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目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね映画『シュガーラッシュオンライン』についてお話していこうと思います。
本記事は作品のネタバレになるような要素を含む感想・考察記事となっております。作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
当ブログの『シュガーラッシュオンライン』関連記事
当ブログでは、本記事以外にも『シュガーラッシュオンライン』に関する記事を書いておりますので、良かったら参照してみてください。
・映画『シュガーラッシュオンライン』の吹き替え版と字幕版、それぞれのキャストについて
・『シュガーラッシュオンライン』のオマージュ、小ネタ、カメオ出演のまとめ
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映画『シュガーラッシュオンライン』感想
ファーストルックで魅了するインターネットの世界
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まず、今作『シュガーラッシュオンライン』のような異世界突入モノにおいて一番大切なのが、その世界のビジュアルの最初の5秒で観客を引き込めるかどうかだと思うんですよ。
というのも人間って相手が人間であってもそうなんですが、「第1印象」で大方の評価が定まってしまう傾向にあります。
そのため異世界に突入後に作品がどれだけのワクワク感と高揚感を提供できるかというのは、作品の良し悪しに密接に関わってくるわけです。
その点で、『シュガーラッシュオンライン』という作品が内包するインターネットの世界は素晴らしいと思いました。
我々の身近にあるんですが、誰も見ることができない世界を親しみやすいファンクションと、見たことのないビジュアルで「可視化」して見せているのです。
検索サービスの予測変換機能、スパムリンクの案内、動画サイトの裏側、オークションサイトのあるある等本当に多くの人が一度は経験したことがあり、一度は想像したことがあるような描写を惜しみなく披露しています。
あまりにも想像の領域を超越しているわけでもなく、かと言って視覚的には目新しい絶妙な塩梅で構築された世界だからこそ見る人は引き込まれるんですよね。
こういう世界観の構築の仕方はやはり『ズートピア』スタッフが多く携わっているというところは大きいでしょうね。
『シュガーラッシュ』の続編としての巧さと疑問
前作『シュガーラッシュ』はもうディズニー映画史に残る革命的な映画だと思っております。
どんな人にもそれぞれの役割があって、その1つ1つに意味があるのであり、ゲームの悪役にだってきちんと存在する意義があるのだという鮮烈なメッセージを刻み付けた名作は今も色褪せません。
そして『シュガーラッシュオンライン』という作品は、実に前作から主題的にスムーズに繋がっているんですよね。
自分に与えられた役割や生き方に意義を見出していくことの尊さを教えてくれた作品が、次に我々に突きつけるのは、その役割や肩書を失った時、自分は何者なのか?という問いかけです。
ラルフは「ヴァネロペの親友」であるということに誇りを感じていますし、胸にかけた「You are my Hero」というクッキーをいつも大切そうにしています。
また、彼は同時に前作の物語を経て、今の自分の立場や生き方に満足するようになり、変化を望まないキャラクターになっています。
一方のヴァネロペは違います。彼女は常に先の分からないチャレンジを求め続けています。
何とも興味深いのが彼女が事故を起こすシーンですよ。
プレイヤーがハンドルを握り、ヴァネロペを操作しようとするわけですが、これはまさしく彼女が「与えられた役割」を全うすることを強いられるベクトルへの志向です。
一方で、彼女は自分の意志でもってプレイヤーの操縦から逸脱し、自分らしい生き方や走りを見出そうとしています。
そんな全く正反対の方向へと向かうベクトルが互いに引き合ったことで、アーケードゲーム「シュガーラッシュ」のハンドルが大破してしまいます。
このように冒頭の少ない時間で、きちんと前作からのテーマの橋渡しをしている点や、今作におけるラルフの行動がきちんと前作の物語に裏打ちされている点などは本当に丁寧で、素晴らしいと思いました。
そうなんですよ。
みなさんは前作『シュガーラッシュ』のヴィランであるキャンディ大王ないしターボのことを覚えていますか?
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このキャラクターは自分のゲームを追われ、「シュガーラッシュ」というゲームに潜り込み、プログラムを書き換えて自分の「居場所」と「役割」を作り出してしまいました。
そう考えていくと、『シュガーラッシュオンライン』でヴァネロペが取った行動ってターボと同じじゃないか?という疑問は拭いきれないと思うんです。
なぜなら彼女だって自分の都合で他のゲームに入り込み、プログラムを書き換えることでそこに「居場所」と「活路」を見出してしまっています。
本当にそうでしょうか?
なぜなら「シュガーラッシュ」というゲームのメインキャラクターはあくまでもヴァネロペですよね。
そう考えるとヴァネロペなしにあのゲームが成立するのかというところにまず疑問符がつきます。
さらにヴァネロペがいなくなったということで、「シュガーラッシュ」というゲームにバグが生じたと認識されて、不良品扱いになってゲームが撤収されてしまったらどうでしょうか?
つまり、ヴァネロペは将来的に他人に迷惑をかける可能性は大いに秘めているんですよ。
なので前作のヴィランであるターボが取った行動と『シュガーラッシュオンライン』でヴァネロペが取った行動を前者は悪で、後者は善であると評価することは非常に難しいんです。
そこに一抹の疑問符がついてしまうのが、『シュガーラッシュオンライン』の勿体ないところではあると思いました。
涙が止まらない親子の物語
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映画『シュガーラッシュオンライン』はそんな主題を、ラルフとヴァネロペを「疑似親子」に見立てて展開していくんですよね。
まさしくそうなんですよ。
冒頭にラルフがシュガーラッシュ内に新しいコースを作ってあげるシーンがありましたよね。
このシーンって親が子供のために進むべきレールを敷いてあげるみたいな行為の表象だと思うんです。
つまり親が自分の手から離れない程度にかつ、自分の世界の中で子供が幸せに生きられるように計らってあげるという話ですよね。
ただ、ヴァネロペはそこに一定の満足を見出しながらもどこかでまだ見ぬ「新しい世界」を求めています。
そしてインターネットの世界に突入し、その中で「スローターレース」というレースゲームに出会います。
まさに無法地帯の様な場所で、様々な危険が待ち受けています。
それでもこの世界に魅力を感じ、惹きつけられたヴァネロペは「スローターレース」の世界で暮らすことを願い始めます。
当然ラルフは反対するわけですが、これってまさしく親が子を心配するときの心情だと思うんですね。
「スローターレース」の世界は野蛮で、危険だからこそ自分の娘をそんなところには行かせたくないし、自分の近くにいれば自分が守ってあげられるのに・・・。
きっとラルフはそんな風にヴァネロペの父親の様な感情を抱いているのでしょう。
しかし、最後はヴァネロペの意思を尊重し、ラルフは彼女を「スローターレース」の世界へと行かせます。
ヴァネロペは何度も何度もラルフに向かって、手を振ります。
そんな自分らしい生き方を見つけ、旅立っていくヴァネロペの姿を温かく、少し寂しそうに見守るラルフの父親のようなまなざしに当ブログ管理人、涙が止まりませんでした。
『シュガーラッシュオンライン』もまたディズニーらしい家族の物語だったんですね。
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『シュガーラッシュオンライン』考察
キングコングが意味するものとは?
映画『シュガーラッシュオンライン』の終盤は明らかに『キングコング』を意識した内容になっています。
そもそもラルフというキャラクターがドンキーコングに影響を受けている点や、ドンキーコングが「キングコング」に影響を受けていることから考えると、三段論法的に自然な繋がりとも言えます。
ただキングコングという存在は、そもそも純粋に人間の女性に対して愛情を抱いたがゆえに彼女を連れ去りエンパイアステイトビルに登るわけですよ。
しかし、人間からは当然の如く敵対視されてしまい、最終的には武力によって制圧されてしまいます。
ラルフウイルス(ラルフ)もおそらく時間が経過すれば、人間たちによるウイルスバスターソフトが起動し淘汰されてしまっていたことでしょう。
しかし、彼は自分で自分の弱さと向き合い、ヴァネロペに対する思いにきちんと折り合いをつけるんですね。
キングコングは人間の女性(アン)に対して好意を抱き、そして自分が守るんだという使命感のようなものに駆られていたのやもしれません。
そして結果的にはそのエゴにも似た感情が自分の身を滅ぼしてしまいます。
ラルフは、そこでヴァネロペを解放するという選択をしたわけで、その点でキングコングが選ばなかった道を選んでいるということにもなります。
『モアナと伝説の海』の正統発展型の家族モノとして
ディズニープリンセスを描いた作品において珍しく血縁家族が勢ぞろいしているのが2017年に日本でも公開された『モアナと伝説の海』だったりします。
この作品においてモアナには島にいれば父親の後をついで、村長として生きていくレールが敷かれていました。
しかし、彼女は「自分らしい生き方」を見つけるために、村を救うために島を飛び出していきます。
そんな家族からの「親離れ」のイニシエーションを血縁家族をベースにして描き、その中でモアナというプリンセスの自立を描いたのがこの作品でしょうか。
そして本作『シュガーラッシュオンライン』は疑似家族を全面に押し出して、そのテーマを再構築しているんですよ。
冒頭に「シュガーラッシュ」が壊れたことで、そのレーサーたち15人をフィックス・イット・フェリックスが親代わりになって育てるシーンもテーマに寄与していますし、何よりラルフとヴァネロペの関係は疑似親子的です。
血縁家族だけが家族とは呼べなくなってきているこの時代だからこそ、ディズニーは『モアナと伝説の海』で描いた少女の「家族や親からの自立」というテーマを改めて疑似家族ベースで描き直したのでしょう。
そういう点で、ディズニーの志向する主題性は進化を続けています。
ディズニープリンセスの意義を拡張する物語
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皆さんはディズニープリンセスと聞くと、どんなイメージをお持ちでしょうか。
『白雪姫』や『眠れる森の美女』、『シンデレラ』のような初期のディズニープリンセス映画はかなりステレオタイプ的でして、待っているプリンセスの下に強くてかっこいい王子様が現れて結婚するというところまでがワンセットです。
ただ意外と知られていないのが、ディズニーは近年そういったクラシカルなディズニープリンセス映画を次々と再解釈していっているんです。
これがジェンダー的な視点で見ると、非常に興味深い作品なんですよ。
「シンデレラシンドローム」や「シンデレラストーリー」という言葉が生まれるほどに「王子を待つヒロイン」の典型とされているシンデレラですが、その結婚後の物語を描いているのが『シンデレラⅡ』の第1話です。
シンデレラは王宮の古いしきたりや厳格な伝統に嫌気がさしていて、自分らしさを見失いそうになります。
しかし、王子は自分のことを愛してくれているんだと信じ、そんな規則に反するような行動を取り始めます。
結果的にそんなシンデレラの行動が王子の心境に変化をもたらし、2人で国に新しいしきたりや伝統を築いていこうという方向性に物語は纏まります。
つまり最もクラシカルなディズニープリンセスの1人であるシンデレラをディズニーは既に脱構築し、「自分らしい生き方を見つけた女性」としてのプリンセスに上書きしているんです。
そして近年のディズニープリンセス映画はどんどんと女性の「自立」や「自分らしさ」を全面に押し出した作品に仕上がってきています。
とりわけこの3作品は印象的でした。
- 『アナと雪の女王』
- 『塔の上のラプンツェル』
- 『モアナと伝説の海』
この比較的近年に公開されたディズニープリンセス映画3作品はまさしく「自分らしい生き方を見出した女性=本物のプリンセス」という解釈に基づいて作られた作品です。
そして『シュガーラッシュオンライン』へとそのプリンセス譚は脈々と続いてきました。
そんな本作は、近年ディズニーが打ち出してきたプリンセス観をさらに拡張して見せたわけです。
そうなんですよ。
例えば、プリンセスたちがヴァネロペを見て、ジャージに着替えるシーンがあるじゃないですか?
あれって、まさしく「ディズニープリンセスはドレスを着ているものだ」という我々が抱いている彼女たちのアイデンティティの1つを壊しているんですよ。
ただ彼女たちが「プリンセス」であるということはドレスが消失したところで何ら揺らぐことはありませんし、彼女たちはヴァネロペもプリンセスであると発言していました。
さらに面白いのが、終盤に登場するビルから落下してくるラルフに白雪姫のコスチュームを着せるシーンですよね。
おそらくそうなんだろうと思います。
これまでのディズニープリンセスの定義は「自分らしく生きる女性」の総称だったんですが、『シュガーラッシュオンライン』はそれをさらに脱構築することで「自分らしく生きようとする全ての人々」という広義の解釈へと拡張したんですよ。
つまり本作はディズニーが追い求めてきたプリンセスという永遠のテーマの1つの集大成なんです。
おわりに
いかがだったでしょうか?
今回は映画『シュガーラッシュオンライン』についてお話してきました。
記事をいくつかに分散してあるので、この記事では少し分量が少なめにはなりましたが、ぜひぜひ他の記事も読みに来ていただけると嬉しいです。
もちろんエンタメ映画として子供が見ても楽しめるんですが、ラルフの心情は大人になってからでないと分からないんだと思いますし、本当にその意味が分かるのは、自分の子供が自分の下から旅立っていく時なんだろうなと思いました。
こういう世代によって違った受け取り方で楽しめる映画ってすごく素敵だと思いますし、この映画をいずれまた見化してみようと思う原動力にもなりますね。
ぜひぜひ劇場でご覧になって見てください。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。
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