みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね当ブログ管理人なりの2019年の振り返りと年間ベスト映画ランキングTOP10ということで「ナガデミー賞」を発表させていただければと思います。
今年映画館で鑑賞した新作の本数を数えてみますと、実に139本でした。学生時代より社会人になってからの方が鑑賞本数が増加傾向にあるのが、何とも不思議です。
本記事では、2019年の当ブログ管理人が独断と偏見で選ぶ各部門賞の発表と、最後に「年間ベスト映画ランキングTOP10」をご紹介させていただければと思います。
最初に、当ブログで今回の記事における選考対象となる作品を決定する基準をご紹介しておこうと思います。
①日本公開年が2019年の作品を対象とする
海外では過去に製作され、既に公開されていた映画であったとしても、今年日本公開となった作品は対象作品となります。
ex.『アマンダと僕』『ペパーミントキャンディ』
一方で、当ブログ管理人が試写会や先行上映で鑑賞していても、本公開日が2020年の作品は対象外とします。
ex.『パラサイト 半地下の家族』『フォードVSフェラーリ』
②当ブログ管理人が2019年に劇場で鑑賞した作品を対象とする
当ブログ管理人はどうしても劇場での映画体験とテレビ画面・スマホ画面での映画鑑賞を同列に語れないので、今回も劇場で鑑賞した作品のみを対象とします。
そのため、2019年日本公開作品であっても、劇場で鑑賞していないものについては対象外とさせていただきます。
ex.『デイアンドナイト』『ベルベットバズソー』『ユニコーンストア』
この2つの基準を満たした作品を対象とした上で今回は以下の各部門賞と年間ベストTOP10を発表していきます。
- 最優秀作品
- 最優秀監督
- 最優秀脚本
- 最優秀主演男優
- 最優秀主演女優
- 最優秀助演男優
- 最優秀助演女優
- 最優秀撮影
- 最優秀視覚効果
- 最優秀編集
- 最優秀脚色
- 最優秀作曲(劇伴)
- 最優秀歌曲(主題歌・挿入歌)
- 最優秀アニメーション
- 特別賞
- ダークホース賞
ということで、ここからはいよいよ発表に映っていきたいと思います。
良かったら最後までお付き合いください。
目次
最優秀アニメーション
「空の青さを知る人よ」
完全にやられた…。個人的には今年のアニメ映画ナンバー1かな。
中学生の卒アルに将来の夢を書いてた頃の”くそ青い”自分にぶん殴られた。
どこかにそんな理想を置いてきた大人のための青春映画。涙が止まらなくてどうしようもない…。 pic.twitter.com/zusJpqKQUv— ナガ@映画垢🐇 (@club_typhoon) 2019年10月6日
最優秀アニメーション作品には、『空の青さを知る人よ』を選出しました。
音楽の使い方もそうですが、アニメーションの静と動の使い分けも見事で、終盤にあいみょんの主題歌と共に一気に動的映像に転じる映像シークエンスでは鳥肌が立ちました。
また、当ブログ管理人は岡田磨里さんの脚本が大好きな一方で、そうしても『true tears』を超える作品を作れていない印象を受けていたので、今作でその影をようやく払拭してくれたように感じました。
特にラストシーンの「泣いてないしっ!」は今年の映画の中で最もキマッていたカットだと思うので、ここでも大幅に加点がありました。
それだけにエンドロールで描かれる後日譚が明らかに蛇足だったのが、唯一の欠点だったと言えるでしょう。
この部門の対抗馬として挙げられる作品は
- 『失くした体』
- 『ドラえもん のび太の月面探査記』
- 『この世界のさらにいくつもの片隅に』
でしょうか。
今年はアニメーション映画の数が多く素晴らしい作品も多かっただけに、この部門はかなり混戦だったと思います。
最優秀作曲(劇伴)
「殺さない彼と死なない彼女」のサントラは個人的に今年のベストかも。
音楽を聴いていて、映画のシーンが浮かぶというよりは、キャラクターたちの感情が蘇る。
温かく柔らかなメロディとメルヘンチックなトラックに癒される。 pic.twitter.com/tWmyYJtXhA
— ナガ@映画垢🐇 (@club_typhoon) 2019年11月18日
最優秀劇伴音楽についてはもう迷うことなく奥華子さんが手掛けた『殺さない彼と死なない彼女』を挙げます。
奥華子さんは今回劇伴音楽に初挑戦だったということですが、お得意のピアノを見事に用い、おとぎ話のようなメロディでキャラクターの物語に寄り添いました。
底抜けに明るいというよりは、仄かに明るい雰囲気を感じさせてくれる楽曲が多く、聞いているだけで心が優しさで満たされていくように感じられました。
この部門の対抗馬として挙げられる作品は
ランディ・ニューマン『マリッジストーリー』
でしょうか。
こちらも優しいメロディと希望を感じさせる明るい雰囲気が魅力なのですが、その中に寂しさや哀しさ、そして懐かしさを漂わせる見事な劇伴となっています。
とりわけ作品がドキュメンタリーテイストで演出的に淡々としているのもあり、劇伴音楽が非常に重要な役割を果たしていたという点で昨比品への貢献度も非常に高かったですね。
最優秀歌曲(主題歌・挿入歌)
個人的には大好きな作品になりました。小問題と大問題をリンクさせる語り口は児童文学らしい良さでした。また映像と音楽と物語のカタルシスが押し寄せるあの一瞬に感涙…。
【ネタバレあり】『バースデーワンダーランド』感想・解説:思わず童心に帰る懐かしいファンタジー https://t.co/bRxLB3JEC8
— ナガ@映画垢🐇 (@club_typhoon) 2019年4月26日
今年も素晴らしい主題歌・挿入歌がたくさんありましたが、当ブログ管理人が推したいのはmiletさんの『Wonderland』です。
何と言っても、物語のカタルシス・エモーションの爆発と楽曲の爆発が一致していたという点で、この楽曲に勝るものが2019年の作品では他に見当たらなかったように感じています。
少し低いトーンのmiletさんの歌声で、始まるAメロから徐々に盛り上がっていき、サビに入った瞬間にそれが一気に解放されるので、映画館の音響で聞くと、鳥肌が立つほどの迫力がありました。
そこに登場人物たちの閉塞感の打破のコンテクストが重なることで、もう涙が溢れ出して止まらないという状態に・・・。
この部門の対抗馬として挙げられる作品は
- 宮本浩次『Do you remember?』(『宮本から君へ』)
- Kristen Anderson-Lopez, Robert Lopez『The Next Right Thing』(『アナと雪の女王2』)
でしょうか。
『アナと雪の女王2』の楽曲はどうしても全体的に1作目よりトーンダウンした印象を受けましたが、happily ever afterの世界で変化を受け入れて生きる強いプリンセス像を打ち出した『The Next Right Thing』は圧巻でしたね。
最優秀脚色
「蜜蜂と遠雷」凄すぎる。何だこれ。
これが本当に小説を”実写化”するってことなんだ…。脚本が素晴らしいのはもちろんとして編集が凄まじい。手放しで絶賛したい紛れもない恩田小説の映像化だった! pic.twitter.com/qqg9VBs5S8— ナガ@映画垢🐇 (@club_typhoon) 2019年10月5日
こちらは迷う作品がかなり多かったのですが、原作からの脚色の難しさという点で、石川慶監督の 『蜜蜂と遠雷』を推したいと思います。
実写化は不可能と言われたイメージ志向の上下巻にわたる音楽小説を見事に映像化して見せたその圧倒的な手腕は称賛に値すると思います。
また、原作の群像劇テイストの物語構造を、栄伝亜夜という少女の物語として再編成したアレンジも見事でした。
イメージ映像先行のテレンス・マリックのような映画になるかと思いきや、逆に演奏シーンを全力で描き切ることで、その音でもって観客にイメージを膨らませようとしたアプローチも見事なコンバートだったと言えますね。
この部門の対抗馬として挙げられる作品は
- 小林啓一『殺さない彼と死なない彼女』
- スパイク・リー『ブラッククランズマン』
でしょうか。
『殺さない彼と死なない彼女』は4コマ漫画というフォーマットを映画に落とし込むお手本を見せてくれたような見事な脚色でした。
最優秀編集
我々の映画というフレームに対する感覚を揺さぶるような野心的で実験的な作品。圧倒的衝撃。2019年上半期ベストが決まりました。#ホットギミック
【ネタバレあり】『ホットギミック』感想・解説:山戸結希監督が魅せる映画の可能性と限界 https://t.co/A9iP3fpY2m
— ナガ@映画垢🐇 (@club_typhoon) 2019年6月28日
編集部門については迷わず平井健一さんが 手掛けた『ホットギミック』を選出します。
彼は山戸結希監督の前作『溺れるナイフ』でも編集を担当していたのですが、2つの作品で全く異なる編集アプローチを施しているんですよ。
『溺れるナイフ』では長回しのカットを活かした編集をしている一方で、今作『ホットギミック』では細かいカットや静止画を組み合わせたとんでもないスピード感の映像を作り上げました。
この変幻自在の編集アプローチは評価されるべきものだと思いましたし、少年少女の青春のスピード感を編集で表現してしまおうという平井健一さんの慧眼には脱帽です。
この部門の対抗馬としては
- 太田義則『蜜蜂と遠雷』
- セルマ・スクーンメイカー『アイリッシュマン』
でしょうか。
『アイリッシュマン』はあれほどまでに複雑な人物相関図を内包する3時間超えの物語を、しかも時系列を入れ替えながら展開するというとんでもなく複雑な作品なのですが、見事な編集でその複雑さを感じさせないという圧倒的な仕事ぶりを披露してくれました。
最優秀視覚効果
「ファーストマン」エキスポIMAXで見たんですが、鳥肌が立ちました…。月面のシーンに変わる瞬間にフル画格に変わり、雑音が消え、視点のブレが止まる。あの一瞬の感動に思わず溜息が溢れた。 pic.twitter.com/SvFlFhxanH
— ナガ@映画垢🐇 (@club_typhoon) 2019年2月17日
視覚効果の部門には、アカデミー賞視覚効果賞も受賞した『ファーストマン』を選出しておこうと思います。
ディミアン・チャゼル監督が徹底した実写にこだわり、多くのシーンで考証を重ねながら、リアルな映像を追求して言った点は見事だったと思います。
また、スクリーンに宇宙の映像を投影し、それを背景にして撮影するという独特のアプローチもなされている様で、近年宇宙を舞台にした作品は多く作られていますが、その中でも存在感を発揮する映像に仕上がっていました。
この部門の対抗馬としては
- 『ゴジラ キングオブモンスターズ』
- 『名探偵ピカチュウ』
- 『ジェミニマン』
をでしょうか。
『ゴジラ キングオブモンスターズ』は怪獣神話のような圧倒的な画作りがたまりませんでしたね。
最優秀撮影
「女王陛下のお気に入り」最高じゃん!!というか映像すごくないか…。他の映画のものと明らかに深度が違うというか。ストーリーはもうコテコテもコテコテなんですが、映像的な「引き」が撮影、衣装、照明含めて素晴らしいので引き込まれますね! pic.twitter.com/FYP4wFpPCm
— ナガ@映画垢🐇 (@club_typhoon) 2019年2月15日
今年ファーストルックで最も圧倒されたのがロビー・ライアンが手掛けた『女王陛下のお気に入り』だったので、迷いなく選出させていただきました。
広角レンズと魚眼レンズを組み合わせることで、空間に深度と歪みを生み出した映像は、その歪な女王陛下の宮殿の世界観を見事に表現しています。
他の映画とは何かが違うと明確に感じさせる格式が確かに本作の映像には宿っていて、見ていると映画の中の世界に吸い込まれてしまいそうでした。
この部門の対抗馬としては
- ロビー・ライアン『マリッジストーリー』
- エリック・ゴーティエ『真実』
でしょうか。
とにかくロビー・ライアンは近年ヒューマンドラマにおいて圧倒的な映像を提供し続けており、今後も目が離せない撮影監督の1人と言えるでしょう。
最優秀助演女優
(C)2019 映画「居眠り磐音」製作委員会
助演女優の部門では『居眠り磐音』の芳根京子さんを激推ししたいと思います。
時代の波にのまれ、磐音と許婚の関係にありながら、別離を選ばざるを得なかった女性を見事に演じ切りました。
儚げながらも、そこには磐音への思いを抱きつつも、強く生きようとする1人の女性の姿がそこにはあり、その切ない運命のいたずらに涙が止まらなくなりました。
昨年も映画『累』で圧巻の演技を披露していただけに、2020年も飛躍が期待されますね。
最優秀助演男優
(C)2019「長いお別れ」製作委員会 (C)中島京子/文藝春秋
助演男優の部門には、『長いお別れ』の山崎努さんを選出したいと思います。
認知症の高齢者をこれほど完璧に演じ切れるのは、彼しかいないのではないかと感じさせられるほどに圧倒的な演技でした。
家族のことを完全に忘れてしまっているようで、それでも心のどこかでは家族を認識しているという絶妙な立ち振る舞いと表情を披露しており、正直山崎努さんがいなければ今作は成立し得なかったと思います。
彼は『モリのいる場所』などでも素晴らしい演技を披露しておられましたが、今回の『長いお別れ』でその別格っぷりを突きつけられたような気がしています。
最優秀主演女優
(C)Universal Pictures
主演女優の部門では、『Us アス』のルピタ・ニョンゴを推したいと思います。
キャストが1人2役を演じる作品は数多くありますが、本作の演じ分けは桁違いに難しいものだったのではないかと感じています。
というのも彼女の役はプロットの性質上、観客を欺くことが求められているので、ただ只ならぬ雰囲気を持ったドッペルゲンガーと普通の女性というレイヤーの演じ分けでは今作の役は務まらないのです。
一目で恐怖や不安を感じさせられる立ち振る舞いや表情、圧倒的な存在感、そしてその内側に秘められた悲しみや怒り、そして終盤に明かされるプロットツイストへの大きな貢献。
やはり今年見た映画において誰よりも作品への貢献度が高かった女優ではないかと思いました。
最優秀主演男優
(C)Universal Pictures
主演男優部門には、『ファーストマン』のライアン・ゴズリングを推したいと思います。
ナイーブで寡黙なニール・アームストロングを演じたわけですが、彼はとにかく寡黙な役どころで、常に自身の内に何かを抱え、思い悩んでいるように感じられます。
それを言葉にすることは決してないのですが、彼のもの言わぬ表情が私たちに語りかけてくるのです。
淡白で、言葉もないのに、なぜこんなにも雄弁でエモーショナルなのかとただただ驚かされます。
このタイプのキャラクターを演じさせたらライアン・ゴズリングの右に出る者はいないでしょうね。
特別賞
1コマ単位、1セリフ単位でコミックの再現に挑んだ映像にただただ感激でした。そしてこの脚本…。ジェームズキャメロンはアバターを4つも5つも作らなくて良いから「アリータ」作って!笑
【ネタバレあり】『アリータ バトルエンジェル』解説・考察:絶対に続編作ってくれ! https://t.co/QToB1WXj1S
— ナガ@映画垢🐇 (@club_typhoon) 2019年2月22日
当ブログ管理人がとにかく好きだった作品を1つご紹介したいということで、「特別賞」という形で紹介させていただきます。
選んだのは『アリータ バトルエンジェル』です。
この作品の何が素晴らしいのかと言うと、原作の『銃夢』への只ならぬ「愛」なんだと思います。
原作をコマ単位で分析し、それを映画のフォーマットで再現して見せようとする心意気には思わず胸が熱くなりました。
興行的に苦しかったこともあり、続編に暗雲が立ち込めているようですが、あの終わり方にしたなら絶対に続編を作って欲しいですね。
今年見た映画の中で最も「愛」を感じた作品でしたし、そんな作品を作ってくれた製作陣への感謝も込めての選出となります。
ダークホース賞
ぜひ多くの方に見ていただきたい映画です!
脚本が良いのはもちろんとして、撮影や照明、登場人物の立ち位置は挙動の全てが緊迫感を生むために計算されてます。
傑作✨
【ネタバレあり】『見えない目撃者』感想・解説:日本でリメイクする意義を強く感じた傑作スリラー https://t.co/bVpjWDcJmF
— ナガ@映画垢🐇 (@club_typhoon) 2019年9月21日
今年最も予想や事前の期待値を裏切ってくれた映画は『見えない目撃者』でした。
日本が韓国産スリラー映画をリメイクして、まさかオリジナル版を超える出来栄えに仕上げてくるとは夢にも思いませんでした。
撮影やライティング、音響の作りこみも凄まじく、プロットにツッコミどころはあるもののスリラーとして押さえるべき要素を完璧に押さえた作品でした。
また、吉岡里帆さんの演技に個人的にあまり良い印象がなかったのですが、そんな印象をひっくり返してくれた作品でもあり、そういう意味でもダークホースだったと言えます。
対抗馬としては山崎貴監督の『アルキメデスの大戦』が挙げられるでしょうか。
最優秀脚本
(C)2019 SORAAO PROJECT
最優秀脚本には『空の青さを知る人よ』を推しておこうと思います。
大人のための青春映画として確立された本作は、夢をどこかに置き忘れてきた大人たちの姿を描き、閉塞感とその打破を見事に演出していました。
個別記事の方にも書きましたが、やはり岡田磨里さんが常に作品の中心に据えてきた「失恋」をアップデートしたことが本作最大の魅力だったのではないでしょうか。
誰かに譲るという受動的な失恋ではなく、自分が前に進むために主体的に失恋を経験するという新しいベクトルで物語を描いたことは、非常に素晴らしかったと思います。
当ブログ管理人としても今作は今年一番泣いた映画です。ここまで感情を搔き乱された映画も2019年では他になかったと思います。
最優秀監督
(C)相原実貴・小学館/2019「ホットギミック」製作委員会
最優秀監督には迷うことなく山戸結希監督を推させていただきます。
彼女は『ホットギミック』で日本の青春映画を変えてしまったと思いますし、もはや青春映画が『ホットギミック』以前以後のコンテクストで語られ得るのではないかというほどに計り知れない衝撃をもたらした人物です。
元々哲学や倫理を学んでいた彼女は、言葉で表現することの限界を感じ、映画の世界へと飛び込みました。
そんな山戸結希監督だからこそ映画というフォーマットに固執していない印象を受けるのが、また素晴らしいのです。
彼女は映画を使って、とにかく自分の伝えたいものを表現するのだという熱意に満ちており、既存の映画文法に縛られないダイナミックで実験的な手法を次々に取り込んでいきます。
『ホットギミック』はそんな彼女の挑戦が1つの形になったとも言える、エポックメーキングな映画でした。
最優秀作品
当ブログ管理人が今年鑑賞した139本の映画の中から10作品を厳選して、皆様にランキング形式でご紹介します。
まだ鑑賞したことのない作品があったという方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
第10位:「音で映画を演出した怪作」
(C)2019 YOKOGAO FILM PARTNERS & COMME DES CINEMAS
深田晃司監督が追求する音の映画の1つの完成形が今回の映画『よこがお』だったと思います。
「音楽というものが非常に印象に残りやすいものであるが故に、劇伴音楽を多用すると鑑賞する側の解釈を固定化してしまう恐れがある」
監督は映画における「音」について次のような危険性を指摘しています。
だからこそ彼は劇伴音楽をほとんど用いない一方で、生活音などの映画内の音を非常に重視しています。
音というものが見る人に強く印象づけられるからこそ、彼は音を人間関係の変化や状況の変化の表現ツールとして用いているのです。
マスコミが殺到したことで放たれるフラッシュの音。取材に押し掛ける記者によるチャイムの音。基子と動物園に出かけた際に聞いた視覚障碍者用の信号のメロディ。
音が登場人物を追い詰めていく過程はまさに圧巻の演出でした。
第9位:「SNS時代に贈る新しい青春映画のカタチ」
(C)2018 A24 DISTRIBUTION, LLC
近年スマートフォンやSNSが普及し、その光景を皮肉ったり、否定的に見るような映画は増えています。
その中で『エイスグレード』はSNSをナイーブで人と携わるのが苦手な少女が世界への扉を開くためのカギと解釈し、青春映画の中に見事に落とし込みました。
私たちは誰だって「理想」を持っていて、それに近づきたいと願っています。
それでも「理想」との距離感はいつまでたっても縮まらず、そのことに幻滅したり、絶望したりすることも少なくないでしょう。
『エイスグレード』では、そんな葛藤に苛まれる主人公を父が優しく包み込み、彼女なりに「理想」に近づこうとしているありのままの姿を讃えるのです。
明確な「変化」を描くのではなく、「変化」へと前進し続けることの重要性を謳った本作は、まさに2019年の今こそ見たい新しい青春映画のカタチだと思いました。
第8位:「井の中の蛙大海を知らずされど・・・」
(C)2019 SORAAO PROJECT
今年1番泣きました・・・。
各部門賞の中で何度か話題に挙げたので、ここではあまり語らないものとしますが、今年一番エモーショナルな映画は当ブログ管理人的にはこれでした。
『空の青さを知る人よ』という映画は、まさに純粋に「なりたいもの」になれると信じ、それを胸を張って卒業文集に書いていた「あの頃」の自分にぶん殴られるような映画でした。
なりたい自分になれているのか、生きたい人生を生きられているのか・・・。
そんな悩みの中で、見上げた空はどこまでも「くそ青くて」、まだあの「青」に手を伸ばしても良いんだ・・・とそう思わされました。
ありがとう。ありがとう。大切なことに気がつかせてくれた映画です。
この作品を見た帰り道に涙が止まりませんでした。
第7位:「4コマ漫画を映像化するということ」
(C)2019 映画「殺さない彼と死なない彼女」製作委員会
本作の原作は世紀末さんの同名の4コマ漫画です。
その独特の構成やフォーマットを映画に落とし込む独特の編集や音楽の使い方は本当に見事でした。
そして脚色という側面で見ても、原作に無い追加シーンを追加し、時間的にも空間的にも断絶していた3つの物語を1つの「未来」に収束させて見せました。
小林啓一監督は今後要注目の監督です!
第6位:「幸せになりたいっすねぇ・・・。」
(C)2019「愛がなんだ」製作委員会
2019年は今泉監督に惚れた1年だったとも言えますね。
『アイネクライネナハトムジーク』も素晴らしかったのですが、やはり『愛がなんだ』は圧巻でした。
人は、「愛」という「区分け」をすることで「安心感」を得ようとしているのかもしれません。だからこそ世間一般で言う「愛」のサンプルに自分の愛を重ねて、それが愛なんだと実感しているわけです。
しかし、この世の中にどれほど「愛」のサンプルがあったとしても、自分が今まさに経験しているのは、きっとこの世界で初めての感情で、あなたが相手と築くのはいっだってこの世界で初めての関係性です。
だからこそ、自分の愛を世間一般のサンプルに充ては前て語る必要はありません。
「愛がなんだ!」と嘯いていれば良いのです。
そんな力強くも優しい希望をくれる今泉監督の新しい「片思い映画」になっていたと思います。
第5位:「血を噴き出して戦う男の出産に立ち会う」
(C)2019「宮本から君へ」製作委員会
2019年最もやばい映画はこれだったと思います!
真利子哲也監督らしい暴力映画の文脈でも語りたい作品ですが、それ以上に父になるために無謀な戦いに挑む宮本という男の姿にただただ圧倒されました。
女性が血を噴き出して出産し、母親になるのであれば、父親は自分の「青さ」を血を吐きながら捨て去らなければならないのかもしれません。それこそが父になるためのイニシエーションなのです。
「俺の人生はバラ色で、このすごい俺がお前も生まれてくる子供も幸せにしてやる」
何て身勝手で、独善的で、一方的な愛の言葉なのだろうか・・・。
それでもそんな言葉を言えるほどに弱くて、そして強い人間になりたいと感じさせられてしまいました。
こんなにも無茶苦茶なのに、これほどまでに説得力がある映画は他にないのではないでしょうか。
身体中に電流が走ったような衝撃にノックダウンされる稀有な映画体験ができました。
第4位:「英雄をパーソナルな視点で解体する」
(C)Universal Pictures
2019年は個人的にはアメリカ映画不作の年だったのですが、その中で『ファーストマン』は圧倒的なクオリティだったと思います。
ブルブルと手振れする映像はまさにニール・アームストロングの心の置きどころの無さを表現している様でもあります。
そしてそんな心の動揺が、月面着陸のシーンでパッと制止し、無音の世界に突入し、更にはIMAXフル画角の映像へと転じる。
間違いなく2019年最高の映像体験でしたし、思わずアッと声が出ました。
ラストシーンの作りは『ラ・ラ・ランド』に似てはいるのですが、個人的にはこちらの方が好きでした。
ディミアン・チャゼル監督の贈るセンシティブでナイーブな「ブルーな英雄譚」に心を奪われてしまいました。
第3位:「自分たちの音楽の主人公として生きるということ」
(C)2019「さよならくちびる」製作委員会
近年では最高の音楽映画を見たような気がしています。
音楽はもちろん作り手がいるものではありますが、それを世に出した瞬間に、誰かのものへと転じ、誰かの人生を物語るツールへと変容していきます。
「作品」として奏で継がれ、歌われ継がれたその音楽は、もはやその音楽を生み出した者の「物語」や「叫び」とは切り離されてしまうのではないでしょうか。
作り手の「思い」から切り離され、聞くものが自分の心情を投影するための受け皿になってしまう。
だからこそ本作に登場するハルレオは解散を決意しながらも、自分たちの音楽に宿る「叫び」や「物語」の延命治療を続けようとするのです。
アーティストとして生きるということは、自分の音楽の「主人公」として生き続けることなのではないかと考えさせられました。
ハルレオがアーティストとして生きる覚悟をするまでのプロセスを描いた本作『さよならくちびる』に、音楽の本質の片鱗を垣間見たような気がしました。
第2位:「世界の涯てと涯ては繋がっている」
(C)2017 BACKUP STUDIO NEUE ROAD MOVIES MORENA FILMS SUBMERGENCE AIE
映画とはイメージであると語る巨匠ヴィム・ヴェンダースが自身が90年代に撮った『夢の涯てまでも」をアップデートしたとも言える一作でした。
映画とは視覚的に楽しむものであるという印象が強いが、ヴェンダースはむしろ「目を瞑る」ことを求めている。
つまり彼が見せたいものはこの映画そのものではなく、この映画が私たちの脳内に生み出す無限の「イメージ」なのです。
今私たちの世界は、「言葉」というものに支配され、そして「言葉」によって脅かされており、「言葉」という可視のものに縛られ、目を瞑り想像することを忘れているのです。
世界の涯てでは、自分が生きる社会とは全く違うシステムがあり、政治があり、宗教があり、文化があり、生活がある。
それらを推し量り、イメージすることが21世紀を生きる私たちが真に手を取り合っていくためのキーになる可能性があることを、ヴェンダースは本作に内包したとも言えます。
ロマンチックな恋愛映画でありながら、21世紀の社会に映画としてできることを彼なりに模索した社会花作品でもありました。
ぜひ多くの人にご覧になっていただきたい1本です。
第1位:「日本の青春映画を変える革命」
(C)相原実貴・小学館/2019「ホットギミック」製作委員会
今年は1位だけがあまりにも突出していたので、この『ホットギミック』を見た6月時点で年間ベストに決まっていたかなと思います。
個々までの部門賞でもある程度その魅力を語ってしまったのですが、本当に青春映画に革命をもたらした1作と言っても過言ではないでしょう。
もし自分が映画監督をしていたとして、こんな映画を見せられたら、悔しくてたまらなくなると思いますし、創作意欲を掻き立てられてやまないと思いました。
だからこそ「ポストホットギミック」のコンテクストで語られ得る映画が今後出てくるんじゃないかとも思いますし、山戸結希監督も新たな野心的作品を作り続けてくれると思います。
この映画は、もはや映画という枠組み(フレーム)そのものを揺るがしているようでもあります・・・。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は2019年の振り返りと年間ベスト映画ランキングTOP10ということでお話させていただきました。
- 『ホットギミック』
- 『世界の涯ての鼓動』
- 『さよならくちびる』
- 『ファーストマン』
- 『宮本から君へ』
- 『愛がなんだ』
- 『殺さない彼と死なない彼女』
- 『空の青さを知る人よ』
- 『エイスグレード』
- 『よこがお』
2019年も素晴らしい作品との出会いがたくさんあり、本当に幸せな1年になりました。
当ブログ「ナガの映画の果てまで」も運営をスタートしたのが2016年の春ですから来年はいよいよ4年目に突入します。
これまでの累計でのアクセス数(PV数)も1300万を突破し、たくさんの方に読んでいただけるようになりましたが、そういったことはあまり意識せず、これからも備忘録のつもりで自分の思いや考えを綴っていけたらと思っています。
2020年も当ブログをどうぞよろしくお願いいたします。