アイキャッチ画像:(C)2017 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved. “emoji”TM is a trademark of emoji company GmbH used under license.
目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回お話していく映画はですね「絵文字の国のジーン」という作品になります。
本作はアメリカで公開されるやいなや、批評家そして観客共に酷評の嵐となり、アメリカ大手批評家レビューサイトの”Rotten Tomatoes”では批評家支持わずか9%、観客からの支持も39%しか得られないという大惨事となりました。
https://www.rottentomatoes.com/m/the_emoji_movie/より引用
その結果としてその年のワースト映画を決定するゴールデンラズベリー賞、いわゆるラジー賞の作品賞にもノミネートされる始末です。
現金泥棒!!
極めて酷く、極めて退屈な映画だ!!
あなたのお子さんをこの映画から遠ざけておくように!!
時間の無駄遣い!!
どこかで見た要素の詰め合わせだ!!
残念なプロットと見るに耐えないアニメーション!!
見るのが悲しい、見ても楽しみが無い!!
物語性無し!楽しみ無し!お金をどぶに捨てるようだ!!
スマートフォンの間違ったカタログのようだ!!
ここまで批評家の酷評を集める作品はそうそうありません。何と言いますか、肯定的な意見がほとんど見当たらないんですよね。そしてその酷評意見の数々は、この映画を全否定するような語調の強いものばかりです。
まあそもそもソニーピクチャーズアニメーションの作品って「モンスターホテル」シリーズですとか「スマーフ」シリーズですとか、批評家に酷評された作品揃いなんですよね。
「くもりときどきミートボール」は高く評価されましたが、あまり良作を安定して生み出すという印象は無いです。ただそれにしても「絵文字の国のジーン」の評価の低さは異常です。
なぜこんなことになったのか?すごく気になりますよね。ということで日本で本日2月17日公開&配信スタートの映画「絵文字の国のジーン」の配信版を購入してみました。
今回は本作がなぜ批評家に酷評されたのか?を考えるとともに、逆にこの映画の持つ魅力は何なのか?を検証していきたいと思います。
良かったら最後までお付き合いください。
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あらすじ・概要
メールなどで使われる日本発祥の絵文字をモチーフに描いたハリウッド製3DCGアニメーション。
自分に割り当てられた表情ができない絵文字のジーンが、不具合を修正して「本来の自分」になるために繰り広げる冒険を描く。
ある男の子のスマートフォンの中。絵文字たちがにぎやかに暮らす町、テキストポリスに住む絵文字のジーンは、不機嫌な「ふーん」顔の役割をもっているが、表情が豊かで両親を心配させていた。
ある日、いよいよジーンの初仕事の日がやってくるが、決められた顔とは全然違う表情をしてしまい、案の定の大失敗を犯してしまう。
仲間たちを混乱させてしまったジーンは、自分に不具合があることを知り、仲間のハイタッチ、ハッカーのジェイル・ブレイクと一緒に冒険に出るが……。
(映画com.より引用)
予告編
「絵文字の国のジーン」感想
本作が酷評されるわけを考える
海外の酷評意見をいろいろと読んでみたのですが、その中でも多かった意見を取り上げて分析を加えていきたいと思います。
まず非常に多かったのが、「見たことのあるシーンの詰め合わせ」「創造力の欠如」「オリジナリティの乏しさ」というものですね。
(C)2017 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved. “emoji”TM is a trademark of emoji company GmbH used under license.
本作は絵文字が生命体として活動しているような現実とは世界線を異とした独自の世界観で繰り広げられる作品です。そのため主人公のジーンたちが住んでいるアプリは「テキストポリス」という架空のアプリになっています。
ただ登場するアプリケーションやギミックというものは悉く現実世界で既存のものなんですよね。
登場するのが、フェイスブック、ジャストダンス、キャンディクラッシュ、インスタグラム、ツイッター、ドロップボックスなどの現実でも人気のアプリたちです。これをどう捉えるかという点が1つ焦点になっている節があります。
テキストポリスという架空のアプリを主軸に据えたにもかかわらず、ジーンたちの冒険が繰り広げられるのは、全て既存のアプリなんですよ。
しかも、既存のアプリにも関わらず映画のために独自の解釈と機能性を備えさせて映画内に登場させているのです。特にドロップボックスなんかは完全に現実の設定を無視して描いていますからね。
この辺りのイマジナリ―ラインをもう少しはっきりさせれば良かったのではないかと思います。現実の世界に寄せるのであれば、それで良いですし、一方で架空のアプリや設定を登場させるならば、徹底的にフィクションにこだわるべきだったと思うんです。
フィクションの世界を構築したにもかかわらず、「創造力」の欠如からか都合良く現実のアプリを取り込んで、それを突貫工事で補修した感じが批評家たちには悪しきものとして捉えられたのかもしれません。
次に多く見られたのが、ターゲットを絞れていないというような意見ですね。要は本作「絵文字の国のジーン」は子供向けに作られた印象は強いんですが、映画を見ていると子供向けなのか?と疑問符がついてしまうようなシーンがしばしば登場します。
その代表格が笑顔の絵文字スマイラーですね。彼女は絵文字のオリジナル(最初の絵文字)としてテキストポリスのリーダーを務めています。
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アメリカで笑顔が恐ろしいリーダー格の女性というとヒラリークリントンが真っ先に頭に浮かぶんですが、もしかするとスマイラーのモデルは彼女なのかもしれません。
そしてこのスマイラーがまあ恐ろしい専制君主なんですよね。他の絵文字たちに対して個性を認めず、1度のミスも許さないのです。
そのため、主人公のジーンは最初の仕事で犯したミスと個性的な表情を槍玉に上げられ、すぐにボットたちによる削除通告をされます。
スマイラーがジーンに削除通告をするシーンももう恐ろしいとしか言いようがありませんからね。
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笑顔の絵文字であるスマイラーは終始笑顔で、そして残酷な言動を繰り返します。こんな一級品のサイコパスを見せつけられたからには、子供は人間不信になってしまいますよ(笑)
また先ほど触れたように、実在するアプリを誤った昨日を有するものとして登場させていたりするので、スマホの使い方を啓発する作品としても捉えづらいんですよ。
こういう事情もあって、お子様をこの映画から遠ざけることをおすすめします!みたいな批評が上がってくるのです。
さらに言うと、本作は大人向けにもなり得ていないんです。本作に登場するギャグって非常に幼稚なものが多いんです。例えば小学生男子が大好きな「うんちネタ」ですよね。
特に前半はくどい位に「うんちネタ」を連発してくるので、見ていて気恥ずかしくなります。また、本作はそもそも大人が見てもすでに知っている情報の羅列であって、得るものが少ないと思います。
このような事情で「絵文字の国のジーン」は子供向けにも、大人向けにもなり切れていない中途半端な作品だという批判を集めてしまったのでしょう。
最後にこれもちらほら見られたのですが、映画「インサイドヘッド」と比較しての批判意見ですよね。
「インサイドヘッド」という作品は現実世界での人物パートと頭の中の感情たちのパートのバランスが絶妙で作品としてすごく洗練されていたんですよね。
それでいて、きちんとそれぞれのパートにカタルシスをもたらしますから見事と言わざるを得ない映画です。
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一方の「絵文字の国のジーン」は作品のスタイル自体は「インサイドヘッド」を間違いなく意識したつくりになっているんですが、幾分現実世界のアレックスのパートが描けていないんですよね。
結局絵文字がメインだったのか、それともアレックスが主役だったのか。これがすごく曖昧に描かれているため、どちらも中途半端で終盤にかけて全然盛り上がってこないという事態に陥っています。
私が目についた意見を取り上げて、それに対して自分なりの言葉で解説を加えてみましたが、やはり映画批評という視点で見ると酷評止む無しの映画ではあると思います。
映画として完成度が低いですし、ターゲットも絞り切れてません。
でもこの映画嫌いになれないぞ
先ほど酷評意見を羅列しましたが、私自身はこの映画そんなに嫌いではないです。
まず、登場キャラクターたちのサイコパスっぷりが凄まじいんですよね。
その代表格は先ほども紹介した笑顔の絵文字スマイリーです。
顔に笑顔が張り付いているこのキャラクターは、この笑顔を一たびも崩すことなく、残酷な発言を繰り出すんですよ。
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「削除されればもう心配しなくていい。自分の存在意義とか未来とか・・・欠陥についてね。」
「みんなの前で駆除してやるわ。」
こんなこと満面の笑みで言うキャラクターが子供向けアニメに登場しているんですから、とんでもないことです(笑)。子供たちを人間不信にする気でしょうか?
そしてジーンと一緒に旅をするハイタッチの絵文字、ハイタッチも実に頭がおかしいんですよね。
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作品の中盤にキャンディクラッシュのアプリに入った際に、「俺は砂糖依存症なんだ。」と意味不明な供述をしながら、飴玉を大量に摂取して、それ以降のシーンでは終始ラリってるんじゃないかと思わせるような狂いっぷりなんですよね。
展開のネタバレになるので、詳しくは触れませんが主人公のジーン、ヒロインのジェイルブレイク、ジーンの両親も全員思考がぶっ飛んでます。全員サイコパスです(笑)
この映画サイコパスしか登場しないんですよ(笑)。完全に映画そのものがラリってるんですよね。
まさに「”ラリった”インサイドヘッド」としか形容できない作品だと思います(笑)。嫌いじゃないですね。
そして何より「絵文字の国のジーン」という作品は、ジーンら絵文字たちの成長物語として見ると、すごく熱くなれる作品なんです。まさに王道という印象でしょうか?
主人公のジーンは「ふーん」の絵文字です。そのため常に気怠そうな表情でいることが求められます。しかし、彼は豊かな表情を持っていて笑顔や泣き顔、怒った顔どんな表情でも表現できるという絵文字には考えられないような特性を持っています。しかし、テキストポリスではそんな彼は異質な存在として捉えられ、排除されてしまいます。
そんな彼がジェイルブレイクとハイタッチとの冒険を通して外の世界の豊かさと広大さを知ります。そして自分の豊かな表情を愛してくれる存在にも出会います。これが彼の考え方に大きな影響を与えます。
ありのままの自分で生きていくことの大切さ、自分を好きになることの大切さ。「アナと雪の女王」にも似たテーマ性が秘められています。
それらを冒険の中で学んだジーンが、テキストポリスに迫る最大の危機にある大きな決断をします。ぜひジーンの成長譚を見届けていただきたいと思います。
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「絵文字の国のジーン」解説
絵文字とコミュニケーション
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ついにiPhoneXの発売に際して、動く絵文字が実装されましたよね。本作「絵文字の国のジーン」はその動く絵文字という新技術の登場を考えてみても非常に興味深い映画だと思います。
そもそも絵文字が登場したのは、テキストメッセージではどうしても伝えきることができない人の感情を可視化するためだったんですよね。そして絵文字の種類というものは、どんどんと増えて人の多くの感情を表現できるまでになりました。
ただやはり人の感情というものは、1つの絵文字で表現するには限界があります。泣いている感情と怒っている感情が同時に押し寄せた時、それを絵文字で表現することは非常に難しいです。
しかし、絵文字が複数の表情を同時に表現してくれたなら・・・。その人間が持つ複雑な感情を限りなく近い形で表現できるようになるやもしれません。
テキストメッセージで感情を伝えることの難しさを改めて考えさせられると共に、絵文字でそれを表現することができれば・・・という願望も込められている映画だと感じましたね。
小ネタ:名作映画への言及
本作「絵文字の国のジーン」は名作映画への言及が見られるんですよね。今回はその代表的なもの2つを取り上げたいと思います。
「ライフオブパイ」
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音楽ストリーミングアプリであるスポティファイにジーンとジェイルブレイクが入った時に2人がボートに乗って音楽の波長の流れを川下りのように航行するシーンがあるんですが、このシーンで2人のボートのすぐ近くを巨大なクジラが通過するんです。
このシーンは映画「ライフオブパイ」でパイが夜の海で見た幻想的なクジラの光景を想起させます。
「カサブランカ」
テキストポリスから逃亡したジーンを探して、両親がアプリの外を旅するんですが、彼らがインスタグラムでパリの写真の噴水前で愛を再び確かめ合うシーンがあります。
このシーンでジーンの父親が言うセリフが名作「カサブランカ」からの引用になっています。
「思い出のパリがある。」
おわりに
いかがだったでしょうか?
今回は映画『絵文字の国のジーン」についてお話してきました。
映画批評的観点から見ると、確かに酷評止む無しの作品ではあるんですが、嫌いにはなれない映画でしたね。サイコパスすぎるキャラクターたちと王道の冒険譚はシンプルに楽しめました。
また名作映画の引用になっているいくつかのシーンも幻想的で作品に華を添えていたような印象がありました。
作品を世間的な評価だけで判断してはいけないということが改めて分かりましたね。意味の無い映画なんてこの世界には無いのです。
最後に個人的に面白かったスラングを1つ紹介して記事を締めようと思います。
これは大便をしに行くと、小便が先に出ちゃうみたいなあるあるから来てるんですかね?(勝手な想像です)
最後の最後に汚いお話をして申し訳ありません。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。