はじめに
読んでくださっている方には、どうでもよいことかとは思いますが、今回の記事が当ブログ通算100記事目になるんですね。ということで、今回は映画そのものの感想や解説と言うよりも、ちょっと脱線した話を自分の体験も交えながら、お話しさせていただけたらと思います。
突然ですが、皆さんは「忘れられない映画」ってありませんか?
特別世間の評価や自分の評価が高いわけでも無いのに、頭の片隅に残って離れない、自分の思い出や体験と共に記憶に焼きついている、そんな作品はありませんか?
映画を数多く見てきた人はもちろん、そうでない人でも、強く印象に残っていて、忘れられない映画作品は1本や2本、あると思います。
もちろん私にもそういう作品があります。世間の評価も自分の評価もすごく高いというわけではありません。ですが幼少期の記憶と共に自分の脳裏に焼き付いて離れないんですよ。
それが今回取り上げる「ブレイブストーリー」というアニメ映画です。
なぜ忘れられないのか?
「ブレイブストーリー」という作品は、決して自分の中で評価が高いというわけではありません。自分の中で、オールタイムベスト10に入れるような作品ではとてもありません。
それでもこの作品が忘れられず、定期的に見返してしまう作品であり続けるのはなぜなのか?と考えた時に、まず自分が初めて家族以外の友人と映画館で鑑賞した作品であることを思い出しました。当時小学5年生だったように思います。
当時、初めて友人を誘って映画館で観た映画がこの作品なんですね。やっぱり友人と見に行く映画は、家族と見に行くのとではどこか違います。大人が横にいない状態で見る映画体験というのはとても新鮮なものでした。
それに加えて、この映画は私が初めて映画館で2回見た映画でもあるんですよ。1回目を見に行った時にあまりにも感激して、後日別の友人に声をかけて2回目を見に行ったことは今でもはっきりと覚えています。
このようにすごく自分の中ではメモリアルな作品であることは間違いありません。これが「ブレイブストーリー」という作品が自分の中に残り続けている大きな要因の一つであることは間違いないと思います。
そしてもう一つ、単純に内容が当時の自分の心にすごく刺さるものだったんだと思います。ということで、少し「ブレイブストーリー」という作品の内容にも触れつつ、考えていきたいと思います。
映画「ブレイブストーリー」と当時の自分
まず、簡単にではありますが、「ブレイブストーリー」の冒頭あらすじを引用させていただきます。
三谷亘(ミタニ ワタル)は小学5年生。成績はそこそこで、テレビゲームが好きな普通の少年だった。大きな団地に住み、ともに新設校に通う親友のカッちゃんがいる。街では、建設途中のビルに幽霊が出るという噂が広がっていた。ある日、亘は幽霊が出ると噂される”幽霊ビル”で、要御扉(かなめのみとびら)に出会う。そこを潜り抜けると、亘たちが住んでいる現世(うつしよ)とは違う不思議な世界・幻界(ヴィジョン)が広がっていた。
数日後、夜中に目が覚めた亘は、気分転換に散歩に出かけたが、たまたま幽霊ビルで隣のクラスの優秀な転校生・芦川美鶴(アシカワ ミツル)が上級生・石岡に痛めつけられている現場に居合わせてしまう。助けようとした亘もまた暴力を振るわれるが、亘によって解放された美鶴は魔術を使って漆黒のバルバローネを呼び出した。そして、上級生に反撃する。最後には、バルバローネは上級生たちを飲み込み、魂を奪ってしまった。夢としか思えないその光景が亘の心を掴む。そして美鶴は姿を消した。
そんな中、亘の父が突然「昔愛した女性と復縁する」、と離婚を宣言して家を出て行ってしまう。その愛していた女性、田中理香子のお腹にはもう子供がいた。ショックで亘もろとも親子でガス自殺をしようとする母。ガス漏れにも気付かず眠っていた亘を起こしてくれたのは、行方不明になっていた美鶴の声だった。
「運命を変えたかったら、幻界へ行け」というミツルの呼びかけに応じ、家族を取り戻す為、母と自分の運命を変える為に幽霊ビルの階段の上に現れた要御扉を通って、亘は再び幻界へ……。
(Wikipedia「ブレイブストーリー」より引用)
*これは小説版のあらすじなので、一部映画版とは異なる場合があります。
©AV Visionen GmbH from “Brave Story(2006)” Trailer
まずは、本作「ブレイブストーリー」の主人公である亘が小学5年生なんですよね。これは、ちょうどこの映画を初めて映画館で見た時の私と同級生だったことを意味しています。まずこれは当時の自分にとってすごく映画の中に入り込める要素だったんじゃないかと思います。小学5年生の頃なんておそらくたいした想像力は持っていませんでした。しかし、亘とが自分と同級生とあらば、自分は映画の主人公になったような気持ちで映画をいることができたんじゃないかと思うわけです。
そして、もちろん作品のストーリーですよね。現実世界で深い悩みを抱えることになった主人公の亘が、そんな現実を打破するために、現実世界を飛び出して異世界で冒険し、世界を救って、再び現実世界に戻ってくる。 今考えたら、ありがちな異世界モノのプロットなんですが、当時の自分にとってはすごく目新しく、斬新なものに映ったように思います。
©AV Visionen GmbH from “Brave Story(2006)” Trailer
当時の自分は別に亘のように深い悩みを抱えていたわけではありませんでしたが、単純に自分の知らない世界がどこかに存在するのかもしれないという好奇心を掻き立てられたように思います。
人はいつでも「ここじゃないどこか」に憧れるものです。自分が住んでいる世界では見たことも無いような、習慣や食べ物、生き物、建物、自然・・・その全てが自分にとっては夢のような輝きをもって映ったのでしょう。
最後に、作品のメッセージ性ですよね。主人公の亘は体力が優れているわけでもなく、知力が優れているわけでもありません。すごく平凡な主人公なんですよね。でもそんな主人公が、自分を、運命を変えるために少しだけ勇気を出して戦う、その姿から得られたものは計り知れないものだったと思うんですよ。
作品自体は異世界ファンタジー要素が強いこともあってスケールが大きな話になっているのですが、主人公の成長という面にスポットを当てると、異世界での冒険を通して少しだけ勇気を獲得したというだけのシンプルなストーリーでもあるんですね。
「少しだけ勇気を出せば、何かを変えられる。」
そんな今思うと、すごく平凡でありふれたメッセージが、当時の自分にとって何より大きくて、心に突き刺さるものだったんだと思います。
「ブレイブストーリー」と大人になった自分
おそらく、私はこの「ブレイブストーリー」という映画をもう100回近く見直していると思います。去年も10回近く見直したと思います。
やっぱり大人になってから見ると、当時のような純粋な心では見れなくなったようには思います。まずはやはりこの作品の世間的な評価の低さを知ってしまったことも大きいです。高校生の時に、「ブレイブストーリー」が好きだということを友人に言っていたんですが、その時に「原作の劣化版だ。」なんて言われたんですね。私は、悔しくて原作をその時初めて読みました。
原作はどうだったかと言うと確かに映画版ではカットされてしまっていた要素が多かったこともあって、すごく読みごたえがありました。個人的にも悔しいけれど原作のほうが良くできていると思いました。そしてそういう事情もあって、この映画の世間的な評価が低いことも知りました。
でも、結局自分のなかでの「ブレイブストーリー」という映画への愛は変わりませんでした。それ以来原作を読み返すことは一度もなく、いつも映画版ばかりを見返していました。
ここから考えられるのは、やっぱり評価の高さと好きの感情は別モノなんだなあということです。確かに原作版を読んだことで、自分の映画版「ブレイブストーリー」への評価は下がりましたが、この映画が好きだという思いは全く揺らぐことはありませんでした。
大人になって作品を見返すと、やっぱり違う感性で見る事ができます。子供の頃は、自分の運命を変えることよりも、異世界を救うことを選ぶ主人公、亘の気持ちなんてさっぱりわかりませんでした。結果的に映画「ブレイブストーリー」はハッピーエンドにはなるんですが、自分の不幸な運命を変えるために懸命に戦って、ようやく掴んだチャンスをみすみす逃してしまう亘の心情は当時の自分の理解を超えたものでした。
今見返してみると、その理由はすごく分かります。
©AV Visionen GmbH from “Brave Story(2006)” Trailer
「運命は誰かの力で変えてもらうものではなく、自分の力で変えていくものであるということ。そして運命を受け入れる勇気が何よりも大切なんだということ。」
亘は、少しだけ勇気を振り絞って、懸命に仲間たちと冒険する中でこの答えにたどり着きました。そしてそれを教えてくれた仲間と仲間が住む世界を救うために、自分に与えられた一度きりのチャンスを行使するんですね。
©AV Visionen GmbH from “Brave Story(2006)” Trailer
大人になって見返してみて、「ブレイブストーリー」が描いた「真の勇気」の正体に気づくことができるようになりました。
自分を支えてくれる映画
「人生を変えた映画だ!!」なんて仰々しい見出しをつけることはしませんが、この「ブレイブストーリー」という作品は、いつも自分の頭の片隅で、自分を支えてくれている映画なんだなあと感じています。
私はこれまで生きてきて、困難や不幸に直面したことも何度もありました。でもそんな時も、この困難や不幸は自分にとって絶対に何か意味があるもので、自分にとって必要なものなんだと思うようにしてきました。そんな運命を受け入れる強さを、与えてくれているのは間違いなくこの作品だと思います。
それゆえに、この映画を定期的に見返すと、自分のつらかった経験や苦しんだ経験、それを乗り越えてきたことが思い出されて、いつも涙してしまうんですよね。
この作品に出会えた自分はつくづく幸せ者だなあと思います。
おわりに
何百本も何千本も映画を見てきましたが、自分の中で色褪ることなく輝きを放ち続けている作品と言うものを誰もが持っていると思います。
それは、自分の経験や人生に深く結びついた作品と言うことではないでしょうか?
こういう作品は、もはや1本の映画作品と言うよりも、自分の人生の一部なんだと思います。
映画は時にその人の人生に大きく影響を与えます。人生を変えてくれることもあります。しかしそこまで大げさな話にしなくとも、自分の頭の片隅に残り続けて、無意識のうちに自分を支え続けてくれている作品って誰しも持っているんじゃないかと思うんですね。
どれだけ多くの映画を見ても、絶対に忘れられない、自分の中に強く刻まれた映画。私にとってそれは「ブレイブストーリー」という作品です。
皆さんにもそんな忘れられない映画はありますか?
良かったらコメント欄で教えてくださると嬉しいです。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。
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映画ではありませんが、ゼーガペインというロボアニメが凄く心に残ってますね
世界観と演出そしてop.edにどんどん引き込まれていく感覚を始めて感じれた作品でした
イッセーさんコメントありがとうございます!!ゼーガペイン名前は知ってるんですが、まだ見たことないんですよ!チェックしてみますね!!ロボットアニメなら個人的にはグレンラガンとエウレカ大好きです!
初めまして、タカと申します
偶然辿り着いた『ブレイブストーリー』の記事、興味深く拝見しました
私自身もこの映画は、ナガさんとはまた別の意味で至極、印象に残っています
本作は父親と初めて、男2人っきりで観に行き、観終わってから感想を2人で話し合ったとても味わい深い映画でした
恐らく、私とナガさんは同年代(笑)
作中の主人公と同年代である者にとっては、冒険をしているドキドキとワクワクに自分の心が席巻されたと言うのは変わらないようですね…
そう、正しくその通り…
世間の評価よりも自分の心にどう響いたかが重要
人生観や生き方に強く左右される影響が、レビューに左右された結果、見逃してしまうと言うのは色々勿体無いなあ…と、ネット社会の現在、強く感じてしまいます
そんな私が人生観に影響を受けた映画は『ガタカ』と『市民ケーン』
主人公がDNAの不利にめげる事無く、ディストピア社会を騙しながらも自らの夢に邁進していく前者
ケーンの恵まれない人生の中にあった、たった1つの大切な物を伝えてくれた後者
どちらの作品にも大切な物を教えてもらい、この2作は自らの道を生きるにおいて、大きな判断基準となっています
アニメなら断然、ナガさんが例に挙げた『エウレカセブン』
本作には、本当に吾が身を助けられました
この作品が無かったら、絶対に私という存在はいなかったであろうとまで言えます
TVシリーズ、小説、漫画、劇場版
どれも私の人生指針の連鎖反応として影響を与えた物であり、決して変わる事のない、穢れなき想いが秘められています
今年から公開される新しい劇場版も間違いなく、私の一部となる事でしょう
突然の長文すみません
この感想に対して伝えたい物がかなり多く出てきてしまった結果、自然とコメントも長くなってしまいました(笑)
これからもこのサイト、度々、観ていきたいと思います
同じ映画好き同士、これからもよろしくお願いしますね!!