アイキャッチ画像:(C)2017 TOHO CO.,LTD. 映画「GODZILLA(ゴジラ)怪獣惑星」予告編より引用
目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね、今日発売になりましたノベライズ「GODZILLA(ゴジラ) 怪獣黙示録」についてお話していけたらと思います。
なお、本作の内容に関する詳細なあらすじ等は書くつもりはありませんが、ある程度ネタバレも含みで書いていきますので、未読の方はお気を付けくださいますようよろしくお願いいたします。
良かったら最後までお付き合いください。
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映画「GODZILLA(ゴジラ)怪獣惑星」:あらすじ・概要
日本が誇る「ゴジラ」シリーズ初の長編アニメーション映画。巨大な怪獣たちが支配する2万年後の地球を舞台に、故郷を取り戻すべく帰還した人類の闘いを描く3部作の第1部。20世紀末、巨大生物「怪獣」とそれを凌駕する究極の存在「ゴジラ」が突如として地球に現われた。人類は半世紀にわたる戦いの末に地球脱出を計画し、人工知能により選ばれた人々だけが移民船で旅立つが、たどり着いた星は人類が生存できる環境ではなかった。移民の可能性を閉ざされた船内では、両親の命を奪ったゴジラへの復讐に燃える青年ハルオを中心とする「地球帰還派」が主流となり、危険な長距離亜空間航行を決断。しかし帰還した地球では既に2万年もの歳月が流れており、ゴジラを頂点とした生態系による未知の世界となっていた……。「名探偵コナン」シリーズの静野孔文と、「亜人」の瀬下寛之が監督をつとめ、「PSYCHO-PASS サイコパス」の虚淵玄がストーリー原案と脚本を担当。「シドニアの騎士」「亜人」などセルルックの3DCGアニメーションを多く手がけるポリゴン・ピクチュアズが制作。(映画comより引用)
映画「GODZILLA(ゴジラ)怪獣惑星」:予告編
「GODZILLA(ゴジラ)怪獣黙示録」:怪獣侵略マップ
本作「GODZILLA(ゴジラ)怪獣黙示録」は映画「GODZILLA(ゴジラ)怪獣惑星」の前日譚になっております。そのため映画までにざっとだけでも、本編に以前にどんなことが起こっていたのかを知っておいたほうが良いかと思いまして、当ブログ管理人の方で、簡単にではありますが怪獣の地球侵略マップを製作しました。
まあ絵心が無さすぎるのと、手描きなので見えづらい点はご容赦ください。
・1999年:カマキラス:ニューヨーク
https://matome.naver.jp/odai/2140466351367518801/2140475548928932403より引用
カマキラスは最初に人類の前に現れた怪獣でした。アメリカ東海岸のニューヨークを陥れ、大きな打撃を与えましたが、空軍の攻撃により撃退されました。しかし、この出来事がきっかけで世界は恐慌に突入し。経済情勢が著しく乱れました。
・2002年:ドゴラ:ロンドン
http://streamline.filmstruck.com/2010/06/03/jewel-thieves-giant-monsters/より引用
ドゴラの登場には多くの謎が孕まれています。というのも未確認生命体の採取を目的としていたソ連の衛星が、イギリスに落下してきたことがきっかけで現れることになったからです。ソ連がこの事件に関して口を閉ざしているのも、なんだか意味深です。
・2005年:ラドン・アンギラス・へドラ
https://togetter.com/li/848469より引用
ラドンとアンギラスは中国に2005年、同時に出現しました。
そして中国は当時独自に研究していた生物兵器「ヘドラ」を用いるのですが、「ヘドラ」はアンギラスとラドンを退けてもなお、自我を持って行動を続け、北京を壊滅させるに至りました。
http://www.henshin-hero.com/archives/1489029.htmlより引用
・2006年:アンギラス:南アフリカ
https://ameblo.jp/nokamiya/entry-12195570736.htmlより引用
詳しいことは分かっていないそうです。
・2012年:メガロ:東アフリカ
https://plaza.rakuten.co.jp/jyoudankeri/diary/201210140000/より引用
アフリカには巨大怪獣と戦えるだけの軍備が整っておらず、国際的な支援もほとんど受けられなかったがために、メガロの成すがままになってしまい、アフリカ大陸がほとんど壊滅に近い打撃を受けました。またこのことがきっかけで、難民が大量発生し、ヨーロッパへと押し寄せることとなりました。
・2017年:ダガーラ:シドニー
ダガーラと呼ばれた翼竜のような怪獣がシドニーに出現しました。空軍・陸軍の活躍によって撃退されたのですが、亡骸が海に落下し、そこから未確認物質が拡散し、オーストラリア近郊の海洋は汚染され、オーストラリアでは多数の人が死亡しました。また、このことがきっかけでオーストラリアとのアクセスも実質的に途絶えました。
・2022年:オルガ:トルコ
http://terrynoheya.blog.fc2.com/blog-date-201608.htmlより引用
トルコのアンカラに位置していた難民住民区にオルガが現れ、周辺を壊滅させました。
・2022年:マンダ:大西洋
http://www.ne.jp/asahi/paopao/wonderland/db/manda.htmlより引用
ヨーロッパ付近の海洋に現れて、難民を乗せた船やイギリスへの逃亡船を幾度となく沈めました。2041年の「オペレーション・エターナルライト」によって撃退されました。この作戦では、「轟天」なんていう潜水艦が登場したりしていて、ゴジラファンとしては胸熱です。
以上簡単にではありますが、ゴジラ以外の怪獣たちの侵略史を整理してみました。他にもゴジラファンにはお馴染みのビオランテですとか、ガバラですとか、マグロを食べる奴ですとか、鱗粉をまとった褐色の妖精(モスラの小美人を想起させる)なんかも登場しますので、往年のゴジラファンであればあるほど、楽しめる内容になっていると思います。
ビオランテが登場する場所がノルマンディーなのもまた憎い演出ですよね。連合軍が総力を挙げてフランス奪還に挑んだあの地で、人間とビオランテの決死の戦いが繰り広げられます。また、ここでの勝利が人類を勢いづけたという点でも、ノルマンディー上陸作戦と似た意義を孕んでいます。
他にも「シン・ゴジラ」を筆頭に過去作オマージュがたくさんあったりして、非常に読んでいてニヤニヤさせてもらいました。
「GODZILLA(ゴジラ)怪獣黙示録」:ゴジラ侵略マップ
ここからはゴジラがいつ出現して、どのように人類の領域を侵略していったのかを簡単にご説明します。こちらも手描きで見にくいですが、マップを用意しました。
絵心が無さすぎる、見えにくいという点はご容赦くださいませ。
・2030年:アメリカ西海岸
(C)2017 TOHO CO.,LTD. 映画「GODZILLA(ゴジラ)怪獣惑星」予告編より引用
ギャレス版ゴジラの登場はアメリカ西海岸でしたので、そこに合わせているのかなと感じました。人類が怪獣の撃退に自信をつけ始めたころに、ゴジラが現れました。ゴジラの登場により、アメリカの西海岸は壊滅しました。アンギラスやバラゴンといった怪獣が立ち向かうことも出来ずに逃亡してしまう描写があることから、まさに「怪獣王」に君臨する生物と思われます。
アメリカはこの「ゴジラ」の撃退に大量の核兵器を投入しますが、意味をなさず、地球の生態系を破壊したにとどまりました。
・2034年:西ヨーロッパ
2034年にゴジラが西ヨーロッパに出現しました。EU連合軍がこれを迎え討とうと総力を挙げましたが、太刀打ちできず、西ヨーロッパほぼ全域が壊滅状態になりました。
このパートでは、ゴジラに追い詰められたフランス国民があの「ダンケルク」からイギリスへと避難しようとしたという叙述があって、第2次世界大戦の「ダイナモ作戦」を想起させてくれますね。
・2042年:アメリカ東海岸
ゴジラの活動が頻繁になり、まずはアメリカ東海岸に出現すると、その全域を壊滅させました。その後、アフリカ北部を壊滅させると、ユーラシア大陸へと進行していきます。ヒマラヤ付近でゴジラを停滞させる作戦を決行するもわずか1年で防衛線を突破されてしまい、ユーラシア大陸の半分近くが壊滅しました。
・2046年:浜松
(C)2017 TOHO CO.,LTD. 映画「GODZILLA(ゴジラ)怪獣惑星」予告編より引用
ゴジラシリーズを見ていると、浜松というのは非常になじみの深い地名ですよね。しばしばゴジラの上陸スポットになっています。本書では詳しく描写されていないのですが、ここで対ゴジラ最終決戦が行われたそうで、人類はこれに敗北してしまいました。
本書の冒頭に略歴のようなものが掲載されているのですが、2046年の浜松上陸の欄にはいくつか黒塗りのようなものがあって、何か重要な秘密が隠されていることを匂わせています。
「 」「 を喪失。」
といった具合なのですが、これは映画版を見ないと明らかになってこないということでしょう。
日本での完全敗北を受けて、2048年に人類は地球外惑星への移民計画を本格的に実行に移していきます。
解説1:ポストモダンと虚淵玄
やはり虚淵さんの関わっている作品を語る上で、ポストモダニズムの考え方を避けて通ることはできないでしょう。この考え方は、既存の絶対的権威を脱構築していくことで、新たな権威を得ようとするものです。
つまり、絶対的だと思われているものに対して、徹底的に疑問を投げかけていくことでそれを打破し、新たな概念や価値観に到達しようとする思想のことを指しています。
虚淵さんの作品のことを指して、しばしば「正体は人間でした。」という言葉が使われているのを耳にしますが、これも彼の作品にポストモダニズム的な思想が反映されているからこそなんですよね。「正体は人間ではない」という絶対的な価値観に物語を通して疑問を呈し続けることで、最終的にはそれを脱構築した「正体は人間である」という結論に到達しているからです。
そして、現代の社会においてこのポストモダニズムを考えるという点で、すごく重要な事件があります。それが「9.11:アメリカ同時多発テロ」なんですね。
アメリカが、全人類が、世界最大の国力を誇るアメリカであんな大規模なテロ事件が起こるはずがないという絶対的な安心感を持っていたんですよね。ただあの日、それがすべて崩れ去ったわけです。だからこそ、今まで絶対的とされてきたアメリカ安全神話に徹底的な追及が必要になったわけです。そして世界は「管理社会」という方向へとシフトしていくことになりました。セキュリティ確保の名目でどんどんと「管理社会化」が進行したわけです。
そのため「9.11:アメリカ同時多発テロ」はある種のポストモダニズムの象徴的な事件ともされているんですね。
例えば、ポストモダニズムを代表する作家ポールオースターの「闇の中の男」では、「9.11」が存在しなかった世界が描かれています。
他にも日本の作家で伊藤計劃の「虐殺器官」では、「9.11」の存在しない世界線を描き、それでかつ「9.11」に相当する別の事件を登場させていました。
このようにフィクションの世界においてもポストモダニズムという思想と「9.11」という事件は密接な関わりを持っています。
そして話を今作「GODZILLA(ゴジラ)怪獣黙示録」へと戻しましょう。この作品では1999年にカマキラスが初の怪獣として登場することから、「9.11」の存在しない世界線へとシフトしていることが分かります。
その上で、カマキラスがアメリカのニューヨークに登場してワールドトレードセンタービルを真っ二つにするという描写が描かれているわけです。ここで虚淵さんは、まさに「9.11」の再定義を行っているんですよね。
人類は「霊長類」として地球という惑星に君臨する最強の生物だったわけです。そんな地球において人類の右に出る生物はいないという絶対的な価値観にここで疑問を突きつけたわけですよ。つまり「ポスト人間時代=怪獣時代」という図式になっているわけです。
その後のたびたびの怪獣の襲来が人類という存在が地球で最強であるという価値観にどんどんと疑問を呈していきます。そして2030年のゴジラのアメリカ西海岸上陸をもって、「人間時代」の絶対的価値観は完全に崩れ去り、「ゴジラこそが地球の王である」という絶対的な価値観が脱構築的に確立されたわけです。
ここまでを映画のプリクエルとして描いているんですね。ということは、映画版である「GODZILLA(ゴジラ)怪獣惑星」が何を描くことになるのかというと、それはもちろん「ポスト怪獣時代」ないし「ポストゴジラ時代」を目指すための戦いなんですよね。「ゴジラが地球の王である」という絶対的な価値観に疑問を突きつけていくことで、脱構築的にそれを書き換えるところにゴールを設定しているのだと思います。
その果てに待つのが、「ポストゴジラ時代=人類時代」なのかはたまた別の結末なのかはまだまだ予想がつかないですね。
今回は、虚淵玄さんの作品、そして今回の「GODZILLA(ゴジラ)怪獣黙示録」の根底には、ポストモダニズム的な考え方があるということを紹介させていただきました。
解説2:メシアと食料
「虐殺の文法は、食糧不足に対する適応だった。」と伊藤計劃の「虐殺器官」の中で述べられています。人々を急進的に革命やクーデター、暴動に駆り立てるものとは、物質的な窮乏、とりわけ食糧不足であったということを説明しているわけです。
本作「GODZILLA(ゴジラ)怪獣黙示録」の中で、怪獣たちへの反撃へと人々を駆り立てるのは、食糧を初めとする物的資源の不足に対する適応なんですよね。彼らを退けることが物質的窮乏を打破するための最善の策であると判断されるために、人々は反撃へと活気づいていきました。
ただ人々を急進的に革命やクーデターに向かわせようとした場合に、それだけでは役不足なんですよね。確かに人々は物質的窮乏に直面すれば、生存本能的に戦いへと向かわざるを得なくなることがあります。しかしながら、人々を急進的に戦いへと向かわせるためには、もっと取り巻く構図を単純化する必要があります。自分たちの権益を虐げる絶対悪としての「怪獣」そして我々人間。という二極構造を作り出すことで人々を勧善懲悪的なシンプルな思考に落とし込むことが大切なわけです。
では、そうするためには何が必要なのか?それは英雄的存在なんですよね。もっと言うなれば宗教的救世主のような存在が必要なのです。例を挙げるなれば、モーセやジャンヌダルク的な存在ということです。
人々を救世主崇拝や宗教的熱狂に巻き込むことで、人々を思考停止させ、急進的に戦いへと向かわせることが可能になります。
このビューヒナ―の「ダントンの死」なんかでは、まさにそういった革命観が明確に描かれています。
つまり人々を戦いへと向かわせるために必要なのは、「メシアと食料」だということです。
本作「GODZILLA(ゴジラ)怪獣黙示録」では、エクシフとビルザルド2つの人種の宇宙人が登場し、人類に手を差し伸べました。
エクシフは人々に宗教的熱狂を与えました。
(C)2017 TOHO CO.,LTD. 映画「GODZILLA(ゴジラ)怪獣惑星」予告編より引用
一方のビルザルドは人々に物質的窮乏を脱するための技術を与えました。
(C)2017 TOHO CO.,LTD. 映画「GODZILLA(ゴジラ)怪獣惑星」予告編より引用
本作「GODZILLA(ゴジラ)怪獣黙示録」にはそんな古来からの革命観が反映されているんです。その考え方に裏打ちされた上で、人類対怪獣の戦いが設計されているんですね。何とも興味深いです。
映画「GODZILLA(ゴジラ)怪獣惑星」の記事
映画本編を鑑賞してきまして、そちらの記事も掲載しております。ぜひ読んでいってください。
またシリーズ第2作目の『GODZILLA 決戦機動増殖都市』の考察記事も書いておりますので良かったら読みに来てください。
おわりに
今回の記事では、おおまかにどのように怪獣たちが人類の住む地球に侵略してきたか?という点に対する解説と本作に対する個人的な批評を書かせていただきました。
詳しくはご自分の目で確かめてみてください。
映画「GODZILLA(ゴジラ)怪獣惑星」を見る前に、絶対に読んでおくべき1冊だと確信しております。ぜひ、映画を見に行くつもりにしている人は、購入を検討してみてください。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。
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