アイキャッチ画像:(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね、本日公開の映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」についてお話していこうと思います。
本記事は作品のネタバレになるような内容を一部含む感想・解説記事になります。作品を未鑑賞の方はご注意ください。
良かったら最後までお付き合いください。
『DESTINY 鎌倉ものがたり』
あらすじ・概要
「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴監督が、同作の原作者・西岸良平のベストセラーコミック「鎌倉ものがたり」を実写映画化し、堺雅人と高畑充希が年の差夫婦役で初共演したファンタジードラマ。
幽霊や魔物、妖怪といった「人ならざるもの」が日常的に姿を現す古都・鎌倉。この地に居を構えるミステリー作家・一色正和のもとに嫁いできた亜紀子は、妖怪や幽霊が人と仲良く暮らす鎌倉の街に最初は驚くが、次第に溶け込んでいく。
正和は本業の執筆に加え、魔物や幽霊が関わる難事件の捜査で警察に協力することもあり、日々はにぎやかに過ぎていった。しかし、そんなある日、亜紀子が不測の事態に巻き込まれ、黄泉の国へと旅立ってしまう。
正和は亜紀子を取り戻すため、黄泉の国へ行くことを決意するが……。
主演の堺、高畑と同じく山崎監督作初参加の安藤サクラ、中村玉緒をはじめ、山崎組常連の堤真一、三浦友和、薬師丸ひろ子ら豪華キャストが集結した。
(映画com.より引用)
予告編
もはや毎年恒例の山崎貴映画
何とですね2009年以来、山崎貴監督の映画作品は毎年公開されているんです。
彼の作品はどれもが娯楽大作に分類されるものばかりで、とりわけ一般層には受けが良いのですが、映画ファンの間では彼の作品は受け付けないというほどまでに苦手な方もいらっしゃるようです。
私自身も彼の作品には、何度も期待しながら裏切られてきましたが、それでも公開されると毎年見に行ってしまうんですよね。そして裏切られたような気分になって、もう来年は見ないぞと心に決めるのですが、結局翌年も、その翌年も見に行ってしまうというわけです。
まずは、彼の2009年来の作品のラインナップを見てみましょう。
「BALLAD 名もなき恋のうた」(2009)
正直絶対に映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ戦国大合戦」を見た方が良いです。
「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(2010)
木村拓哉役を演じている木村拓哉さんに注目しましょう!
「friends モノノケ島のナキ」(2011)
「泣いた赤鬼」をアレンジしたアニメ映画で、白組のCGを見てくれ!!という感じの映画です。映像も素晴らしくて、個人的には好きですね。
「ALWAYS 三丁目の夕日64」(2012)
原作ファンや一部の映画ファンからは不評な「三丁目の夕日」シリーズですが、個人的にはもうとりあえず泣けるので好きですね。特に64は涙なしには見れませぬ。
「永遠の0」
映像的にもハリウッド映画と比較してしまうと厳しい部分はありますが、限られた予算で上手く作られた映画でした。
「STAND BY ME ドラえもん」(2014)
なぜ「帰って来た・・・」をやってしまったのか・・・?これはもう映画と呼んではいけないレベルです。
「寄生獣」(2014)
原作ファンが非常にコアな作品ですので、誰がやっても批判からは逃れられない作品でしたが、比較的上手くまとめた印象です。
「寄生獣 完結編」
前編はよかったのに・・・という感じです。何とも・・・うーん・・・。
「海賊と呼ばれた男」(2016)
別段良くもないけど、悪くもない。ザッツ娯楽大作邦画という印象です。
このように彼は毎年のように大作映画を製作し、我々を楽しませようとしております。
ただやはりどうしても彼の作品には興行的なヒットが求められていますから、いかに感動させるかを追求した作品が多いです。
そのためか説明過多や演出過多が明らかに散見され、映画として評価するとなるとどうしてもあまり高くならない印象です。
一度、今の山崎貴監督に、小規模上映向けの作品も作ってみて欲しいですね。ヒットさせなければならないという至上命題が彼を縛り付けているような気がしてなりません。
ちなみに彼の作品のタイトルに英語が使われているのは、チケットを購入する時に作品名が言いやすいからという興行的な戦略があったようです。この戦略がピタリとはまって「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズが大ヒットしたこともあって、その後の彼の作品では「英語+日本語」のタイトルが定着したそうです。本作「DESTINY 鎌倉ものがたり」もその系譜ですね。
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山崎貴組のキャストでお送りします!!
山崎貴組というのが存在しているかは定かではないですが、彼の作品には頻繁に登場しているキャストが今回も多く登場していました。特に「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズに出演していたキャストの方々が多く出演していましたね。
ちなみに堺雅人と高畑充希は作品には初出演ですね。
堤真一:本田
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会 映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告編より引用
堤真一はもう「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズではお馴染みの俳優ですね。そして映画「海賊と呼ばれた男」にも出演しています。本作でも、家族思いの情に熱い男を演じていて、まさに彼にぴったりの役どころでした。
薬師丸ひろ子:女将
薬師丸ひろ子も「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズで堤真一の夫役を演じていましたね。今回の「DESTINY 鎌倉ものがたり」でも母性溢れる演技で、魅力的でした。
三浦友和:甲滝五四郎
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会 映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告編より引用
「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズでは、町医者役として作品の随所で味のある演技を披露した三浦友和は今作では、物語のキーパーソンとして登場しました。
國村隼:大仏署長
「寄生獣」二部作、映画「海賊と呼ばれた男」に出演している國村隼さんが今回も出演しています。韓国では泣く子も黙る國村隼ですが、今回もザッツ國村隼的な演技を見せてくれました。
余談ですが、コクソンモードの國村隼なら天燈鬼(天頭鬼)は一撃でしたね・・・(笑)
映画「コクソン」予告編より引用
実は山崎貴作品初参戦のキャスト陣
堺雅人:一色正和
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会 映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告編より引用
彼は実は今回が山崎貴作品への初めての出演です。。
個人的には、彼を見るとどうしても半沢直樹のイメージしか浮かばないですね。
劇中で黄泉の国に去っていく妻を前に泣き崩れて、ひざを叩くシーンなんかはドラマ「半沢直樹」で登場しても何ら違和感ないシーンでした。
高畑充希:一色亜紀子
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会 映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告編より引用
高畑充希は原作の亜紀子のイメージに最も近い女優であると断言できます。
そしてコミカルな演技が非常に上手いので、作品の中でも際立った存在感でした。
今年公開された「泥棒役者」という映画にも出演していましたが、そちらの作品の彼女も素晴らしいのでぜひぜひご覧ください。
参考:【ネタバレ】『泥棒役者』感想:高畑充希の健気な可愛さに惚れてまうやろ!!
要潤:稲荷刑事
動画「検証!うどんをすする音で本当に赤ちゃんは泣きやむのか?」より引用
香川県のPR映像でうどんをすする音で赤ちゃんをあやすことで有名な要潤さんも満を持しての山崎貴監督作品出演です。
映画の中で高畑充希の衣類の匂いを全力で嗅ぐ姿が素晴らしかったですね。
市川実日子:本田里子
「シンゴジラ」で一気にその知名度を倍増させた彼女も山崎貴監督作品には初出演ですね。あのくたびれた主婦感をリアルに醸し出せるのは市川実日子だけですね。素晴らしかったです。
ムロツヨシ:ヒロシ
なぜ、ムロツヨシはこんなにも少ない出演時間でこれほどまでに大きいインパクトを残せるのでしょうか?
ヒロシの出演時間ってごくわずかなんですが、彼の作品の中での存在感は抜群でした。やはり不思議な俳優です。
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映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』感想・解説
原作を上手く再構成した素晴らしい脚本
本作「DESTINY 鎌倉ものがたり」に関して、脚本はかなり優れていたと思います。
その点を詳しく解説していけたらと思います。
私は原作を全て読めているわけではありません。
何と原作は34巻まで(映画公開時点で)発売されているそうなんです。
さすがに映画の予習のためにこれを全て読破する時間はありませんでした。とりあえず3巻までは、読んでみましたが「三丁目の夕日」と同じで基本的に一話完結ものなので、全巻読破するのは根気がいるぞ・・・と覚悟させられました。
そんな時に書店で思わぬ書籍を発見しました。どうやら原作の中で今回の映画版に関係のある回だけを抜粋したダイジェスト版が発売されているのです。
これを早速購入して、映画に備えたのですが結果的には大正解でした。これを読んでいたことで、映画版の脚本が如何に素晴らしいかということが理解できたからです。
この原作エピソード集には全部で19のエピソードが掲載されています。そしてそれらのエピソードを上手く再構成して、終盤の黄泉の国への亜紀子奪還篇をオリジナル要素として加えたものが映画版という具合です。
まず上巻に掲載されていた「あこがれの街」「納戸の中でドッキリ」「江ノ電沿線殺人事件」はほとんどそのまま映画に使われていました。納戸のエピソ―ドには天燈鬼のモチーフが追加されて伏線になっていましたね。
「比企の契り」と「一色家の秘密」というエピソードは本作で原作以上に重要な役割を果たしました。
前者で明かされた正和と亜紀子が前前前世から夫婦だったというエピソードは天燈鬼とのクライマックスで明かされる運びとなりました。
また、「一色家の秘密」で明かされる正和の両親のエピソードは、本作を通底する謎として描かれていました。
両親が黄泉の国に住んでいるというオリジナル設定と上手く連携させながら、原作のこのエピソードを活かした点は非常に上手かったですね。
「路地裏の散歩者」に登場した小料理屋「静」は薬師丸ひろ子演じる女将が経営していました。
そして上巻で登場した「身体を無くした男」のエピソードの使い方が非常に上手かったです。このエピソードは原作では、正和の編集者である柳生に降りかかる幸いになっています。
これが映画版でいう本田的なポジションのキャラクターですね。
映画版では、これを亜紀子に降りかかる災いへとコンバートしていました。
これをオリジナル要素である天燈鬼(天頭鬼)のエピソードにつなげる形で描いていて、遊園地のデートが彼女の身体を探すための伏線になっていたりしました。
原作ではただ柳生の奥さんが浮気を警戒して正和に調査を依頼するというだけのエピソードでしたので、このコンバートはさすがでしたね。
また、「まぼろしの駅」には映画版で重要な役割を果たす黄泉行きの電車が登場します。
まず、「単コロの走る夜」に登場した妖怪たちが利用している電車が単コロであるという点は、映画の黄泉行きの列車のモデルにもなっています。また、「夜の市」に登場した夜市は、映画版でも登場しましたし、ここで登場した幽霊契約は映画の重要な要素となっています。
そして、何より原作より大幅に重要度が上がったのが「貧乏神」のエピソードです。
原作と映画で描かれ方はほとんど同じですが、原作では貧乏神からもらった器は高値の骨董品だった一方で、映画版では神の道具とされています。結果的にこの器が正和と亜紀子を救うことになった点は非常に面白い改変点でした。
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会 映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告編より引用
「通夜の出来事」と「張りこみ」の内容は映画に登場する天燈鬼に大きな影響を与えていると考えられます。特に前者では、亜紀子の幼馴染のひでちゃんが黄泉の国から亜紀子のところに現れて、彼女をに告白し、黄泉の国へと連れていこうとします。
最後に、もう一つ重要な改変点が「魔界転生」というエピソードです。
原作では木下藤吉という人物が映画版で堤真一演じる本田が辿った道筋と同じ経験をしています。ただ、映画版でこのエピソードの対象者を正和の編集である本田にした点は、作品がすごくコンパクトになったという点で素晴らしい改変点だったと思います。
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会 映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告編より引用
このように原作のエピソードや設定を活かしつつも、所々に映画版オリジナルの天燈鬼(天頭鬼)エピソードへの布石を織り交ぜていたり、原作では1つの小噺として扱われた正和の両親の話や正和と亜紀子の輪廻といった要素を作品の主題に大きく関わる形で扱った点も好感が持てます。
夫婦を描く物語
そして原作のエピソードの抽出と改変が全て正和と亜紀子の夫婦物語に関係しているという構成も見事です。
江ノ電沿線殺人事件では、夫が妻を殺害するという何とも残忍な事件が描かれました。つまりこれは夫婦という一組の男女が迎えるバッドエンドなのです。
本田の魔界転生エピソードは、主人公の正和に大きな影響を与えました。どんなことをしてでも家族の支えになりたい、家族のために、妻のために、子供のために力を尽くしたいという強い思いは、間違いなく正和の黄泉の国へ赴くという決断を後押ししています。
夜市で出会った優子夫妻は、亜紀子にとって理想の夫婦像になりました。死ぬまで添い遂げて、そして死んでも添い遂げるという夫婦愛に彼女は深い感銘を受けています。
正和の両親もお互いに支え合った素晴らしい夫婦として描かれます。正和は自分の両親に一つの夫婦の理想像を見ていますし、亜紀子もまたそれを目指したいという正和の思いに共感しています。
本作ではこれ以外にもたくさんの夫婦像が短い短編になぞらえて描かれましたが、そのどれもが正和や亜紀子に少なからず影響を与えているわけです。
本作は、一見小噺を繋ぎ合わせただけのまとまりのない脚本に思えますが、実は「夫婦」とは何か?を巡る壮大な物語としてきちんと筋が通っているんです。
脚本に関しては、本当に原作を丁寧に解釈して、再構成した素晴らしいものだったと断言できます。
映画とはイメージである
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会 映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告編より引用
山崎貴監督の作品を見ていると毎年思わされるのが、この章の題名の通りで映画において最も大切なのは「イメージ」であるということです。
これは映像だけで、そこに見えないものを観客にイメージさせられるかどうか?ということです。
山崎貴監督の作品はその点が非常に弱いのです。というよりもむしろ明らかに描写が過剰になっていて、映画として稚拙な部分が散見されるのです。
今回の「DESTINY 鎌倉ものがたり」でそれが目立ったのが、亜紀子がいなくなった朝に正和が家のあちこちを見て回るシーンです。
ここで「イメージ」という点を考えるのであれば、誰もいないキッチンや居間を見つめる堺雅人だけをフィルムに映し、彼の表情や視線に多くを委ねるべきです。そうして初めて、観客は彼の演技から「イメージ」を膨らませる事ができます。
ただ、本作で山崎貴監督はわざわざ、高畑充希の残像や回想をご丁寧に交えて、過剰過ぎる描写をしてくれました。
分かりやすくて良いといってしまえばそれまでですが、あまりにも観客の「イメージ」を生み出さないこの演出は極めて稚拙であると言いたいです。
「作家の最大の武器は「イメージ」だ。」という趣旨のセリフを劇中で正和に言わせておきながら、監督自身が「イメージ」を生み出す作品を作れていない点は何とも残念ですね。
参考:イメージの映画監督ヴィムヴェンダースの最高傑作『パリ、テキサス』を解説!
やはりラストの「黄泉の国」パートは苦痛
本作の終盤に登場する黄泉の国パートは苦痛でしたね。比較的高評価をつけましたが、やはりこの展開と映像は見ていられません。
というのも映像的にも作品に馴染んでませんし、展開も伏線を上手く張っていたとはいえ、正直突飛としか言えないですよね。
やはりせっかく原作を上手く再構成したのですから無理やり映画に山場を作ろうとせずに、鎌倉での生活の中に2人が日常の機微を見出していく作品で良かったと思います。
おわりに:総評
先ほどの章で解説したように、山崎貴監督作品では毎回お馴染の説明過多、描写過多は相変わらずでした。
編集もところどころ素人がムービーメーカーで作ったのか?と疑問に思うレベルのところがありましたし、何より後半のゴリゴリのVFXパートは映画というよりもゲーム感が強くて、いまいち作品に馴染んでいませんでした。
ただ、原作を活かしてそれを再構成した脚本は、2時間の物語としてしっかりと確立されていましたし、完成度も高かったです。
この点は、高く評価したいです。
もはや毎年恒例の山崎貴監督の作品ですが、今年はそれほど悪くなかった印象ですね。
「STAND BY ME ドラえもん」のような悪夢が今後も起きないことを祈りながら、来年の彼の作品も楽しみに待ちたいと思います。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。
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