目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
大人気シリーズ「響け!ユーフォニアム」の待望の新刊が発売されたということで、今回と次回の記事に分けてその魅力を語っていきたいという風に考えています。
・第2回:リズと青い鳥に見る、みぞれと希美の将来
・後編:リズと青い鳥の帰結と吉川優子の物語
ということで、第1回に当たる今回の記事では、「チームモナカの肖像」について語っていきたいと考えています。
良かったら最後までお付き合いください。
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チームモナカとは?
「チームモナカ」とは何ぞや?ということですが、詳細についてはテレビアニメ版の番外編「かけだすモナカ」で描かれています。
この番外編「かけだすモナカ」については私自身もブログ内でレビュー記事を書いておりますので、良かったらご覧ください。
そもそもチームモナカとは何なのか?ということについて簡単にではありますが、解説していきます。
チームモナカというのは、北宇治高校吹奏楽部のコンクール出場メンバーをサポートするために作られたチームのことです。つまりコンクールメンバーにオーディションで選考漏れしてしまったキャラクターたちが所属しています。メンバーとしましては、全部で10人でした。
©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」特別編「かけだすモナカ」より引用
まず、主要な2年生メンバーです。
左からユーフォニアム担当の中川夏紀、アルトサックス担当の森田しのぶ、トランペット担当の加部友恵の3人ですね。
©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」特別編「かけだすモナカ」より引用
次に1年生メンバーです。
右からチューバ担当の加藤葉月、クラリネット担当の高野久恵、トロンボーン担当の福井さやか、フルート担当の中野蕾実ですね。
©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」特別編「かけだすモナカ」より引用
残る1年生メンバーです。左からパーカッション担当の釜屋つばめ、トランペット担当の吉沢秋子、ホルン担当の瞳ララですね。
以上10人が「チームモナカ」のメンバーとなっています。
リーダーは加部友恵が務めていて、チームとしては、モナカ型のお守りを作りコンクールメンバーに渡したり、楽器の積み込み、音楽室の撤収などのサポートをこなしました。
また、テレビアニメ第2シーズンの第1話では、コンクールメンバーが関西大会出場が決定したことを祝して、「チームモナカ」として練習してきた「学園天国」を演奏する場面もありました。
そもそも原作にはほとんど登場しない
「チームモナカ」にスポットが当てられたのは、実は京都アニメーションが製作したテレビアニメだけの話なんですよね。
原作では、コンクールメンバー選考漏れの面々にはほとんどスポットが当たっておりません。
そのため、原作だけで「響け!ユーフォニアム」を追いかけてきた人は、「チームモナカ」の存在をご存じないかもしれません。
しかし、こういった普通なら絶対に日の目を見ない人物たちにスポットを当てる事ができる、これこそがフィクションの素晴らしいところだと思うのです。
現実でこの作中と同じようなことがあったとしても、絶対に「チームモナカ」のような人物たちが注目されることはありません。注目されるのは、北宇治高校吹奏楽部がコンクールで金賞を獲得したという事実、そして参加していたコンクールメンバーだけです。
「チームモナカ」はいわば扉を開けられなかった者たちなんですね。
コンクールチームがステージに立って演奏する。そしてそのステージに続く扉の後ろでエールを送る。それが「チームモナカ」です。
しかし、フィクションだからこそ、そんなステージに立てなかった者たちの物語とカタルシスを描くことができたのです。それゆえに私は先ほど添付した記事のタイトルにも書きましたが、テレビアニメ「響け!ユーフォニアム」番外編「かけだすモナカ」をテレビアニメ史に残る傑作であると評しました。
「チームモナカ」の思い
©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」特別編「かけだすモナカ」より引用
何度も書いてきましたが、「チームモナカ」はコンクールメンバーに選ばれなかった人たちのチームです。
そのため、全員がオーディションで悔しい思いをしています。自分だってメンバーに選ばれて、あのステージで演奏したかった、そんな思いがない人は一人もいません。
しかし、選ばれなかったことを悔やんでも仕方ありません。その中で、北宇治高校吹奏楽部が最初に掲げた「全国大会出場」という目標を達成するために、自分たちには今何ができるのか?
それを彼女たちなりに考えた結果、「チームモナカ」としてコンクールメンバーのサポートをしていくことになったわけです。
しかし、何とかチームのためにと懸命に活動する「チームモナカ」の姿はコンクールメンバーたちに匹敵する輝きを放っています。
結局のところ、チームに必要のない人間なんて1人もいないんですね。
オーディションでコンクールメンバーを選ぶ以上は、誰かがこの役割を引き受けなければなりません。つまり、コンクールメンバーも「チームモナカ」も両方ありきでの北宇治高校吹奏楽部なのです。
自分の悔しい思いを押し殺して、チームのために自分ができる最大限を尽くす、そこに少しの迷いも感じられませんでした。だからこそ彼女たちはあんなにもキラキラしていたのでしょう。
「かけだすモナカ」の加藤葉月の言葉にそんなチームの思いを代弁するセリフがありました。
「でも、良かったなって。私もう一度選びなおせても、多分吹奏楽やってると思います。」
この言葉が全てなんですよね。
一生懸命努力して、努力して、それでもオーディションには合格できなくて。それでも自分にできる形で吹奏楽部のために全力を尽くしてきたからこそ紡ぎ出されたこの言葉には、彼女たちが青春全部かけた重みが感じられます。
こんな思いで、活動してきた「チームモナカ」だからこそ報われて欲しい。そう願わずにはいられないのです。
そして、あれから一年が経過し、再びオーディションの時期が迫ってきます。
「チームモナカ」のメンバーたちの思いはどのような形で結実していくのか?が今回の「響け!ユーフォニアム:北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章:前編」では描き出されていました。
以下ネタバレ注意
加部友恵の決断
©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」特別編「かけだすモナカ」より引用
「チームモナカ」のリーダーだった加部友恵は今作においては3年生となっており、初心者新入部員の教育係に任命されています。
初心者たちの面倒見も良く、自作のノートに新入生たちの演奏の特徴や課題を書き出し、それに基づいて丁寧な指導をするなど、教育係としてこの上ない活動ぶりでした。
しかし、中川夏紀やユーフォニアムの黄前久美子、トランペットの高坂麗奈たちは、そんな加部友恵の異変に気付き始めます。
新入生たちのことを記したノートを見られた時の妙な焦りと動揺、オーディション直前にも関わらず練習に身が入っていない様子、何か事情を抱えているのではないか?という含みを持たせています。
そして、部員たちの前で、突然その事実が告げられました。自分はオーディションに参加しないということを伝えたのです。彼女は顎関節症を発症し、満足な演奏ができない状態にありました。つまり医者にドクターストップをかけられていました。
久美子に追及される友恵は、自分が演奏できない状態にないと分かって不思議と悔しさは感じなかったことやオーディションに出られなくなって安心感を感じたことを告げました。そして自分はマネージャーとして最後のコンクールに関わりたいという意志を表明したのです。
ただ友恵の感情がこんなにシンプルなものだとは到底思えないのです。
昨年のオーディションでは悔しい思いをしながらも、「チームモナカ」のリーダーとしてあんなにも懸命に活動してきた友恵が演奏ができないことに悔しさを感じないはずもないし、オーディションに出られないことに安心するはずもありません。
彼女の感情はおそらく計り知れないほどに複雑なものだと思います。
確かに本人の口から出た言葉も本音の一側面ではあると思います。しかし、本音のどこかで悔しくて悔しくてたまらない気持ちを押し殺しているようにも感じました。
彼女の決断をそっと尊重した夏紀はそんな友恵の思いを全部分かっていたんだと思います。
最後のオーディションに出なければ、演奏を諦めれば、後悔するなんてことは友恵も分かっていると思います。それでも、それでもオーディションを辞退して、マネージャーになる道を決断したのです。相当の覚悟があるのは間違いありません。
悔しい、悔しい思いを押し殺して、今年もコンクールメンバーを支えることに全力を注ごうと決断した友恵。
去年のあの「チームモナカ」のリーダーとしての彼女を知っているからこそ、その決断の重さに私は涙が止まらないのです。
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チームモナカの肖像
中川夏紀の覚悟
中川夏紀は元々部活に対してまじめなタイプではありませんでした。
しかし部の雰囲気に流される形ながらも、徐々にユーフォニアムへ情熱を傾けていきました。しかし、前回のオーディションではあえなく落選してしまいました。自分の実力不足だと納得していた様子でした。
そして、あれから1年が経過して、新入生の奏をユーフォニアムパートに迎えてのオーディションを迎えました。
今年のオーディションに懸ける夏紀の思いはすごく強いものだということが本作の節々から伝わってきました。それは単に最後のコンクールだから、副部長だからという理由からくるものだけではありません。
自分と一緒に頑張ってきた友恵の無念のオーディション辞退、そして自分が1年間懸命に練習してきたこと、この2つの理由から夏紀は何としてでもオーディションに合格したい、メンバーに選ばれたいという強い思いを露わにしていました。
生意気な新入生の奏に苦手なパートを教えてくれるよう頼んだり、先輩を差し置いては合格できないとオーディションでわざとミスをする奏を本気で叱ったのは、彼女が本気でこのオーディションに懸けていたからです。
しかし、新入生の奏との実力差は明白でした。自分もオーディションで演奏ミスをしてしまい、合格は絶望的かと思われました。
そして顧問の美知恵からコンクールメンバーが発表されました。
「次に低音パート。まずはユーフォニアムから。」
「三年、中川夏紀」
震える声で返事をした夏紀。1年間の努力と仲間の無念を背負う覚悟、それに裏打ちされたコンクールメンバー入りという結果。
中川夏紀は自らの手で、1年前開ける事ができなかったステージへの扉を開いて見せたのです。
加藤葉月の成長
©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」特別編「かけだすモナカ」より引用
加藤葉月は高校から吹奏楽を始めました。そのため昨年のオーディションでは少し実力的に厳しいものがありました。
そして、今年のオーディションがやってきました。し
かし、3年生には絶対的存在の2人、1年生にも自分よりはるかに上手い後輩が1人。そんな中で、自分はメンバー入りできるのだろうか?と迷いながらも練習を続けてきました。
結果的には、彼女は今年もコンクールメンバーには選ばれませんでした。
しかし、先輩としてチューバパートの1年生2人の人間関係修復に尽力したり、自分もコンクールメンバーに選ばれるんだという意気込みで練習に取り組む姿には、1年前とは違う彼女の成長がひしひしと感じられました。
今年もステージへの扉を開くことができなかった葉月。しかし、扉を開けた後輩の背中をそっと押してあげる葉月の姿は、彼女が来年こそは自分でステージに立つことを予感させる何かを感じさせてくれました。
釜屋つばめ
©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」特別編「かけだすモナカ」より引用
パーカッションの釜屋つばめは、今回主人公の久美子のクラスメートになります。
わざわざそんな描写があったということは後編では活躍の機会があるのでしょうか?前編では、久美子や葉月、緑輝と少し会話する程度の出番だけでしたが、後編に期待が高まります。
吉沢秋子
©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」特別編「かけだすモナカ」より引用
トランペットの吉沢秋子は、今回出番こそないもののトランペットのコンクールメンバーに選ばれました。
1年前「チームモナカ」として、コンクールメンバーを支え続けたメンバーが、こうして1年越しにメンバー入りを勝ち取る姿に感激せざるを得ませんね。
おわりに
今回は「チームモナカの肖像」ということで、1年前のオーディションで悔しい思いをした、「チームモナカ」のメンバーたちがどのような思いで、今回のオーディションを迎えたのか、どんな結果を勝ち取ったのかを解説してみました。
全員が全員作中で描写されているわけではありません。
しかし、1年前のあの悔しい経験とそれでも自分の役割を全うした思いが、間違いなく「チームモナカ」のメンバーたちを一回りも二回りも成長させたのだと思います。
私は、今作を読んでいて、友恵がオーディションを辞退すると表明した時、夏紀がコンクールメンバーに選ばれた時はもう涙が止まりませんでした。
どんなに努力しても時に運命は残酷です。それでも努力し続けるしかないのです。報われない努力にも必ず意味があるんだということを「チームモナカ」のメンバーたちは自ら証明してくれたあるいはこれから証明してくれるのかもしれません。
今回も読んでくださった方、ありがとうございました。
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