【感想】『半分、青い』の脚本・演出が見事すぎる5つのポイントを徹底解説!!

〇 はじめに

 みなさんこんにちは。ナガと申します。

 今回はですねNHK朝ドラ「半分、青い」についてお話していこうと思います。

 特に第2週の内容にスポットを当てて書いていこうと思います。

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©NHK

 良かったら最後までお付き合いください。




〇見事すぎる脚本・演出の凄みを徹底解説!!

①律の鈴愛への思いの表象

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©NHK 5分で「半分、青い」第2週~聞きたい!より引用

 律が少なからず鈴愛を好意的に思っていることは間違いないのですが、そんな淡い思いの表現がこの作品では極めて巧みに描かれています。

 まず第1週で描かれた川を挟んで糸電話をするエピソードを思い出してほしいのです。この時、律はブッチャーについてお金持ちでお小遣いをたくさんもらっているから自分たちの計画を援助してくれるだろうという旨を仄めかしているんです。

 それを踏まえて第2週の鈴愛がブッチャーにゴミ箱を投げつけ、律がブッチャーをかばった時のことを思い出して欲しいんです。ブッチャーが友人にオモチャなんかを配って崇拝されている様子が映し出されていましたが、彼曰く律はオモチャを受け取らないんだそうです。

 つまり律はブッチャーからの施しは受け取らないんです。だからこそブッチャーは律のことを「ほんもの」と評しているわけです。にもかかわらず、律は第1週の糸電話の時、鈴愛に対してブッチャーを「金づる」のように評しています。

 とするとこの差異というのは、律の鈴愛への秘められた思いの表象なのではないのでしょうか?律は鈴愛を助けるためなら、守るためなら手段も選ばないという意志がここに表れているように思いました

 そしてもう1つ鈴愛が家出をして律の家に逃げ込んできた時のシーンです。鈴愛が眠ってしまった後彼女の母親が迎えに来ます。その時に律が母親にゴミ箱の事件の顛末を話しますよね。

 この時、律はブッチャーが鈴愛に対して思いを寄せていて、そのためにちょっかいをかけていると伝えますよね。しかし、第1週でブッチャーは「りっちゃんがええなあ。」と評していて、鈴愛の声を聞くことをありがたがっている素振りは見せませんでした。

 このシーンってもしかすると律自身のことを言っているのではないでしょうか。普段は少しつれない態度を取っている彼ですが、心の奥底では強く鈴愛のことを思っているということを説明しているようにも聞こえます。

 それを鈴愛の母親に伝えて、しかも秘密にしてほしいと告げるのが子供らしい可愛さでもありますよね。律が鈴愛の気持ちを知ろうとして左耳に耳栓をしているのが、彼の鈴愛への強い思いの証明でもありますよね。

②小人が踊る鈴愛の左側の世界

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©NHK 5分で「半分、青い」第2週~聞きたい!より引用

 本作中で鈴愛の聞こえなくなった左耳の静寂を「小人たちが踊っているようだ。」と描写しています。小人たち(16人?)がポリネシアンのメロディで踊っているという旨を鈴愛は話していました。

 一方で街の漁師の男性が自分の亡くなった妻の聞こえなかった耳のエピソードを話していますよね。彼女は「ザリガニがバケツの底を動き回っているような音」と述べていました。

 つまり耳の中の世界というのは、その人の生きている人生に強く影響され、そのモチーフを反映するんだと思います。

 鈴愛にとっての世界というのは、家族がいて、律がいて、友人がいて・・・という非常に狭い世界で、彼女にとってはそれが全てなんですよね。

 だからこそ彼女の左耳にいる小人たちというのは、彼女をさせてくれる人たちを表していて、彼女が失った左側の世界を支えてくれているんでしょうね。何気ない要素ですが、非常に印象的です。

③泣き虫母ちゃんと泣かない鈴愛

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©NHK 5分で「半分、青い」第2週~聞きたい!より引用

 本作においては「涙を見せる」という行為が1つ重要な要素として登場します。

 鈴愛の母親は泣き虫で、人にしばしば涙を見せます。一方で鈴愛は母親に涙を見せません。

 彼女は自分の左耳の聴力が完全に無くなってしまったにも関わらず、涙を流さないんです。一方の母親はことあるごとに鈴愛のことを思い、涙しています。

 映画やドラマでしばしば描かれるのは母親の視点から、母親が子供に涙を見せないことが母としてできることであるという描写です。子供に心配をかけない、子供を勇気づけるためにも涙を見せまいとして気丈に振る舞う。これが母の強さだとして賛美される傾向があるのは間違いありません。

 しかし「半分、青い」が描こうとしているのは、弱さの肯定なんですよね。

 それは鈴愛が第2週、律と水辺で過ごし、水きりをしていたあのシーンでもモノローグで挿入されていたことでした。鈴愛は自分が生き物として弱くなったと告げていました。いろんな音がか細く、頼りないとも。それでもそんな世界を肯定して本能的に楽しもうとする自分がいました。

 これはまさしく弱さの肯定なんです。弱いということをネガティブに捉えるのではなくて、逆にポジティブに捉えていくこと、それが大切なのです。

 だからこそ本作に登場する泣き虫母ちゃんにはすごく意味があります。それは鈴愛が気丈に振る舞い、涙を見せまいとしているからこそ一層際立ちます。

 強くあろうとしなくても良い。だってそんなお母ちゃんが鈴愛は大好きなのですから。

 母親の強さという神話から脱し、母の弱さを愛するところに本作の優しさが垣間見えます。

④潮騒~雨が上がる、水の音が生み出す効果

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©NHK 5分で「半分、青い」第2週~聞きたい!より引用

 本作「半分、青い」において最も印象的なモチーフは何かと聞かれると、それは水でしょう。

 特に水辺で泣いている鈴愛に律が寄り添っているシーンでそれが一層際立ちました。

 泣いている鈴愛の横で律は石を投げて水切りをしています。そして鈴愛のモノローグと共にその音は次第にか細く、弱々しくなっていきます。これは鈴愛の生きる世界の音を表現しています。一方でその回の終わりに向けて、また鈴愛の生きることへの強い決意が語られるにつれて、その音が水のざわめく音が強くなっていきます。

 水は生命力の表象としてしばしばフィクションで登場します。そのモチーフを使って水の音の強弱で鈴愛の生命力を表現しようとした演出は非常に高度なものだと思いました。

 また雨の演出が実はすごく意味があるものとして描かれていることに気がつきました。

 鈴愛は左の耳の静寂を雨の音ですとか潮騒のようであると評していました。そして第2週の最後の回で鈴愛は母親に自分の左側だけに雨が降っているようだと伝えています。母親はそれに対して「鈴愛の左側はいつだって晴れやね。」と返答しています。

 このシーンで第2週で描かれた深い悲しみから鈴愛や家族が脱出できたことが明確になっています。支えてくれる人々のおかげで、鈴愛の世界の雨は止んだのです。

 さらに第1週の冒頭を思い出してみてください。雨が降り始めて、そして律が傘を忘れた鈴愛に自分のものを渡して去っていきます。これはもし鈴愛の世界に(鈴愛の左側の世界に)雨が降ったとしても、自分が傘をさして守るからという律の意志の表象にも見えてきます。

 つまり左耳が聞こえないせいで壁が立ちはだかることがあれば、自分が助けるんだという律の強い思いですよね。幼少期の平均台のエピソード1つとってもそんな律の思いは伝わってきます。

 水や雨の演出を繋いで考えてみるだけでもこの作品の見方は広がると思います。

⑤見えない糸電話と伝わる距離

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©NHK 5分で「半分、青い」第2週~聞きたい!より引用

 本作では「思いが伝わる距離」の演出が非常に面白いと思うんです。

 例えば川の対岸同時で鈴愛と律が糸電話で話すシーンがありましたよね。あのシーンでは川の幅だけの距離が2人の間を隔てています。しかしそれだけの距離があるにもかかわらず、2人は名前を呼ぶだけで通じ合っています。名前を呼ぶだけでお互いの考えや思いが伝わっているのです。

 他にも糸電話のシーンでは我々の生きる世界とあの世(三途の川の向こう側)という届きようもない距離で鈴愛の祖父は亡くなった祖母とコミュニケーションを取ろうと試みます。それは伝わるはずもないほどの距離を隔てています。それでも確かに鈴愛たちの思いは三途の川の向こうの祖母にまで伝わっているであろうと確信させてくれます。

 一方でゴミ箱を投げた鈴愛を母が叱るシーンです。2人はすごく近くにいます。それにもかかわらず母親の思いは鈴愛には伝わりませんし、鈴愛の思いは母親には伝わりません。このシーンは前述の2つのシーンと非常に対比的に描かれています。

 その後律の家に母が迎えに行って、鈴愛と一緒に家に帰るシーンを見てみてください。母が鈴愛をおんぶする形で2人はゼロ距離で接しています。このシーンで2人は会話することはありません。ただ「ふるさと」の歌を口ずさむのみです。それでも2人の間には2人だけの共通言語が存在し、あの歌だけでお互いに分かりあえたことが印象づけられます。

 「半分、青い」が教えてくれるのは、人に思いを伝える際に大切なのは距離や手段ではなく、相手を思うことではないかというメッセージです。

 コミュニケーションは一方通行では成立せず、必ず双方向でなければなりません。どんなに距離を隔てていてもお互いがお互いのことを思えば、絶対にその思いは伝わるんだということを作中におけるいろいろな距離感でのコミュニケーションを通じて表現しているのではないかと思いました。

〇おわりに

 第2週を鑑賞しての短評を書かせていただきました。

 第1週はかなりスロースタートという印象だった本ドラマですが、第2週で一気にエンジンをかけてきた印象ですね。毎回のように涙しました。



 既に名作臭が漂っているドラマ「半分、青い」の今後の展開も見逃せません。

 今回も読んでくださった方ありがとうございました。

 来週の「半分、青い」の記事でお会いしましょう。




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