、雪自身を守るという立場を取らずに、陰口を言う生徒に成長してほしい、という立場をとるのです。
そして、再びトイレで女子生徒2人が陰口をたたいているところに、ひかりが乗り込んでいき彼女自身の思いを伝えます。ここでも、鉄男はトイレの前まで駆け付けたものの、ひかりと女子生徒2人のやり取りに介入しようとはしません。そして、その後、雪自身が女子生徒たちに自分の気持ちを伝えると言う事で、この問題は解決に向かいます。
今回取り上げた2つの場面からも分かる通り、鉄男は、亜人(デミ)たちの相談に親身になって乗りますが、決して自分自身が彼女たちの抱える問題に積極的に介入しようとしないのです。彼はあくまで彼女たち自身が自分の力で問題を解決できるよう、助言をし、見守るのです。
じゃあ、第2話で鉄男が校長先生に「デュラハン」の特性を持つ京子に通学カバンの特例を認めるように進言したではないか、この点はどうなるのかという点ですが、これは「Equity」という考え方による行動なのです。「Equity」というのは「平等」ではなく「公平」という意味になります。この2つがどう違うのかと言う事に関しては、下の図がわかりやすいかと思います。
Credit: United Way of the Columbia-Willamette
「Equity=公平」というのは、個人の特性や経歴といった要因によって生じる同じ機会に参加する、アクセスすることを妨げる障壁を無くすということなんですよ。
今作の設定にも、「亜人(デミ)」たちは社会的弱者として国家から保障を受けているというものがあります。これは、「亜人(デミ)」たちがその特性のために普通の人間と同じ機会を得られないがゆえに、その公平さを確保するために行われているのです。そして第2話のカバンの特例の提言ですが、これは、京子自身を守ったというよりは、京子の「公平さ」を守ったのです。
そして、「公平さ」が確保された時点で、彼は「亜人(デミ)」と呼ばれる人たちを、他の普通の人間と同じように扱います。これは逆に「平等な」扱いです。彼にとっては、「公平さ」が確保された時点で、「亜人(デミ)」という存在は守られる存在ではなくなるのです。
この考え方が、第4話の後半に登場する、彼の、「亜人(デミ)」たちを亜人としてだけではなく、一人の人間として見るという視点に繋がっているのです。 (人間としての側面、亜人(デミ)としての側面の両方からその人を見ないと、本質を捉えることができないという視点)
つまり、彼は、「亜人(デミ)」たちをその特性だけを見て、弱者と判断しているわけではなく、彼らを人間の面からも捉えているからこそ、普通の人間と同じように扱うのです。
だから「亜人(デミ)」の抱える問題に過剰に反応して、自分が一から十まで解決してあげるだなんてことはしないのです。彼らを1人の人間として、そして特異性を持つ亜人(デミ)として、その両面からかつ自ずから問題を解決し、成長できるよう促しているのです。そしてもっと言うなれば、彼は問題の暫定的な解決ではなく、将来的に「亜人(デミ)」たちが自分で問題を解決できるようにと、彼らの将来をも見据えているのです。この未来志向的な考え方は見習うべきものだと考えております。
一方で、考えないようにしても「亜人(デミ)」を見ていると脳裏に浮かぶのは、身体的ないし様々なハンディを抱えた人たちです。近年、まだまだ至らない部分があるとはいえ、徐々にではありますが、彼らにも「公平さ」というものが確保されつつあるように思います。
そんな中で、私も含めて、そういったハンディを街で見かけると、やはりどうしても「社会的な弱者」として見てしまいますし、そんな彼らを助けてあげたいなどというエゴに駆られるのです。
しかし、それは全く正しくないように私は思っています。ハンディを克服して、生きようとする人たちにそんなエゴを持って、過剰に手出ししてしまうのは、間違いなくその人のためになりません。
彼らが「公平さ」を手に入れられていないと感じたならば、手を貸すべきです。しかし、そうでないならば、あくまで他の人と接するように、それこそ「平等」に接するべきなのです。
自分が守ってあげよう、なんとかしてあげようとすること。そんな善意からくるエゴはやはり今の、そしてこれからの社会にそぐわないように思います。
そして、「守らない」高橋鉄男という男が作中で取る立場、そして生き方というものはまさに今を生きる我々が見習うべきものなのだと思うのです。
P.S. この作品、非常に考えさせられる良い作品なのですが、「亜人(デミ)」たちがその特異性のために他の人よりも優れた点みたいなものは描かれないんですかね??あくまで、社会的弱者やマイノリティといった部分にフォーカスするという事なのでしょうか??今後の展開でもう少しそういった部分が描かれると良いのではないかとも思います。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今期のアニメ作品では他にも「小林さんちのメイドラゴン」の記事も書いております。良かったらそちらもよろしくお願いいたします。
ぜひ『亜人ちゃんは語りたい』についても深く考えてみてください。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。
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