みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね映画ポケモンシリーズ最新作の『ポケットモンスターみんなの物語』についてお話していこうと思います。
「キミにきめた」は個人的にはあまり好きではなかったのですが、今回の『ポケットモンスターみんなの物語』はリブート路線として最適解を示してくれたと思っています。
ポケモンと人間が共に立ち上がって困難に挑むという王道のストーリーですが、非常に見応えがありました。
本記事はネタバレになるような内容に言及する可能性があるかもしれないということでネタバレ注意とさせていただきますが、極力展開に関する情報に触れない形で書いていきます。
一応、作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
目次
『ポケットモンスターみんなの物語』
あらすじ・概要
人気アニメ「ポケットモンスター」シリーズの劇場版第21作。前年公開の「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」から始まった、サトシとピカチュウの新しい冒険を描き、今作には伝説のポケモン「ルギア」が登場。
1年に一度の祭りでルギアから恵みの風がもたらされる街フウラシティを舞台に、新しい仲間たちとの物語が紡がれる。1年に一度の風祭りの最終日に、ルギアからの恵みの風がもらえるというフラウシティ。
偶然、祭りに参加していたサトシとピカチュウは、リサ、カガチ、トリト、ヒスイ、ラルゴという5人の仲間と出会う。それぞれが悩みを抱え、パートナーのポケモンと一歩を踏み出せずにいる5人との出会いが、運命の歯車を回し始める。
芦田愛菜、川栄李奈、濱田岳、大倉孝二、野沢雅子のほか、シリーズおなじみの中川翔子、山寺宏一がゲスト出演する。
(映画com.より引用)
『ポケットモンスターみんなの物語』感想・考察(ネタバレあり)
新路線のポケモン群像劇はまさに「みんなの物語」
本作が全く新しいポケモン映画であることは、まずそのスタッフ陣からも明確です。
ポケモン映画の監督と言えば、湯山邦彦さんが長らく務めてきたわけですが、今作『ポケットモンスターみんなの物語』では前作の副監督であり、テレビシリーズ『ポケットモンスターX&Y』で監督を務めた矢嶋哲生さんが引き継ぎました。
またキャラクターデザインにドラえもん劇場版シリーズでも知られる金子志津枝さんが参加しているため、劇場版新キャラクターのデザインはこれまでのポケモン映画とは一線を画するものへと変わりました。
それだけではなく、『進撃の巨人』『終わりのセラフ』『甲鉄城のカバネリ』などで高品質なアニメーションを世に送り出したことで知られるWIT STUDIOが参加しています。
このことにより映画本編を見ていただければわかるかと思いますが、格段に作画が良くなっています。
ポケモンのテレビシリーズではたまにとんでもない作画が見られますが、今回の劇場版『ポケットモンスターみんなの物語』ではそんなハイレベルなアニメーション作画が随所に見られます。
もちろんスタッフが変わっただけではありません。
本作のキャラクターは、基本的にサトシとロケット団を除いては全員が新キャラクターになります。
そのためテレビシリーズをチェックしていない人でも、何ならポケモンに詳しくない人でも見やすい作りとなっています。
さらに本作が見やすい作りになっているのは、ポスターに登場しているルギアもそうですが、本編で活躍するポケモンの大半が第1世代、第2世代までのものなので、しばらくポケモンから離れている当ブログ管理人のような「ポケモンが懐かしいと感じるようになった人」でも楽しめる内容になっている点からも分かります。
これは前作『ポケットモンスター キミにきめた!』以降の新路線ですね。
また本作の新しいキャラクターたちにも様々な世代に幅広く受け入れられるようなポケモン映画となる工夫が散りばめられています。
例えば陸上少女のリサというキャラクターはポケモンを1匹も捕まえたことがなく、けがをしている弟の頼みでフウラシティでとあるポケモンを捕まえて欲しいと頼まれます。
彼女はそれがきっかけで初めてポケモンたちと関わりを持つことになります。
作中では、そんな彼女がポケモンとのかかわりを通じて失っていた熱い思いを取り戻し、成長していく姿が描かれました。
(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2018 ピカチュウプロジェクト
ポケモンを知らない人がこの作品を見に来たとしても、リサにすごく共感できるところは多いと思いますし、彼女と一緒にポケモンの世界に魅了されていくプロセスを追体験できます。
また昔ポケモンが大好きだったけど知らぬ間に距離を置いていた人っておそらくたくさんいると思うんです。
かく言う当ブログ管理人も幼少の頃ロケット団のフィギュアを振り回して遊んでいたほどポケモンは大好きだったんですが、中学を卒業したあたりでしょうか?徐々にポケモンから距離を置くようになってしまいました。
劇場版はDVDでは見ていましたが、映画館でポケモン映画を見ることもなくなりましたね。
そういう方は、ヒスイやカガチといったキャラクターたちに非常に共感的になれると思います。
(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2018 ピカチュウプロジェクト
ポケモンを知っている、ポケモンが大好きだったけれども、事情があってポケモンとは距離を置いているヒスイは特に私は個人的に共感するポイントが多かったです。
私も辛いことがあった時にポケモンを見ると、懐かしい気持ちになって救われたことがありましたから。
このように本作で新しく登場するキャラクターたちは多種多様な背景を抱えていて、それによってこの『ポケットモンスターみんなの物語』はポケモンファンのみならず、これからポケモンが好きになる人、昔ポケモンが好きだった人、ポケモンを全く知らない人であっても楽しめる作りになっているんですね。
だからこそ今回のポケモン映画は文字通り「みんなの物語」なんです。
本作は『ポケットモンスタールギア爆誕』と対になる物語?
さて、映画『ポケットモンスターみんなの物語』にもう少しだけ踏み込んだ話をしていくのですが、この映画にルギアが登場することからも分かる通りで、実は『ポケットモンスタールギア爆誕』とも非常に関わりが深い映画でもあるんです。
少しここから『ポケットモンスタールギア爆誕』のネタバレになるような内容に触れると思いますので、お気をつけください。
この作品が一体どんな内容だったのかというと、ファイアー、サンダー、フリーザーの暴走がもたらす世界の危機に、ルギアから「君が世界を救うんだ。」と指名されたサトシがその宿命を背負い、危険を冒しながらも戦い、結果的に世界を救うという物語になっています。
ただこの映画の驚くべき点は、先ほどご紹介した当ブログの記事でも書かせていただきましたが、そんなサトシの英雄譚を肯定的に派描いていないんです。
仲間やポケモンに支えられながらではありましたが、結局のところサトシは1人で「世界を救う」という重荷を背負ったんですよ。
たった10歳の少年がですよ。
そんなサトシに対して、彼の母親は「命を大切にしなさい。」と叱責します。
『ポケットモンスタールギア爆誕』の中で印象的だったのが、そんなサトシの奮闘をただ見つめるしかできないポケモンたちと、そして人間たちです。
結局は世界の危機に際して、誰もサトシのように行動を起こせなかったんです。そ
れがために世界の命運が、1人の少年の背中にのしかかってしまうこととなりました。
誰か1人が礎となり、世界を救う。そんな美談的な英雄譚はこの世界にたくさんありますが、そんな物語を果たして美談と呼んでいいのでしょうか?と考えてみた時に、少し難しいところがあります。
例えば昨年公開され、映画ファンの間で大きな話題となったクリストファーノーラン監督の『ダンケルク』という作品は、英雄として死ぬという行為に対して冷静な姿勢を示しています。
英雄として死ぬよりも、泥臭くとも生き残る方がずっと大切なのだという「生命の不可逆性」に対する経緯が見て取れる内容となっていました。
そして『ポケットモンスターみんなの物語』に視点を移していきますと、この映画は今までのポケモン映画のようにサトシと彼と一緒に旅を続けてきた仲間たちが大きな困難に立ち向かうというよりも、偶然フウラシティの危機に居合わせてしまった少年少女たちが自分なりの方法とやり方で、人々を、街を救うために戦うという物語になっています。
「選ばれし者」が孤独に世界を救うために危険を冒すのではなくて、「誰でもない1人1人」が自分のできる範囲で力を出し合い、時にはポケモンと協力し合いながら大きな困難を乗り越えていく様は、まさに『ポケットモンスタールギア爆誕』へのアンサーにも見て取れました。
『ルギア爆誕』のあの時、動けなかった人間も、そしてポケモンも。2つの種族が力を合わせて戦うのだから胸が熱くならないはずはないでしょう。
今作に見られる様々な社会問題
映画『ポケットモンスター』は基本的には子供向けの映画にはなると思うんですが、それでいて現代社会が抱えている諸問題を子供たちにも分かりやすい形で内包させているのが特徴的です。
今作『ポケットモンスターみんなの物語』で言いますと、ポケモンと人間の共生の問題です。これはそのまま現実世界の人間と動物の関係性に置き換えることができます。
人間が動物たちの暮らしていた山々や森林を切り開き、自分たちが住むための街を築いてきました。しかし、そのために動物たちが暮らしていた場所が奪われ、これが原因で絶滅する動物が増えたり、街に現れて田畑を荒らす動物が現れたりといった様々な問題に繋がっています。
そんな時に思い出したいのが、『ポケットモンスタールギア爆誕』の劇中でのルギアの名言です。
「それぞれの世界がある。一緒に住んでいる世界だから壊してはいけない。わたしにはわたしの、きみにはきみのそれぞれの世界がある。」
人間には人間の、動物には動物の、そしてポケモンにはポケモンの世界があります。それらは同じこの星を共有する生命体です。
だからこそ自分たちの世界の利益のために、他の生命体の世界を壊してしまうということがあってはならないんです。
イースター島なんかは、人間のエゴのために島が木々の無い丸裸の状態になってしまいました。
『ポケットモンスター』は常に人間とポケモンの共生をテーマにしてきてはいますが、『ポケットモンスターみんなの物語』はその重大なテーマをいつも以上に深く考えさせてくれる内容になっています。
それに加えて、こちらはネタバレになってしまいそうなので深く葉言及しませんが、本作『ポケットモンスターみんなの物語』は行き過ぎた科学というものが、非常に二面性を孕んだものであるという心理にも言及しているように感じました。
本作にトリトというキャラクターが登場するんですが、彼はポケモンの研究をすることで人間の病気を治療したりするための薬剤の開発に取り組んでいます。
しかし、そんな人を助けるための彼の研究が思わぬ方向へと進んでしまいます。その先は映画本編でご覧ください。
(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2018 ピカチュウプロジェクト
例えば遺伝子組み換え食品は、栽培がしやすく、人間が食料を確保していく上で非常に効用が高いものかもしれません。
その一方でその「まがいもの」のような性質を持った作物がミツバチといった生き物たちに悪影響を与え、生態系を破壊してしまうのではないかということが危惧されています。
他には原子力エネルギーもそうですよね。
二酸化炭素を大量に排出する火力発電よりもずっと環境に優しいという側面も持ちながら、一たび事故を引き起こすと取り返しのつかないような大災害となり、多くの人を死に至らしめることが2011年の事故で身をもって感じたはずです。
一見非常に優れた技術にも、必ず二面性があるのです。だからこそ我々は科学がもたらしてくれる「便利さ」にかまけることなく、その裏にある「デメリット」もきちんと把握しておかなければなりません。
こういった言葉で書くと難しくなってしまうような現代社会の問題を、子供たちにも分かりやすい形で物語に溶け込ませてあるのが、非常に素晴らしいポイントと言えるでしょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は映画『ポケットモンスターみんなの物語』についてお話してきました。
できるだけネタバレにならないように書いてきたので、まだまだ書き切れていないことがたくさんありますが、それに関しては公開からしばらくしたら追記しようかなと考えております。
この映画はこれまでのポケモン映画とは違い、”ポケモン群像劇”という新しいスタイルをとっていましたが、それが見事に功を奏していて、それぞれのキャラクターが魅力的でかつ、それぞれの物語に起承転結があるという素晴らしい構成になっていました。
WIT STUDIOが参加したこともあってか単純にアニメーションのクオリティも例年以上となっていますが、脚本そのものもここ数年のポケモン映画の中では飛び抜けたものになっていると思いました。
作品を見ながら、涙を流しているいる人もたくさんいましたし、本当にポケモンが好きな人だけに刺さる映画ではなく、この映画を見るあらゆる人のための映画になっていると思いました。
多種多様な背景を持つキャラクターたちが共感の幅を広げてくれているおかげとも言えるでしょうか。
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なかなか面白そうですね~。
本日子供達と行って来ます!
かなり良かったですよ!
ポケモンに詳しい人もそうでない人も楽しめる内容です(^^)