みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね注目の映画配給会社「A24」のオシャレなおすすめ映画10選ということでお話していきたいと思います。
単純に映画のタイトル?
それとも作品の監督?
はたまた予告編で興味を持ったから?
きっといろいろな理由があると思います。
近年アメリカの映画シーンで飛躍的な成長を遂げ、インディペンデント系ながら、その地位を確固たるものにしている配給会社があります。
それが今回みなさんにご紹介する「A24」です。
2012年に設立され、2013年より映画の配給をスタートさせるといきなり『スプリング・ブレイカーズ』がヒットし、注目を集めます。
2014年にはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『複製された男』やスティーヴン・ナイト監督の『オン・ザ・ハイウェイ』など次々に話題作を輩出し、一気にアメリカ映画シーンに躍り出ます。
2015年にはアカデミー賞でブリーラーソンが主演女優賞を受賞した『ROOM』や長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『AMY』の配給を手掛けるなどし、賞レースでも存在感を発揮しました。
2016年にはついに配給した『ムーンライト』がアカデミー賞作品賞を受賞し、その地位を確固たるものとしました。
それ以降も『レディバード』や『フロリダプロジェクト』など配給した作品が次々に高い評価を獲得していますね。
今回はそんな注目の映画配給会社である「A24」のおすすめの作品を10作品厳選してご紹介しようと思います!!
目次
「A24」のオシャレなおすすめ映画10選
『ジンジャーの朝 〜さよなら、わたしが愛した世界』
- 監督:サリー・ポッター
- 脚本:サリー・ポッター
- エル・ファニング
- アリス・イングラート
主人公ジンジャーとローザは幼馴染の関係でした。
2人は友情以上の関係で結ばれており、ローザが落ちこぼれ、学校が離れてからも親密な関係であり続けました。
しかし、そんな2人の関係性は大人になるにつれて目まぐるしく変化していきます。
そしてついに、2人の関係を切り裂く決定的な出来事が起こってしまいます。
冒頭のジンジャーとローザの愛らしい友好関係を描くシーンの数々は魅力的で思わず頬が緩んでしまうのですが、後半になるにつれて家庭状況や社会問題が絡んできて、どんどんと重たい物語にシフトしていきます。
それでも、どんなに関係が変わっても2人の間に確かに存在していたあの美しい瞬間だけは変わらないと思わせてくれます。
(C)BRITISH FILM INSTITUTE AND APB FILMS LTD 2012
冒頭に2人がお互いの下着を見せあって、イチャイチャしているシーンがあるんですが、とにかく個人的に大好きなんですよ。
どんなに2人の関係がこじれていっても、振り返るとそこには確かに純粋でまだ汚れを知らなかったあの頃の2人の友情が確かにありました。
同じ服を着て、下着を見せ合って笑っていたあの頃だけは、あの朝だけは永遠なのだと、そう信じたくなるんです。
映画として傑出しているかと聞かれると、答えに困りますが、エル・ファニングという女優の魅力を余すところなく閉じ込めた美しい映像を堪能できる素晴らしい映画だと思います。
『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』
- 監督:スティーブン・ナイト
- 脚本:スティーブン・ナイト
- アイヴァン・ロック:トム・ハーディ
全編にわたって主人公のアイヴァン・ロックが車中で電話で話し続けているだけという異色の映画作品となっています。
彼は車の中で電話を続け、その間に仕事、家族、そして周囲の人からの信頼と様々なものを失っていきます。
そんなワンシーン映画でありながら、観客を退屈させることがないのは、トム・ハーディの並外れた演技があるからこそです。
(C)2013 LOCKE DISTRIBUTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED
怒り、悲しみ、狂気の入り混じる豊かな表情の演技は観客の心を掴んで離しません。
彼の走行するハイウェイはある種の一本道であり、彼は初めから決められているバッドエンドへと突き進んでいるようにも見受けられます。
しかし、ラストシーンで聞こえる産声はそんな物語の結末に一抹の希望をもたらしてくれます。
斬新なワンシチュエーションムービーであるだけでなく、1本の映画として、ドラマとしても見ごたえのある内容に仕上がっています。
ちなみに2019年日本公開の作品に、同じく主人公の電話シーンだけで展開する『THE GUILTY』という映画があります。
こちらはミステリー仕立ての内容ですが、非常に良くできておりますのでチェックしてみてください!
『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』
- 監督:J・C・チャンダー
- 脚本:J・C・チャンダー
- アベル・モラレス:オスカー・アイザック
- アナ・モラレス:ジェシカ・チャステイン
アメリカンドリームを掴むとはどういうことなのかを淡々とした視点で見つめ、リアリスティックに描き出したA24配給の意欲作です。
原題は「A Most Violent Year」なんですが、殺し合いのシーンがあったり直接的な暴力のシーンが全面的に押し出された作品ではありません。
しかし、この映画は淡々と男に迫るバイオレントな世界を描いています。
ちなみにこの原題は1981年はニューヨークにとって史上最悪の年であり、マフィアの活動が活発であったことにちなんでつけられています。
高潔なまま手を汚すことなく成功を収めようとする主人公ですが、そこには数々の障害が立ちはだかります。
それでも彼は必死に手を汚すまいと尽力し、最終的には成功をつかみ取るのです。
ただ、彼自身が手を汚さなかった陰で、彼のために手を汚してきた人間がたくさんいたわけで、アメリカンドリームを掴むということが決してきれいごとだけでは済まされない両面性を残酷にも描き出しています。
夢を追う男のサクセスストーリーでありながら、夢を掴むことのほろ苦さも上手く演出された良作だと思います。
『エクス・マキナ』
- 監督:アレックス・ガーランド
- 脚本:アレックス・ガーランド
- ケイレブ:ドーナル・グリーソン
- エヴァ:アリシア・ビキャンデル
『エクス・マキナ』という作品は人工知能(AI)を題材にしたスリラー映画なんですが、物語的に革新性があるかどうかと聞かれると、それほどでもないとは思います。
ただ映像の美しさとそして恐怖を煽る演出が全編において冴えわたっており見る者を引き込む不思議な引力がある作品と言えるでしょう。
近年人工知能は世界的なトレンドで、題材にした映画も数多く制作されていますが、この作品が焦点を当てたのはとりわけAIの生存本能という部分になると思います。
今、世界には「強いAI」と「弱いAI」という言葉があります。
我々が日常生活に取り入れているのは「弱いAI」の方で、逆に『ターミネーター』のスカイネットや『2001年宇宙の旅』のHALのようなAIは「強いAI」に分類されます。
そして『エクス・マキナ』が描いたのは、人間がAIに抱いている潜在的な不安感や恐怖感だと思っています。
自分たちのために働くように設計したAIが人間を超えていくかもしれないという言いも知れない恐怖を演出に織り込み、見事な映画に仕上げました。
アリシア・ビキャンデルが演じるAIも狂気的な美を身に纏っており、不思議と目を引く存在感を放っています。
近年公開された数多くのAI映画の中でも、最も美しく、そして最も恐ろしい映画の1つと言えるでしょう。
『ルーム』
- 監督:レニー・アブラハムソン
- 原作:エマ・ドナヒュー
- 脚本:エマ・ドナヒュー
- ジョイ:ブリー・ラーソン
- ジャック:ジェイコブ・トレンブレイ
親子の愛を描いた作品であり、その独特の構成とエモーショナルな映像の連続に思わず涙が止まらなくなる傑作です。
主人公のジョイは長年にわたって監禁されており、その間に自分を監禁している男の子供を身ごもり、出産するに至りました。
そんなある日、彼女にその「部屋」を脱出するチャンスが訪れます。
彼女は何とか息子のジャックと共に長らく断絶されていた外界へと脱出することに成功します。
しかし、外の世界に待ち受けていたのは、親子にとって大きな壁でした。
自分の意志でなく、妊娠してしまい、やむを得ない状況で子供を持つこととなった母親。
そんな母親がその子供を育てていくことは母親にとって、そして子供にとって正しいと言えるのでしょうか。
2部構成になっている映画は、前半で空間的な制約からの脱出を描き、後半で親子の精神的な解放を描きます。
この映画が素晴らしいのは、強姦によって身ごもった女性がその子供を育てるということを決して美談としてだけ描こうとはしていないところです。
ジョイの父親は自分の娘がレイプによって産んだ子供をどうしても見ることができない、憎しみの対象として見てしまいます。
ジョイの父親以外の家族はジョイの娘のジャックを受け入れています。しかし、父親は受け入れない。
この父親の存在がこの映画の説得力を増して言えると言えると私は感じました。
なぜなら、この父親の思いってすごくリアルで人間らしい感情に裏打ちされています。
そんな苦悩と葛藤を経験しながら、主人公のジョイがただジャックの母親でありたいというシンプルな答えに辿り着いていくそのプロセスにただただ涙が溢れます。
(C)Element Pictures/Room Productions Inc/Channel Four Television Corporation 2015
A24配給作品の中でも屈指の出来と言える映画でしょう。
『スイスアーミーマン』
- 監督・脚本:ダニエル・シャイナート&ダニエル・クワン
- ハンク:ポール・ダノハンク
- メニー:ダニエル・ラドクリフ
実は個人的にA24の配給した作品の中で1番好きな映画がこの『スイスアーミーマン』です。
物語は無人島に漂着した青年ハンクが、絶望して命を断とうとしたとき、波打ち際に打ち上げられている1人の男の死体に出会うところから始まります。
そんなハンクと死体のメニーの不思議な友情をこの映画は描いています。
とにかく終始下ネタが炸裂していて、冒頭にいきなりハンクがメニーの放屁で無人島から脱出しようとするという衝撃的なシーンが登場します。
1つ1つの描写がキテレツで、理解しがたい側面もある映画化とは思いますが、文明社会と我々が失ってきたものというコンテクストで読み解くと興味深い作品です。
現代の社会で生きることに、毎日の仕事に、同じことの繰り返しの日々にうんざりしている人にこそ見て欲しい作品ですし、希望を与えてくれる映画になっているように思います。
コメディメイドな作りでありながら「生きる」ことについての深い問いも内包した実にA24らしい傑作です。
『ムーンライト』
- 監督:バリー・ジェンキンス
- 脚本:バリー・ジェンキンス トレバンテ・ローズシャロン(ブラック)
- アンドレ・ホランドケヴィン
- マハーシャラ・アリフアン
アカデミー賞作品賞を受賞した1人の男性の幼少期、青年期、成人期を淡々と描く人間ドラマなのですが、その語り口は極めてドライで淡々としています。
その一方で鮮やかで美しい映像が非常にエモーショナルで、映像とストーリーテーリングのバランスの良さが映画の完成度にも直結しています。
この映画の映像へのこだわりは尋常ではなくて、例えば照明1つをとっても照明の色、照明の強さ(柔らかさ)、照明の位置など徹底的に計算しつくされています。
このシーンは部屋の中にピンクの照明を配置したうえで廊下のカットを撮影しているわけですが、独特の雰囲気を作り出すことに成功しています。
(C)2016 A24 Distribution, LLC
それが今作の美しい映像の実現に大きく貢献していることは言うまでもありません。
加えて今作は黒人社会にスポットを当てた作品なのですが、黒人の黒い肌をより美しく映像にするためにカラーマネジメントの段階で肌に青色を足しこんでいったり、光の反射を抑えたりといった工夫を施したと言います。
(C)2016 A24 Distribution, LLC
このひと手間により、他の映画とは一線を画する黒人の描写を実現していますし、何より息を飲むような美しい映像に仕上がっています。
アカデミー賞作品賞を受賞した作品となると、その物語性にスポットが当たりますが、この映画は物語が評価されたというよりも圧倒的な映像の完成度で評価されたのかもしれません。
『フロリダプロジェクト』
- 監督・脚本:ショーン・ベイカー
- ボビー:ウィレム・デフォー
- ムーニー:ブルックリン・キンバリー・プリンス
- ヘイリー:ブリア・ビネイト
この作品も『ムーンライト』同様で映像的な素晴らしさが光る作品だと思います。
物語としてはフロリダのモーテルで暮らす貧しい母子家庭のひと夏にスポットを当てるというもので、ラストを除いてはそれほどインパクトが強いものでもありません。
ただ、ラストシーンは本当に衝撃的と言いますか、貧困や母子家庭といった苦しい境遇に子供なりの答えを出したという意味ですごくエポックメイキングな展開だったと思います。
一方で、そんな「子供目線」で描かれる貧困とひと夏の思い出を切り取るにあたって、映像的な工夫が随所に散りばめられています。
例えば、本作のカメラワークに注目してみると、その大半のシーンでカメラを低い位置、つまり子供の視点の高さに合わせて撮影が行われています。
加えて、この作品は自分が置かれている貧しい境遇にまだ気がついていない子供たちの視点で貧困を描くという試みでもあり、それを可視化するために、本来なら暗く絶望的に思えるようなシーンでも極彩色に彩られています。
美しい映像が彩る、子供の視点で見る貧困と「極彩色の絶望」をぜひともご覧になっていただきたいと思います。
アメリカ社会について勉強するという意味でもためになる映画の1つだと思いますよ。
『レディバード』
- 監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
- クリスティン・マクファーソン:シアーシャ・ローナン
- マリオン・マクファーソン:ローリー・メトカーフ
間違いなくアメリカの青春映画史に名を刻む傑作だったと思います。
公開当時、大手批評家レビューサイトにて約180人の批評家からのレビューが投稿され、その支持率が100%を維持していたというとんでもない映画でした。
キリスト教的な価値観が強く息づいているので、日本人には少し魅力が伝わりにくい映画ではあるんですが、それでも普遍的な共感を獲得しうる作品だと思います。
主人公のクリスティン(レディバード)は親に反抗的で、キリスト教的な「善く生きる」に真っ向から対立するような生き方をしています。
なぜ彼女がそんな生き方をしているのかというと、彼女は親からの愛情を受けられていないと感じているからです。
しかし、母親は母親なりに彼女のことを愛そうとしていて、それを上手く伝えることができないんです。
そんな不器用な親子のすれ違いや衝突を青春ドラマに絡めて描いていき、最終的にはクリスティンが母の愛を悟る瞬間を描きます。
そのシーンの演出の仕方も本当に絶妙なんですが、この映画が素晴らしいのは余韻の残し方です。
本作のラストシーンではクリスティーンが実家の留守電に母親宛のメッセージを残します。
このメッセージはクリスティンが母へ歩み寄る意思表示をしたものであり、2人の壊れかけていた関係の修復を実現するものです。
しかし、これはあくまでも留守電であり、まだ母親はそのことについて全く知らない状態です。
2人の関係性が良い方向へと進んでいく様子を描きながらも、その「雪解け」を予感させながら物語が幕を閉じるという構成が何ともオシャレで惹かれました。
『20センチュリーウーマン』
- 監督・脚本:マイク・ミルズ
- ドロシア:アネット・ベニング
- ジュリー:エル・ファニング
- アビー:グレタ・ガーウィグ
今回ご紹介したA24配給の映画の中でもオシャレさという点では抜きに出た作品だと思います。
とにかく映像が美しく、魅力的でそれを見ているだけで幸せな気持ちになれます。
(C)2016 MODERN PEOPLE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
20世紀と21世紀、その違いを考えるにあたって、体験や経験の疑似化というものは1つ挙げられるでしょう。
インターネット、スマートフォンさらにはVR技術の発達は、人間に特定の物事を疑似的に体験させることを可能にしてきました。
一方でこの作品が描くのは、自らの手で触れて、心で触れて、実際に体験するということの豊かさでもあります。
今ほどの便利さはありませんが、触れることでお互いを喜びを知り、触れることでお互いの悲しみを知るという実感や手触りの重要性を強調しています。
何事も自分で経験し、他人との関わりの中で学んでいく、そこには経験の実感や手触りが確かに息づいています。
そこに生きづらさを感じる女性たちの物語や少年の成長譚をかけ合わせることで、見事なドラマに仕立てました。
映像的な魅力が傑出していることはもちろんなのですが、その物語にも要注目です。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回はA24の配給映画作品の中から個人的なおすすめ作品を10本選出してみました。
もちろんここで紹介した作品以外にも素晴らしい作品がたくさんあり、絞り切れないというのが本音です。
ここの配給している作品はどれもインディペンデント系の作品ではありますが、どれも作り手の信念が伝わってくる良作揃いなので、ぜひぜひチェックしてみて欲しいと思っています。
今回も読んでくださった方、ありがとうございました。