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目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガです。
今回はですね本日から公開の映画『GODZILLA 決戦機動増殖都市』についてお話していきます。
本記事はネタバレありの解説・考察記事になっております。
作品を未鑑賞の方はお気をつけくださいますようよろしくお願いいたします。
良かったら最後までお付き合いください。
『GODZILLA 決戦機動増殖都市』
あらすじ・概要
「ゴジラ」シリーズ初のアニメ作品として製作された劇場3部作「GODZILLA」の第2章。
ゴジラに蹂躙された地球を取り戻すため決死の戦いに挑んだハルオをはじめとした人類だったが、地中深くから現れた真のゴジラ=ゴジラ・アースに敗退。
ハルオは、かつての地球人類の生き残りと目される「フツア」と呼ばれる民族の少女ミアナに助けられる。フツアもかつてゴジラに敗れたと言い伝えられていたが、彼らの持つ金属のナノメタルが、21世紀に対ゴジラ決戦兵器として開発されたメカゴジラを構成する物質と同じものであることが判明。
メカゴジラの開発プラントがいまだ残されていることが明らかになり……。
「シドニアの騎士」「亜人」「BLAME!」など3DCGアニメーションで高く評価されるポリゴン・ピクチュアズがアニメーション制作を担当し、同社制作のアニメを多数手がけてきた静野孔文、瀬下寛之が監督。
人気脚本家の虚淵玄がストーリー原案・脚本を担当する。
(映画com.より引用)
予告編
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当ブログのアニゴジ関連記事
当ブログに存在するアニゴジ関連記事のリンクを掲載しておきますね。
・前作:『GODZILLA 怪獣惑星』
・前日譚小説1:『GODZILLA 怪獣黙示録』
・前日譚小説2:『GODZILLA プロジェクトメカゴジラ』
・シリーズ最終章:『GODZILLA 星を喰う者』
『GODZILLA 決戦機動増殖都市』解説・考察(ネタバレあり)
ゴジラファンのためのゴジラ映画だ
東宝は2016ねんに『シンゴジラ』を大ヒットさせ、日本産ゴジラの復活を印象づけました。
あの作品が興行収入80億円に匹敵する大ヒットを記録したのは、これからの世代のためのゴジラ映画だったからだと思うんです。
基本的にVSシリーズのように敵になるような怪獣も登場しません。
これまでのゴジラ映画でどんな経緯が描かれてきたのか等もほとんど前情報として持っておく必要がありません。
だからこそ初見で見れるゴジラ映画でしたし、まさに新しい時代にマッチしたゴジラ映画でした。
その後東宝がゴジラ復活後の第2弾として発表したのがこのアニメゴジラシリーズです。
東宝はもちろん『シンゴジラ』のヒットで味をしめたでしょうから、当然再び誰もが見やすい幅広い客層に受け入れられるゴジラ映画で攻めてくると思っていました。
しかし東宝が打ち出した方向性は想像とは真逆でむしろこれまでのゴジラファンのためのゴジラ映画に仕上がっていました。
前日譚小説でコアなゴジラファンしか知らないだろ・・・レベルの怪獣を次々に登場させたかと思いきや、映画も一見さん置いてけぼり・・・みたいな作品に仕上がっていました。
しかしこの方向性で作品を作り上げてくれたことに、そして前作で賛否両論になりながらもその路線から決して目を背けず、逃げなかったクリエイターたちに拍手を贈りたいです。
前作もそうでしたが、今作は特にこれまでのゴジラ映画を見てきた日に向けての意味合いが大きいです。
だからこそ一ゴジラファンとして感極まりました。
ただただありがとうと言いたい。そんな映画でした。
この映画は実質「東京SOS」へのアンサーだ
この映画って前作『GODZILLA 怪獣惑星』の続編であることに間違いないんですが、それ以上に『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』へのアンサーだとは思いませんでしたか?
この映画はもうゴジラファンからすると衝撃的すぎる結末で幕を閉じています。
まず本作のメカゴジラである「機龍」には初代ゴジラの骨格が内蔵されています。つまりゴジラのDNAを駆使して作られた兵器というわけです。
そしてこの映画にはモスラと小美人も登場しています。小美人たちはゴジラの骨格を用いてメカゴジラを作り上げた人類を批判し、それは大きな過ちだと告げます。
最終的にゴジラとメカゴジラ、モスラの三つ巴の戦いになるのですが、機龍がゴジラにとどめを刺そうとした瞬間に、機龍は制御不能になります。
そしてゴジラを抱きかかえると海へと還っていたのでした。そして小美人もそれを見届けると人類は自分たちの過ちを認めたのだと信じ、モスラと共に去っていきました。
しかしですよ、ラストシーン。何と人間たちはゴジラのDNAを使って何か計画を立てているんですね。
これはつまり人間は過ちを認めようとせず、自分たちがゴジラになり替わろうとしたということの何よりの証明だったわけですよ。
ただこの作品の続編と言うのが未だに作られていないんです。
『ゴジラ:ファイナルウォーズ』はまた少し毛色の違う作品でしたからね。つまり『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』という作品に対するアンサーは未だに提示されていなかったわけです。
人間はゴジラを倒すためなら「怪物」に身を落としても良いのか?という疑念は解決されないまま月日は流れました。そしてようやくその問いに『GODZILLA 決戦機動増殖都市』という作品がアンサーを提示しようと試みました。
本作の中で人類の祖先であるフツアたちがナノメタルを刺して「毒」だと呼称していましたよね。これはまさしく「機龍」を作った人類に警告した小美人たちの姿に重なります。過ちに手を染める人類に手を差し伸べるところもまた共通点です。
ビルサルドたちが自分たちが人智を超えた存在になって、つまり「怪獣」にならなければゴジラに勝つことはできないと考えているのも、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』の時の人間の姿に重なりますよね。
怪獣を倒すために怪獣の力を用いる、そして自分たちが怪獣になる。
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確かにそうすればこの第2作でゴジラを打倒することに成功したのかも知れません。しかしそれは出来なかった。
『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』でも人類はゴジラへの勝利を目前にしながら、勝利を手にすることはできませんでした。
機龍の制御不能という不測の事態により人類は受動的に勝利を逃したのです。
この時、人類は自ら機龍を手放すという決断が出来なかったではありませんか。人類は自分たちが地球の支配者であるために「怪獣」であり続けるという決断をしたわけですよ。
しかし本作のハルオは違います。ビルサルドが突き付けたゴジラへの勝利の方程式に異を唱え、「人としてゴジラに打ち勝つことが重要だ。」と言ってのけました。つまり能動的に自分たちが「怪獣」であろうとすることを放棄したのです。
これが何よりの『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』へのアンサーではないですか。
メカゴジラという存在の意義を問いただす中で、ハルオが発したあの言葉はまさにゴジラファンが待ち望んだ言葉だったように思います。
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X星人の設定が絡んでる?
この章は考察と言うよりも私の次回作への妄想です。
本作のビルサルドとエクシフの設定ってX星人の影響を大きく受けていますよね。
前日譚小説である『プロジェクトメカゴジラ』を読んでいただけると分かりやすいのですが、ビルサルドたちはナノメタルの力を使ってかつてガイガンを改造して、ゴジラを相手にむごたらしい戦いを挑んでいるんですよね。
ガイガンにナノメタルで補強し、無限に再生する異形の生物として戦わせたわけです。
これって『ゴジラ:ファイナルウォーズ』に登場するX星人に改造されたガイガンを思い出しませんか?
そして次回作のタイトルが『GODZILLA 星を喰う者』に決定したわけですが、これで次回作にキングギドラが登場することは確定的になりました。
ただ面白いのはですよ。キングギドラというのはX星人を象徴する怪獣なんですよね。
例えば『怪獣大戦争』のキングギドラとX星人の関係性って覚えていますでしょうか。
キングギドラはX星人の惑星を襲っています。だからこそX星人は地球にやって来て、地球の怪獣であるゴジラとラドンを借りてキングギドラの撃退に使わせてほしいと協力を要請してくるんですね。
しかしこれはX星人たちの策略なんですね。
実はキングギドラに自分たちを襲わせるという自作自演を演出して、ゴジラとラドンを自分たちの支配下に置いて3体の怪獣を地球侵略のために使おうとするわけです。
つまりですよ。本作の中でエクシフのメトフィエスが自分たちの惑星を滅ぼしたのは、ギドラだと告げましたが、これはどうも怪しいです。
『怪獣大戦争』や『ゴジラ:ファイナルウォーズ』のX星人の設定を鑑みてもどう考えてもギドラがX星人をモチーフにしているアニメゴジラシリーズの宇宙人を滅ぼすとは考えにくいのです。
虚淵さんのことですからビルサルドだけが負い目を感じるような展開にはしないでしょうということから考えても次回作の敵はギドラであり、エクシフになるのではないかというのが私の予想です。
意識を放棄することで人智を超える
本作の1つの肝になっていたのが、ビルサルドが自分たちの意識と身体をナノメタルに委ねることで究極の強さを手に入れようとしますよね。
これっておそらくですが『メカゴジラの逆襲』の設定を踏襲していますよね。
サイボーグである桂をメカゴジラに同期させて戦わせるというのが本作の設定でした。やはり本作は先ほど触れた機龍もそうですが、ゴジラシリーズのメカゴジラの要素を引き継いでいますね。
また、人類がより高次の存在を目指すために自分の意識を外部化するという展開は、伊藤計劃氏の『ハーモニー』に着想を得たんじゃないかと思いましたね。
ただ『ハーモニー』もそれに対して答えを出すには至っていなくて、ポストモダンチックな思想が反映された作品になっています。
一方の『GODZILLA決戦機動増殖都市』は知性のある存在の強さは「迷うこと」だと述べていました。「迷い」というと弱さの象徴のようにも感じられますが、「迷う」ことが出来ることもまた強さなのだという視点は非常に好きでした。
また虚淵作品の流れで語るとするなれば、『Psycho-pass』シリーズとの関連が強い印象ですね。このシリーズは現在テレビシリーズが1期、2期とあって劇場版が1作存在しています。
この中でも2期には虚淵さんがあまり関与していなくて、そのためかテーマがブレてるんですね。
で、本作『GODZILLA決戦機動増殖都市』に関連が深いのが劇場版になるかと思います。
そもそも『Psycho-pass』シリーズの焦点は人間が自分たちの社会を平和で完全無欠のものとするためにシビュラシステムによる管理を受け入れるのか否かでした。
つまり本作におけるビルサルドが掲げるナノメタルとの一体化とも繋がってきますよね。
「人間らしさ」とは何かに対する深い問いを投げかけた『Psycho-pass』シリーズに対しても本作は「意志を持って迷いながら決断すること」じゃないのか?という1つの答えを示しています。
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人間への風刺
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ゴジラという作品はいつでも人間に対する警告や風刺として描かれてきました。
環境問題、戦争、核実験、さまざまな社会問題に警鐘を鳴らす存在として君臨してきたわけです。
本作『GODZILLA決戦機動増殖都市』という作品が問いかけたテーマは一体何だったとかと言うと、それは「目には目を歯には歯を」という人間の世界を通底する考え方に対する警告だったのではないかと思いました。
ハンムラビ法典に端を発するこの考え方は人間の世界を今でも司っています。
法を犯した人間には、それに見合うだけの罰を与える。こういう仕組みを構築することで人間は健全な社会を築こうとしてきたわけです。
しかし時にその考え方が暴走することがあります。9.11テロ事件の時にアメリカは世界に示してしまったんですよ。
テロ事件の報復という名目であれば、無害な市民をも巻き込んだ戦争を引き起こし大々的に報復をしても良いのだと。
その結果として今の世界を取り巻くテロ問題があるわけじゃないですか。「目には目を歯には歯を」の原則を暴走的に用いたことで、その負の連鎖が止まらなくなってしまいました。暴力には暴力を。またその暴力には暴力を。
「怪獣と戦うために自分たちも怪獣にならなければならない。」と主張するビルサルドの考え方はそんな「目には目を歯には歯を」の考え方が色濃く反映されており、本作『GODZILLA決戦機動増殖都市』では、それが暴走する様を描いています。
ハルオが自分の思念を捨てて告げたゴジラに「人」として勝利しなければならないという言葉はまさに現代の我々に必要な言葉です。
おわりに
いかがだったでしょうか?
今回は映画『GODZILLA決戦機動増殖都市』についてお話してきました。
いやはやこんなに面白い映画があっていいんですか・・・。
まさかここにきて『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』の正統続編が見られるなんて誰が想像したでしょうか?全ゴジラファンが歓喜ですよ。
そして次回作は間違いなくギドラとモスラが出てくるわけですからようやくアニメゴジラシリーズで怪獣同士の戦いが見れるわけですよ。
想像しただけで楽しみすぎますね。
そして私が妄想も交えて予想したエクシフ黒幕説は当たっているのかにも注目したいところです。虚淵さんが脚本書いているということは、『怪獣大戦争』と同じ展開にはせずに、それを裏切ってゴジラファンを驚かせようという方向性も大いに考えられますけどね。
とにかく映画館で観る価値のある素晴らしい映画でした。最高。
幕切れは正直「う~ん」だったなぁ・・・。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。