【ネタバレ】『ダウンサイズ』感想・解説:何とも珍しい親ドナルドトランプ映画だ!

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね映画「ダウンサイズ」についてお話していこうと思います。

ナガ
これは、また変な映画だね…。

ダウンサイジングという技術が普及した世界の物語で、どちらかと言うと、ディストピアSFのような雰囲気なのかなと想像していたのですが、中途半端に社会派で奇妙な内容です。

そんな何とも奇妙な本作について今回は率直に書いていこうと思います。

できるだけ展開に関係するネタバレをしないように語っていくつもりですが、ネタバレに触れる際には改めて明記いたします。

良かったら最後までお付き合いください。




『ダウンサイズ』 

あらすじ・概要

「ファミリー・ツリー」「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」アレクサンダー・ペイン監督が、マット・デイモンを主演に迎え、人類が縮小可能になった未来社会を舞台に、社会風刺を交えて描くドラマ。

ノルウェーの科学者によって人間の身体を縮小する方法が発見され、身長180センチなら13センチにまで小さくなることが可能になった。

人口増加による環境、食料問題を解決する「人類縮小200年計画」が立ち上がり、一度小さくなれば二度と戻ることはできないが、それでも各国で小さくなること(ダウンサイズ)を選ぶ人々が徐々に増えていく。

アメリカのネブラスカ州オマハでストレスフルな生活を送る、どこにでもいる平凡な男ポール・サフラネックは、少しの蓄えでも裕福で幸せな生活が遅れるという縮小された世界に希望を抱き、ダウンサイズを決意。

しかし、土壇場で妻のオードリーが逃げ出してしまう。ポールは縮小された人間たちの世界で、ひとり寂しい生活を送ることになり、自暴自棄になるのだが……。

映画com.より引用)

アレクサンダーペイン監督の作品は個人的にも好みでして、特に好きなジャンルであるロードムービーに該当する「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」はお気に入りです。

アレクサンダーペイン監督は現代社会の小さな気づきや問題を映画に取り入れながらも、キャラクターたちの人生の再起動物語を描くのが、非常に上手い監督だと思います。

本作「ダウンサイズ」も環境問題に関する言及を交えながら、ダウンサイジング手術を受けたが、妻に逃げ出された主人公のポールの人生のリブートが描かれるのだろうと予告編を見ながら、心躍らせて公開日に見に行ってまいりました。

主演は言うまでもなくマットデイモンですね。「ジェイソンボーン」シリーズ「オデッセイ」数々の映画史に残る名作に出演してきた名俳優です。

他にも映画「イングロリアスバスターズ」でアカデミー賞助演男優賞を獲得し、「007 スペクター」では敵役オーベルハウザーを演じたクリストフ・ヴァルツらも出演しています。

 

予告編

ナガ
このマット・デイモンもうシュール過ぎて笑っちゃいますけどね…。




『ダウンサイズ』感想・解説(ネタバレあり)

結局何がしたいんだこの映画は・・・?

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(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. 映画「ダウンサイズ」予告編より引用

本作「ダウンサイズ」の前半部分はとても素晴らしいんです。

ダウンサイジングという技術が開発され、徐々に受け入れられていきます。この手術を受けることで、身体が約14分の1にまで縮んでしまいますが、自分が持っている財産が何倍にも膨れ上がり豊かな生活が送れるということです。

そんな理想とは裏腹に、民族紛争や犯罪にこの技術が流用される問題や政治・経済面での問題が浮上してきます。

この世界観の構築は非常に上手かったと思いますし、見ていてワクワクしました。確かにダウンサイジングはメリットも大きいですが、もちろん悪用されるリスクも高いんですよね。

その両面をきちんと描き、その上でその技術が存在する世界を魅力的に演出した作り手の手腕は称賛されるべきだと思います。

ただこの映画、後半に近づくにつれてドンドンと訳の分からない方向へとシフトしていくんですよね(笑)

前半でダウンサイジング技術の悪用ですとか、政治経済の問題ですとか、技術を利用したグレーなビジネスですとか、ダウンサイジング後の世界にも蔓延る貧困問題といった立ち向かうべき問題をたくさん提示しておきながら、それらをすっぽかして斜め上の方向へ物語を着地させようとしていきます。

例えるならば、キッチンに鶏肉、人参、玉ねぎ、ジャガイモ、カレールーが置かれていて、「今晩のメニューはカレーだ!!」なんて楽しみにしていると、いざ出てきたのがチョコレートだったみたいな話なんですよ。いくらでも調理の仕方があった食材たちを他所に、全然関係ないものを出されたようなそんな気分です。

そのためストーリーが完全に散らかってしまっていて、何がしたいのかさっぱり分からない映画になっています。

ナガ
もっと面白くなる要素はあったんですけどね…。

序盤に提示していた問題に果敢にも挑んでいく姿、例えばダウンサイジングの住民たちの世界に危機が迫って主人公たちはそれにどう立ち向かうのか?ですとかダウンサイジングした住民たちの政治的な権利をどうやって主張していくのか?ですとかダウンサイジングした住民の犯罪をどう取り締まるのか?なんて辺りは個人的にも非常に見てみたかったです。

ただ本作「ダウンサイズ」は中途半端に環境問題を扱い、中途半端に人道支援要素を取り入れようとしたことでダウンサイジング技術を全く作品として生かせていないんですよ。

例えばマーベルシネマティックユニバースのヒーロー映画「アントマン」は主人公が小さくなったことが映像的にも分かりやすいですし、それを利用したギミックなんかもたくさん登場します。

一方の「ダウンサイズ」はそれを売りにした映画にもかかわらず、主人公たちがダウンサイジングしたことが明確なのは、中盤までのみでそこからはダウンサイジングした世界しか登場しないため、もはやこの映画がダウンサイジングした人間たちの物語であることすら放念してしまうほどです。これではせっかくの世界観と設定が台無しです。

さらにはこの映画の結末は本当に酷いです。

ネタバレになるので明言はしませんが、映画において登場人物が映画内で起こる出来事を通して何らかの変化や成長を経験するという点は取り入れなければならないポイントです。

それが無ければ「STAND BY ME ドラえもん」のような映画が出来上がってしまいます。

映画「ダウンサイズ」も一応主人公に何らかの考え方や価値観の変化がもたらされて幕切れにはなるのですが、その動機付けやきっかけがあまりにも描けていないですし、あれで描けたと言うならばあまりにも陳腐すぎて説得力の欠片もありません。

せっかくの世界観や設定のアドバンテージを全く生かせず、何がしたいのかわからない作品を作り上げてしまったように感じました。

 

笑えるのは下ネタぐらい・・・。

ナガ
本作のコメディ要素で笑えるのって大体が下ネタ要素なんですよね・・・。

まず一番大爆笑したのは、ダウンサイジング手術を受ける男たちが30人ほど部屋の中で麻酔を受けて眠っているシーンがあるんですが、その空間の端から端までをサイドに移動するカメラで捉えたカットが登場します。

このシーンで、全ての男性の股間にもれなくモザイクがかかっているんですよ(笑)

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(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. 映画「ダウンサイズ」予告編より引用

3月1日公開の映画「シェイプオブウォーター」で日本公開版が一部モザイク加工のR15バージョンになったことが注目を集めましたが、この「ダウンサイズ」の某シーンはもう笑ってしまうくらいモザイクだらけです。

ただ正直モザイクを入れといてくれてよかったです(笑)。あれの無修正版とか多分見たい人いないでしょうし・・・。

あとはダウンサイジングした人間同士の間で初めて生まれたリトルロニというキャラクターが登場するんですが、彼はそういった事情もあって有名人なんですね。そのため多くの女性の好意を惹きつけ、次々に性交に及んでいるということなんです。

それを見てクリストフ・ヴァルツ演じるドゥシャンが「彼はダウンサイジングした人間で初めて性病にかかるだろう」と評するんですが、終盤に彼が再登場するとちゃっかりヘルペスになっているんです。

目測通り彼は「初の性病ダウンサイジング人間」となったわけです。

他にも終盤にホンチャウという義足のベトナム人女性が「アメリカ人のフ〇ックは8種類あると聞いた。」という話をし始めるんですが、これは面白かったです。

その話を一通りした後で、「あなたが私にしたのはどのフ〇ック?」という質問を投げかけるんですよね(笑)

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(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. 映画「ダウンサイズ」予告編より引用

これを見ながら、「あなたの風邪はどこから?」でお馴染みのベンザブロックのCMを思い出したのは私だけでしょうか?(笑)

しかもその後彼女は答えを迫ろうとして、「愛情?身体だけ?それとも義足同情フ〇ックだったの?」と詰め寄るんですね。

「義足同情フ〇ック」とは何ぞや??(笑)

さらに言うなれば、この映画「ダウンサイズ」は日本ではR12指定での公開なんですが、北米ではR指定で公開されていて、これは17歳以下の者は保護者の同伴無しに鑑賞することはできないという厳しいレーティングなんですね。

ただこの映画正直言ってそんなに過激なシーンは登場しません。ですので、このホンチャウというベトナム人女性が「フ〇ック」を連発したシーンでレーティングが厳しくなったと見て間違いないでしょう(笑)。おそらくあのシーンの単位時間当たりの「フ〇ック」量は全ての映画の中でも最高水準だと思います。

とまあ今作の笑えるポイントをいくつか指摘してみましたが、総じて下ネタなんですよね。

パロディAVのレビューを書いているような当ブログ管理人が言うのも何ですが、下ネタで取る笑いって下品なんですよね(笑)

正直笑いとしてレベルは高くないと思うんです。

そのため今作のコメディ要素は正直言って面白かったですが、総じて低レベルだと思いました。




世にも珍しい親ドナルドトランプ映画?

ハリウッド映画界が極めて民主党寄りであり、反トランプに傾倒していることは明らかですよね。

アカデミー賞授賞式はトランプへの皮肉のオンパレードでしたし、3月1日公開の映画「ブラックパンサー」がアメリカで絶賛されるのは間違いなくそういう背景ありきです。

そのためハリウッド映画で政治的な話題に言及すると、基本的には民主党寄りの視点であったり、反トランプ的視点であることがほとんどなんです。

ただ本当にドナルドトランプ大統領がやろうとしていることは悪いことばかりなのでしょうか?と言うとそうではありません。

本作で取り扱われている環境問題に関してですが、オバマ大統領が「グリーンニューディール政策」として大規模な行動計画を定めていました。確かにこの計画は環境問題という側面だけから見るなれば、素晴らしいものです。

しかし見方を変えてみるとどうでしょうか?石油採掘や石炭業界はこのオバマ大統領の指針によって大打撃を受けています。環境問題に取り組むという名目で、そういった人たちの雇用が奪われ、生活が壊されていった現実がそこには確かにあります。そこから目を背けて、環境問題への取り組みを猛進的に賛美するのはどうなのでしょうか?

ドナルドトランプ大統領はオバマ大統領が貫いてきた方針を撤廃し、国内の石油・天然ガス・石炭の採掘や利用に力を入れていくという旨の大統領令を出しました。これがきっかけで多くの失業した人たちに雇用が生まれ、仕事が戻ってきました。

環境問題に取り組むというのは確かに間違ったことではありません。しかしそこばかりが重視されることで、それによるデメリットが目に入っていないのではないかという指摘はすごく重要なのです。

本作「ダウンサイズ」の中で「環境問題はある種のカルトだ。」と指摘するようなセリフが存在します。

作品の冒頭でダウンサイジング技術が発表されたカンファレンスで会場に集まった人々は、その技術が環境保全や持続可能な開発に繋がるという事実を知るやいなや、半妄信的にその技術に賛辞を贈ります。

ナガ
彼らにはそのデメリットが見えていないのでしょうか?

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(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. 映画「ダウンサイズ」予告編より引用

環境問題に取り組むというのはつまり人類の「未来」を守るための行動ですよね。これはもちろん大切でないがしろにしてはいけないと思います。しかし、環境問題に取り組むということを口実に「現在」を軽視してしまって良いのでしょうか?

オバマ大統領が掲げた「グリーンニューディール政策」が間違っていたとは言いません。もちろん正しい側面もあります。ただそれを妄信的に信奉するのはいかがなものか?

ドナルドトランプ大統領がこの方針から脱却したのは、「現在」を見据えてのことです。「未来」よりも「現在」起こっている目下の問題に取り組む方が優先だという考えからでしょう。

つまり、いつ起こるか分からない地球の危機のための環境問題への取り組みよりも、現在目の前にある問題に取り組むことの方がずっと大切なんじゃないか?ということを映画「ダウンサイズ」は我々に訴えかけているのです。

反トランプ的な風潮が強く、環境問題への取り組みこそが称賛されるべきとされるハリウッド映画界でこの映画が称賛を集めることができたのかは疑問ですが、この親トランプ的な映画が生まれたことには間違いなく意義があると思っています。

 

おわりに

いかがだったでしょうか。

今回は映画『ダウンサイズ』についてお話してきました。

個人的に疑問に思ったのが、なぜダウンサイジングを実施する時に全身の毛髪と歯が邪魔になるのかという点ですね。なぜ毛髪や歯はダウンサイズの対象にならないんでしょうか・・・?

まあ全身の毛を剃られたマットデイモンもそれはそれで乙ではありましたが(笑)。

ダウンサイズ後に彼が真っ先にしたのが〇んちんの確認だったのも面白かったですね。男ならまずはそこだよなと。

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(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. 映画「ダウンサイズ」予告編より引用

作品総評としましては、世界観や設定は良かったですが、それを生かしきれなかったという印象でした。

ただ反トランプ的な昨今のハリウッド映画界において、妄信的な反トランプや環境問題への取り組みに警鐘を鳴らす本作のメッセージ性は面白いと思いました。

ただせっかくダウンサイズするわけですから、それを生かしたギミックや展開がもっと見れたら良かったと思います。正直中盤以降はあまりにも普通の映画になりすぎて、彼らが小さくなっていることを忘れてしまうほどでした。

今回も読んでくださった方ありがとうございました。

 

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