はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね、映画「ダークタワー」についてお話していこうと思います。
記事の都合上作品のネタバレになる内容も含まれますので、映画を鑑賞した方向けの記事になります。
作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
「ダークタワー」
あらすじ・概要
スティーブン・キングが1970年代から30年もの歳月をかけて完成させたライフワークともいえる小説「ダークタワー」シリーズを実写映画化。
ニューヨークで暮らす少年ジェイクは不思議な夢に導かれ、時空を超越する荒廃した異世界に迷い込んでしまう。
現実世界と密接するその世界では、世界の支柱である「タワー」を巡り、タワーを守る拳銃使いの戦士=ガンスリンガーのローランドと世界の崩壊をもくろむ黒衣の男ウォルターが壮絶な戦いを繰り広げていた。
ローランド役を「マイティ・ソー」シリーズのイドリス・エルバ、ウォルター役を「ダラス・バイヤーズクラブ」のマシュー・マコノヒーがそれぞれ演じる。
「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」の脚本やアカデミー外国語映画賞にノミネートされた「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」で知られるニコライ・アーセルがメガホンをとった。
(映画com.より引用)
予告編
「ダークタワー」感想・解説(ネタバレあり)
原作について
私、お恥ずかしながら「ダークタワー」に関しては以前に腰を据えて読もうと試みたことがあるんですね。
ただかじった程度で断念してしまいました。というのもこのスティーブンキングの「ダークタワー」ってものすごく長いシリーズなんですよ。
アマゾンを見てみると全巻セットというのがあるんですが、文庫版の小説でこれだけの長編なんです。
これは相当気合を入れないと読破できないと思います。マンガとはわけが違いますから。
ただかじった程度の原作知識が頭に入っていたのは、映画を理解していく上で大きな助けになりましたね。
そんな「ダークタワー」にわかの自分がいくつか役立ちそうな設定を皆様にお伝えしていこうと思います。
①「深紅の王(クリムゾンキング)」とは何者ぞ?
© 2017 SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画「ダークタワー」予告編より引用
映画「ダークタワー」の劇中で何度か登場した「深紅の王(クリムゾンキング)を讃えよ」という落書きですが、結局その正体は分からないままでしたよね。
まあ簡単に言ってしまうと、深紅の王(クリムゾンキング)というのは、この「ダークタワー」シリーズのラスボス的立ち位置にいるキャラクターです。今
回の映画版のヴィランであったウォルターも一応は深紅の王の部下という立ち位置になるかと思います。
②「ダークタワー」とは何ぞや?
© 2017 SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画「ダークタワー」予告編より引用
本作は「ダークタワー」というタイトルの映画でありながら、肝心の塔に関してはほとんど説明が無いので、謎に包まれたままなのですが、あの塔というのは単純に言うとスティーブンキングユニバースの中心に君臨して世界の安定を保っている塔と言えます。
つまりあの塔に異変が起こることが、スティーブンキングの作品の世界に不可解な出来事を引き起こしていると言えるのです。
例えば、昨年公開されて大きな話題になった「IT(イット)」も「ダークタワー」の異変に関連していることを否定できません。
他にも映画「ミスト」に登場した怪物の正体は、映画「ダークタワー」の説明にあったタワーが守っている領域外からの侵入者であることが推測できます。
スティーブンキング映画作品を見ておくと楽しい小ネタ
映画「ダークタワー」は、スティーブンキングの小説を原作にした他の映画のモチーフを多く作品に登場させています。今回は自分が気がついた4つのモチーフを紹介していこうと思います。
私はキングの小説はあまり読めていないので、映画化されていない作品でも言及があったのかもしれませんが、その点には気づけていません。その点は申し訳ありません。
①オーバールックホテル(映画「シャイニング」より)
© 2017 SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画「ダークタワー」予告編より引用
序盤にジェイクがセラピーに行くシーンがありますよね。
そのセラピーをしてくれている先生の背後の写真立てに注目して見ると、映画「シャイニング」に登場したオーバールックホテルが映っていることが分かりますね。
②プリムス・フュ―リー(映画「クリスティーン」より)
© 2017 SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
こちらも序盤ですね。
絵を見つめているジェイクを後ろから見ていた友人が車の模型のようなものを転がしていたと思うんですが、あれが映画「クリスティーン」に登場する1958年型のプリムス・フュ―リーだったと思います。
③ペニーワイズ(映画「IT(イット)」より)
© 2017 SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画「ダークタワー」予告編より引用
これは気がついた方も多いでしょうね。映画「IT(イット)」で子供たちを襲ったピエロ、ペニーワイズがローランドとジェイクが迷い込んだ森の中の廃遊園地に登場しました。
④リタヘイワ―ス(映画「ショーシャンクの空に」より)
© 2017 SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
映画「ショーシャンクの空に」で印象的に登場するのがこの女優リタ・ヘイワースのポスターなんですね。
実はこれと同じポスターが映画「ダークタワー」にも登場していました。
イドリス・エルバ演じるローランドがとにかくクール!
© 2017 SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画「ダークタワー」予告編より引用
映画「ダークタワー」の最大の見どころはやはりイドリスエルバ演じるローランドのガンアクションですよね。
正直ここだけがこの映画の救いだったと言っても過言ではないくらいです。
終盤のウォルターとの戦いは圧巻でしたね。さらに言うなれば、弾薬の装填の仕方がめちゃくちゃクールなんですよね。
複数の弾薬を連続で慣れた手つきで装填していくシーンも良かったですし、終盤の戦いの時の空中に投げた球を銃本体を動かすことで装填するという荒業を見せてくれましたが最高に痺れましたね。
他にも村でジェイクが敵にさらわれたときの、精神統一からの一発。それだけで遠距離の敵を射抜くという離れ業にも鳥肌が立ちました。
さらにイドリスエルバの表情の演技が素晴らしかったですね。前半部分では、何もかもを失ってただ復讐のためだけに戦い続ける男だったわけですが、終盤にはジェイクを守るという強い意志で戦いに身を投じ、宿敵ウォルターと対峙します。
この前半部分と後半部分では、目つきが変わって見えるんですよね。前半部分では、虚無感と怒りだけが彼の目から感じられました。そして終盤、ジェイクを守るという確固たる信念を心に立てて戦う彼の目には強い意志とガンスリンガーとしての使命が感じられます。
この辺りをしっかりと演じ分けられる辺りがさすがイドリスエルバだと思うポイントですね。
彼があまりにも魅力的だったので、余計にヴィランのウォルターが霞みましたね。そもそも彼はこの映画の最大の敵にもかかわらず、繰り出す攻撃が地味ですよね。
彼がポケモンなら使えるわざがせいぜい「ないしょばなし」と「サイコキネシス」ぐらいですよ?めちゃくちゃ弱い・・・。
やはり映画としては欠陥品か?
まず原作の設定をある程度知っている前提みたいなのが、この映画にはあるので、その点で原作を全く知らない方にはハードルの高い映画になってしまっているのが残念ですね。
まあ90分という短い尺で、アクション主体で簡潔に終わらせてしまおうという判断は特段悪くはないと思います。
欲を言えば、2時間尺の前後編とかで見たかったなあという世界観でしたね。
イドリスエルバ演じるローランドに関する描写は割と濃く描けていたように思います。ただ敵役のウォルターは描かれてなさ過ぎて、小物臭が凄かったですね。
一番指摘したいのは、本作の主人公はジェイクだったんじゃないのか?という点なんですよ。
スティーブンキング作品って少年・少女の物語も非常に多いです。少年少女が思春期、青年期特有の悩みや不安を抱えながらもそれを乗り越えて、強大な何かに立ち向かうというプロットを彼は得意とすらしていると思います。
「IT(イット)」もそうですし、「スタンドバイミー」もそうです。
© 2017 SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画「ダークタワー」予告編より引用
であれば、映画「ダークタワー」も彼の10代らしい悩みや葛藤、不安を描きつつ、徐々にそれを乗り越えて成長していく様子を描くべきだったと思うんです。つまりジェイクを観客共感型の主人公にできれば良かったわけです。
ただ、ジェイクは予知能力があるということもあってか、精神的に10代離れしていて、あまり不安や葛藤、恐怖を見せないんですよね。唯一母親の死に動揺する場面は子供らしさが垣間見えましたが、それだけです。
その辺りをもう少しリアルに描いて、彼がローランドとの旅の経験を通して徐々に不安と恐怖を超越して成長していく過程を描けていれば、終盤のウォルターとの戦いで懸命に力を駆使するジェイクの姿にもう少し感情移入できたと思います。
主人公がローランドだったと言われたら、まあそれはそれで納得しますが、本作の性質上やはり主人公はジェイクだと思いますし、彼がしっかりと共感型の主人公として据えられていれば、もう少し映画「ダークタワー」の方向性ははっきりしたと思います。
父性的メンターの存在、喪失そして内包
© 2017 SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画「ダークタワー」予告編より引用
父性的メンターとはいったものの、そもそも父親とメンターという役割には共通する部分があります。
それは何かを教え伝える役割であるということです。
ローランドは、自分の父親からガンスリンガーとしてのいろはを教わったのだと思います。
だからこそ彼にとって父親の存在はメンターのような存在だったのです。そんな父親を殺されてしまいました。そして彼の心は曇り、ガンスリンガーとしてではなく、怒りに狂った一人の男としてウォルターへの復讐を誓います。
一方のジェイクには、父親がいませんよね。母親の恋人的立ち位置の人はいますが、本当に自分のことを思って、メンターとして背中を見せてくれる父親は火事で亡くなってしまいました。
本作「ダークタワー」は2人の父性的メンターを求める男の旅だとも言えるんですね。ローランドはウォルターを倒すことで、父親の魂と誇りを取り戻そうとしています。一方で、ジェイクは父親が死んだことでぽっかりと空いた胸の内を埋めてくれる誰かを、何かを探しています。
そんな2人だったからこそ、あの並んで銃の練習をするシーンは素晴らしかったですね。
ジェイクにとっては、ローランドが父性的メンターのような存在になっていたんでしょうね。自分を守り、そして自分に様々なことを教えてくれる存在です。
一方のローランドは自分が誰かの父性的メンターになることで、父親の影を振り払ったんだと思います。
父親の思いを自分の中に内包し、その教えを次の世代に伝えていくことを自分の使命だと自覚したというわけです。
だからこそ2人の師弟関係がとても美しく見えます。互いに欠けていたピースを埋め合う理想的な関係とも言えますね。
おわりに
いかがだったでしょうか?
今回は映画『ダークタワー』についてお話してきました。
この映画を見た帰り道は、どうしても指で銃の形を作って待ち行く人に狙いを定めてみたり、独り言でボソッと「我は気で撃つ」なんて呟いてしまいますね。
私自身は、かつて妄想系の中二病を患っておりまして、現在は克服しております。ただこの映画を見ると、その時の症状が再発しそうになってしまいました。
それくらいに中二病的要素がこれでもかというほどに盛り込まれています。
映画としては及第点どまりではありますが、やはりイドリスエルバが素晴らしかったですね。これに尽きます。彼がいなければ、この映画は破綻していました。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。