アイキャッチ画像:(C)空知英秋/集英社 (C)2018映画「銀魂2」製作委員会
目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』についてお話していこうと思います。
本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想・解説記事となっております。
作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
『銀魂2掟は破るためにこそある』
あらすじ・概要
週刊少年ジャンプに連載中の空知英秋による大人気コミックス『銀魂』の実写化映画第2弾です。
前作は原作ファンのみならず、多くの人から評価を獲得し、興行収入約40億円を稼ぎ出す大ヒットとなりました。仮に製作費が5~6億円ほどかかっていたとしても、この成績であれば、文句なしの大成功と言えるでしょうね。
今作『銀魂2 掟は破るためにこそある』はそんな前作の好調っぷりの恩恵を受けている感がありありと出ていて、特に後半のアクションパートは前作とは打って変わって、迫力のある映像へと進化していました。
監督・脚本を務めたのは、前作から引き続いて福田雄一さんです。
『勇者ヨシヒコ』シリーズや映画『斉木楠雄のψ難』などでも知られる福田監督は、コメディ描写に定評があり、今作でもそのセンスを如何なく発揮してくれていました。
キャスト陣には前作から引き続いて、豪華な顔ぶれが集結しています。主人公の銀時を演じるのは小栗旬、万屋の面々には橋本環奈、菅田将暉が参加し、新選組の面々は柳楽優弥や吉沢亮といった人気俳優が演じています。
そして本作『銀魂2 掟は破るためにこそある』からの新キャラクターとして、今作のキーキャラクターである伊藤鴨太郎を三浦春馬が、将軍を最近前田敦子との結婚を発表した勝地涼が、剣客万斉を窪田正孝がそれぞれ演じています。
今回は原作の中でも特に人気のあるエピソードである「新選組動乱篇」が主軸に据えられたプロットになっています。
新選組に突然帰陣した伊藤鴨太郎。それは新選組を揺るがす大きな嵐の前触れでした。
何者かの陰謀で突如オタク化し、すっかり府抜けてしまった副長の土方十四郎。規律と大黒柱である彼を失った新選組は徐々に鴨太郎の陰謀に巻き込まれていきます。
果たして、銀時は、万事屋は、土方は、総悟は、近藤は、新選組を守り抜く事ができるのか?
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『銀魂2掟は破るためにこそある』感想・解説(ネタバレあり)
キャスト陣の好演が際立ちまくり!!
前作は橋本環奈の「千年に一度の美少女」という肩書をかなぐり捨てるような怪演や、中村勘九郎の本当に歌舞伎役者だよね??と言わんばかりの全裸演技といったコメディパートの演技が非常に素晴らしかったのですが、続編である『銀魂2 掟は破るためにこそある』では対照的にキャスト陣の気持ちのこもった素晴らしい演技が光りましたね。
前作でも飛び抜けて「沖田総悟」というキャラクターを忠実に演じていた吉沢亮は、さらなる進化を魅せ、見る者をゾクッとさせるような最高の演技を披露してくれました。
「新選組動乱篇」ってやっぱり新選組が主役の長編ですから、必然的に紅桜篇を踏襲した前作よりも土方や沖田の作品に占める重要度は高くなります。
その中で吉沢亮は「沖田総悟」というキャラクターが時折見せる「狂気」のようなものを自分に憑依させ、その「眼」でもって観客の度肝を抜いてきました。
原作を読んでいる人の間でも名シーンとの呼び声の高い「舌ペロ」シーンは特に鳥肌が立ちました。
前半のギャグパートの総悟とはまるで別人格なんですが、そのスイッチの切り替えをこの上ないコントラストで出来ていたのが印象的で、吉沢亮という俳優の懐の深さが垣間見えました。
沖田総悟 (C)空知英秋/集英社 アニメ『銀魂』より引用
実写版の『BLEACH』では、石田雨竜役を演じていた彼ですが、吉沢亮はやっぱりマンガ実写映えする俳優ですよね。マンガやアニメの中からそのまま飛び出してきたような印象を与えてくれます。
当ブログ管理人的には今回の『銀魂2 掟は破るためにこそある』のMVPは吉沢亮です。
そうなんですよ。今作からの新キャストの演技も素晴らしくて、特に三浦春馬の演技にはまたまた驚かされましたね。
昨年はドラマ『オトナ高校』で30歳エリート童貞の役を見事に演じきり、役者としての演技の幅広さを見せてくれた彼ですが、今作では物語のキーマンである伊藤鴨太郎という切ないヴィランを最高の形で演じてくれました。
『オトナ高校』でも垣間見せた他人を下に見ているかのような人間性を絶妙に醸し出しつつも、終盤には哀愁を感じさせ、観客の涙腺を刺激しました。原作で新選組動乱篇はもう何度も見ている私ですが、彼の演技に思わず感動しました。
銀時に立ちはだかる剣豪の万斉を演じた窪田正孝はやはり圧巻の演技でしたね。今年ですと映画『犬猿』で温厚なキャラクターを演じながら、時折急に沸点を迎えるような「怒り」を見せてくれた彼ですが、今回の『銀魂2 掟は破るためにこそある』でもクールなキャラクターでありながら、時折感情を高ぶらせる様をしっかりと表現していました。
前作から引き続いて橋本環奈や菅田将暉といった俳優陣のコメディ演技も光りつつ、新選組動乱篇を展開していく上で大切な人間ドラマを表現しきれるだけの実力のある俳優陣が集まっていたことが素晴らしかったですね。
ただ、一つどうしても思ってしまうのは、福田監督は一度、佐藤二朗とムロツヨシを起用するのを止めた方がいいんじゃないかということですね・・・。
そうなんですよ。今作に関して言うなれば佐藤二朗のあの演技は、明らかに作品のノイズになっていましたし、福田監督も彼には自由を与えているんだとは思うんですが、あまりにもコントロールされていなさすぎて、作品に馴染んでいなかった印象が強いです。
福田監督作品のトレードマーク的な存在になっていることは重々承知ですが、使うならもっとノイズにならないような使い方(カメオ出演程度)に留めて欲しいと思いました。
それでも銀時を主役に据えなければならなかったのか?
そうなんですよ。前作の実写版『銀魂』は個人的に大好きな内容だったんですが、今回の『銀魂2掟は破るためにこそある』に関して言えば、私はあまり評価できません。
映画として構成がどうとか、所詮パロディネタのオンパレードなだけとかそんなことは前作も同じですし、それこそが『銀魂』という作品のアイデンティティのようなものですから、そこに関して指摘することはありません。
今作において私が一番気になったのは、銀時をそこまでして主役に据える必要があったのかというお話なんですよ。
『銀魂』という作品において誰が主人公なのかと聞かれると、それはもちろん坂田銀時ですよ。しかし、シリーズを見ていると、銀時が主役ではなく脇役として物語に従事していることって結構多いんですよね。
というよりも万事屋という仕事の性質上、銀時は自分の物語に主体的に関与していくというよりは、他人の物語に依頼を受けて関与していくというケースがしばしばです。つまり、銀時というキャラクターは主役でありながら、同時に依頼主の物語の脇役を演じているんですよ。
「新選組動乱篇」というエピソードはまさしくそんな脇役としての銀時が生きた長編だと思っていて、あくまでも銀時は、新選組の物語に従属する存在として登場して、そしてその物語を支えるわけです。
この関係が成立したからこそ、「新選組動乱篇」は原作において、銀時のキャラクター性を保ちつつも、新選組を引き立てることに成功し、『銀魂』という作品において屈指の名エピソードとして語り継がれています。
『銀魂2掟は破るためにこそある』において、一見原作の展開を踏襲しているようなんですが、実はそこには大きな溝があるんですよ。
まさしくそうなんです。将軍暗殺の計画を持ち出してきたことと、銀時と新選組が戦っている場所を別舞台にしたこと、これが個人的には大失敗だったと思うんです。
この改変がどんな影響をもたらしたのかを考えてみてください。新選組動乱篇ってもちろん原作でも高杉らの陰謀が絡んでいるわけですが、あくまでも主役は新選組で、銀時はそこに従属する形で物語に寄与する存在です。
しかし、将軍暗殺の計画と高杉の暗躍をちらつかせ、前作の実写版『銀魂』から続く、銀時と高杉の因縁の匂わせたことで新選組の物語が逆に銀時の物語に従属する形にコンバートされているんです。
その結果、「新選組動乱篇」というエピソードそのものが、将軍暗殺計画の一部へと編入されてしまい、スケールが小さくなると共に、映画における主導権を喪失しているんですよ。
映画『銀魂』としては、あくまでも銀時を主役に据えて展開していくんだというスタンスがあったのかもしれませんが、それが完全に裏目に出た形ですし、「新選組動乱篇」の良さを完全に抹殺してしまったような気がしてなりません。
前作で使われた紅桜篇は銀時と高杉の因縁がちらつくエピソードで、銀時がメインでしたから問題ないと思うんですが、今作で用いたエピソードは銀時が脇役だったからこそ生きたわけですし、その絶妙なバランスを崩壊させてしまったことが何とも悔やまれますね。
そこまでして銀時を作品の主軸に据えたいのであれば、新選組動乱篇なんてエピソードを選ばずに、金魂篇のような銀時が主役のエピソードを持ってこれば良かったと思います。
確かに物語の大筋だけを見ると、些細な改変なのかもしれませんが、新選組動乱篇にすごく思い入れのある自分としては、こんな形で脚本に取り入れられてしまったことにショックを隠し切れません。
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パロディネタ・小ネタについて
前作に引き続きパロデイねたのオンパレードでしたね。当ブログでもいくつか解説してみたいと思います。
日本アカデミーネタ
小栗旬が日本アカデミー賞にノミネートされたことがないという自虐ネタから始まり、前回の日本アカデミーで菅田将暉が『あゝ荒野』にて主演男優賞を獲得したことにも言及していました。
モザイクがかかっていたパートに関しては、映画ファンであれば一度は聞いたことがあるであろう日本アカデミーの配給会社の政治臭や、出来レース感の対しての皮肉だったのではないかと推測できます。
『万引き家族』ネタ
今年日本でも公開された是枝監督の『万引き家族』がパルムドールを受賞したことに対しての小ネタが挟まれていましたね。
バイトバイトバイト・・・。
ちょっとこれは推測にはなってしまうんですが、「神楽の手下」として紹介された、モザイクかかりまくりだったのは、おそらくミニオンズだったのかなぁ・・・と。
黄色と青色がうっすら見えましたからね・・・。仮にミニオンだったとしたら、前作が公開された昨年の興行ランキングに関係があるのではないかと推測できます。
『銀魂』は公開初週はポケモンに1位の座を奪われ、その後はロングランになるも『怪盗グルーのミニオン大脱走』に阻まれて週末興行ランキングで1位を取ることが出来ませんでしたからね・・・。
ちなみに『銀魂』の配給がワーナーで、ミニオンズはユニバーサルです。そりゃモザイクかかりますよね(笑)
ラブライブ風アニメ
土方がトッシー人格になっていた時に見ていたのは、ラブライブ風のアニメでしたね。
そこは『ラブライブ』そのものを使えなかったんですかね?
かつて『銀魂』のアニメを制作していたサンライズの作品ですし、交渉すれば可能だったような気はしますが・・・。
『相棒』の鑑識の人
『相棒』の鑑識の人と紹介され、ブラックジャックのコスプレをして登場したのは六角精児さんでしょうか。ブラックジャックは手塚治虫原作で、医療と人間の命について深く問う作品です。
法外な治療費をふんだくるという印象だけが多くの人に知れ渡っているような気がしますが、実はそこには深いわけがあります。良かったら『ブラックジャック』のマンガの方も読んでみてくださいね。
今回も登場!ジブリネタ!
前作では『風の谷のナウシカ』のパロディネタをブチかましていましたが、今作は『となりのトトロ』でしたね。実は『銀魂』は原作でもジブリネタをしばしばやらかしていて、『天空の城ラピュタ』ネタで、天空に浮くラブホテルを登場させたりしています。
ちなみに原作では『となりのトトロ』パロディで、『となりのペドロ』というネタを既にやっちゃってます。猫バス風のアライグマバスが登場し、ギリギリセーフかと思いきや銀時が「メイちゃん」の名前を出してしまう始末・・・。最高でした。
エヴァンゲリオンネタ
今回一番推してきたのがこのエヴァンゲリオンネタでしたね。パロディネタの中ではダントツで尺を食っていたような気がします。
シンジがエヴァンゲリオンに乗るか乗らないか、戦うか戦わないかという葛藤を長々と続けるこの作品の設定を踏襲していましたね。
エンディングはまさかの・・・!!
また懐かしい映像を引っ張り出してきましたね・・・(笑)
『踊る大捜査線』の「Love Somebady」と共に流れる映像をパロディにしていましたね。歌詞の「Never Never Never Never…」をネタにしていたのも笑えました。
近藤さんはなぜ鴨太郎を助けるのか?
近藤局長 (C)空知英秋/集英社 (C)2018映画「銀魂2」製作委員会
映画を見ていると、中村勘九郎演じる近藤さんは自分を裏切って新選組を乗っ取ろうとした鴨太郎に手を差し伸べて救おうとしますよね。このシーンって近藤さんのキャラクター性を知らないとすごく不自然に見えると思うんですよ。
近藤さんは劇中で少しだけ言及されていた武州育ちで、そこで総悟や土方と出会いました。
総悟は近藤さんの最初の門下生になりました。総悟は孤独から自分を救ってくれたのは、近藤さんだったと感じているでしょうし、自分に大切な仲間を与えてくれた彼を心から慕っています。
総悟は近藤さんの人間性について「悪いところは人が良すぎるところ」「他人の悪いところを見ようとしない」と述べています。
でも、そういう人間性だからこそ新選組は彼についていこうとするんですよね。父親のような包容力とでも言いましょうか?
そう考えると、近藤さんが鴨太郎を救うという行為は実に彼らしい行動です。
彼は「他人の悪いところを見ようとしない」んですよ。彼はそういう部分も含めて、一度は共に酒を酌み交わした鴨太郎を救おうとしたんです。
こういう行動をリーダーである彼が取るのはどうなのか?と疑問に思う方がいるかもしれませんが、それこそが近藤さんであり、それこそが彼が慕われる理由です。
近藤さんの人間性がより分かるのが、「男にはカエルに触れて一人前みたいなわけのわからないルールがある」という回ですね。この回を見ると、土方が鴨太郎を救うために身を投げ出した意味も分かると思います。
『覚えてるか?あの頃、学もねえ居場所もねえ斬るしか能のねえゴロツキの俺たちを道場に迎え入れてくれたのは、誰か?廃刀令で道場さえも失いながら、それでも俺たちを見捨てなかったのは誰か?失くした刀をもう一度取り戻してくれたのは誰か?幕府でもねえ将軍でもねえ、俺の大将はあの頃からこいつだけだよ。大将が守るっていうなら、俺はそいつがどんな奴であろうと守るだけだ。』
そうなんです。土方が鴨太郎を守るのは、もちろん2人がお互いに実力を認め合っているからという部分もありますが、それ以上に近藤が守ろうとする者は自分も守るという信念があるからです。
近藤さんは剣の腕前でこそ土方や沖田には劣るのかもしれませんが、リーダーに必要な包容力と懐の深さを天性のものとして持っているのであり、だからこそ多くの人間が彼を支えようと命を懸けるのでしょうね。
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おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は映画『銀魂2掟は破るためにこそある』についてお話してきました。
最後に個人的に面白かったポイントを1つお話してみますね。福田監督が以前にバラエティー番組に出演した際にお話されていたんですが、彼ってキャストが笑っちゃっても、そのカットが良ければそれを採用したりするそうなんですよ。普通は笑ってしまったら撮り直しだと思うんですけどね。
実は『銀魂2掟は破るためにこそある』の冒頭の佐藤二朗演じるキャバクラ店長が万事屋の面々と喋るシーンで、小栗旬、菅田将暉、橋本環奈の3人は笑っちゃってるんですよね。皆さんは気がつきましたか?
菜々緒と佐藤二朗 (C)空知英秋/集英社 (C)2017映画「銀魂」製作委員会
本来ならNG集に収録されていそうなテイクなんですが、こういうカットを現場のノリを大切にして本編に使っちゃうところは福田監督の好きなところですね。佐藤二朗さんがアドリブ演技をしてしまう上に、その演技を2回同じ事ができないという性質もあるため、採用せざるを得ないという側面もあるそうですが・・・(笑)
あと前作では中村勘九郎が全裸になっていましたが、今作では前田敦子との結婚を発表した勝地涼が全裸になっていました。
何はともあれ、キャスト陣の体当たり演技も本作の見所の1つでした。
総評としましては新選組動乱篇の大ファンとしてこの劇場版は許せないという思いはありつつも、キャスト陣の好演が光り、夏休みのエンタメ大作としては十分の出来栄えだったのではないかと思います。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。