アイキャッチ画像:(C)2018「SUNNY」製作委員会
目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね映画『SUNNY 強い気持ち 強い愛』について感想と解説を書いていこうと思います。
記事の内容の都合上、映画のネタバレになるような要素を含みますので、作品を未見の方はご注意ください。
ネタバレになるような内容に触れる際は、改めて言及します。
良かったら最後までお付き合いください。
『SUNNY 強い気持ち 強い愛』
あらすじ
90年代に女子高生として過ごした6人。彼女たちは、かつて「SUNNY」という友人グループを形成しました。
しかし、ある事件をきっかけにしてお互いに溝が生まれ、いつしか疎遠になってしまっていました。
時は変わり、現代。彼女たちが女子高生だったあの頃から、20年以上の月日が経過していました。
そんな「SUNNY」のメンバーの1人である奈美は訪れた病院で偶然にも、「SUNNY」のリーダーだった芹香に再会します。しかし、芹香は末期ガンで余命1カ月を宣告されといたのでした。
奈美は余命僅かな芹香のために何かしてあげたいと申し出ます。すると芹香は死ぬまでに「SUNNY」のみんなにもう一度会いたいんだと告げます。
奈美はそんな芹香の願いを聞き入れ、かつての仲間探しに奔走します。それぞれに問題を抱えながら生きている彼女たち。
90年代と現代の物語が交錯しながら、進行する物語に、当時のヒットナンバーが色を添える大根監督の意欲作となっています。
キャスト・スタッフ
監督を務めるのは、今や日本映画・ドラマ界で名前が知れ渡っている大根監督です。
「モテキ」をきっかけに大きな注目を集めると、映画「バクマン」や「SCOOP」、「打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか」といった話題作の監督・脚本を立て続けに担当し、高い評価を獲得してきました。
彼の作品の特徴は女性をキラキラと映し出す映像と、独特の編集スタイルにありますね。映画「バクマン」なんかは大根監督らしい高速編集に仕上がっていて、素晴らしいテンポ感に裏打ちされていました。
今回もそんな大根監督と黄金コンビを形成している大関靖幸さんが編集に参加しています。
また「SCOOP」では二階堂ふみが、「奥田民生になりたいボーイと出会う男全て狂わせるガール」では水原希子が、大根監督フィルターを通して、キラキラと映し出されていました。
音楽には、知らない人はいないであろう音楽クリエイターの小室哲哉さんが参加しています。90年代日本音楽を語る上で欠かすことのできない存在である彼が、作品に参加したことは非常に大きいですよね。
また小室さんは映画『SUNNY 強い気持ち強い愛』が自身にとって最後の劇伴音楽になることを公言しています。彼が書き下ろした24曲の劇伴を、ぜひサントラを購入して堪能してみてください。
キャストには今注目の若手女優と実力派の名女優が参加しています。
高校時代の「サニー」のメンバーを演じるのは、広瀬すず、山本舞香、富田望生、池田エライザら今大注目の若手女優たちです。
広瀬すずは「海街diary」に出演し、大きな注目を集めると、「怒り」、「チアダン」、「ちはやふる」、「先生!」、「三度目の殺人」といった話題作に立て続けに出演し、女優としての評価を高めてきました。
当ブログ管理人の私的な評価ではありますが、彼女の演技力は同世代の女優の中では、頭3つくらい抜きに出ている印象です。
また「チアダン」や「あさひなぐ」といった作品で名脇役として存在感を発揮していた富田望生は当ブログ管理人大注目の若手女優です。
加えて、当ブログ管理人が「エロのイデア」であると絶賛している池田エライザさんは今作でも1番大人びたキャラクターを演じる模様ですね。彼女のエロさを堪能したい方は劇場版「みんなエスパーだよ!」を見てくださいね。
映画『みんなエスパーだよ!』より引用
現代パートのキャストは豪華な顔触れです。篠原涼子さんや板谷由夏さんらは女優として素晴らしいことは明白なのですが、個人的に大注目なのが、渡辺直美さんです。
渡辺直美さんはお笑い芸人でして、女優業は本業ではないのですが、今回大抜擢されています。
この配役を見て、思い出すのが、今年の2月に公開された映画『犬猿』のニッチェ江上です。
彼女もまたお笑い芸人が本業なのですが、映画の中で女優とは違った雰囲気を放ち、彼女が台風の目となって本職の俳優陣の演技に影響を与えていたのが印象的でした。
今作『SUNNY 強い気持ち強い愛』における渡辺直美さんにも同様の役割を期待してしまいますね。
そして90年代の色男、藤井渉を演じるのが三浦春馬さんです。私は「オトナ高校」というドラマでの彼の演技が大好きなんですが、正統派イケメンでありながら、少し抜けたところもあってお茶目な印象を与えてくれる演技が彼の魅力だと思っています。
そう考えた時に、オリジナル版ではただのイケメンという印象が強いジュノ(オリジナル版における藤井渉)を三浦春馬さんが演じることでコミカルさが増して、より親しみやすいキャラクターになるんじゃないかと楽しみにしています。
予告編での彼の登場シーンは、非常にユーモラスで、思わず笑いが溢れますよね(笑)
90年代ロン毛イケメンDJという属性ましましの藤井渉というキャラクターは非常に癖が強く、下手な俳優が演じるとすごく嫌みが滲み出てしまうと思うんですよ。
ただ三浦春馬さんはそんな嫌みを一切出さないどころか、原作のジュノも驚きの好青年感を全面に醸し出していました。この役は彼じゃなければ務まらなかったと断言します。
また、新井浩文さんがワンシーンのみの登場なのに凄いインパクトでした。撮影秘話として本人がTwitterでお話されていたんですが、彼はこの作品における演技に関して大根監督から「MAXのドス」を聞かせて欲しいと要望されたそうで、その通りに演じたそうです。
ただ後日新井さんはアフレコに呼ばれて、その際に大根監督からちょっと怖すぎたから、もう少しマイルドなのを頂戴!と言われてしまったのです。
ただ映画本編を見てみると、あれで本当にマイルドなの?って思ってしまう「怖さ」がありました。新井さんのもっとどすの効いた演技が見たいという方は映画『犬猿』がおすすめです。
そんな豪華スタッフとキャストが織りなす『SUNNY 強い気持ち強い愛』。これが面白くないはずがないでしょう!
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『SUNNY 強い気持ち 強い愛』感想・解説
劇中で登場した楽曲を解説
La La La LOVE SONG/久保田利伸
久保田利伸がナオミキャンベルとコラボする形で発表したこの曲は90年代を代表するテレビドラマ「ロングバケーション」(通称ロンバケ)の主題歌に起用され、大ヒットしました。
動き出した恋は、もはや理性や言葉などを超越したものであり、メリーゴーランドのように止められないものなのだという思いをスティービーワンダーを彷彿させるような切ないメロディに乗せて歌い上げた名曲ですね。
Don’t Wanna Cry/安室奈美恵
引退を発表している安室奈美恵さんの大ヒットナンバーですね。
有名な曲なので、世代ではなくても聞いたことがある人は多いでしょう。
サビの部分の思わず口ずさみたくなるメロディと歌詞が印象的で、予告編でも現代パートの奈緒を演じる篠原涼子さんが口ずさんでいましたね。
ちなみにこの曲の振付をしたのがKABAちゃんというのも有名な話ですよね。
SWEET 19 BLUES/安室奈美恵
映画『SUNNY 強い気持ち 強い愛』の予告編でとにかく印象的に使われているのが、この安室奈美恵さんの「SWEET 19 BLUES」ですよね。
この楽曲の「19」というのは19歳のことで、つまりはティーンエイジャーの最後の年であることを意味していて、大人になる前の最後の時間を指しているわけですね。
ちなみにこの楽曲に関しては、安室奈美恵さんのバラードベストアルバム「Ballada」発売時に彼女が19歳の自分とコラボしたMVを撮影したことでも注目を集めました。良かったら公式PVダイジェストをご覧になってみてください。
この楽曲は小室さんと安室さんが会話をしてる中で生まれた歌詞であると言われていて、ティーンエイジャーにもかかわらず大ブレイクした当時の安室さんの心情がストレートに反映された楽曲なのではないかと言われています。
だからこそ映画『SUNNY 強い気持ち 強い愛』のキャラクターたちの思いにリンクする部分も多いですよね。
強い気持ち 強い愛/小沢健二
小沢健二って私自身は世代ではないんですが、私の親世代がドンピシャなようで、私の両親は小沢健二が大好きで、楽曲時代はよく聞いていました。「ラブリー」とか「流星ビバップ」が個人的には好きでしたかね。
彼も90年代の音楽シーンを語る上で避けては通れない人物ですよね。
そして今回使われている『強い気持ち 強い愛」という楽曲は作品のタイトルにもなっていますよね。
ぜひ映画を見終えた後に昔を懐かしんで、オザケンを聞き返してみてはいかがでしょうか?
CANDY GIRL/Hitomi
歌詞からPVに至るまで全てがバブリーなHitomiさんの名曲ですね。もう歌詞を見ているだけで90年代感が凄いですよね。
「ミニのスカート」、「ボディをシェイプアップ」、「レゲエ」、「チェリーパイ」、『踊り狂う」といった歌詞を聞くだけで、90年代にタイムスリップしてしまいそうです。
SURVIVAL DANCE/TRF
これも世代ではなくても誰しもが聞いたことがある名曲ですよね。
ユーロビートの要素が取り入れられた懐かしの一曲はもうイントロを聞くだけであの頃へとタイムスリップさせてくれます。
日本におけるユーロビートブームに火をつけたavex全盛期を象徴する楽曲でもありますよね。最近DA PUMPの『USA』が話題になりましたが、あれもユーロビートの要素を取り入れた少し「懐かしさ」がある楽曲で、それゆえにヒットしたとも言われています。
そんな今だからこそTRFをまた聞いてみたくなりますよね。
EZ DO DANCE/TRF
こちらもTRFのノリの良い楽曲ですね。
EZ DO DANCE!!EZ DO DANCE!!と聞き終えた後に口ずさみたくなる軽快なポップチューンです。
そばかす/Judy And Mary
アニメ『るろうに剣心』の主題歌になったこともあって、当ブログ管理人のような少し世代から外れた人間であっても大変馴染みが深い1曲です。
この楽曲って失恋をしても、前を向いて気持ちを切り替えていこうというストレートな女性の気持ちを歌った歌なんですが、そんな等身大の少女の「失恋」に対する戸惑いというか、あやふやな気持ちってまさしく「SUNNY」のメンバーないし奈緒の思いに特にリンクするところは大きいですよね。
辛い記憶が、はやく良い思い出になってくれたら・・・という少女のリアルな声が作品に融和していて、すごく印象的でした。
これが私の生きる道/PUFFY
90年代ってアムラーとか̪シノラー(篠原涼子ラーじゃなくて篠原ともえラーだよ)が大流行したんですが、そんな時に「脱力系」だなんて言われながら登場し、大人気になったのがPUFFYのお2人ですね。
やはり彼女たちの人気に火をつけたのは『アジアの純真』だと思いますが、そんな彼女たちが一発屋で終わらなかったのは、セカンドシングルでこの『これが私の生きる道』を発表したからですよね。
バブルが弾けた世の中で、マイペースにゆるく自分らしく生きようぜという歌詞とゆったりしたメロディラインが多くの人々の心を鷲掴みにしました。今聞いても色褪せない名曲ですよね。
やさしい気持ち/Chara
Chara『優しい気持ち』MVより引用
思わず千鳥のノブ風のツッコミを入れたくなるこのヘアースタイル。
Charaさんって実は俳優活動もしていて岩井俊二監督の『スワロウテイル』なんかにも出演されているんですよね。ちなみの今回使われた『優しい気持ち』は結婚式の定番曲と言われています。
ただCharaさん本人は当時大好きだった人と喧嘩した時に作った曲なので、少し恨み節みたいなものも込めて歌詞を書いたと公言しているそうですね。
そう考えると意外と闇が深い1曲なのかもしれません。
僕たちの失敗/森田童子
バラエティ番組でネタっぽく使われることも多いこの『僕たちの失敗』という楽曲ですが、やはりこの美しいメロディと憂鬱な気分にそっと寄り添ってくれるような歌詞に今聞いても色褪せない魅力がありますよね。
君と話し疲れて いつか黙り込んだ
ストーブ代わりの電熱器赤く燃えていた地下のジャズ喫茶 変われない僕たちがいた
悪い夢のように時が撫ぜていく『僕たちの失敗』森田童子より引用
この楽曲って実は発売自体は1970年代なんですよ。ただ93年に『高校教師』というドラマが放送された際にこの曲が起用されたことで、話題沸騰となり一気に90万枚近いセールスを記録しました。
だからこそ歌詞の内容も60年代・70年代の学生運動などが起こっていた経済的に発展しながらも、激動だった時代を背景に歌われた楽曲になっています。
そういう意味では、80年代韓国の民主化デモを背景に作られたオリジナル版の『サニー永遠の仲間たち』と映画『SUNNY 強い気持ち 強い愛』を繋いでくれる楽曲とも言えるかもしれません。
ちなみに森田童子さんは今年の4月に65歳にして亡くなられてしまったんですよね。ご冥福をお祈りいたします。
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オリジナル版の『サニー永遠の仲間たち』について
韓国で2011年に公開されるや否や、700万人を動員する大ヒットとなったオリジナル版の映画『サニー永遠の仲間たち』の感想記事を当ブログでは扱っております。
良かったらこちらの記事も読んで行ってほしいですし、ぜひとも大根監督版を見た後にオリジナル版もチェックしてみてください。
リメイク請負人の大根監督が贈る最高の青春映画!!
大根監督ってやっぱりリメイクの達人だと思うんですよね。
というよりもオリジナルの作品にすごく敬意と愛情を持って作品作りに臨む姿勢が明確で、そこが素晴らしいなと毎回感じている次第です。
原田眞人監督の『盗写1/250秒』をリメイクした映画『SCOOP』や岩井俊二監督の『打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか』のアニメリメイク版は、本当にオリジナル版を大好きなんだという作り手の熱量が伝わってくる内容になっていました。
アニメ映画版の『打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか』って酷評されていますが、ドラマ『モテキ』で大根監督が同作のオマージュを披露したことからも分かる通りで、彼はこの作品に並々ならぬ思いを持っているはずですし、その中で、どうやってオリジナル版を超える作品にするかという点を模索した結果なんだと思いますし、個人的には高く評価しています。
今回の韓国映画『サニー永遠の仲間たち』の日本版リメイクにあたってもカメラのアングルやカット割りに至るまで徹底的にオリジナル版を意識したものになっていますし、下から備わっていた良さを損なわないように細心の注意を払いつつ、大根監督らしい味付けをした最高の青春映画になっていたと思います。
なぜオリジナル版では7人だった「サニー」が日本版では「6」人になったのか?
なんで今まで気づかなかったの?ってこと。
もうパンドラの箱明けちゃうからね、これ。
皆さんはもう気づいていますか?韓国版の『サニー永遠の仲間たち』では7人だった「サニー」のメンバーが日本版では「6」人に変更されていることに・・・。
ちなみに日本版にコンバートされるに当たってカットされたのは、クムオクという文学少女に当たるキャラクターなんだよね。
実はその他にも興味深い事実があるんだよね。この映画の公開日に注目してほしいんだよね。「8月31日」という日付。みんななんでこの映画の公開日を見て。平気でいられるんだって話。
8月31日→8・3・1
この8と3と1という数字を計算式で整理していくと、8-3+1=6。何と「6」という数字が浮かび上がってくるんだよね。もうこれ完全にきちゃってるよね。パンドラの箱開けちゃってるよね。
さらに興味深い事実が大根監督自身のフィルモグラフィに隠されてるんだよね。
大根仁が監督を務めた長編映画って『モテキ』『恋の渦』『バクマン。』『SCOOP』『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール 』と続いて、何と今作で「6」作品目なんだよね。
つまりここで3つの「6」が出揃ったことになるよね。
もうこれ『SUNNY 強い気持ち 強い愛』に秘められてるパンドラの箱完全に開けちゃってるよね。
もう人類の選別は始まってるってこと。日本の映画業界にはフリーメイソンの手が及んでいるのかもしれない。
・・・すみません。これ一度やってみたかったんですよ(笑)
意外と気が付かない日本版「SUNNY」のチーム名の由来
オリジナル版の『サニー永遠の仲間たち』のチーム名が「サニー」になったのは、ボニーMの同名の楽曲から取ったもので、彼女たちがラジオでチーム名を募集した際に決定しました。
一方の日本版では、思い付きくらいのニュアンスで「SUNNY」というチーム名が決定しましたよね。
ただよくよく考えるとですよ、これってメンバーの頭文字を集めているんです。
- S:心(SHIN)&芹香(SERIKA)
- U:梅(UME)
- N:奈美(NAMI)
- N:奈々(NANA)
- Y:裕子(YUKO)
そう考えると実は腑に落ちるチーム名だったりしますよね。
加えて、唯一2人重なっているSの芹香が亡くなるという展開が何とも示唆的と言えるように思えます。5人になっても「SUNNY」は欠けることなく、残り続けるわけですから。
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オリジナル版との違いはどこ?
さて、『SUNNY 強い気持ち 強い愛』をみていて、気になるのがこのリメイク版はオリジナル版の『サニー永遠の仲間たち』とはどこが違っているのかという点ですよね。
そうなんですよ。もう大部分は同じです。ただ細かく見ていくと、もちろん違いはいくつもあります。(舞台が日本に変更されたこととそれに伴う変遷を除いて)
・グループ名の「SUNNY」の決定の仕方
これオリジナル版の主題歌が同名の楽曲だったからこそつけられたグループ名だったんですが、日本版ではただの「思いつき」という程度の意味合いしか与えられていません。
・ナミの絵を描く夢
オリジナル版のナミは高校時代の映像で「画家になるという夢」を語っているんですよね。これが日本版ではカットされていました。それに伴ってラストの葬儀場の遺影がナミの描いた似顔絵ではなくなっていました。
・ラストの芹菜の遺言
オリジナル版の芹菜にあたるハ・チュナの「サニー」のメンバーたちに対する遺言状は、探偵とは別の弁護士が読んでいましたが、日本版の『SUNNY 強い気持ち 強い愛』では、リリーフランキー演じる探偵が葬儀場まで遺書を読みに来るんです。
大根監督作品にたびたび携わってきたリリーフランキーだからこそ今作の映画を締めくくる役を任されたのかなとも思うのですが、遺言を探偵に預けちゃうのは、現実的ではないですよね(笑)
・「売り」はやらねえ!というポリシー
これって大根監督らしい「SUNNY」のポリシーだなぁと思いました。常に女性のパワーやキラキラとした魅力を全面に押し出した映画を撮ってきた彼だからこそ、どんなに落ちぶれても最後の一線だけは超えさせないという、大根監督自身のポリシーでもあるのかな?と感じさせられました。
・クムオクに当たるキャラクターがいない
なぜだか分かりませんが、日本版では文学少女に当たるクムオクポジションのキャラクターがいませんね。
これに関しては、コギャルで文学少女という設定があまりにも不釣り合い過ぎるということもありますからね(笑)
なぜ既に名作と名高い作品を日本版リメイクする必要があったのか?
オリジナル版の『サニー永遠の仲間たち』って映画ファンの間では「名作」と名高い作品ですし、なぜ今更日本でりマイクする必要があったんだろうと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
この作品のそもそものテーマって実は『クレヨンしんちゃん オトナ帝国』に非常に近いところがあります。
誰しも「懐かしい」ものって大好きだと思うんですよ。
やっぱり自分が学生時代に好きだったものって、大人になっても忘れられないものです。また、大人になると誰しもが青春時代に戻りたいだとか輝かしいあの頃に帰りたい、昔は良かったなどというノスタルジックな感傷に浸る経験をします。
ただそういう「懐かしむ」という行為自体は別に悪いものではないですし、人間としていたって正常な思考です。大切なのは、そんな「輝かしい過去」に囚われて、前を見れなくなってしまうことです。幸せだったあの頃に思いを馳せるのも良いですが、「懐かしさを超えて前に進むことができるか」という点が一番大切なんですよ。
『サニー永遠の仲間たち』(『SUNNY 強い気持ち 強い愛』)と『クレヨンしんちゃん オトナ帝国』は互いに「懐かしさ」からの前進に言及していて、だからこそ心の深くに刺さる何かがありますよね。
ただ日本人が『サニー永遠の仲間たち』を見た時に生じる大きな問題点の1つは、そういう「懐かしさ」みたいな感情に共感できないことなんですよね。
あの作品を見た日本人の一体どれだけが80年代韓国の民主化への動きや、政府の融和政策による洋楽の流入といった時代背景を肌で感じた経験をしているのでしょうか。おそらくそんな経験をした方はほとんどいないと思います。
あくまでも『サニー永遠の仲間たち』という作品は韓国人向けの「ノスタルジー」からの脱却映画だったんですよ。だからこそ、あの映画を日本人が本当の意味で味わうためには、それをより分かりやすく、もっと共感的になれる形で作り変える必要があったんだと思います。
そこでオリジナル版が大好きな大根監督が手を挙げたわけですよ。
大根監督が作品のベースラインをこれでもかという程にオリジナル版に忠実に作ったのも彼が、『サニー永遠の仲間たち』という映画言語を出来るだけ忠実に日本人にも伝わる形で「翻訳」したいという思いがあったからなのではないかと推察できます。
こうして90年代の日本という舞台設定が据えられる形で、当時のポップチューンやコギャル文化が全面に押し出される形で『SUNNY 強い気持ち 強い愛』という作品が生まれました。
この90年代当時を経験した人たちは間違いなく、「懐かしさ」を感じられる内容に仕上がっていたことでしょう。
また大根監督は、そんな90年代を経験していない若い世代へのメッセージを込めているようにも感じられました。それが劇中で描写があった友達と時間を共有していても互いにスマートフォンの画面を見つめている女子高校生たちの姿です。
『SUNNY 強い気持ち 強い愛』で描かれた90年代って、時代考証も滅茶苦茶な上に、コギャル文化を大根監督の味付けでかなり過剰に演出している節があります。ただどこまでも明るくて、幸せな印象を与えてくれますし、そうかと思いきや援交やドラッグ、テレクラといった社会の暗部をも映し出しています。
そのため作中の90年代は、若い世代にとっては、経験してみたいと思うようなポジティブさもありつつ、やっぱり現代に生きててよかったと思わされるような側面もあります。
そんな怒涛の90年代の描写の間にふと現代の高校生の描写を挟んで来る辺りが確信犯的な演出ですよね。スマートフォンの世界にばかり気を取られている自分は果たして他人と強い繋がりを持てているだろうか?本気で他人と関わったことがあるだろうか?と考えさせられます。
本作『SUNNY 強い気持ち 強い愛』は90年代を経験した大人たちに対して、「懐かしさを超えて前を向いて生きること」を説き、経験していない若い世代に向けては「スマートフォンから顔を上げて、目の前にいる他人と向き合って生きること」を説いた作品なのかな?と思いました。
オリジナル版の主題を大切に尊重しつつも、大根監督なりの今の日本への視座がきちんと据えられた作品で、単なる日本文化でのパイロット版ではないことは明らかでした。
『サニー永遠の仲間たち』には韓国人にしか分からない要素がたくさん含まれていましたが、大根監督はあの作品を見て韓国の人たちが感じていたであろう「思い」を日本人にも感じて欲しいということでわざわざ今になってリメイクしようと一念発起したんでしょう。だからこその過剰なまでに原作に忠実なリメイクに仕上がったのだと推察できます。
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おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は『SUNNY 強い気持ち 強い愛』についてお話してきました。
90年代の時代考証がしっかりと出来ていないという意見も見かけますが、個人的にはこの映画はフィクションですので、必ずしも現実をその通りに描く必要もないと思っています。そのため、あまり気にならなかったです。
少し学生運動などの政治的な問題も絡み、重たい雰囲気をも孕んでいた『サニー永遠の仲間たち』ですが、大根監督はそんな作品を底抜けに明るいJPOPムービーに仕上げてくれました。
オリジナル版の『サニー永遠の仲間たち』が大好きだから、リメイク版はちょっと不安だなぁなんて考えている人にこそ見て欲しい映画だと思いますし、むしろオリジナル版が好きであればあるほど愛着がわく映画だと思います。
『奥田民生になりたいボーイ・・・』という前作で大根監督はかなり失速したイメージなのですが、今回はそんな不安をも吹き飛ばすような会心の作品でした。
ぜひぜひ劇場で『SUNNY 強い気持ち 強い愛』をご覧になってみてください。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。