映画『アベンジャーズ』より引用
目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね『アベンジャーズ ヒーローズジャーニー』というノベライズについてお話していこうと思います。
本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想・解説記事となります。
作品を未読の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
『アベンジャーズ ヒーローズジャーニー』感想・解説
どういう人におすすめの本なのか?
何はともあれ、表紙を見れば本作が『アベンジャーズ インフィニティウォー』の前日譚小説であるということは何となく想像がつきますよね。
では、もう少し踏み込んで、この小説がどういう人におすすめなのかを書いていこうと思います。
まず、この小説は前日譚とありますが、その70%~80%はこれまでに公開されたMCU作品の内容のおさらいなんですね。
具体的に言うと、下記の作品の内容が網羅されています。
- 『アイアンマン』
- 『マイティソー』
- 『キャプテンアメリカ ファーストアベンジャー』
- 『アベンジャーズ』
- 『アイアンマン3』
- 『アベンジャーズ エイジオブウルトロン』
- 『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』
- 『キャプテンアメリカ シビルウォー』
- 『ドクターストレンジ』
- 『ソーラグナロク』
ただ単にあらすじをなぞっているだけでは決してなく、それぞれのエピソードの中で映画版では描かれなかった心情描写が成されていて、これを読んでから映画を見直してみるのも面白いと思います。
例えば、『アベンジャーズ』の終盤にゲートの向こうに集結するチタウリの軍勢を見た時に何を感じていたのか?
まあ『アベンジャーズ エイジオブウルトロン』や『アイアンマン3』の行動を見れば、分かることではあるんですが、彼の心理描写が精緻に成されているので、トニースタークという人間に対する見方が変わります。
他にも『ソーラグナロク』の物語をヘイルダムの視点から再構築したストーリーなんかも非常に面白いですよね。
本作は映画版だけを見ると、ソーという主人公がヒーローとしてそして王として覚醒していく成長譚なんですが、これをヘイルダム視点で見ると、ガラッと見え方が変わります。
ヘラという脅威が迫る中で、必死に民を守りながらソーという英雄を帰還を待ちわびる、弱き者たちの物語として『ソーラグナロク』を描いているのです。
他にも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』をネビュラ視点で再構築した物語も非常に面白いですし、彼女のパーソナリティをより深く知ることができます。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーvol.2』や『アベンジャーズ インフィニティウォー』の中でも、もちろん彼女と姉ガモーラの関係性は1つの重要な要素として描かれていました。
ただこのノベライズを読むことで、より深くネビュラのガモーラに対する思いを知ることができ、映画を見返してみると思わずネビュラに感情移入してしまいます。
その一方で、「前日譚小説」と銘打たれている通りで、『キャプテンアメリカ シビルウォー』から『アベンジャーズ インフィニティウォー』の空白の時間に関する描写もあります。
- ロジャース(キャプテンアメリカ)が『シビルウォー』以後にナターシャとサムと共に実行していたとあるミッション
- アイアンマンが迫りくる大いなる危機(結果的にはサノスのこと)を察知しマシンをアップデートしている
- ドクターストレンジがウォンと共に別次元から迫りくる強敵を撃退した話
これらは『アベンジャーズ インフィニティウォー』を理解するうえで、絶対に知っておくべきというほどのエピソードではないですが、キャラクターをより深く理解するのに役立つエピソードではあります。
さて、ではここまでの内容をまとめていきますが、『アベンジャーズ ヒーローズジャーニー』はこういう人におすすめです。
- MCUが大好きで、とにかく関係があるコンテンツはどんなものであっても鑑賞しておきたいという方
- MCUを一通り見てきたけど、所々内容を忘れていて『エンドゲーム』前に復習しておきたい方
ぜひぜひ書店で見かけたら、お手に取ってみてください。
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スティーヴ・ロジャースはなぜ「正しい」のか?
今回の『アベンジャーズ ヒーローズジャーニー』を読んでいて、1つ面白かったのはナターシャの視点から「スティーヴ・ロジャース」という人間について語られている点です。
自分たちが守ると誓った人々に追われながらも、地球上のすべての人間のために、命を失う危険を冒したのだ。
そして、ナターシャは実感していた。一人の善人がいなければ、これが不可能だったことを。過ぎ去りし日々に、わずかな信頼と純粋な心で、一人の人間にどれ程のことができるのかを示してくれた男が。その男が、ナターシャに再び、人間を信じさせてくれたのである。
スティーブ・ロジャース。キャプテンアメリカである。
(『アベンジャーズ ヒーローズジャーニー』86ページより引用)
ナターシャがロジャースに全幅の信頼を寄せていることは、これまでのMCUを見れば、明らかです。
しかし、今回のノベライズでは、幼少期からスパイとして人を疑い生きるように訓練されたナターシャが、もう一度人を信じることの大切さを教えてくれた存在として彼を捉えていることが描かれています。
また、本作は、キャプテンアメリカというヒーローがなぜMCUを代表する「正義のヒーロー」であるかを改めて教えてくれます。
彼はもともとは徴兵基準を満たせないほどに貧弱な体質であり、何度も兵士に志願するも試験に落とされていました。
つまりスティーヴ・ロジャースは「弱い」男であったわけで、だからこそ「弱さ」を理解することができるんですね。
スティーヴは敗残者だった。ずっと虐げられてきたし、優越感を持った人とは折が合わなかった。スティーヴこそ、弱さの意味を知る、根っからの善人だった。
(『アベンジャーズ ヒーローズジャーニー』28ページより引用)
ここに彼がスーパーヒーロー足りうる理由のすべてがあると言っても過言ではありません。
彼は確かにスーパーソルジャー血清を打ったことで肉体的に強靭になり、それが故にアベンジャーズの一員としても戦うことができています。
しかし、その根底には彼が弱きものであったこと、虐げられ続けてきたこと、そしてそれでも勇気を持ち、戦う意志を示し続けてきたという不屈の精神があります。
『キャプテンアメリカ シビルウォー』で、彼はトニー・スタークとお互いに理解し合い深い絆で結ばれながらも、決裂することとなりました。
彼がソコヴィア協定に理解を示すことがなかったのは、彼にとってのヒーローとは国の利害のために動く、つまり「優越感を持っている人間」の判断に基づいて行動することではなかったからでもあります。
彼は常に「弱き者」のために戦おうとしていたのであり、その正義のために戦うために柵ができることはどうしても受け入れられなかったのです。
個人の判断や価値観に基づく「正義」ほど危ういものはありません。
しかし、スティーヴ・ロジャースという男はあまりにも正しすぎるのです。
『キャプテンアメリカ シビルウォー』の中で一度はトニー・スタークにつきスティーヴと相まみえることになったナターシャの視点で綴られるロジャースという男の「正しさ」に、改めてその偉大さを感じさせられました。
トニー・スタークが抱える弱さと不安
さてMCUを語る上でもう1人欠かせないヒーローなのがトニー・スタークでしょう。
彼は偉大な父親の息子として期待を背負い、何とかそれに応えようと努力し、そして父が設立した会社のCEOを継ぐことになりました。
しかし、彼は自分の経営する会社が作り出している武器が世界にどんな影響を与え、どんな脅威を生み出しているのかを目の当たりにしてしまいます。
そして彼はそんな世界にはびこる脅威に対抗するために「アイアンマン」の研究と開発に着手しました。
その後アベンジャーズの一員としてニューヨークでロキが引き起こした騒動に直面し、最後の最後にミサイルを宇宙空間へと逃がそうとした際に、彼は宇宙より迫る強大な敵の存在を確認しました。
そしてトニーは見た。
侵攻しつつある、ひとつの軍勢を。
今はそれが、地球の直面する脅威なのだ。ニューヨーク市でアベンジャーズが戦ったものはただの氷山の一角、地球を荒廃させようと待ち構えている、恐るべき勢力の片鱗に過ぎないのだ。
トニーはすぐに理解した。人間がより大きな、限りなく危険な世界に踏み込んでしまったことを。
(『アベンジャーズ ヒーローズジャーニー』95・96ページより引用)
再び彼はテロリストなど足元にも及ばないような脅威に直面し、不安と恐怖に怯えることとなります。
そこから『アベンジャーズ エイジオブウルトロン』のウルトロン開発の着手へと繋がっていきます。
しかし、それが空回りしてしまい、結果的にその尻拭いをアベンジャーズが担当することとなってしまいました。
その後、トニー・スタークは再び不安と恐怖に直面することとなります。
それが『キャプテンアメリカ シビルウォー』の冒頭で描かれたヒーローの戦闘が罪のない民間の人たちに危害を加えてしまう可能性があるということです。
それ故に彼はソコヴィア協定にサインして、その責任を背負う恐怖から逃れようとします。
この彼の決断も、これまでの彼の成り行きを知っていれば当然のことですよね。
このようにトニー・スターク(アイアンマン)というヒーローもまた、弱さと向き合いそれを克服するために常に努力してきた人物です。
しかし、面白いのは彼が「正義」と思って成してきた行動の大半が空回りしているという事実です。
そして『アベンジャーズ インフィニティウォー』でも彼は結果的に世界を救うことはできませんでした。
だからこそ多くのファンが『エンドゲーム』に期待するのは、これまで空回りし続けてきたトニー・スタークという男の正義が世界を救うことです。
ほかのどのヒーローたちよりも繊細な感性を持ち、弱さを心に持ちながらもそれを鉄の鎧の内側に隠し、強くあろうとしてきた男の努力が結実する瞬間を望んでいるわけです。
彼が『アイアンマン』から『キャプテンアメリカ シビルウォー』後に至るまでに抱いていた心情を今作でしっかりと整理できたことで、『エンドゲーム』への気持ちがより昂りました。
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おわりに
いかがだったでしょうか。
今回はノベライズ『アベンジャーズ ヒーローズジャーニー』のざっくりとした概要と、MCUを代表する2人のヒーローについて書いてみました。
まさにMCUを背負ってきた2人のヒーローが『アベンジャーズ エンドゲーム』にてどのような形でその旅を終えるのかがもう楽しみで仕方がありません。
『シビルウォー』以後決別してしまった2人ですが、2人が強い絆で結ばれていることやお互いを信頼していることは今回のノベライズでも強調されていました。
だからこそ2人が再び共闘する瞬間が訪れるのであれば、その時はただただ涙を堪えきれなくなるんだと思います。
『アベンジャーズ エンドゲーム』公開まで残りわずかとなりましたが、ぜひぜひこのノベライズを手に取って、MCUの総復習をしつつ、キャラクターについての理解を深めておくと良いと思います。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。
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