映画『ユニコーンストア』より引用
目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね映画『ユニコーンストア』についてお話していこうと思います。
本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想・解説記事となっております。
作品を未鑑賞の方はお気を付けください。
良かったら最後までお付き合いください。
『ユニコーンストア』
あらすじ
キットは、幼少期からユニコーンの飼い主になることを夢見ていた。
大人になり、彼女は大好きなユニコーンのアートで生計を立てようとしたが、アーティストとしての評価は一向に上がらず、実家に戻ってきてしまう。
キットは、止む無くテレビCMで見かけた人材派遣会社に登録し、働き口を見つける。
しかし、そこで彼女の割り当てられた役割は、コピー取りでしかなかった。
そんなある日、彼女の下に「Kit」と明記された謎のセールスマンからの案内状が届く。
最初は不可解な案内状に不安感を抱いていたが、何度も届けられるうちに好奇心が勝り、その店を訪れることにした。
そこにいたセールスマンは、ユニコーンは実在すると前置きしたうえで、「自分が一人前であると証明できれば、ユニコーンを売る」という提案を持ち掛けます。
幼少期からの夢が叶うことに、喜んだ彼女は、その日からユニコーンのための家をホームセンター勤務の青年ヴァージルと協力しながら始める。
果たして彼女はユニコーンを手に入れるという夢を叶えることができるのか・・・?
スタッフ・キャスト
- 監督・製作:ブリー・ラーソン
- 脚本:サマンサ・マッキンタイア
- 音楽:アレックス・グリーンウォルド
- 撮影:ブレット・ポウラク
- 編集:ジェニファー・ヴェッキエレロ
監督・製作・主演のブリーラーソンは『ショートターム』や『ルーム』などの作品に出演し、後者の作品ではアカデミー賞主演女優賞をも受賞しています。
また、2019年には初のMCU出演作となる『キャプテンマーベル』も公開され、勢いに乗る女優の1人ですね。
脚本を担当したのは、アメリカのテレビドラマなどの脚本家として知られるサマンサ・マッキンタイアです。
Netflix配給ということもあり、あまり予算もかかっていない映画のように思えますが、シンプルで、メッセージ性に富んだ良策に仕上がっているように思えます。
- ブリー・ラーソン:キット
- サミュエル・L・ジャクソン:セールスマン
- ジョーン・キューザック:グラディス
- ブラッドリー・ウィットフォード:ジーン
- ママドゥ・アティエ:ヴァージル
主演を務めたのは、オスカー受賞経験もあるブリー・ラーソンです。
今作は彼女自身の境遇が反映されていたり、性暴力被害者の支援活動にも取り組んでいるフェミニストとしても知られる彼女の思想が多分に反映されているように思われます。
また、ユニコーンストアのセールスマンとして登場するのがサミュエル・L・ジャクソンとなっています。
他にもコメディエンヌとして有名なジョーン・キューザックやアメリカの人気テレビドラマシリーズ『ザ・ホワイトハウス』でも知られるブラッドリー・ウィットフォードなども出演しています。
ぜひぜひNetflixで本作をご覧ください!!
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『ユニコーンストア』感想・解説
ブリーラーソン自身の人生が反映された作品
映画にはしばしば監督や脚本家の人生が投影されます。
今作『ユニコーンストア』についてもブリーラーソン自身の経験が投影されているように感じられます。
ブリー・ラーソンは幼少の頃に、社交不安障害を抱えていたようで、学校には通わず、ホームスクーリングをしていた時期があるようです。
その後、自分の中にクリエイティブなことをしたいという欲求が湧き出て、アメリカン・コンサーバトリー劇場の子役養成プログラムに申し込んだようです。
しかし、彼女が7歳の時に両親が離婚してしまい、そのことで心に大きな傷を負ったともされています。
また、ブリーラーソン自身は父親との関係を振り返り、あまり上手くいっていなかったとも語っています。
実は今やハリウッドで最も注目を集めている女優の1人でも苦しい幼少期を過ごしていたことが分かります。
そしてそんな彼女の経験が色濃くこの映画に反映されていることは間違いありません。
主人公のキットが課題としているのも、ブリーラーソン自身が幼少期に抱えていた自分のクリエイティブなことに対する志望や両親との関係性、周囲の人たちとの関係性です。
そしてユニコーンという空想の産物に惹かれるという設定も、彼女が幼少の頃より日本のアニメーションも含めフィクションが大好きでそこに救いを求めていた側面があることに起因していると言えるでしょう。
だからこそ彼女は、本作を自分がかつて抱えていた問題や課題を乗り越え、大好きなフィクションに救われながら、自分の生き方と愛を見つけるという作品に仕上げたのでしょう。
ユニコーンという名の愛を見つける物語
本作において1つのキーワードになるのがユニコーンという伝説の生き物です。
劇中でセールスマンの口からたびたび仄めかされていたように愛を象徴する生き物とされています。
主人公のキットは、アーティストに自分らしい生き方を見出していましたが、そこでは評価されず、派遣社員としてコピー取りとして働いていました。
また、人との付き合いが不得手でかつ家族ともよい関係を築けているとは言い難い状況でした。
そんな彼女の現実逃避先は空想の世界であり、アニメの中に登場するユニコーンでありました。
人間との関係を築くことに難を感じながらも、ユニコーンと親友になりたいと願っているのです。
セールスマンはその人が本当に欲しているものを販売すると述べていました。
当初はキットにとって、それはユニコーンであったはずです。
しかし、物語を通じて彼女はユニコーンの向こう側にある本当に欲しいものに気がつかされていきます。
彼女は自分らしく生きる自分を見てくれ、愛してくれる人を求めていたのであり、そして両親からの愛を欲していました。
彼女は苦しみ、悩みながらも自分らしく生きることを許してくれない環境から抜け出し、両親との関係性を修復し、一度は切れかけたヴァージルとの関係をも繋ぎ止めました。
そうして人を愛し、そして愛されるようになることこそが彼女にとっての「一人前の大人」になるということだったのです。
物語のラストではキットはユニコーンと対面することとなります。
その場には、セールスマンだけではなくヴァージルも居合わせたわけですが、その前にストアを訪れた際、彼にはユニコーンストアが見えていませんでした。
しかし後にユニコーンとキットが対面しているシーンでは、彼にもユニコーンが見えているようであります。
この描写が、ヴァージルという青年がありのままのキットを理解し、愛そうとしていることを表しているのです。
これまで彼女の独特の世界観はアート批評家にも理解されず、両親にも理解されず、職場の人間に理解されませんでした。
それでも最後には、自分を真に愛そうとしてくれる男性に出会い、そして両親も彼女のことを理解してくれるようになったわけです。
確かに人と人が関わり合う中には、数々の困難があります。
その中で、自分を理解してくれる人に出会えるのか、自分を愛してくれる人に出会えるのか。
『ユニコーンストア』という作品が描いたのは、誰もが直面する普遍的な人生のターニングポイントなのです。
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フィクションと現実
映画やアニメ、小説の中でもフィクションと現実の関係性が扱われることは多いです。
例えば、昨年公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の『レディープレイヤー1』も現実と虚構の関係性について言及した映画です。
そして今作『ユニコーンストア』についても空想と現実の関係性について描かれています。
フィクションや空想といった類のものは、人間であれば誰しもが苦境に陥った際に、心のよりどころにしてしまうものです。
例えば当ブログ管理人も現実でつらいことがあった日には、映画やアニメを見て、自分とは違う人の人生を垣間見ることで、心を落ち着かせようとします。
しかし、時にフィクションの世界にとらわれてしまい、現実に戻ってこられなくなるようなケースがあります。
本作の主人公キットは、ユニコーンというイマジナリーフレンドにとらわれ、現実での他人との関係性に苦悩していますが、もはやそれを意に介する様子もありませんでした。
こういう場合には、フィクションに傾倒することを、彼女の両親がそうだったように「現実逃避」と形容することとなります。
その一方で、フィクションや空想は、人が現実の中で前を向いて生きるために必要なものなんですよね。
監督のブリーラーソン自身も幼少の頃からアニメや映画などのフィクションの世界が大好きだったわけですが、こういったものが人を救い、そして前を向かせてくれることだってあるわけです。
だからこそフィクションや空想の世界に一時的に浸ることはむしろポジティブな「現実逃避」です。
この映画は、ブリーラーソンが映画監督として、そして女優として、人々がそれを見て、前向きになれるような映画を作りたいという決意の表れなのかもしれません。
だからこそラストシーンでも新しく「ストア」にやってくる女性が描き、この物語を普遍的な物語へと昇華させたのでしょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は映画『ユニコーンストア』についてお話してきました。
ブリーラーソン監督・製作ということで注目していた作品ですが、映画的に評価するとそれほど傑出しているわけではないですが、物語そのものが自分の経験ともリンクして泣けました。
映画でもアニメでも、その他どんなフィクションや空想であっても、そういう存在に救われたと感じる経験をしてきた人にとってはすごく心に刺さる映画になっているのではないかと思います。
苦悩している人の背中をそっと押してあげるような、優しい希望の物語でした。
ぜひぜひNetflixでご覧になってください。
今回も読んでくださった方、ありがとうございました。