アイキャッチ画像:(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY, AND APELLES ENTERTAINMENT, INC.
目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね映画『MEG ザモンスター』についてお話していこうと思います。
この記事は一部ネタバレ要素を含む感想・解説記事になります。
その点をご了承いただいた上で、作品を未鑑賞の方はお気をつけいただきますようよろしくお願いいたします。
良かったら最後までお付き合いください。
『MEG(メグ) ザモンスター』
あらすじ
人類未踏の海底1万2000メートルの世界が広がるマリアナ海溝よりもさらに深い領域に、未知の生命体の生息海域があると発見した海洋研究所。
探査チームが潜水艇に乗って、その未知の領域に踏み込むと、そこには人間の全く知り得なかった新世界が広がっていました。全てが新発見に満たされた世界。しかし、感動もつかの間潜水艇は、何者かに急襲されます。
機能を停止した潜水艇。交信が途絶え、残りの酸素量のリミットが迫る中で、探査チームはある男に救助を依頼することにしました。
その男の名前はジョナス・テイラーで、彼はかつて深海での救助ミッションにおいて、「仲間を見殺しにした」との追及を受け、チームを追われた人間でした。
彼が潜水艇に乗り、海底1万2000メートルを突破し、救助を介すると再び何者かが襲い掛かります。視界が悪い中で、彼らはその何者かの正体に気がつきます。それは太古の世界で「海の王」として君臨していたメガロドンという巨大なサメでした。
ジョナスたちは仲間の犠牲もありながら、何とかメガロドンを逃れ、海底から脱出します。
しかし、それは物語のほんの序章に過ぎませんでした・・・。
スタッフ・キャスト
本作のメガホンをとったのは、ニコラス・ケイジを主演に迎えた「ナショナル・トレジャー」で有名なジョン・タートルトーブ監督ですね。
ここのところ作品に恵まれていない感はあったのですが、何とこのサメ映画『MEG ザモンスター』で大ヒットし、またその名を世界に轟かせることとなりました。
そもそもこの原作は、90年代にウォルト・ディズニーが目をつけていて、映画化権を買い取っていたんですよ。
ただその映画化の話は結局進まなくて、その後ニューラインシネマ(昨年『IT それが見えたら終わり』が大ヒット)が映画化権を所得してギレルモ・デル・トロ監督(『シェイプオブウォーター』にてアカデミー賞監督賞受賞)をプロデューサに招聘して製作をスタートするんですが、この話も頓挫してしまいます。
結果的に今回ワーナーが映画化権を買い取って、世に送り出す形となったわけですね。監督も当初はイーライ・ロス(『ホステル』『グリーンインフェルノ』などで知られる。)が予定されていたそうですが、これも上手くいきませんでした。
イーライ・ロス監督が参加していれば、もっとスティーブオルテンの原作の血みどろでグロテスクな感じが再現されていたのかな?とも思いましたね。
映画化に際して上手くいかないこと続きだったのですが、映画自体はアメリカや中国でスマッシュヒットを記録し、回収できないであろうと目されていた製作費を回収しきってしまうという快挙を成し遂げました。
さて続いてはキャストのお話です。
皆さんお待ちかねのジェイソン・ステイサムですね。彼が本作において主人公のジョナス・テイラー役を演じています。もうステイサムってだけで強すぎて、彼に戦いを挑むメガロドンが可哀想に見えてくる始末なんですよね、この映画・・・(笑)
映画『エクスペンダブルズ』をブルガリアで撮影している際に、彼はトラブルでトラックに乗ったまま海へと落ちてしまうんですよね。スタッフが大慌てする中で、彼は泳いで岸までたどり着いたと言われています。
映画『メカニック』のワンシーンで、ステイサムは大爆発して燃え盛る車の中から、前転しながら無傷で脱出しました。業火をもってしても焼き尽くせない男にデカいサメ如きが勝てるはずがない(笑)
映画『アドレナリン2』の中で、ステイサムは体の中に人工心臓を埋め込まれ、1時間ごとに充電が必要という設定になっています。するとステイサムは高圧電流を大胆に体に流し込んで、フル充電!!そんな男にサメが敵う筈がない!!(笑)
もう映画を見ながら、ひたすらメガロドンにそいつには手を出すな・・・やめておけ・・・と忠告してあげたくなる始末でした(笑)
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『MEG(メグ) ザモンスター』感想・解説
サイズ感を体感したければIMAXで体感せよ!!
これ小さいスクリーンやスマートフォンのスクリーンで予告編を見ていると感じた方が多いんじゃないかと思うんですよ。私自身もそうでした。20メートルを超えるサメですと言われても、小さい画面で見ているとそのスケールが掴みづらいです。
そういう事情もありまして、どうせなら大画面で見ようと思い、IMAX3D上映をチョイスしまして、公開日にさっそく見てきました。いやはやもう圧巻としか言いようがありませんでしたよ。
この映画って意外に俯瞰視点や、第3者視点の構図だけではなくて、1人称視点の構図が取り入れられています。そのためIMAX3Dで見ると、本当に自分が海の中に投げ込まれているような臨場感があります。
もうこの一言に尽きますね。
小さな画面で見ていると、分かりにくかったメガロドンのサイズ感やスケールがいかに圧倒的なものであるかということを身をもって体感することができました。巨大スクリーンいっぱいに映し出されるメガロドンの姿を見れば、どんな人でも「でけえ・・・。」とい思わず声を漏らしてしまうことでしょう。
映画を見ながら、これは4DXで見ても楽しめるかな?とも思ったんですが、4DXシアターって基本的にスクリーンサイズが小さいのであんまりこの映画を見るには向いていないような気がするんですよね。
もちろんIMAXシアターが近くの映画館にないという方もたくさんいらっしゃると思いますが、できるだけスクリーンサイズが大きい劇場でこの映画『MEG ザモンスター』を体感していただきたいと思います。
公開日から時間が経過すると、どんどんと小さなスクリーンに移されてしまいますので、お早めに劇場に足を運びましょう!!
IMAXシアターで見れるチャンスがある方は、迷いなくこちらを選びましょう!!
ステイサム映画と言うよりは「フカヒレの姿煮」
この映画が発表された時、誰しもが『メカニック』や『アドレナリン』のような純度100%のステイサム映画を予見したはずです。ただですよ、今回の『MEG ザモンスター』に関して言うならば、そういった作品と比較するとステイサム度は低いです。
ほんとにこれくらいの割合の映画だと思っていただいて大丈夫です。この映画に中国のグラヴィティピクチャーズが関係していることもそうなのですが、おそらく莫大すぎる製作費の出所の大半がチャイナマネーなんだと思います。
というか映画を見れば、誰でもこの映画がチャイナマネーで制作されたことは分かります。
キャストの大半が中国人キャストになっており、登場する舞台も中国ですし、さらにはサメのヒレだけを取って海に捨てているという中国の密漁問題なんかが絡んでいたりと、あらゆる側面からの中国推しが目立ちます。
一方で、タイ語バージョンの「Hey Mickey!」がBGMとして使われているシーンもあったりしていろいろと世界観がカオスすぎて笑いが止まりませんでしたね。
肝心のステイサムVSメガロドンの描写もB級に寄せるのか、ブロックバスター映画に寄せるのかがどっちつかずになっていて、いつものステイサム映画のような無茶ぶり感も無く、かと言ってしっかりと考証の末に作られたパニックムービーという印象でもなくという感じでした。
しかも、ステイサムVSメガロドンが本当に実現するのは、終盤も終盤だけですからね・・・。もっと彼らのプロレスを見たかったんだけどなぁ~という愚痴がこぼれてしまう部分もあります。
とにかくチャイナマネーが絡んでいることで、あらゆる面で中国感の強い作品に仕上がっていることと、ステイサムVSメガロドンの推しの弱さが勿体ないかな?と感じさせられる映画ではありました。
『メカニック』や『アドレナリン』のような映画を期待して見に行くと、肩透かしを食らうと思います。
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ステイサムとチャイナマネーはスティーブオルテンの原作をどう変えたか?
個人的に今回注目したのが、『MEG ザモンスター』の原作の存在です。原作はスティーブオルテンの『Meg: A Novel of Deep Terror』という作品なのですが、今回の映画化に当たって翻訳本も再文庫版化されたということなので購入してみました。
今回はチャイナマネーとステイサムがこの原作に与えた影響をお話していこうと思います。
チャイナマネーが変えた『MEG ザモンスター』
映画版ではザンという中国系の家系が海洋研究をしているという設定でしたよね。これ実は原作では「タナカ」という日本人系の家系だったんですよ。そのため原作では日本人キャラクターがかなり多いんです。
ただチャイナマネーが流入した映画版では、そういった日本人キャラクターはトシを除いて1人残らず抹消されてしまいました。しかもそのトシに関しても『MEG ザモンスター』の中で真っ先に殺されてしまいますからね(笑)
またスティーブオルテンの原作って割としっかりとSF考証が成された上で書かれているんですが、チャイナマネーがそれを完全に覆してしまいました。メガロドンは海底から浮上して、まずは食料を得るために海洋哺乳類であるクジラを襲い始めるんです。
「この地図には冬、ベーリング海峡から南下してくるクジラの繁殖場所が示されている。いまグアム島の東と西にクジラの群れが散在しているが、メグは彼らの出す大きな振動を感知できる。しかし最近の狩りの足跡からして、彼女は、ハワイ沿岸に位置している群れに向かって東進していると見ていい。」
(角川文庫 スティーブオルテン『MEG ザモンスター』201ページより引用)
こういうしっかりとした科学考証に基づいて、メガロドンの行動が予測されているんですが、映画版ではチャイナマネーに引き寄せられるかのように彼女は、中国の三亜海岸へと向かっていきますよね(笑)
三亜海岸のパーティー感と言い、カラフルな浮き輪と美しい南国風景と言い、これ観光客を呼び込むためのデモムービーか何かですか?とツッコミを入れたくなるような突然の演出でした。このメガロドンの科学的知見を無視した中国進出は完全に中国出資の映画だからという側面が影響していますよね。
さらに言うと、原作の中でメガロドンは浅瀬には侵入しないとはっきりと言及されています。ですので子供が浮き輪を装着して泳いでいるような海岸にやって来ることは考えにくいでしょう。
そう考えてみると、メガロドンは三亜海岸を宣伝するためにやって来たんでしょうね。
また、本作が中国市場での興行収入獲得を視野に入れていたことから、グロテスクな描写がほとんど取り入れられていなかったのも注目すべきポイントです。
実はこの映画が中国で公開中止になったのは、有名な話です。なぜこの映画が中国で上映されなかったのかと言いますと、中国では流血のある暴力や過激な用語などに対する規制が非常に厳しいんです。
そのため『デッドプール』を中国で公開するためには、作品のほとんどをカットしなければ不可能という状態に陥ってしまったんですね。
『MEG ザモンスター』も極限まで流血のある暴力を出さないように配慮した映像になっているんですが、そもそも人が血を吹き出しながら食われるシーンがないサメ映画ってどうなんでしょうか?
中国市場を意識したことで、あまりにもマイルドすぎるサメ映画になってしまっていたのが少し勿体なかったですね。まあ全年齢対象のサメ映画として公開できたからこその大ヒットだとは思うんですが、物足りなさもあったようには思います。
ステイサムが変えた『MEG ザモンスター』
(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY, AND APELLES ENTERTAINMENT, INC.
次にジェイソン・ステイサムというハードボイルド俳優がいかにスティーブオルテンの原作に影響を与えたのかというお話に関してですが、実は原作のジョナスもかなり肉体派な海洋研究家なんですよ。
「スポーツ選手のような肉体」をしていて、研究者には見えないと作中で言及されています。
ただやっぱり原作のジョナスはとにかく研究者という側面が強いです。
「たとえば、今現在ハワイ沖の沿岸海域に生息しているクジラが、メガロドンを避けようとして日本列島沿岸に逃げ込んだとすると、同海域における食物連鎖が大きな影響を受けることとなります。数千頭のクジラが大挙移動して来たら、クジラと同じものを食べている種の食物摂取量が著しく減少するでしょう。」
(角川文庫 スティーブオルテン『MEG ザモンスター』190ページより引用)
原作のジョナスはメガロドンの出現に際してこういう研究者らしい懸念を真っ先に示すんですよ。メガロドンが人を食い殺すかもしれないという懸念より先に、海の生態系の心配をしています。さらに原作のジョナスは生物学の研究的な観点から、メガロドンを殺すのではなく、捕獲しようと尽力しますからね。
ただ映画版のステイサム演じるジョナスはそんなことを言及するはずもなく、とりあえず「殺す!」って感じでして、科学的な考証なんて知らねえよ!!と言わんばかりです。
また「ステイサムVSメガロドン」というプロレスを演出するために失われたメガロドンの科学的考証の1つが、メガロドンが夜行性であるという特性です。メガロドンの眼は光に敏感で、昼間は海上に浮上することはなく、夜になると海上付近にいるクジラなどの生き物を捕食するんですね。
しかし、夜の海の戦いって地味ですよね。というよりも暗くて何が起きているのかが見えづらいです。せっかくジェイソン・ステイサムという漢が巨大なサメと戦っているというのに、夜の海での戦いであれば、その雄姿が霞んでしまいます。
そういう映像的な部分での葛藤と、メガロドンと戦うステイサムという構図を際立たせるために、大胆にもメガロドンの眼が光に弱いという設定は無かったことにされてしまいました。
これによりメガロドンは昼間の海でも戦えるようになり、明るい映像の中で生き生きとステイサムとのプロレスを披露しました。
また映画版では多く存在していたジョナスが直接海に飛び込んでメガロドンに発信機をつけにいったり、銛でメガロドンの眼を突いたりという描写ですが、これに関しては原作には一切存在しません。
スティーブオルテンがジョナスをステイサムに見立てて書いていたとしたら別ですが、ちょっとハードボイルドな海洋研究家という体で書いているので、そういった超人的な描写はありません。
よってメガロドンの眼に銛を突き立てて、そのまま海上数十メートルまで浮上して、そのまま海へとダイブ!!みたいな人間の能力を超越した行動は、ジョナス役にステイサムという俳優が抜擢されたことで実現された描写でした。
ただ原作のジョナスがハードボイルドっぷりを見せるシーンが終盤にありまして、それがジョナスがメガロドンの体内から脱出するというシーンなんですよ。ジョナスは潜水艇に乗ったまま、メガロドンに捕食されてしまい、彼はそこから胃を切り裂いて、さらには心臓を切り裂いて彼女を絶命させて脱出します。この原作のジョナスの最大の見せ場が映画版では見事にカットされていました。
おそらくグロテスクすぎるからという理由もあると思うんですが、イーライ・ロス監督が参加していたら間違いなく実現していただろうなとは思いました。彼は『グリーンインフェルノ』のような食人映画を撮ってしまう監督ですからね。
ですので、彼が監督を務めなかったことが悔やまれるのは、ステイサムが巨大なサメのはらわたを切り裂いて、胎内から脱出するという映像が見られなかったことです。これが見れていれば、もっと『MEG ザモンスター』のステイサム映画度が上がっていたことでしょうね。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は『MEG ザモンスター』についてお話してきました。
『MEG ザモンスター』のスティーブオルテンの原作は、当時ウォルトディズニーが映画化権を買い取ろうとしたほどに面白くて、画期的な小説になっています。
『ジュラシックパーク』を想起させるような、人間のエゴと過ち、それを断罪する形でパニッシャー的に表れるメガロドンという構図もしっかりとしていて、メッセージ性と考証が成されたパニックSF小説として洗練された仕上がりになっています。
ただやはりジョナスがステイサムを務めたことで、そういった小難しい要素や科学的考証が全てどこかに霧散してしまい、ステイサムVSメガロドンというプロレスに集約されていったように感じられました。
この手の映画は基本的にツッコミを入れたら負けみたいなところがあります(笑)というよりもステイサムの映画はステイサムが出てるんだから何でもありだぜ!!ってノリで見た方が良いかと思います。
チャイナマネーとステイサムが融合したカオスすぎるサメ映画『MEG ザモンスター』をぜひ映画館で見て欲しいですね!!そしてできるだけ大きなスクリーンで体感してください!!可能な方はぜひIMAXで!!
今回も読んでくださった方ありがとうございました。