みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね映画『ピーターラビット』についてお話してみようと思います。
まあ他のブロガーさん方のほとんどがうさぎと人間の「仁義なき戦い」の方にスポットを当てているので、最低でもそこに被らないことを書かないと意味が無いなぁと思いつつ頭をひねっておりました。
で、ようやく書いてみようかなという視点を見出せたのでパソコンに入力をはじめました。
本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想・解説記事となります。
作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
目次
『ピーターラビット』
あらすじ・概要
ビアトリクス・ポターによるイギリスの名作絵本「ピーターラビット」をハリウッドで初めて実写映画化。
たくさんの仲間に囲まれ、画家のビアという優しい親友もいるウサギのピーター。
ある日、ビアのお隣さんとして大都会のロンドンから潔癖症のマグレガーが引っ越してくる。マグレガーの登場により、ピーターの幸せな生活は一変。
動物たちを追い払いたいマグレガーとピーターの争いは日に日にエスカレートしていき、ビアをめぐる恋心も絡んで事態は大騒動に発展していく。
ビア役は「ANNIE アニー」「X-MEN:アポカリプス」のローズ・バーン、マグレガー役は「スター・ウォーズ」シリーズのドーナル・グリーソン。
CGで描かれるピーターの声を「ワン チャンス」「イントゥ・ザ・ウッズ」のジェームズ・コーデンが担当し、デイジー・リドリー、マーゴット・ロビーら人気俳優が声の出演で参加。
「ANNIE アニー」「ステイ・フレンズ」のウィル・グラッグ監督がメガホンをとった。
(映画com.より引用)
予告編
『ピーターラビット』感想・解説(ネタバレあり)
ソニーピクチャーズアニメーションだから・・・
本作はソニーピクチャーズアニメーション製作の映画ということですね。
とにかくここで作られた映画は個人的に当たりが非常に少ない上に、ハズレはとことん酷い映画です。
例えば『絵文字の国のジーン』とかね・・・。
当ブログ管理人も鑑賞しましたが、あまりの酷さに心が無になりました・・・。
悪名高いスマーフの映画シリーズもソニーピクチャーズアニメーション製作です。やはり地雷映画が非常に多いので、あまり過度な期待をせずに見に行った方が楽しめるかとは思います。
ビアトリクスが憧れた湖水地方とマクレガーが夢見たおもちゃ屋
ビアトリクスの人生
人は誰しも居場所を求める。自分の居場所をどこに見出すのかは自分次第だ。
『ピーターラビット』の作者であるビアトリクス・ポターは裕福な家庭に生まれ、幼いころから学校に通うこともなくひたすら家庭教師から教育を受ける日々を過ごした。
そのため彼女には遊び相手や友達と呼べるような存在がおらず、退屈で閉塞された生活を強いられていたのだ。
ポター家はある夏にイングランド北部の湖水地方に別荘を借り、そこで避暑をすることにした。抑圧された生活を送るビアトリクスにとってその湖水地方の雄大で美しい自然が自分の居場所のように感じられたのかも知れない。
彼女が湖水地方に自分の農場を持つことを生涯熱望し続け、晩年にそれを実現したのも幼少期の思い出があったからではないだろうか。
つまりビアトリクス自身にとってイングランドの北部にある美しい景観を残した湖水地方という場所が自分の人生の在り処だと感じられたのだろう。
だからこそそこにこだわった。彼女は環境保護のための運動に積極的に参加し、私財をなげうって湖水地方の土地を購入し、自分の居場所を守ろうとしたのだ。
本作『ピーターラビット』はビアトリクスの絵本をベースに据えているとはいえ、その内容はあまりにもかけ離れているという指摘がなされている。
しかし、本当にそうだろうか?本作で描かれたマクレガーとピーターラビットたちの戦いはまさしく居場所を守ろうとして必死に戦ったビアトリクス自身の人生にリンクするではないか。
本作におけるビアとマクレガーのランデヴーはビアトリクスが自分の幸せな日々を投影しながら描いたと言われる『こぶたのピグリン・ブランドのおはなし』にそっくりではないか。
やはり映画『ピーターラビット』にも間違いなくビアトリクスの意識が宿っているのだ。
マクレガーの居場所意識の転換
© 2018 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画『ピーターラビット』予告編より引用
本作に登場するドーナル・グリーソン演じるマクレガーは人一倍居場所に飢え、居場所を渇望している人物として描かれている。
彼の求める居場所と言うのは、会社の重要なポストだ。
彼はイギリスを代表する企業ハロッズに務めている。そして彼の頭の中には常に出世のことしかない。出世して出世して、その先に自分の居場所があるのではないかと信じているのだ。
本作冒頭における彼にとっての居場所観は、ハロッズという大企業の中で徐々に自分の領域を広げていくことを第一に考えるものだ。
だからこそスペースシャトルのおもちゃの発射台の角度にこだわり、おもちゃの家のまくらにケチをつけ、トイレの水をも啜ろうとするのだ。
ただ彼はそんな出世の機会を自分よりも能力的に数段劣る同僚にコネで奪われてしまうんですよね。
これはまさに彼にとって自分の居場所がここにはないと突きつけられたようなものではないか。だからこそ彼はハロッズを去るしかなかった。そこに自分の居場所はもうないのだから。
そして彼は叔父が残した家を遺産相続することとなる。
しかし彼は嫌いだと言って家を売り払って、自分のおもちゃ屋を経営する野望を打ち立てる。しかしこの時彼が抱いていたおもちゃ屋についての野望は後にビアに語ったように少しずれている。
というのも彼は自分の居場所を否定し、奪ったハロッズを崩壊させることで自分の居場所を見出すのだという考えだったからである。
しかしビアと出会い、田舎で暮らすようになるとマクレガーはピーターラビットたちとの激しい居場所争いに身を投じることとなる。
叔父が残したあの小さな家はマクレガーの居場所となる。しかしピーターラビットたちにとってもそこは自分たちの居場所だと主張している領域であった。
うさぎたちとの戦いの中でもマクレガーは少しずつビアとの関係性を深めていく。
個人的に好きなのが2人が小さなボートに乗って湖の上で楽しそうにしているワンシーンだ。マクレガーは基本的に自分の居場所から他者を排除しようとする。
ピーターラビットたちを受け付けないのもそういうことだ。
ただこのシーンを見るとボートという小さな空間にマクレガーはビアと共にいる。つまりマクレガーが少しずつ他者と共に居場所を共有することを好ましく思い始めていることが見て取れるのだ。
© 2018 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画『ピーターラビット』予告編より引用
ただ彼はそのビアとのささやかな幸せと自分の居場所を守るために、ピーターラビットたちの居場所を破壊しつくそうとする。
それがためにビアからは別れを告げられ、彼はようやく見つけた小さな居場所すらも見失ってしまうのだ。ほどなく売りに出されたあの家の前に立てられた「売り出し中」の看板は居場所を失ったマクレガーの悲哀を色濃くする。
そして彼はロンドンに戻ると再びハロッズで働き始めるのだ。ここで彼がビアと過ごした幸せな日々の中で少しずつ変わり始めた居場所観がリセットされてしまう。彼は再びハロッズで自分の居場所を見つける日々へと戻らんとするのだ。
しかしそんな彼に再び居場所をもたらしてくれるのが、彼が居場所を奪おうとしたピーターラビットたちだというのがまた泣かせる。
マクレガーはハロッズという自分が居場所だと信じてきた場所から飛び出し、ビアの下へと向かう。彼の居場所は確かにそこにあった。彼のための居場所がそこにはあったのである。
マクレガーが当初探し求めていたのは、自分が支配するための領域としての居場所だ。
だからこそそこに他者は必要なく、容赦なく排除していくのだ。
しかし物語の果てに彼が辿りついたのは、他者と旧友する空間の中で、共関係的に成立する自分の居場所とでも言えようか。そこは自分だけの場所ではないが、自分がいなくてはならない場所だ。
ビアとピーターラビットたちと、動物たちと、鳥たちがいて、そして自分がいる。支配するのではなく共生する。マクレガーという男の成長譚と居場所獲得物語としても『ピーターラビット』という作品は非常に面白い。
そして彼がそれを実現したかに見えるラストシーンのおもちゃ屋の描写は、ビアトリクスが人生の居場所に選んだ湖水地方に重なる。
ビアというキャラクターが名前からしてもビアトリクスの投影だと考えられるのかもしれないが、本作を見るとビアトリクスが投影されているのはマクレガーなのではないかとすら思わされる。
ピーターラビットたちの首長争い
© 2018 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画『ピーターラビット』予告編より引用
本作におけるピーターラビットたちは自分たちの居場所(ビア、畑)を守るためにマクレガーと血みどろの戦いを繰り広げる。
本作のピーターラビットたちの考え方の特徴として私は2つのことが挙げられると思う。
1つには、彼らの独占欲だ。
ピーターたちには畑をマクレガーと共有しようという意識はない。あくまでも彼を完膚なきまでに叩きのめし、殺害してでも自分たちのものにしようとする。
もう1つは、彼らの支配欲だ。
3姉妹のうさぎは誰が長女なのかを言い争い、ピーターは自分が家族の支配者だと言わんばかりに振る舞っている。
独善的で支配的それが本作のピーターラビットの特徴ということだ。
しかし彼らもそんな自分たちの考え方を改めていく。ダイナマイトを爆破させたことでマクレガーの居場所だけでなくビアの居場所までも奪ってしまった。マクレガーはあの土地を去ることとなり、自分たちの居場所は守られたはずだった。
ただそんな自分たちの独占欲がビアの、マクレガーの大切なものを奪ってしまった。自分たちの支配欲が独善的な行動に走らせ、取り返しのつかない事態を引き起こしてしまった。
だからこそ彼らはそんな自分たちの考えを悔い、マクレガーに手を差し伸べる決心をする。ピーターたちはビアがいて、マクレガーがいて、そして自分たちがいる。それこそが自分たちの居場所なのだとはた気づいたのだ。
そして彼は単身ロンドンへと向かう。そこについてくるのはベンジャミンだ。いつものピーターならベンジャミンには来るなと言っていたことだろう。
しかし彼はベンジャミンを受け入れた。
家族においてだれが支配者なのか、誰が「ヒーロー」なのかなんて初めからなかった。全員が協力することで居場所を守れるのだとようやく気がついたのだ。
産業革命期に環境問題に立ち向かったビアトリクス
『ピーターラビット』の原作者であるビアトリクスは最初にも述べたように産業革命の波が押し寄せてくる中で私財をなげうってまで湖水地方を守り、美しい景観と環境を保全しようとした。
それは彼女が地球という大きな空間を人間だけのものだと捉えなかったからであり、人間が地球の支配者であるとは自負しなかったところにあると思う。
本作の中では、ピーターラビットもマクレガーも自分が居場所を獲得するために、その場所を独占するために愚かな戦いを繰り広げました。しかし、そんな戦いは何も生まないではありませんか。
支配するでも、独占するでもない。人間も動物も、木々もあらゆる生命が同じ空間で生活する。
そこに共関係的、相互作用的な自らの居場所を構築していくことこそが大切なのだと彼女は説こうとしたのではないでしょうか。
地球は人間だけのものではない。当たり前のことなのに、ふと見失ってしまうこの事実を彼女は身をもって世界に訴えかけようとした人物であり、その精神というのは確かに映画『ピーターラビット』にも受け継がれているのではないだろうか。
長い年月を経て映画として蘇ったビアトリクスからのメッセージを現代の我々はどう受け取るのか?
余談:ハロッズについて
さて本作でマクレガーが務めていたイギリスを代表する企業ハロッズですが、わたくしナガなんと実際に行ったことがあります。
これが実際にイギリスでハロッズを訪れた時の写真です。中でも結構撮影したと思ってたんですが、カメラにはこの1枚しか残って無くて首を傾げている状態です。
地下鉄のナイツブリッジという駅から出てすぐのところにあります。
イギリス1の高級百貨店ということで、とにかく警備が厳重です。
百貨店なのに入り口で荷物検査があり、大きすぎる荷物は持ち込め内容でした。またリュックサックを背負っている方は背中に背負わず、前に掛けてくださいと言われました。
その理由は中に入るとすぐに分かりました。というのもとにかく置いてあるものが高級品高級品。特にガラス製のインテリアなんかのコーナーはもう値段を見るだけでも震え上がりますし、もし自分が誤って破損させてしまったらなんて考えたら足が震えてくるレベルです。
夜になると建物がライトアップされて綺麗なんですが、残念ながら私は昼に行ってしまったので、それを見ることはできませんでした。
駅からのアクセスも良いですし、ハロッズベアーをモチーフにしたお土産コーナーなんかもありますので、イギリスに旅行した際には足を運んでみてください。
おわりに
いかがだったでしょうか?
今回は映画『ピーターラビット』についてお話してきました。
公開前に海外の批評家に「注意深く耳を澄ませれば、ビアトリクス・ポターが墓の下で憤慨している声が聞こえてくるだろう。」とまで言わせた映画『ピーターラビット』だが彼女の描いたピーターラビットからかけ離れているわけでもなく、むしろその精神的なつながりは非常に強いのではないかと考えました。
ビアトリクスが絵本を通して、自分の人生を通じて訴えかけようとしたメッセージをしっかりと汲んで作られた映画だと思いますし。非常に見ごたえがありました。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。
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