はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
みなさん、映画「モアナと伝説の海」はもうご覧になったでしょうか?すでにご覧になった方はご存知かと思いますが、今回「モアナと伝説の海」の同時上映で「インナー・ワーキング」という新作短編アニメーションが公開されています。
「モアナと伝説の海」についての感想及び考察記事の方でもこの「インナー・ワーキング」が同時上映されたことの意義を語っておりますので良かったらご覧ください。
今回の記事では、そんな同時上映の短編アニメーション「インナー・ワーキング」について語っていきたいと思います。
本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想記事となっております。
作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
イントロダクション
©2016 Disney “Inner Workings” from “Inner Workings” Official Trailer
本作の監督を務めたのは、「シュガー・ラッシュ」や「ベイマックス」といったディズニーアニメ作品にストーリーボードアーティストのレオナルド・マツダさんでこの方は日系ブラジル人であるということです。
内容としては、人生を謳歌しようとする心臓とそれを制御して規範的な生き方をさせようとする脳とのやり取りを通して、現代の人間の生の在り方を問うた作品と言うことができるでしょう。
また、本作はディズニーが以前に製作したアニメーション映画「インサイド・ヘッド」の内容をさらに膨らませたものになっているとも感じました。
『インナーワーキング』の内容解説
本作のテーマ性というのは、まさに「脳に従って生きるか?心に従って生きるか?」と言う点に集約されるのではないかと思います。
本作はまず人間はいつか死ぬのだということが明確にされています。この点が重要です。人間が生きられる期間には限界があるのです。
しかし、皆さんはそのいつか来る人生の終わりをどうやって迎えたいのですか?自分たちの「インナー・ワーキング」がいつか停止するその日をどんな心持で迎えたいですか?
ここで描かれる「脳」はあなたの「最大寿命」を念頭に置いて活動し、命令を送っています。
ゆえにお風呂でダンスを踊るシーンでも、通りのおしゃれなカフェで朝から大きなパンケーキを頬張る男女を見ても、海岸でサーフィンに向かう男性やサングラスを販売する女性に心惹かれても、それが「最大寿命」の実現を妨げるものなのであれば、「脳」はそれを制御します。
©2016 Disney “Inner Workings” from “Inner Workings” Official Trailer
対照的に描かれた「心臓(心)」はあなたの「最大幸福」を念頭に活動し、身体を司っています。ゆえに日常の何気ない場面でも常に、幸せを求めています。
だからお風呂に入っているときに、踊りたくなるし、高カロリーで健康上良くないとわかっていてもパンケーキを食べたくなるし、会社があるとわかっていても海に飛び出してしまおうと身体を動かすのです。
©2016 Disney “Inner Workings” from “Inner Workings” Official Trailer
しかし、物語の中盤で「脳」はそんな「心臓(心)」の働きを制御してしまいます。
仕事をするうえで、そんな楽しさや面白さを追求してしまう「心臓(心)」の働きが邪魔であると判断したからです。
そして主人公は会社でパソコンをタイプするだけのマシンと化してしまいます。それでも「脳」はこれが「最大寿命」の実現のために最も適切な道であると信じて、命令を送り続けます。
しかし、ふとこのまま「脳」が彼の「心臓(心)」を制御し続けた先にあるいつかくる「死」が果たして幸福なのだろうか?という思いがよぎります。
そんな思いを受けて、「脳」は「心臓(心)」に自由を与えます。そして昼休みになり、今朝できなかったことを次々に実現していきます。
大盛りのパンケーキを食べることやサングラスを販売する女性に声をかけること、海に思いっきり飛び込むこと。そして、職場に戻った彼の表情は幸福に満ちていました。
今作が言っているのは、「バランス」をとることの重要性でもありますね。
「最大寿命」を追求しすぎることも、「最大幸福」を追求しすぎることも、どちらに偏りすぎてもダメで、そのバランスを取ることが、現代社会を上手く生きる術でもあると感じました。
なぜ日本人にこそ見て欲しいのか
「インナー・ワーキング」という作品が問いかけるのは、まさに現代を生きる我々の生の在り方についてなのです。
人間の身体活動に関して言うならば、人によってあまり差異があるものではありません。細かな違いはあれど、すべての人が同じシステムで動いています。
では、人間の「個性」を決定づけるものは何なんだろうか?と考えたときに、それは「脳」と「心」なんですね。この2つが揃って初めて、自分は「自己」たりうるのです。
つまり、本作「インナー・ワーキング」でも「脳」が「心臓(心)」の働きを封じ込めてしまい、主人公の「自己」を殺してしまいます。
そして彼の職場にも、同じように「自己」を殺して資本主義社会の歯車として生きる人々の姿が溢れています。この風景はまさに現代社会の縮図そのものです。人々は自分の「心」に従って生きることを抑制しすぎたあまりに、「自己」というものを見失ってしまったのです。
©2016 Disney “Inner Workings” from “Inner Workings” Official Trailer
そんな現代社会にこの「インナー・ワーキング」という短編アニメーションが問いかけるメッセージは非常に大きな意義があると思います。
「自分」を殺して生きるのではなく、かけがえのない「自分」として幸せに生きるべきだ!!
医療技術の発展により人間の寿命というものは飛躍的に拡大しました。しかし、長く生きるだけが幸せなのでしょうか?未来を杞憂してないで、今を最大限に楽しんで生きれば良いじゃないか?
特に日本人は、協調性を重んじる国民性もあってか、確固たる「自分」を見出せない、社会や集団の中で「自分」を殺して生きる人々が多いように思いますし、私もそんな一人なのだと思います。
だからこそ、たった6分の短編アニメーションですが、私を含めてこれをご覧になった日本人の方は何か思うところがあったのではないでしょうか。
いつか来る人生の終わりを「自分」として迎えられる。最期の瞬間に自分の人生を「自分」のものとして誇れる。これはある意味では、長く生きることよりも大切なのかもしれません。
本作は「モアナと伝説の海」とテーマ性の部分で共通しておりますので関連付けて考えてみると面白いかと思います。
おわりに
いかがだったでしょうか。
映画『モアナと伝説の海』の同時上映でしたが、短篇とは思えないような深い視座から作られた映画だったように思います。
当ブログでは『リメンバーミー』の考察記事も書いております。この記事の中では同時上映の『アナと雪の女王』の短編の感想も書いておりますので、良かったら読んで行ってください。
今回も読んでくださった方ありがとうございました